惑星SR388からの物体X   作:ちゅーに菌

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メトロイド ドレッド発売記念に初投稿です。




サムスさん拾われる

 

 

 

 今より遥か過去のコスモ歴2003年。

 

 

 星間連絡船を利用した宇宙空間の長距離移動の実現によって異文化間の交流が活発になった結果として、銀河社会はかつてない繁栄の時代を迎えていた。

 

 このように銀河を超えた急速な発展を主とする社会的背景を受け、銀河社会の恒久平和維持、各種族間の友好関係の発展などを目的として、各惑星政府の代表者によって構成された民主制の巨大統治組織――"銀河連邦"が創設されるのは自明の理と言えるだろう。

 

 そして、銀河連邦は各惑星政府の代表者による銀河連邦議会を中心とした大規模な立法・行政機関を作り、連邦に加盟した種族と積極的に協力関係を築く事で、広大な宇宙においてその勢力圏を拡大し、瞬く間に世界そのものと言える規模まで拡散するだけに止まらず、組織としての年月を経て更にその勢力を伸ばしていった。

 

 そんな銀河連邦の直属組織としては、銀河連邦軍や銀河連邦警察などの軍事・警察機関が存在し、スペースパイレーツなどの犯罪組織の取り締まりや、銀河社会の脅威に対する軍事的行動を取る権限が付与され、様々な場所に拠点を置いて治安維持活動を行っており、世界の警察としての地位も確立する。

 

 また、銀河連邦及び銀河連邦軍では、アウトローのバウンティ・ハンターたちを雇用し、実行が困難な任務を依頼することも多い。依頼者に対しては物資・戦術面でのバックアップも随時行い、任務達成時には多額の報酬を確約し、バウンティ・ハンターたちのギルドとしての側面さえもあった。

 

 しかし、そんなものは組織の明るみに出ている数少ない長所とプロパガンダに過ぎない部分であり、銀河連邦に所属した者ならば誰しもが、嫌というほど数々の汚点を目にする筈だ。

 

 

 知的生物(ヒューマノイド)とは認められていない種族への加盟制限という名の差別――。

 

 上層部の統治者階級には一握りの種族しかなれない形骸化した特権制度――。

 

 常に少なくない叛逆者や離反者を生む銀河連邦軍の心ない体制――。

 

 銀河連邦が更なる主導権を掴むために危険性を度外視した利用価値のみでの軍事転用――。

 

 銀河連邦法に定めた条約を無視した生体兵器の運用――。

 

 

 軽く例に出すだけでもそれだけ挙がる。

 

 他にも銀河連邦が、組織として抱える数多くの問題点を挙げれば切りがないが、特に軍事的権限を持つ銀河連邦軍の腐敗が顕著であり、かの銀河連邦の英雄"サムス・アラン"さえも銀河連邦軍に対して不信感を日に日に募らせ、離反してバウンティ・ハンターとなったのだから始末に負えないだろう。

 

 

 

 これはそんな銀河連邦軍(かつての職場)に嫌気が差し、片田舎の銀河に引っ越して半ば隠居生活を送る"あなた"の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 通り掛かったアステロイドベルトにソレが浮いているのを見付けたあなたは、自身の保有するスペースシップのコックピット内で目を丸くしていた。

 

 アステロイドベルト――小惑星群とは言うが、目の前のそれを正確に言えばそれは、惑星戦闘や事故等で破壊・廃棄された宇宙船、コロニー等の残骸が帯のように集まり、惑星軌道上等を周回する宇宙ゴミであるスペースデブリの塊である。デブリ帯とも呼ばれている。

 

 その上、それはかつて惑星SR388に衝突事故を起こし、共々滅びたバイオロジック宇宙生物研究所(B.S.L.)と、惑星SR388の残骸によって生まれたデブリ帯であった。

 

 B.S.L.はかつてのあなたが所属していた組織の銀河連邦の依頼を請け負うバイオテクノロジー会社であり、その研究所である巨大宇宙ステーションである。また、惑星SR388と言えば、コスモ歴20X5年にあらゆる生物に取り付いて生体エネルギーを吸い尽くす特性を持つ浮遊生命体メトロイドが発見されたことはあまりにも有名であろう。

 

 そのため、銀河連邦そのものの黒さを知っているあなたとしては、確実に何か表には公表出来ないようなことをしているのだろうと、稼働していた頃から思ってはいたが、銀河連邦という社会の歯車の一部だった頃のあなたには何が出来る訳でもなく、わざわざ関わる気すらない。そのため、偶々近くを通り掛かりソレを見付けた事で思い出した程度の事である。

