ご注文はチノくんですか?   作:岩ノ森

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マヤちゃんのフルール制服姿かわいすぎる。照れてるマヤちゃんもかわいすぎる。


チマメ隊とお仕事

 「じゃあお二人も新しくバイト始めたんですね」

 そう言って喫茶で頼んだアフタヌーンティーセットのスコーンをかじる。

 「そうなんだー。私は甘兎で」

 「私は色んな所でバイトしてるよ!シャロリスペクト!」

 一緒に軽食を取っているマヤさんもメグさんも新しい仕事を始めたようだ。高校生になって新しい世界に出て新しいことをやってみたい、ということなのだろう。

 「よければ今度お二人が働いてるお店に行ってもいいですか?」

 僕としても友達がどんな仕事をしているのかは興味があるし。

 「うん。いいよー」

 「じゃあ今度甘兎に行ってみますね」

 甘兎には千夜さんがいる。千夜さんとならメグさんと相性はいいだろう。それに、前に甘兎で職業体験をした時に千夜さんが一人で寂しそうだったことを覚えている。メグさんが一緒なら寂しくないでしょう。少し安心しました。

 「ええっ!?チノうちの店に来るの!?」

 「え、ええ。いけなかったでしょうか・・・?」

 初めての恋人がいきなり自分の家に来る、そんな風なリアクションをマヤさんに取られた。そんなに僕に仕事している姿を見られたくないのだろうか。そもそもどこでバイトしてるかまだ知らないんだけど・・・。

 「いや、いけないってわけじゃ・・・」

 「じゃあ何でー?」

 「え、えっと・・・」

 マヤさんは顔を赤くしながら背けてしまった。

 「裏の仕事だから・・・・・」

 「高校生でそんな危険な仕事を!?」

 

 

 

 「こんにちは」

 「いらっしゃ~い」

 「いらっしゃいませー、ホントに来てくれたんだー」

 後日、僕は約束通りメグさんのバイト先である甘兎庵にお邪魔した。

 当然メグさんは甘兎庵の和風の制服を着ている。

 「メグさん、甘兎の制服似合ってます」

 「ありがとー。ここの制服かわいいから着てみたかったのー」

 「落ち着いた雰囲気がメグさんに合ってて素敵ですよ」

 「ちょ、ちょっと褒めすぎだよー・・・」

 メグさんは顔を赤くして髪をいじりだしてしまった。でも本当に甘兎庵の制服がメグさんのふんわりした雰囲気とよくマッチしていて、いつもよりかわいく見えた。

 

 

 「チノ君、ちょっと見ないうちに魔性さが増したわね・・・」

 物陰から見ていた千夜は友人の天然小悪魔っぷり方面の成長に恐れおののいた。

 

 

 

 「兵どもが夢の跡、お待たせいたしましたー」

 「ありがとうございます」

 早速メニューにある兵どもが夢の跡(フルーツあずき白玉)を注文した。甘兎庵は変わった名前のメニューが多いですけど、メグさんは順応しているようです。良かった。

 「綺麗な盛り付けですね」

 「私が担当してるんだー」

 「え、そうなんですか」

 「ど、どうかなー・・・?」

 器の上にはアイスクリームとあんこを中心にたくさんのフルーツと白玉が乗っている。でも乱雑というわけじゃなくてスプーンですくいやすいよう、見栄えが悪くならないようちゃんと考えられているものだった。

 「すごく綺麗だと思います。見てるだけで楽しいです」

 「良かったー!」

 どうやらうまくバイトやれてるみたいです。良かった。

 「エルちゃんにも褒められたんだー。チノ君も気に入ってくれたみたいで嬉しいよー」

 「良かったですね」

 やっぱり自分の成長を他人に、それも友達に褒められたのならすごく嬉しいだろう。メグさんが嬉しいようで僕も嬉しいです。

 「あ、早く食べないと溶けちゃうよー?」

 「ああ、そうでした。では」

 あんことフルーツ、アイスクリームを絡ませて口に運ぶ。

 「美味しいです」

 「ありがとー!」

 あんみつとメグさんのおかげでとても幸せ気分だった。

 

 

 「千夜さん!チノ君が美味しいって!似合うって!」

 「良かったわ。メグちゃんの魅力のおかげね」

 「ううん!千夜さんのおかげだよー!」

 

 

 

 「あ、フルール」

 甘兎の帰りの途中、フルール・ド・ラパンが目についた。そういえば最近行ってない気がする。

 せっかくだし寄って行こうかな。マヤさんのバイト先も見つからないし。

 僕はフルールの扉をカランコロンと開けた。

 「いらっしゃいませー!」

 「・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・」

 フルール制服姿のマヤさんがそこにはいた。

 「「あーーーーーっ!!!」」

 

