私がまだ小さかったころ、とある街で迷子になったことがあります。
『そっかぁ、いつの間にか迷子になっちゃったんだね』
不安でいっぱいな中、通りすがりのお姉さんに励まされました。
『もうおうちかえれない・・・。ひとりでいきてくしかないんだ・・・・・』
『泣かないで。そうだ、ちょっと手を出してみて』
『?』
そう言われて手を出してみると。
パラパラ~
その人の手のひらから飴玉が降ってきました。
『まほうつかい⁉』
『そう!だからココアちゃんの家族を見つけてあげる』
『いろんなお店がある・・・』
『ココアちゃんは大きくなったら何になりたい?』
『んっと、まほうつかいか・・・お姉ちゃん・・・』
『そうなんだ!じゃあおまじないかけてあげる!』
魔法使いさんはそう言うと、私の手をそっと握りしめてくれました。
『いつか魔法使いなお姉ちゃんになれますように』
『これもまほう!?』
『うん!マネしてもいいよ!』
*
―姉・・・!
―ココ姉、しっかりして・・・!
「ん、うん・・・」
「わ、わー!」
夢見心地でいるとペチィと頬をはたかれ目が覚めた。
「あれ・・・フユちゃん?私、寝ちゃってた?」
「ココ姉、白目向いてたから色々危険だと思って」
ベンチでティッピーと日向ぼっこしてたらいつの間にか眠ってたみたい。心配かけちゃってごめんね。
「チノ達だったらこうやって起こすかなって」
「そうかもしれないけど」
「初めてこの街に来た時のことが夢に出てきたんだー。迷子になった時に案内してくれたお姉さんがいて・・・」
今までどうして忘れてたんだろ。
「思い出したらお礼・・・言えるね!その人探そう!」
「そっか!えっと、特徴は・・・」
んー・・・・・、ん?
「忘れちゃった。何話したかも」
「私が殴った衝撃で!?ごめんね!?」
「そんなことないよー」
「お礼と言えばなんだけど・・・。私はこの街に来る前、ココ姉の言葉に勇気・・・貰ったよ」
都会での最後の夜のことを話してるみたい。あの時のフユちゃん、猫さん達に囲まれてて可愛かったなー。
「だからっ・・・ありがとっ、ココ姉」
「フユちゃん・・・!」
私だけの力じゃないよ。
本当にすごいのは一歩踏み出したフユちゃんの方なんだから。
「今日はチノと一緒じゃないんだね」
「お散歩してたらはぐれちゃって」
「え?さっき見たけど・・・?」
「え?」
「知らない年下っぽい子と一緒に」
「!?」
「この街で見ない顔だね。観光に来た子かな?」
「うん、だから話しかけにくくて」
チノ君はその子とジェラートを一緒に食べていた。
このお店、私が美味しいって紹介した所だ。
その時は興味なさそうだったのに。
「・・・・・・・・・・・」
きっと本当は気に留めてくれてて、それで今日観光に来た子に紹介したんだね。
それは分かってる。分かってるはずなんだけど。
どうしても胸の中がチクリとする。
「あんな丁寧な案内、私以外にもしてるんだ・・・」
「ふっ、フユちゃんもジェラシーじゃなくてジェラート食べよう!?」
「私・・・おつかい頼まれてるからここまでで・・・・・」
「それは大変!あとは任せて!」
「どうなったか報告してね」
「えっ、うん!」
「・・・・・ココ姉もあんまりジェラシーし過ぎないでね」
「!! うっ、うんっ!」
フユちゃんが去った後も、私はチノ君の様子を見ていた。
チノ君はジェラートを食べながら、その子に笑みを向ける。
まるでお兄さんみたいに。
私が見ないところでちゃんと成長してるんだね。
私以外に、あんな笑顔を向けるんだ・・・。
「コーコアさん♡」
「こんにちはっ」
「ひゃうっ!」
黒い感情に支配されそうになってたら、突然ナエちゃん姉妹が頬ずりしてきた。
「ナツメちゃんエルちゃん!二人とも散歩中?」
「うん!」
「あのっ、あの不気味かわいいうさぎ興味あるんだけど・・・勇気無くて近づけなくて・・・・・。ココアさんと一緒なら平気かなって」
「えへへっ」
そっか、まだ木組みの街に来て間もないから色々挑戦してるんだね。
そんなこと頼まれたらお姉ちゃんとして放っとけないよ!