 

 

 

 そして、たった今あなたが見付けたソレは――そんなデブリ帯にポツンと漂流している"脱出ポッド"であった。

 

 

 

 ポッドの外見の劣化や損傷具合から壊滅的なダメージを受けつつ長期間漂っていたと思われ、既にコールドスリープ機能が壊れていると半ば断言出来る程である。つまり中身は既に死体ということだ。

 

 ちなみにあなたの保有する宇宙船は、銀河連邦軍の最新型小型バトルシップを非合法な手段で合法的にせしめ、退職金に添えたため、この程度のデブリ帯ならば全く問題なく飛行可能である。そのため、回収自体は然して難しくはない。

 

「むぅ――」

 

 あなたは小さく溜め息とも唸り声とも取れるものを上げる。銀河連邦に関わる施設のモノとは言え、知的生物(ヒューマノイド)としてせめて弔いぐらいはしてやろうかと考えた為だ。

 

 旧連邦軍時代から席を置いていた銀河連邦軍を抜ける程度には人道的なあなたは、見つけてしまった以上は死者をこれ以上デブリ帯に漂わせておくのも忍びないと感じる。また、小型とは言え宇宙戦艦(バトルシップ)のため、ガンシップを2~3隻積む事は可能である事から収容するスペースは何も問題ない。

 

 そのため、ひとまずその脱出ポッドを船内に回収するのであった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 回収してドックに収容した脱出ポッドの状態は悲惨なものであった。

 

 惑星SR388のデブリ帯に突っ込んで大破した宇宙船の脱出ポッドかとも考えていたあなただったが、外壁が全体的に融解し、ハッチと外壁の境目すら全くわからなくなっている状態からとてつもない被害を受けた事が理解出来る。

 

 例えば、惑星SR388に落下するB.S.L.から間一髪で脱出したが、そのまま惑星SR388の爆発に巻き込まれでもしない限りはならないようなレベルであり、脱出ポッドの凄まじい頑丈さには舌を巻くであろう。

 

 しかし、こうなっては中身は最早ミンチである事も確実と言える。如何に原型が保たれていようと、中身はとんでもない衝撃を受けているからだ。

 

 多少、開ける事を躊躇するが、回収してしまった以上、仕方なくあなたはガンシップ等の修理用工具で融解したハッチの境目をなぞり、火花を飛び散らせながら焼き切る。

 

 そして、一周を終えると、ハッチに手を掛けて腕力にものを言わせて無理矢理抉じ開け、中にあるであろう亡骸を眺め――。

 

 

 張った肩が特徴的なオレンジのパワードスーツを着て、片手が緑のブラスターになっている人型実体――"サムス・アラン"が項垂れて臥床している姿を目にする。

 

 

 あなたが知るそれと寸分の狂いもないサムスを目にしたあなたは宇宙を感じる猫のような気分と表情になった。さながら何気なく庭の土を掘ったらフェイゾンが湧いたような驚きであろう。

 

 その上、脱出ポッドの内部にまで一部見られる損傷とは裏腹に、サムスのパワードスーツはまるで新品のようであり、余ほどに脱出ポッドの性能がよかったのだろうとあなたは舌を巻く。

 

『――――――』

 

 するとサムスの身体をもぞもぞと押し退け――クラゲのような身体の下部に口と2本の牙のある小さな生き物が姿を現した。

 

 それ見たことかとあなたは思いつつ、即座にその生物――"メトロイド"の半透明の頭部を指で摘まんで捕まえる。あなたが知るそれよりも随分小さいため、まだベビーメトロイド(幼生体)なのだろう。

 

 メトロイド――。

 

 惑星SR388で発見された浮遊生命体。あらゆる生物に取り付き、その生体エネルギーを吸収する特殊能力を持つ。これを用いて幾度となくスペースパイレーツが暴れ、数多の銀河を震撼させた事は銀河連邦軍でなくとも知るところだろう。

 

『――! ――!』

 

 抜け出そうともがくベビーメトロイドであるが、口以外に吸収する構造のないそれを離すほどあなたは馬鹿ではない。

 

 しかし、メトロイドと言えば既に目の前のサムスが絶滅させた筈である。

 

 それを考え、惑星SR388と、衛星軌道上にあった銀河連邦傘下の宇宙ステーションB.S.L.を思い浮かべてあなたは溜め息を吐く。

 

