「ブロカントで買った小物入れに、シストの地図入ってた!」
「古いせいか、文字が滲んでて読みにくいな」
「解読しよっ」
「ちょっと面白そうです」
この街で行われる古物市“ブロカント”でココアさんが買った物の中に、宝探しゲーム“シスト”の地図が入っていたみたいだ。こういう思わぬ出会いもブロカントならではだ。
「読める範囲で分かったけど・・・これ、目的地が海だぞ」
「「!?」」
思わぬ場所を指し示られた。
「海行くって、本当・・・?」
「フユさんも興味ありますか?」
「んー、海はちょっと苦手・・・かな」
神沙姉妹からの情報。チノ達は海に行くみたい。
でも私は海が苦手だし、それにココ姉も行くみたいだから流石に邪魔しちゃ悪いし。
・・・・・チノと海。
『その水着、似合ってますよフユさん』
『あっ、ダメ、チノ・・・。そんな・・・・・』
「こっち見ないで・・・チノ・・・・・」
「嫌われた!?」
「ご注文は?」
「・・・カプチーノを」
さっきは不純な妄想をしてしまった。チノは純粋な思いで聞いて来てくれてるんだから、そんなこと考えないようにしないと。
「ナツエルさんもですが無理には誘えませんね」
「そうだね」
ん・・・・・?
「ココ姉以外の人たちとも行くの・・・?」
「ココアさんが行くなら皆でって。ただ全員となると予定が合わなくて・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
『皆さん、ボディラインが艶めかしいです』
『きゃあっ、チノ君ったら。それ私の水着ぃ』
『もうっチノ君のエッチ』
『水着返せ~』
『はははっ、捕まえてみて御覧なさ~い』
「チノの・・・エッチ・・・・・」
「何で!?」
ココアさんがみんなに予定を聞いて回った。でも結果は思わしくないようで・・・。
「大人になるって・・・みんな集まれなくなることなのかなぁ・・・・・」
センチメンタルココアさんになってしまっています。
「今回は下見のつもりで行ってさ、いつか皆で行ったらいいじゃないか」
リゼさんが励ます。でも本人もしょげてるのを隠しきれていない。
「いつかって・・・いつ?」
「そんな顔するなよぉ・・・」
二人ともしわしわの泣き顔になって・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「たっ、弛んどる!」
「「!?」」
「これくらいでクヨクヨするでない!!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
二人を見かねて、つい大きい声を出してしまった。ティッピーのつもりで喋ったのに腹話術にすらなってなかったし。
二人ともビックリして・・・。
「・・・ぷっ、くすすっ」
「!?」
「ごめんね、チノ君がそんなおじいちゃんみたいなこと言うとは思わなくて、くすっ」
「まさか・・・チノに喝を入れられる日が来るとはな」
「でもチノ君の言う通り、お姉ちゃんならしっかりしなくちゃね」
二人とも頭を撫でてくる。何というか、久々でくすぐったい。
「ティッピーも励ましてくれてありがとね」
ティッピーがココアさんの頭上に飛び乗った。
「あの、ティッピーも一緒に行ってはいけませんか?」
「そうだな、ラビハの一員だしな」
「来る?行く?行こうティッピー!宝さがしに鼻が効くかも!」
「犬じゃないんだぞ」
いつも通りの二人に戻ったみたいだ。やっぱり、ラビットハウスはこうでなくちゃ。
「フフッ」
「「!」」
「? どうしました?二人とも?」
「いや、何というか・・・」
「チノ君、最近大人っぽくなったなって思って・・・」
「そうですか?」
少しずつ自分も変わって行っているんだろうか。
でも悪い変化じゃないんだろう。
そうであることを、祈りたい。
「「行ってきまーす!」」
海への出発日、朝日が照り付けてきて眩しい。
「タカヒロよ」
おじいちゃんがお父さんに何か言うことがあるみたいだ。
「わしがいない間、喫茶店を頼んだぞ」
「言われなくても」
「お前だけじゃ不安じゃのう」
おじいちゃんにとっては、いくつになってもお父さんはかわいい息子なんですね。
「私もいますよ~♪」
「青山は小説を書けいっ!!」
青山さんの扱いは昔と変わらなそうだ。何となくだけど。
「ではお父さん、留守を頼みます」
「ああ、楽しんでおいで」
