イキスギイクイクアーイキソ…(幻聴)
「…………ん」
格納庫でのパワードスーツの確認を終え、寝付く時間になった頃。
彼女にはシャワー付きの自室を与え、シャワーの使い方を教えて急造した着替えを渡し、今日すべき事を全て終えたあなたは、自室でもある船長室にあるベッドに身体を横たえていた。
するとあなたが横になっているベッドにもぞもぞと入り込んでくる影がある。決して広くはないベッドに滑り込むように入ったそれは、あなたと並ぶように寝そべるとそのままと動きを止める。
「よしっ」
よしじゃないんだがとあなたは流石に彼女こと銀河最強の戦士――サムス・アランへ問い掛けた。
確かに異種であるサムスとあなたがひとつの寝具で寝ていたとしても互いに
それに彼女は無論、決して子供ではないのだ。むしろ、実年齢を考えれば既に子供が居ても全く可笑しくないようなそこそこの年齢――。
「あのふわふわした奴が怖い」
あなたの小言を遮り、真顔でぷるぷる震えつつサムスはそんな言葉を呟いた。
あのふわふわした奴とは、何故か執拗にサムスを狙い続けているベビーメトロイドの事であろう。確かに今日一日で全く気にしていなかったが、アレも中々に難儀な生き物であり解決しなければならない問題でもある。
単純に今日は既に流石のあなたもキャパシティーをオーバーしたため、せめて明日に考えようとしていたが、確かにまたケージを脱走し、自室で一人のサムスに吸い付いて明日の朝には事切れていたでは洒落にならない。
だとしても何故、あなたのベッドに普通に入って来たのかとあなたは彼女に投げ掛ける。
「……? だってお前はアレに襲われないだろう?」
その言葉を聞いてあなたは一時的に全ての行動を停止し、暫く考え込んだ後にそう言えば全くベビーメトロイドがあなたに襲って来なかった事に気付く。
「…………?」
先に指で摘まんで捕獲していたため、全く気付かなかったあなただったが、やはりサムスは銀河最強の戦士らしく良く状況を見ていると舌を巻いた。
まあ、本人はハテナ浮かべて首を傾げているばかりで可愛らしいばかりであるが。
一度、気になってしまえばいつまでも気掛かりなものである。そのため、仕方なくあなたはベビーメトロイドについて寝る前にサムスと少し確認する事に――。
「すぅ……すぅ……」
安心したのか、ものの数秒で瞬時に寝息を立てている隣りの彼女を目にし、あなたはそっとベッドを抜け出すとひとりでベビーメトロイドのもとへ向かった。
◇◆◇◆◇◆
あなたのシップにある
『Zzz――』
そこにはケージの中で水入れを枕にしつつすやすや寝ているベビーメトロイドの姿があった。まだ幼生体のためか、何故か地べたで寝ている様子が雛鳥のようである。
「……――?」
とりあえず、あなたがケージの小窓を開けると、起こしたらしくベビーメトロイドがふわりと少し浮く。
そして、あなたがケージに手を入れて掌を上に向けていると、ベビーメトロイドはふよふよと移動し、あなたの掌に乗った。
『――?』
なんと世にも珍しい手乗りメトロイドである。あなたを齧りも吸収も決してして来ず、むしろ何か用があるのかと言わんばかりにハテナを浮かべていることをテレパシーで感じる程だ。
『――♪』
とりあえず、ベビーメトロイドを指で撫でつつあなたはメトロイドの幼生体には鳥類と同じく"刷り込み"が備わっているという眉唾物な資料の記載を思い出す。
しかし、何故あなたに対して刷り込みが働いているのか意味がわからない――というところまで考え、コレが銀河連邦傘下のB.S.L.産のメトロイドであるということを思い出し、嫌な歯車が嵌まった気がした。
まず、銀河連邦で最もメトロイドを欲する場所は間違いなく常に内外で不毛な権力闘争ばかりしている銀河連邦軍である。
そして、あなたはそんな銀河連邦軍において、発生した大規模なスペースパイレーツや、銀河連邦と事を構える侵略種族との全面戦争等で有事の際の総司令官を幾度となく務めた紛れもない大幹部のひとりだ。
まあ、単純に戦時の責任や、負けた場合の失脚を恐れ、他の幹部連中が基本的にやりたがらなかった皺寄せを受けていただけだが、あなたが総司令官で負けた作戦は惑星ゼーベス掃討戦と、ダークサムスぐらいのものであり、クリケン族など侵略種族との戦争では無敵の将である。そのため、あなたはスペースパイレーツには因縁があると言えよう。
閑話休題。