 "銀河連邦がメトロイドを造ったあるいは絶滅したメトロイドを復活させた"――状況証拠に過ぎないが、恐らくはそのどちらかだろうとあなたは結論付けたのだ。少数のスペースパイレーツが保有しただけであれだけの惨事を起こした"力"を銀河連邦が欲しがらない筈がないという悪い意味の信頼によるものである。

 

『――――!』

 

 とりあえず、銀河連邦について今は考えるのを止めたあなたは、ベビーメトロイドを収納出来る耐久性のある強化ガラス管に入れ、一旦これについても忘れて本題に取り掛かった。

 

 

『………………』

 

 

 サムス・アラン――言わずと知れた銀河連邦の英雄である。

 

 スペースパイレーツの本拠地だった惑星ゼーベスの単独攻略及び首領のマザーブレインの撃破。惑星SR388でのメトロイドの殲滅。他にもフェイゾン、ダークエーテル、アレンビック、ダークサムス、そして惑星SR388の破壊等々その功績は語るまでもないであろう。

 

 尤も近年はあまり目立った事はしておらず、何処かの惑星でスペースパイレーツの幹部に似た者や、黒いサムスに似た者等と共に、時にバトルスーツを脱ぎながら四人制のデスマッチばかりしていると風のうわさで耳にしたが、それも明らかに尾ひれはひれが付いた情報のため、信憑性は定かではない。きっと彼女が頑なにバトルスーツを脱がないため、性別すら正しく伝わっていないので、伝説が妙な方向に独り歩きしているのかも知れない。

 

 爆発に巻き込まれて今の今まで脱出ポッドの中に居たため、全く名を聞かなくなっていたという方が余ほどに現実的であろう。

 

 ちなみにあなたは彼女との直接的な面識はほとんどないが、彼女の性別を正しく認知している理由は、かつてあなたの部下だったアダム・マルコビッチからサムスがバウンティ・ハンターになる時に力添えをして欲しいと頼まれ、それを実行した程度の支援を最初にしている。

 

 また、あなたが銀河連邦軍に身を置くよりも前はバウンティ・ハンターの真似事をしていたため、そちらにも顔が利くあなたに彼が頼む事は別段可笑しいことではなかった。そのため、その時は二つ返事で引き受けたのである。

 

 まあ、その後にサムス・アランという英雄になるなど思いもしなかったが、それに関しては誰でもそうであろう。そのため、一方的に少し知るだけの他人という関係であり、その後も彼女が行動し易いように権力面で勝手に多少助力したり、支援を行ったりした程度だ。

 

 そんな彼女はパワードスーツ越しに胸部が上下している姿は見受けられるため、とりあえず生体スキャンを掛けると、驚くべきことに半壊した脱出ポッドに取り残されていた筈の彼女は全くの健康体であった。パワードスーツ自体にコールドスリープ機能等の何らかの長期保存機能が付いていたのか、栄養値の低下ぐらいのものである。

 

 溶けかけた見てくれの脱出ポッドに女性を放置するのも良くないと感じ、あなたはサムスを抱き上げるとその重量に驚く。

 

 パワードスーツを含めても恐らく100kg前後あるか無いかというそれは、中身が空洞なのかと考えるほど軽い。ここまで華奢なヒューマノイドが英雄と呼ばれるのかとあなたは何とも言えない気分になった。

 

 

『――――――!』

 

 

 あなたが彼女を抱えて居住区画のまで行き、ベッド代わりにもなる医療カプセルに寝かせるとサムスの身体が僅かに震える。

 

 そして、パワードスーツが音を立てて軋んだかと思えば――その一切が突然消失し、中身である水色のボディスーツを来た金髪の女性の姿が露になった。

 

 あなたは彼女のパワードスーツは高い技術力を保有していた鳥人族によって造られたという話を思い出し、異空間に収納して脱着出来る機能まで付いているのかと舌を巻く。

 

「すぅ……」

 

 しかし、どうやらパワードスーツがパージされただけで起きる訳ではないらしく、彼女はそのまま寝息を立てており、これだけ見れば可愛らしい女性そのものであろう。

 

 そんな彼女をあなたは何をするわけでもなく近くの椅子に座りながら暫く眺めつつ、彼女をこれからどうするか考えた。

 

 まず、事実確認のために銀河連邦へ通信をしようと一瞬だけ考えたが、直ぐにそれは止めて思考からも追い出す。

 

 彼女とて個人差はあれども腐り切った銀河連邦軍に何かしら嫌気が差してバウンティ・ハンターになったことだろう。

 

 そもそも銀河連邦そのものと縁を切りつつ銀河連邦軍を抜ける際、かなり強引に抜けてきたため、向こうに所在がわかれば、端の銀河まで産廃を押し付けてくるセールスマンより質の悪い勧誘をしてくるかも知れない。一度首を縦に振れば、とんでもないポストに捩じ込まれるまでセットである。

