ご注文はチノくんですか?   作:岩ノ森

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ココアとパーティー

 実家のみんなへ、元気ですか?こっちでは学校が始まったよ。

 旅行で毎日一緒だったみんなはね、学校は元からだけどクラスもバラバラになっちゃったんだ。

 チノ君は前より更に明るくなった気がする。もう新しいお友達ができたんだって。

 早く私にも紹介してくれないかなァ・・・。

 

 「なに手紙書いてニやついているんです・・・?」

 チノ君がコーヒーを差し入れに来てくれた。

 

 

 「確かに最近7人で集まれてませんね」

 「新旧記念パーティーしよう!ビストロ☆ココア開店だよー!」

 『来週の休日?バイトあるし』

 『その日は用事が・・・』

 『バレエ教室が』

 『親戚への挨拶が』

 『ごめんなー』

 「ビストロ☆ココア閉店だよぉー・・・」

 「早くも!?」

 

 

 「数日後の平日ならみんな集まれるみたいです。喫茶店も休みですし、学校終わったらうちで開催できますよ」

 流石チノ君。スケジュール管理が上手い。

 「ナイス弟秘書☆」

 「秘書じゃないです。準備するなら早く取り掛からなくていいんですか?」

 「うん、早速食材買いに行かなきゃね。行こう、弟マネージャー☆」

 「・・・いえ、僕にも予定があるので」

 「え゛」

 「すみませんが今回はココアさん一人でお願いします」

 

 というわけで私は一人で買い物に行くことになった。

 「わぁーん!彼氏に愛想つかされたー!!」

 

 「ど、どうしました?ココアさん?」

 「あ、凜ちゃんさん」

 泣いている私を見て、青山さんの編集者さんの凜ちゃんさんが心配そうに話しかけてきた。青山さんとロイヤル・キャッツにいたと思ったけど帰ってきてたんだ。

 「青山さんは?」

 「まだホテルで原稿書いてます。作品なら送れますし」

 「そっかー」

 凜ちゃんさんも青山さんとは昔馴染みらしい。だからか編集さんと小説家さんというよりかは、姉妹みたいに仲がいい。

 「ねえ、青山さんがいなくて寂しい?」

 何となくだけど、そんなことを聞いてみた。

 「そんなことあるわけないじゃないですかぁ、追いかける相手がいなくなって寂しいだなんて」

 「そんなことあるよね!?」

 凜ちゃんさんはフルフル震えていた。

 「大丈夫です!私テレパシー使えますから!!今原稿順調みたいです!!!」

 「大丈夫じゃないよね!?」

 

 

 「ココアさん元気ないですけど・・・さては旅行中みんな一緒だったのが新学期で散り散りとなって心細い・・・とか?」

 「テレパシー!?」

 心を読まれたようだったよ!!

 「みどりちゃ・・・青山先生ほどではないですが人の気持ちを考えるのは得意なんです。小説家の担当ですから」

 「私も凛ちゃんさんみたいにみんなの気持ちがわかったらなぁ」

 そうだったら・・・チノ君のことももっと好きになれるのかな。

 「今度みんなでパーティーしようって誘ったんだけど、私が楽しみたいだけだし。みんな新生活が忙しくて気が乗らないかも・・・なんて」

 「大丈夫です!皆さんの考えも受信して見せます!!」

 「そんな無理しなくて大丈夫だよぉ!!」

 

 「今日もね、チノ君を買い物に誘ったんだけどそっけなく断られちゃって」

 「残念ですね、そんな日もありますよ」

 「そうだよね。でももし私のこと嫌いになっちゃったのならどうしよう、なんて考えちゃって」

 「え」

 「恋人になったからって、浮かれてベタつきすぎたのかなぁ」

 「・・・大丈夫ですよ、きっとチノさんはココアさんのこと大好きなはずです」

 「そうかな?」

 「人間、口に出した言葉と心の中の言葉が食い違ってることがよくありますから。だからきっと、チノさんも心の中でココアさんを大事に思っているはずです」

 ・・・そっか。そうだよね!

 もっとチノ君を信じてあげないと!

 「ありがとう凛ちゃんさん!元気出てきた!!」

 「お役に立てたようで何よりです」

 さて!元気になったところで、美味しいパーティー料理を作るための買い物だー!!

 チノ君とみんなに美味しい料理を振舞ってあげなきゃ!!

 

 

 

 ココアが去った後。

 (ココアさんとチノさんって付き合ってたんですか!?というか恋のアドバイスってあれで良かったんですか!!?もしかしてこの年になっても恋愛経験なしってまずいのでは!!??)

 凛は一人で悶えていた。

 

 

 

 いろいろあったけどビストロ☆ココア当日だよ!最初のお客さんは誰かな!?

