ご注文はチノくんですか?   作:岩ノ森

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お久しぶりとなってしまいすみません。投稿ペース早めていきたいです


チノ君と花火大会

 夏の木組みの街、今年も花火大会がやってきました。

 「今年はクールな浴衣を選んでみたよ!」

 「お姉さんっぽさが増してるー」

 「マメちゃんもねー」

 「そだろー!」

 去年と同じ浴衣じゃつまらないからね!日々いつもとは違う自分にチャレンジしないと。

 「ねーチノ君!私たちの浴衣どう!?」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 「あ、あの・・・・・」

 

 「ん?ええ。とてもよくお似合いです」

 

 「「「ん゛ぅ゛っ゛!!?」」」

 最近のチノ君は凄まじく愁いを秘めています。

 いつもと違い過ぎです・・・。

 

 

 (ね、ねえ。チノどうしたの?やけにしっとりしてるというか・・・)

 (う、うん・・・。旅行から帰ってからずっと上の空で・・・)

 (楽しみが終わっちゃったからかな?)

 (だからってあんなになる!?)

 小声でチノ君の様子を話す私たち。二人ともチノ君の様子に戸惑ってるみたい。

 「どうしました皆さん?」

 「え・・・?いや何でも・・・・・?」

 

 「気分が悪かったらすぐ言ってくださいね?」

 

 「んごふっ!!」

 「「マヤちゃーん!!」」

 チノ君の愁いの笑みのダイレクトアタックを喰らったマヤちゃんはその場で膝をついた。

 「ココアー・・・、あれどうにかしてよ。心臓に悪い・・・・・」

 「うん・・・どうにかしたいとは思ってるんだけど・・・・・」

 最近のチノ君は・・・・・。

 「しょうがないよ。誰だって悩みや不安が尽きない時はあるだろうし」

 「そうかなー・・・」

 しんどい時にあまり無理して頑張らせちゃいけないよね。

 それに、本当に辛いときは助けてあげればいいし。

 

 「でも大丈夫かなー」

 「何が?」

 「あのチノ君をフユちゃんが見ちゃったら・・・」

 「あ・・・」

 「おっ、おまたせ・・・っ」

 噂をすればそのフユちゃんが。

 「座敷童みたいになった」

 浴衣を着て日本の幽霊みたいになったフユちゃんがやって来た。

 「あ、あははっ。昔話に出てきそー!」

 「でも似合ってるよ、フユちゃん」

 「そう?良かった。チノはどう?」

 「「「あっ」」」

 

 「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 「ち、チノ・・・・・?」

 

 「くすすっ、とても綺麗ですよフユさん」

 

 ドターンッ!!

 「フユちゃんが倒れた!!」

 「儚げすぎるチノに耐えられなかったんだ!!!」

 

 

 リゼちゃんやナエちゃん達とも合流してみんなで花火大会を回り始めた、のはいいんだけど・・・。

 「あら、鼻緒が切れちゃったわ」

 「大丈夫ですか?僕の肩に手を置いてください」

 「え、ええ・・・」

 「直し方をある程度勉強してきたんです。皆さんが困ったとき、役立つかなって」

 「ごふっ!」

 「千夜ちゃーん!!」

 

 「射的の景品に下駄があるよ!」

 「よし!私に任せろ!」

 「獲ったも同然ですねリゼ先輩!」

 「お、落とせない・・・。腕が鈍ったか・・・・・?」

 「確かに弾は当たってたのに・・・」

 「すみません、僕にもやらせてみてくれませんか?」

 「チノ君!?」

 「んー、やっぱり落とせない。リゼさんのようにはいきませんね」

 「「がはっ!!」」

 「リゼちゃーん!!シャロちゃーん!!」

 

 「マヤなの!?誰かと思った!」

 「どういう意味だよ!!」

 「メグさん!浴衣大人っぽくて一瞬気づかなかったよー!」

 「私も遅れて気付いたよー」

 「あ、そういえばチノさんも来てるんだよね」

 「「あっ」」

 「チノさんどうかな?私たちの浴衣?」

 「・・・・・・・・・」

 「あの・・・・・」

 「フフッ、大人っぽくて素敵です。二人とも」

 「「がふぁっ!!!!!」」

 「エルちゃーん!!」

 「ナツメー!!」

 