 

 「メグの奴ー!チノには教えるなって言ってたのにー!!」

 「いえ、メグさんは関係ないです。偶然、たまたまです」

 「ホントにー?」

 「ホントです」

 「・・・まあいいや。せっかくだしお茶飲んでいきなよ」

 若干不機嫌っぽいですが怒ってるわけではないようです。良かった

 それにしても・・・マヤさんがフルールの制服を着るなんて・・・・・。

 「・・・じ、ジロジロ見んな!どうせ似合わねーよ!!」

 「い、いえっ。そんなこと・・・」

 実際、意外ではあったけどすごく似合っていた。

 いつも活発で男勝りなマヤさんとのギャップというか何というか、とにかく新鮮でその、可愛かった。

 「とてもよく似合ってますよ」

 「お、お世辞使うなよ・・・」

 「ほ、ホントですよ」

 「ほ、ホント・・・?」

 「ホントです・・・」

 「ホントにホント・・・?」

 「ホントにホントにホントです・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 どうも言葉にできない雰囲気に包まれていたたまれない。

マヤさんは顔が赤かった。僕も同じくらい赤いだろう。

 「・・・お、お客様。ご注文・・・」

 「・・・え」

 「ご注文!紅茶何になさいますか!?」

 「あ、ああ、そうでした!え、えーっと・・・」

 自分の気恥ずかしさを誤魔化すように、僕はメニューに没頭した。

 

 

 「マヤちゃん・・・頑張って・・・・・!」

 物陰から見ていたシャロはフルールの洗礼を受ける後輩の健闘を祈ることしかできなかった。

 

 

 「ご注文のハーブティー、お待たせいたしました」

 「あ、ありがとうございます」

 お茶を出しに戻ってきた時には、すっかりマヤさんは店員モードになっていた。うまくやれてるようで何よりです。

 ・・・いや、よく見るとまだ顔が赤い。それにあの笑顔、顔の筋肉で無理やり作ってるような・・・。

 「さ、冷めないうちにお早くお飲みくださいませー」

 「あ、はい・・・」

 あまり追求しすぎるとお客とはいえどつかれそうなのでやめた。紅茶に集中することにしよう。

 相変わらずここの紅茶は美味しい。いい香りで飲むととても落ち着く。

 あれ、でも・・・。

 「もしかして茶葉変えました?」

 「え?」

 「いえ、いつもシャロさんが淹れてくれる紅茶と味が違うような気がしたので。美味しいんですけど」

 「・・・・・それ、私が淹れたやつ」

 「え!?」

 ちょっと衝撃だった。

 「わ、私にだって紅茶くらい淹れれるし・・・。そりゃ普段はぶっきらぼうだけどさ・・・・・」

 「いえ、そういうわけじゃなくて・・・」

 マヤさんが紅茶を淹れれることに驚いたんじゃない。いや、それも少しあるけど。

 「この紅茶、とても落ち着いた味なんです。飲む人に対する思いやりが伝わってくるような・・・」

 「・・・・・ナツメみたいなこと言ってんな」

 「だから・・・」

 ・・・いや、やっぱりマヤさんが紅茶を淹れれることに驚いたんだ。

 こんなに優しくて、心のこもった紅茶を淹れれるなんて。

 「とても頑張ったんですね。マヤさん」

 とっても努力をしたに違いない。

 人のことを気遣えるマヤさんらしいです。

 「・・・・・うーーーっ!!チノの癖にそんな褒めんなーーーっ!!」

 「いや、そんなつもりじゃっ・・・!あれ、合ってるのか・・・」

 恥ずかしさのあまりか駆けていこうとするマヤさんを呼び止めようと、椅子から立ち上がった時に事件は起こった。

 椅子の脚に僕の脚が絡まってしまい、ガタタッとすっころんでしまった。

 「うわっ」「あっ」

 近くにいたマヤさんも巻き込んで。

 

 ドターンッ

 

 「いたた・・・むご・・・?」

 転んだ僕は、何か柔らかいものに顔を埋めていた。

 肌触りは意外とさらさらとしていて、少し濃い香りがした。

 「な・・・な・・・・・」

 「あ・・・・・・・・・」

 転んだ拍子に、僕はマヤさんのスカートの中に顔を埋めてしまっていた。

 目の前の景色は真っ黒、ならぬ真っ白だった。

 「何やってんだこのエロチノーーーっっっ!!!!!」

 「ぎゃーーーーーー!!!!!」

 「二人ともーっ!!うちはそういう店じゃないんだけど―――っ!!!」

 落ち着いて紅茶が楽しめるフルールで、随分な騒ぎを起こしてしまった・・・。

 