 「来たわよ、はいこれハーブクッキー」

 「シャロちゃん!手作りのだ~うれしい~」

 「私のはこれ」

 「千夜ちゃんー!花束もらうなんて初めてだよー!!」

 「今日はお招きありがとうございます」「これ受け取って~」

 「マヤちゃんメグちゃん!素敵な髪飾りー!!」

 どんどんビストロ☆ココアにお客が来る。

 どうやらこの間のは取り越し苦労だったみたい。

 

 「良かったですね。ココアさん」

 「うん!みんなからたくさん開店祝いもらってうれしいー!」

 「・・・僕からのプレゼントは後で」

 「えー今くれないのー!?」

 「僕にも準備というものがありますから」

 「いじわるー!!」

 「・・・ホントに気づいてないんですね」

 「え?何?」

 「いえ、別に」

 

 「じゃあみんな、準備はいいか?」

 「そのコップ・・・!」

 旅行で作ったファミリーコップだ。本当にみんなパーティーを楽しみにしてたんだね。

 「「「「「「誕生日おめでとう!ココアー!!」」」」」」

 ・・・・・・へ?

 「はいこれ、ココアさんの分です」

 チノ君がファミリーコップを差し出してくる。

 今日・・・。4月10日・・・・・。

 「今日はココアさんの誕生日じゃないですか」

 「あーっっ!!?」

 「ビストロ☆ココアに夢中で本当に分かってなかったんですね」

 

 「ココアがこの街に来て2周年記念にも乾杯」

 「「「「かんぱ~い」」」」

 この街に来て・・・2周年・・・・・。

 「あ、あ・・・ありがと・・・・・」

 だからみんな忙しいって・・・・・。

 「ごんなごっぶまでよういじで~」

 「マジ泣き!?」

 

 「みんなサプライズうまくなりすぎだよー!!」

 「そんなつもりはなかったんだが」

 「さっきからプレゼント渡してたのに」

 

 

 それからみんなで自分たちのクラスの話をした。

 どうやらみんな、それぞれ楽しいクラスで友達ができたみたい。

 みんな楽しそうでよかった。

 「ふへへ」

 「ココアちゃん?」

 「前に千夜ちゃんを励ましたことあったでしょ?いざクラスも学校も別れたら、今度は私が寂しくなっちゃって」

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 「恥ずかしいなぁ」

 「ココアちゃんにも寂しい気持ちがあって良かった」

 「お互い様だね」

 

 

 「新制服になった記念に集合写真撮ろうよ!」

 「さんせ~い」

 「私、制服じゃなくて私服だけど・・・」

 「それがいいんだよ」

 みんな離れ離れになっても、また集まれる。

 「チノ君チノ君」

 「はい」

 「私、あのポーズやりたいな」

 「えっ、でも流石に恥ずかしい・・・」

 「チノー、恋人の頼みだろー?」

 「きっとチノ君ならかわいいよ~」

 「今こそ男を見せるとき!」

 「うう、分かりました・・・」

 きっとこれからもそうなんだろうな

 「はいっ、ポーズ!」

 

 パシャッ

 

 

 

 パーティーも終わって、ラビットハウスは私とチノ君だけになりました。

 「あの日そっけなかったの、パーティーの準備してたからなんだね」

 「まさか気づいてないとは思いませんでしたが」

 口に出す言葉と心の言葉は違う。

 本当だったけど。

 「ココアさん?」

 「そっけなかったのは、ちょっと寂しかったなー」

 やっぱりちゃんと言葉に出してほしいな。

 私のわがままだけれども。

 「・・・ごめんなさいココアさん」

 「ううん、いいの」

 私はコテンと、チノ君の肩に頭を預けた。

 またチノ君の背が高くなった気がする。

 肩からチノ君の温かさが伝わってきて、少しドキドキする。

 「お詫びってわけではないですけど、僕からのプレゼント。受け取ってください」

 チノ君が私の頬に軽く触れてくる。

 「んっ・・・」

 ドキドキが高まった。

 「いつもありがとう。おねえちゃ」

 

 カランカラーン

 

 「あ・・・・・」

 「「あ・・・・・・・・」」

 「―――っ!!出直しますっ」

 「待って待って!お客さーん!」

 「というか、猫の腹話術の子!?」

 「え?」

 そのお客さんは、都会で出会った猫のあの子だった。

 「あれ、あの時のお姉さん・・・?」

 「そう!ココアお姉ちゃんだよー!」

 「ココ姉!!」

 こんなすぐ、しかも木組みの街で再開できるなんて運命だよ!

 「・・・・・ココアさん、いつフユさんと・・・・・・・」

 「あ、チノ。お邪魔だったかな・・・?」

 「え?」

 知り合い・・・?

 「そんなこと。来てくれてうれしいです」

 「ごめんなさい、お取込み中で・・・」

 「こちらこそ・・・お客さんに失礼いたしました・・・・・」

 あんなに仲良く・・・。しかもさっきのプレゼント失礼って・・・・・。

 「・・・・・むーーーっチノ君!!いつの間に他の女の子誑かしたのーーーーーっ!!!」

 「それはこっちの台詞です!いつの間に僕の友達たらしこんだんですか!!」

 予期せぬケンカになっちゃった。

 でもたまにはいいよね。

 きっとお互い想い合ってるからこそだから。

 

 

 

 「あの・・・私のために争わないで・・・・・」

 「「お客さん!失礼しました!!」」

 

 




ココアさんの誕生日にはだいぶ早いですがお先に。

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