 憂いを秘めたスマイルで幾多の女の子たちにダメージを与えまくっていた。

 

 

 「ちょっとココア・・・。今日のチノ君、なんか変じゃない・・・・・?」

 「あんな幻惑してくるチノ君始めて見たわ・・・・・」

 「う、うん・・・・・」

 「・・・ココア、お前も大丈夫か?」

 「え?だ、大丈夫だよ!」

 「嘘つけ、大丈夫じゃないだろ」

 リゼちゃんには見破られちゃった。教官には叶わないな。

 「どうせチノのことだろ?」

 「悩みがあったらすぐ話すのよ」

 「私で良ければ相談に乗るから」

 千夜ちゃんたちも心配してきてくれる。優しい友達を持ったなぁ、私。

 でも。

 「ううん、大丈夫」

 「大丈夫ってお前・・・」

 「これは私が解決しなきゃいけない問題だから」

 誰かに頼ってばかりじゃダメ。

 私が大好きな人のことなんだから、まずは私が解決しないと。

 「・・・ホントにヤバい時は頼ってくれよな」

 「うん、ありがとうみんな」

 チノ君、心配しなくても大丈夫だよ。

 頼りになる人たちがたくさんいるんだから。

 

 「ねえあの人、かっこよくない?」

 「あんなカッコいい人、この街にいたんだー」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 お祭りに来てる女の人たちが、チノ君の色香にやられだしていた。

 「ココア、本当に大丈夫・・・・・?」

 「このままじゃかっさらわれちゃうんじゃ・・・・・」

 「だいじょーぶ!かわいいチノ君がモテるのは当然だからね!」

 「目が全然笑ってないように見えるんだが・・・・・」

 

 

 

 「色々ありすぎて何すればいいんだろ」

 エルさんはこういった場に慣れてないみたいだ。そういう僕も慣れだしたのは最近なんだけど。

 「去年はお店の宣伝とかしてました」

 「どうやって?」

 「えっと、こうやって・・・。甘兎庵をよろしくお願いしま~すって」

 「声が小さいよ、メグ」

 「じゃあ私も。ブライトバニー、よろしく・・・」

 「フユ!今日はやめとこう!」

 和服とフユさんの雰囲気も合わさって、おどろおどろしいムードがお客さんに伝わっていた。

 「じゃあせっかくだし僕も・・・・・」

 『えっ』

 「皆さん、喫茶店ラビットハウスをよろしくお願いします」

 なるべく柔らかい笑顔で、優しく呼びかけるように。

 『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 「あ・・・れ・・・・・?」

 周囲の人たちがしんと静まり返った。

 外したかな、と思った瞬間。

 「行く行く!行きます!!」

 「どこにありますか!?今すぐ行きます!!」

 「うわぁ!!」

 たくさんの女の人たちが詰め寄って波に飲まれてしまった。

 

 「ちょ、誰か、助けっ」

 「あ、あっちにかき氷の出店がある」

 「行ってみよー」

 「みなさーーーん!!!」

 

 

 その頃、ラビットハウス屋上。

 「あ、ココアちゃんから連絡が。あれ・・・?」

 「どうしました?凜ちゃん?」

 「ち、チノさんが・・・、いつの間にかこんなに色気を醸し出して・・・!」

 凜ちゃんが見せてくれたのは、お祭りでのチノさんの写真。

 凜ちゃんココアさんといつの間にか仲良くなってたんですね。

 それにしても・・・。

 「チノさんの浴衣の柄、彼岸花を選んだのはあえてなんでしょうか・・・」

 「よくある柄じゃないの?えっと意味は故人や独立・・・?」

 「凜ちゃん、花火が上がりましたよ」

 今のチノさんには、どちらとも含んでるような花言葉・・・。

 決して悪いことにいかないよう祈ります・・・。

 