そう言うとお父さんは、僕の頭にポンと手を置いた。
最近背が伸びたと自分でも思ってたのに、お父さんの手の大きさは昔と変わらない気がした。
きっといくつになっても、お父さんは僕にとってのお父さんだ。
「おはようリゼちゃーん!」
「おっ、今日は寝坊しなかったか」
「普段はするのに」
リゼさんとも合流した。ちょっとメンバーが少ないのが寂しいけど、この3人(+1匹)でも充分楽しもう。
「まってえええええ~」
「その声は・・・!」
「私たちも!連れてって―!」
「間に合った~!」
「マヤさん!?メグさん!?忙しかったんじゃ!?」
「ナツメと、エルがっ」
「シフト変ってくれたぁ・・・っ」
ナツメさんとエルさんが・・・。
「何で急に気遣ってくれたんだろ」
「助けられちゃったね」
「お土産、素敵なの持って帰りましょう」
きっと二人とも、二人のことが大好きなんだろう。
いい友達を持ったみたいだ。
「・・・何だよー、その目つき」
「え」
「うちのお父さんみたいだよ~・・・」
「そんな年食って見えますか!?」
「もしかして、千夜ちゃんとシャロちゃんも・・・!?」
「ここよー!」
向こうから千夜さんとシャロさんがやってきた。
「フユちゃんがバイト入ってくれて・・・。集まれたみたいで良かったわ」
「どうにかね」
フユさん、ブラバで忙しいだろうに。
帰ったらとびきりのありがとうを伝えなくちゃ。
「・・・ココアちゃん。チノ君の目、色気増してない・・・?」
「そうなんだよ・・・。気づかない間に大人になったのかな」
「悪い女にかっさわれないように注意しときなさい」
「そんなことっ・・・ないと思う・・・・・」
「自信もって!」
「みんな合流できたかな~」
「初めから素直に頼ってくれればいいのに」
「いつものお礼、ちょっとは返せたかな」
「ブロカントに面接の手助けに、まだ足りないくらいだけどね」
いつもチノやココ姉たちには助けてもらいっぱなしだから。
ほんの少しでいい。みんなでいられる手助けをしたい。
「でも、チノさんの水着姿・・・見たかったなぁ」
「こっ、こらっエル!!」
「・・・・・!!」
チノの水着・・・。どんななんだろ・・・・・。
上半身は裸なんだよね・・・。男の子だし・・・・・。
「もうっ!不埒なこと考えてないでっ、仕事仕事!!」
「ナツメちゃんだって考えてた癖に~」
「しょうがないでしょっ!お婿さんになるかもしれない人なんだから!!」
「お婿さん・・・チノの肉体(からだ)・・・二人で分け合うの・・・・・?」
「「フユ(さん)怖い!!!」」
「いっちばん乗り~!」
「マヤちゃん待って~」
「二人とも走るなー!!」
マメちゃんがはしゃいで、リゼちゃんが保護者で。これでこそいつもの私たちだね。
「へへっ、どーんっ!」
嬉しすぎてチノ君にわざと軽くぶつかる。
「うわっ、嬉しいからってテンションぶつけないでください!」
「チノ君こそ」
だってしょうがないじゃん。
こんなに嬉しいんだもの。
「ねえ、シャロちゃんあの二人・・・」
「バカップルっぷりに磨きがかかってるわね」
「ほほえま~」
「私たち、邪魔にならなきゃいいけど・・・」
「じゃあ私たちもカップルになれば解決ね」
「どこがよ!!」
「でねっ、リゼちゃんがちょっとしたきっかけでも後悔したくなかったんだって」
「ココア!!」
列車に乗り込んで赤裸々な話に花を咲かせていた。
「素敵です先輩!」
「照れることないのにー」
「私ねっ、夏は大人になるって聞くからできるだけ一緒にいて置いてかれたくなかったの」
「そんなメグちゃんが一番大人びた気がするけどね」
大人・・・かぁ・・・・・。
さっきぶつかったチノ君の体、昔より安定感があったなぁ・・・・・。
「ココア?」
「ううん、何でもない。じゃあこの夏はお互い見張ろ♪」
「嫌な夏だな」
いつか、チノ君も私も大人になるんだろうな。
まだ先で会ってほしいのは、きっと私の我儘なんだろう。
「海見えてきたー!」
「ほらっ、チノ君もこっち来なよー」
そんな私は、小さな子供のようにはしゃいでいた。
「チノ、ココアにつられて顔が緩んどるぞ」
「皆と来れるとは思わなかったので」
「・・・まだまだ小さな孫じゃのう。ジジイを卒業できそうにないわい」
「ええ、そんなおじいちゃんと一緒に海が見られることが嬉しいんです」
「優しい孫を持って幸せ者じゃ」