「お安い御用!ついでに街の探検ツアーしちゃう?」
「「する!」」
「ちなみに私のツアーは元の場所に帰ってこれる保証は・・・ない!」
「「スリリング!!」」
その後はナエちゃん達と一緒に色んな所を見て回った。
ウサギの中身がリゼちゃんだったり、ゴンドラに乗ってたらメグちゃんマヤちゃんと出会ったり、凜ちゃんさんから逃げてる青山さんと出会ったり。
この街には素敵な場所がたくさんある。
だからガンガンドコドコ、この街の良い所をたくさん見てもらいたい。
でも楽しい時間ももう終わり。そろそろ夕暮れ。
「そろそろ今日は帰るね」
「ありがとうココアさん」
「うんっ!また探検しようね」
「あと・・・」
「あんまりジェラシーしないでね」
「えっ」
そう言ってナエちゃん達が去って行った後。
「随分楽しそうな道案内でしたね」
「チノ君!?」
物陰からチノ君がひょっこりと出てきた。
「相も変わらず人たらしなんですから」
「年下と楽しそうだったのはお互い様だもん。チノ君には言われたくないな~」
「・・・・・・・ごめんなさい」
「っ。なーんてねっ、冗談冗談!」
ホントはジェラシーして、少し意地悪してみたけど。
そんな顔されたら嫉妬できないよ。
「やっぱり観光に来て迷ってたのを助けてたんだ」
「うまく案内できてたらいいんですけど・・・」
「きっと気に入ってまたいつか来てくれるよ!」
不安な子に笑顔と勇気を与えれるなんて、流石私の弟だね!
「チノ君は私の知らない間にどんどん成長していく・・・・・」
「そっ、そんなことないです。安心させるのに一杯一杯でしたし」
そうかな。
あの子、とっても楽しんでるように見えたけど。
「それに、僕は誰かさんの真似をしてるだけです」
「だから誰の?」
「本気で分からないんですか?」
「ヒントは?」
チノ君は少し恥ずかしそうにして、こっちを向き直した。
「魔法使いです」
「!」
その瞬間、胸の中がざわっとした。
こんな感情になるの、告白された時以来・・・。
「ココアさん・・・?」
「・・・・・あっ、あーっ!なんか似てる!」
「誰に!?」
自分の気持ちを隠すように、わざとらしく大きな声を出した。
「私が昔この街に来た話したことあるでしょ?その時一緒にいてわくわくするきっかけをくれたお姉さん!」
そのお姉さんに似てたのは本当。
「だからありがとう!」
「僕に言ってどうするんですか?」
「なんとなく?」
でもそれだけじゃない。他の感情も私は覚えていた。
「今日は手をつないで帰ろ♪はぐれないように!」
「子供じゃないのに」
チノ君の意外と大きな手を握る。
前握った時より、温かくて大きく思えた。
今日はなんとなく、チノ君の顔がキラキラして見えた。
それは私がまだ小さかったころ、この木組みの街に来た時の話です。
かわいいアトラクションの列車が道路を走っていて、興味があって近づいてみました。
興味津々で覗いていると、その中にいた小さな女の子と目が合いました。
その後すぐお母さんに呼ばれて私は行っちゃったけど、まだその女の子のことは覚えています。
目がとってもキラキラしてたから。
またいつか、会えないかな。
「んっ」
夢見心地で目を覚ますと、眠っているチノ君の顔が目の前にあった。
どんどん大人になってるって言っても、まだまだ寝顔は可愛いね。
「んぅ・・・・・」
そんな寝顔を見てると、また昼間みたいに胸がざわっとした。
なんなんだろう、この感じ・・・・・。
気を取り直して寝ようとするけど、その後はあまりうまく眠れなかった。