 

「ん……ぁ……」

 

 そんなこんなであなたが物思いに耽っていると、サムスが目を覚まし、その青とも緑とも取れる澄んだ瞳であなたを射抜いた。

 

 互いに言葉を掛けるタイミングを失ったのか、暫く二人は動かずそうしていると、先にサムスが身体を起こし――。

 

「あうっ!?」

 

 医療カプセルの透明な強化ガラスに軽く頭をぶつけた。

 

 小さな可愛らしい悲鳴を上げる彼女に何とも言えない気分になったあなたは、とりあえず医療カプセルを開けて彼女に自己紹介と、デブリ帯で彼女が入っていた脱出ポッドを拾って今に至る事を伝える。

 

「……ここは?」

 

 しかし、それよりもサムスは無表情でキョロキョロと辺りを見回す。

 

 このシップは銀河連邦軍の小型戦艦のため、下手をすると襲撃してシップごと手に入れたスペースパイレーツなどに間違われても可笑しくはない。そのため、あなたはかつて銀河連邦軍で使っていた階級章と証明書を見せ、少なくとも賊ではないことを伝える。

 

「ひっ――!?」

 

『………………』

 

 その最中、視線や仕草に落ち着きのない様子のサムスであったが、一応彼女と同じ脱出ポッドに何故か入っていたため、床頭台に置いておいたベビーメトロイド入りのガラス管に目を向けたサムスが飛び上がらんばかりに驚く。

 

 それに目を丸くしていたあなたであったが、メトロイドを滅ぼした女が別にメトロイドを好いているかどうかは別問題であると思い、黒い布をベビーメトロイドに掛けて視界から遮った。

 

『――――!!』

 

「……ぅ……ぁ……」

 

 しかし、ベビーメトロイドが脱出しようとガジガジとガラス管の底を噛む音が地味に煩く、牙でガラスが引っ掛かれる絶妙に不快な音にサムスは顔を青くしている。まあ、メトロイド絡みの事件や戦争は普通にトラウマ案件のため仕方のない事だろう。

 

 

"うるさい"

 

『――――!?』

 

 

 仕方なくあなたはテレパシーでベビーメトロイドに声を掛けた。かつてマザーブレインがメトロイドをテレパシーで操っていたらしいため、その真似事をしたに過ぎないが、それ以降大人しくなったため、どうやら幼生体には効果があったらしい。

 

 まあ、宇宙を探せばテレパシーが使えるヒューマノイドなど多少珍しい程度である。そんなことよりもサムスが今後どうするかの方が重要だろう。乗り掛かったシップのため、今さら放り出せる訳もなく、彼女に行きたい惑星があればそこに向かう程度の事はする予定である。

 

「………………その……」

 

 そんな話をしているとサムスは目を泳がせ、何処と無く不安げな表情になる。更に暫く天井やあなたを交互に見つめた末、恐る恐ると言った様子でポツリと呟く。

 

 

「――私は……誰だ?」

 

 

 その言葉にあなたは絶句し、これは大変な事になったとひしひしと感じるのであった。

 

 

 

 







この小説とは特に何も関係無いと思いますが、 XーLAST というオノメシンさんのメトロイドのエロ同人があってですね……。

評価とか感想とかお気に入りとかして貰えると作者が喜びます(いつもの)



あなた
 旧連邦軍時代から所属していた銀河連邦軍官僚OBの知的生物。天下りの代わりに最新鋭小型戦艦を正規の手段で掻っ払ってバウンティ・ハンターになった。割りと何でも出来る超人。サムスにわか。
 基本的にしゃべらない主人公。性別及び種族及び容姿の指定は特にないため、おじさんでも幼女でもグレイ型でもタコ型でもアメンドーズでもアレンビック族でも好きな姿で想像すると良い。


サムス
 この小説のヒロイン。メトロイドが苦手。長期のコールドスリープのせいか、コールドスリープ中にベビーメトロイドにずっと張り付かれていたせいか、記憶喪失になると共にちょっとアホの娘になっている。たまにベビーメトロイドに張り付かれる。

~サムスさんの武装~
アイスビーム
スーパーミサイル
パワーボム
スクリューアタック


ベビーメトロイド
 何故か脱出ポットにサムスと相乗りしていたB.S.L.産のベビーメトロイド。サムスと共にコールドスリープについていた。事あるごとにサムスからエネルギーを吸収しようとする。

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