さて、そんなあなたはつい最近までは紛れもなく銀河連邦軍で一握りの上層部あるいは特権階級であった。そして、密造されたメトロイドを納品される側の立場でもあろう。ならばB.S.L.としては安定した生物兵器として運用するため、特にその一握りの者を傷付けないように刷り込ませていても余り不思議ではない。
『――――♪ ――♪』
そんなあなたの思考は露知らず、ベビーメトロイドはあなたの指にまとわり付いて遊んでいる。B.S.L.産のメトロイドについてもう少し調べる必要があると感じつつ、ベビーメトロイドのケージにミニクッションのデザインを考えるのであった。
◇◇◇
『Zzz――』
サムスの元の種族である地球種が住まう地球で人気だという市松模様のクッションに身体を横たえて眠るベビーメトロイドを目にし、あなたはなんだかとても優しい気持ちになる。
こんなに可愛らしい生き物ならばペットとして普及すればいいのに――と少し思ったが、数少ないあなたの敗戦理由もメトロイドだった事を思い出し、何とも言えない気分になった。
「………………」
それより、ベビーメトロイドの次はこの生物保管庫の入り口で、半分だけ顔を覗かせて眺めているサムスに対応すべきだろう。どうやらいつの間にか起きて来たらしい。
あなたがベビーメトロイドが寝付いたため、こちらに来るように促すと、サムスは恐る恐るといった足取りで部屋を見回しながら入って来た。
「ここはなんなんだ……?」
それは生物保管庫に対してなのか、
「両方だ」
ならばまず、生物保管庫について。未開の惑星に着陸する可能性のあるシップには、未知の病原菌や寄生虫等の検疫や、危険生物を隔離する為に設けられている。
あなたが保有するこのシップは小型とは言え、種別は戦艦である。そのため、現在は機械制御のため関係はないが、本来ならばそこそこの人数が居住出来る関係で、乗組員の安全のために元から備えられている設備なのだ。
「脱走しているじゃないか……」
『Zzz――Zzz――』
サムスはキッと目を三角にして訝しげにケージの中にいるベビーメトロイドを眺める。しかし、すやすやと寝テレパシーを立てているベビーメトロイドは夢の中であった。
研究所区画がある理由は、そもそもこのシップは銀河連邦軍の極秘開発最新鋭艦であるが、とあるエネルギー物質を動力や武装に使おうとしていたが、諸々の事情で計画自体が白紙になった小型戦艦――"リトルリバイアサン号"なのである。
「とあるエネルギー物質?」
それは"フェイゾン"と言えば、今や銀河の誰もが知る畏怖の象徴であり、既に存在しないものであろう。とは言え、今のサムスの与り知らぬところだ。
ターロンⅣで初めてその存在が確認された放射性物質であり、惑星フェイザを原産地として、リバイアサンという巨大生物を媒介にして宇宙各地に広まった異様な物質である。
少量ではただの強いエネルギーを持つ汚染物質だが、集合することで自らの意思をもって行動をはじめることが大きな特徴であり、強い毒性と突然変異を引き起こす因子によって数々の種族・生物・星々に消えぬ悔恨と傷痕を残した。
そして、最終的にフェイザ自体が、フェイゾンの集合体であるダークサムスごとサムス・アランの手によって破壊され、全てのフェイゾンが消滅したのだ。
そのため、銀河連邦軍が小型で最強の武装を積んで最速で航行出来るということのみをコンセプトに極秘に開発していたフェイゾンシップ"リトルリバイアサン号"は、完成直前で鉄屑と化し、それを捨て値で引き取ったあなたが極力再利用しつつ私財で改修した私有船がコレなのである。
そのため、研究所区画があるのはフェイゾン動力を安定供給するための名残というわけだ。
「ダークサムス……?」
どう見ても姿がサムス・アランと瓜二つのため、俗にそう呼ばれていたフェイゾン生命体であり、歴史上マザーブレインに並ぶほど最悪のスペースパイレーツの首領の一体である。
無論、フェイゾンによって銀河を混沌に貶めたダークサムスの駆逐をあなたは臨時の総司令官として挑んだが、その結果は大敗。
あなた自身も度重なるダークサムス及びスペースパイレーツとの戦闘で、フェイゾンによる汚染を受けつつなんとか耐えながら戦い続け、かつて様々な敵対者にしていたように少数でダークサムスを襲撃し続けていた。だが、ダークサムスは想像以上の怪物であったため、良くて手足を奪うのが精々であった。