 「も、もしかして、ココアちゃんとひと夏のアバンチュールを!?」

 「下世話ですよ、凜ちゃん」

 

 

 

 花火が上がって大きな音が鳴り響いてる。

 去年も花火を見た穴場でみんなと花火見物だよ。

 「やっぱここからの眺め最高―!」

 「今年も皆と来れて良かったな・・・ってフユ!?どうした!?」

 フユちゃんの瞳から涙がポポロンしていた。

 「都会では・・・いつも一人で見てたから変な感じで・・・・・」

 「あの時同じ空を見上げてたのね!」

 「素敵!」

 「都会・・・カッコつけて速攻で帰らなきゃよかった・・・」

 「同じ空見てない・・・」

 「ナエは違う意味で泣いてるし!」

 打ちあがる綺麗な花火を見て、考えることはみんな違うんだね。

 花火の色だけ想いがあるのかも。

 

 

 

 

 

 「・・・おじいちゃん・・・・・」

 

 

 

 その涙は、とても綺麗だったけど、とても哀しそうだった。

 

 自然と私はその人の手を取っていた。

 

 

 

 「綺麗だったね~、チノ君元気出たかな?」

 「楽しみならこれから私たちとたくさん作ってほしいな」

 「? 何の話です?」

 「コラーッ!天然コンビ!!」

 「何でもないよ!」

 「でも・・・」

 

 ぷ~ぅきゅるるぅっぷぅいぃぃぃぃ~

 

 『!?』

 

 鳴り響いたのは、ティッピーの鳴き声。

 「うさぎってホントにきゅうって泣くのね!」

 「今の腹話術じゃないわよね!?」

 「ぷきゅるるるっぴぴぃぃぃっ!」

 「真似しようとするな!」

 「ぷうきゅるるるぅぅあ!」

 「腹話術対決!?」

 「ぶるぁるぁぁあ!」

 「ぷーっぷーっぷーっ!」

 「きゅうきゅう!」

 うさぎの真似をしだす妙な集団が出来上がってしまった。

 

 ・・・ぷっ

 

 「ふふっ、今日は特別はしゃいでるみたいです」

 「あーっ!いつものチノだー!!」

 「えっ」

 「良かった~、いつものチノ君の笑顔に戻ってくれて」

 ・・・今日の僕、そんなに変だったろうか。

 「でもティッピーの知らない生態、まだまだたくさんあるなー」

 「私はたくさん知ってるよ。本名はティッピー・ゴールデンフラワリー・オレンジペコ」

 「長っ!」

 「よろしくね」

 

 かぷっ♡

 

 「嚙んだー!!」

 よろしく・・・?

 深い意味はない・・・のかな・・・・・?

 

 

 

 花火大会も終わり、皆と別れ僕たちは帰路に着く。

 「・・・ココアさん」

 「なーに?」

 「もしかして僕・・・最近皆に心配かけるような顔してましたか?」

 今日の皆の様子も変だった。

 僕のせいで花火大会を楽しめなかった、なんて思うと責任を感じる。

 「チノ君が気にする事はないよ。言いたくないことは話さなくていいし、そばにいるのは変わらないよ」

 振り向いてそう言う浴衣姿のココアさんは、とても綺麗だった。

 

 「・・・ココアさん」

 「んー?」

 「ありがとう」

 「んっ」

 人目も気にせず、僕たちはキスをする。

 それはいつもより長く、深い口づけだった。

 「ぷはっ、ふー。もう、チノ君の意地悪」

 「・・・ごめんなさい」

 「ふふっ、なーんてね」

 可笑しそうに笑うココアさん。

 そんなココアさんはいつもと違って・・・。

 「でもここじゃ恥ずかしいし・・・」

 「ん・・・」

 「続きは家でしよっか」

 「・・・はい」

 

 とっても大人に見えた。

 

 




本誌ではチノちゃんも鏡の世界へ行ったみたいですね。早く読みたいです。
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