 

 「うぅ・・・チノに見られた・・・・・。絶対見られたくないって思ってたのに・・・・・」

 「だ、大丈夫よ・・・。チノ君だってきっと喜んでるわ」

 「それはそれで・・・。何か・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 「マヤさんメグさんも頑張ってるな」

 二人のバイト先に寄った帰り、夕焼けを見ながら物思いにふけっていた。

 二人とも成長しようと日々努力している。それが何となく嬉しかった。

 「・・・僕も頑張らないとな」

 友達が頑張るから、僕も頑張れる。

 自慢の友達に負けないようにしないと。

 「あっ、いたた・・・」

 とりあえず帰ったらまずはマヤさんに蹴られた顔の処置をしよう・・・。

 

 

 

 「チノ君、思春期だからってそんなことしちゃダメだよー」

 「不可抗力だったんです・・・・・」

 「不可抗力だったら人のスカートに顔突っ込んでいいんだな」

 「すみませんでした・・・・・」

 「・・・まあ事故だからチノは悪くないけどさ」

 「青春だねー」

 「どこが・・・!って何だかメグ目が怖いぞ・・・」

 「えー、そうー?フフフー」

 二人のバイト先に言った後日、お礼(一部お詫び)を込めてラビットハウスでコーヒーをごちそうすることになりました。

 「エルさんナツメさんとも仲良くやれてるみたいですね。良かったです」

 旅行先で出会った友達、エルさんとナツメさん。まさかこの街に来ていたなんて。フユさんのことといい運命って本当にあるのかもしれない。

 「なんだかチノ君、お兄ちゃんみたいなこと言うねー」

 「そうですか?」

 確かに中学の間、ずっと一緒だったマヤさんメグさんがお嬢様学校でうまくやれていて、新しい友達もできているなんて感慨深いものがあった。

 マヤさんとメグさんが妹・・・・・。

 「チノ、変なこと考えてるんだったらまた蹴るからな」

 「な、何も考えてないですよ」

 まだ顔に少し跡が残っている。接客業でこれ以上顔のケガが増えるのは避けたかった。

 「さ、砂糖何個入れますか?ミルクとクッキーもサービスしますよ?」

 「やっぱりお兄ちゃんぶってるなー」

 「どちらかというとココアちゃんみたいだねー」

 「い、いやそんなこと・・・・・」

 やはり長く暮らしていてココアさんの影響を受けてしまっているのだろうか。

 嬉しいような、どこか複雑な気分だった。

 「さあどうぞ。できましたよ」

 「「いただきまーす」」

 二人がコーヒーを飲んでくれる。こうやってお返しができるのは嬉しいことだ。

 「あれ?チノ、豆変えた?」

 「いいえ、いつも通りですよ?」

 「でもいつもと味が違うよー?」

 コーヒーを飲んだ二人が怪訝な顔をする。

 「淹れ方間違えたかな・・・?」

 「大丈夫、美味しいよ」

 そんなに味が違うだろうか。普段通り淹れたはずなんだけど・・・。

 「というか・・・」

 「いつもより美味しくなってんな!」

 「えっ」

 「いつも頑張って練習してるからだよー」

 「ちゃんと成長してるんだなー」

 そう・・・だろうか。

 自分じゃよく分からないけど。

 「あーチノ君。顔が赤くなってるー!」

 「恥ずかしがり屋なところはまだまだだなー」

 「い、いやそんなこと・・・」

 しょうがないだろう。

 自分の成長を他人に、それも大切な友達に褒められたんだから。

 

 「よしよし、頑張ったねーチノ君」

 「マヤお姉ちゃんたちが褒めてあげよう」

 「勘弁してください・・・」

 どうやら、お互い完全に成長しきるのはまだまだ先みたいです。

 

 

 

 「ココアさん!僕のコーヒー、美味しくなってるって!」

 「良かったねー!日々の努力の証だよー!」

 その日の夜、僕は自分の成長をココアさんに報告していた。

 高校生にもなって嬉々とした姿を隠さずに。

 「チノ君いつも頑張ってるもんね。私、ずっと見てたから」

 「・・・ありがとうございます、ココアさん」

 頭を撫でられ温かい気持ちになる。

 まだ僕はココアさんの弟のままみたいです。

 

 




マヤちゃんの他人にどう思われてるか気になって仕方ない描写が高校生っぽくて好きです
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