そして、最終決戦の地となった惑星ファイザに単身で乗り込み、完全にフェイゾン生命体と化していたスペースパイレーツらを薙ぎ払った辺りから記憶がまるっとないのである。
「え――?」
まあ、要するにフェイゾンに呑まれたと言うことだろう。結局、目覚めた時には直属部隊によって回収されており、惑星ファイザの消滅を後になって耳にしたのだ。
正直、辞職理由の半分はこの件が余りにも不甲斐なかったためである。きっと、スペースパイレーツなんぞに操られ、サムス・アランを襲ったのだろう。そんな失態と生き恥を晒し、銀河連邦軍に残り続ける程あなたは厚顔ではなかった。
また、あなたの目とプラズマビームが赤いのは、フェイゾン汚染の後遺症だ。元の色は緑だった。
まあ、視力がかなり良くなり温度を視覚的に感知出来るようになった上、プラズマビームの出力や発生速度が明らかに向上したため、一概に悪影響だけとは言えないが、スペースパイレーツの施しだと思うと素直に喜べよう筈もない。
あなたは溜め息を吐き、いつも自身の首に掛けている2つのロケットペンダントの片方を手に取ってそれを開ける。
そこにはいつも通りダークサムスの写真が嵌め込まれていた。
このロケットはあなたが殺すと強く決めた相手の写真をここに入れて肌身離さず持ち、それを駆逐した場合にその死体に添えるためのものである。そのため、殺せずに死んでしまったあるいは殺されてしまった相手のロケットをこうしていつまでも持っているのだ。
「えぇ……」
銀河連邦の軍人足るもの殺すのは同じ生命体の国やヒューマノイド。生半可な覚悟でそれに挑むのは失礼というものだろう。これはそのための敬意にも似たものだとあなたは考えている。
「それは軍人というより殺し屋なのでは――?」
サムスは記憶喪失の割にはいらないところに気が回る――などと思いつつ、そう言えばこの習慣はかつてのバウンティ・ハンター時代からしていた事を思い出し、あなたは完全論破されたが、それを全く顔にも態度にも出さなかった。
それよりもそろそろ寝なければ肌に悪いなどとあなたは無理矢理話題を反らす。リドリー程ではないが、大人は誰だって狡猾なのである。
「ん……。しかし、黒いな……」
ずいと身を乗り出してサムスはダークサムスの写真入りロケットを覗き、暫くじっと眺めていた。確かにこの見た目から滲み出るドス黒さは彼女とは似ても似付かないだろう。
「――――――こんな感じか?」
すると、目の前のサムスがパワードスーツを着たかと思えば、写真のダークサムスと瓜二つの配色に変わる。
心なしか細部まで微妙に変わっているように見えたが、無意識にプラズマ刃を伸ばしたあなたにそれは気にならなかった。
「どうだ?」
何がどうなのか問い質したいが、出来ると思ったのでやってみただけなのだろう。そして、すぐにカモフラージュ機能の応用などでカラーリングを変えただけだと自身に言い聞かせ、プラズマ刃の発生を止める。
「ムフ――」
とりあえず、それとなく褒めるとサムスは気を良くした雰囲気になったため、それでよかったのだろう。
仮に現役時代に部下が斯様な悪戯をしてくれば、そのまま望み通りに叩き斬っていたと思われるが、今のあなたはそうではない。
「ん……?」
そんなことはどうでもいいが、サムスの興味深い姿を記録に残して置こうとカメラに収めておく。また、続けて撮ったため彼女がこちらに歩いて移動して来る様子も撮れる。
「なんだそのパシャパシャは?」
それからカメラに興味を示したサムスにカメラの使い方を教え、徐々に夜が深まっていた。
ちなみにこの時撮った写真が、忘れた頃に大変な誤解を招く事になるのはまだまだ先のお話である。
メトロイド ドレッド 発売おめでとうございます(激遅祝福)
これ書いてたり、ニンフィアが修正されたりして出来てなかったので、作者もそろそろドレッドやるので更新遅れますね(集中線)
~簡易当時人物紹介~
あなた
ゲーム内では明らかにラスボスより強いが、設定上ラスボスには絶対に勝てないキャラ
サムス
新作が出る度に初期化パッチを当てられる銀河最強の戦士っぽいの
ベビーメトロイド
銀河連邦の手により造り出された生物兵器の宿命を背負う悲しき手乗りメトロイド
ダークサムス
故フェイゾン生命体。リドリーを超えるクソ外道だが、多くの人間にはゼロサムのせいでスマブラの黒いお姉さん等と認知されているであろう策士
リドリー
故スペースパイレーツ幹部。なぜファイターになれた?