メトロイドの二次創作でこんなにお気に入りと評価付くと思わなかったゾ……(感激)
『お名前はサムス・アランですね? これからよろしくお願いいたします。私のことはエミーとお呼びください』
「あ、ああ……」
あなたの目の前で四本指のクローアームのE.M.M.I.とサムスが握手をしている様子を余所に、あなたは製造途中の他のE.M.M.I.の前に座り、作業を進めようと工具を並べる。
「おい、待て。私を放置する――」
『ではサムス。あなたの遺伝子情報を私に入力してください。抵抗は無意味です』
「うぐっ!?」
すると後ろで悲鳴が聞こえたため、そちらを見ればサムスがE.M.M.I.に組伏せられていた。どうやらAIは高性能でもプログラムの方が汎用機と同じなせいで、正常な誤作動をしているようだ。
このままでは彼女に頭部コアに備えられた採取装置が炸裂しそうな様子であったため、あなたはサムスにのし掛かるE.M.M.I.の背後に立ち、その肩を片手で掴み上げて彼女から引き剥がした。
宇宙最高の素材とあなたの持ちうる技術をふんだんに使ったE.M.M.I.であるが、それでも見た目以上の怪力を持つあなたには及ばない。
『おはようございます。マスター。エミーに何かご用でしょうか?』
剥がされたE.M.M.I.はさも何もなかったかのような様子でそう問い掛けてくる。まあ、実際にE.M.M.I.視点では何もなかったのだろう。
E.M.M.I.には待機するように言い、もう少しAIを学習させる必要があるとあなたが考えていると、半眼で目を三角にしたサムスがあなたの前に来た。
「お前はバウンティ・ハンターではなかったのか……?」
確かに今のあなたはバウンティ・ハンターであるし、前職は銀河連邦軍幹部である。
しかし、それは別に戦闘・戦略・戦術も出来たからしていたと言うだけの話であり、生物工学を始めとした科学分野や、機械工学やエネルギー工学などの物理工学分野等々あらゆるにも明るいと事実としてそれなりに自負していたのだ。
そうでなければフェイゾン消滅により、鉄屑と化した
無論、研究所区画をシップに残してある最大の理由――というより当たり前だが、あなたが普通に使用しているので稼働しているというだけの話である。
"提督は鳥人族の血でも入っているのでは?"と部下からはお茶の間の笑い話ついでによく言われたものであった――まあ、自分自身で行った詳細な遺伝子検査によればちょっぴり入っていたため、あなたにとってはやや笑えない寄りの冗談だったりするが、結局バレる事なく銀河連邦軍を退職したのだ。
「それであのロボットは――」
『エミーです。サムス』
「ロボッ――」
『エミーです。サムス』
「……エミーはなんなんだ?」
そのため、あなたはエミーにあらゆる環境・場所・時間において全く問題なく行動出来るようにE.M.M.I.の装甲は銀河連邦が知る限り、宇宙で最も硬質と言われる特殊素材で構成されており、あらゆる武器・攻撃でも傷一つ付かない。
更にあらゆる悪路や地形での走破性を確保するため、スムーズに二足と四足歩行を切り替えられるように設計してあり、ロボットとは思えないほど生物的で滑らかな動きを可能とするだろう。
「銀河連邦軍からは退職したのだろう? さっき納品がどうとか言っていたような……」
確かに銀河連邦軍から軍人としては縁を切ったが、前述したようにあなたは科学者であり、技術者でもあるのだ。そのため、幹部時代から研究・開発はしており、その成果の幾ばくかを銀河連邦に還元する事もあった。
スペースコロニーで壊滅した宇宙科学アカデミーを銀河連邦本部に新設した時にも完成と本格稼働までの間、設備の設置や研究記録の復元などに臨時のアカデミー所長として絡んでおり、その経緯から宇宙科学アカデミーにはそれなりに顔が利く。
そのため、宇宙科学アカデミーや銀河連邦から直接依頼されれば、見合った報酬を払い、契約を履行している限りは断る理由は無いのだ。
よって今回のそもそもの開発理由は、銀河連邦に"調査団のリスクを減らすため、未開の惑星や過酷な環境の地域を調査できる質の良い惑星調査機の開発"を依頼されたからである。
珍しく真っ当に平和利用目的の依頼だったため、目を丸くしつつ中々に全力を出して造ってしまったため、高い報酬を貰えるにも関わらず、若干赤字だがたまにはこういうのも悪くはないともあなたは考えていた。
そう言えばあなたが過去に納品した物品の現在の様子が書かれた定期報告書が昨日銀河連邦から送られて来た。どうせ本当の事が書かれているとは思えないためいつもは目を通さないで捨てるが、何気なく目を通したのだ。すると、いつの間にか大型警備ロボットの
「ぼくす……?」
『エミーとは性能を比べるべくもありません。エミーはパーフェクトで完璧です』
兎に角、既に口が悪いE.M.M.I.は、その試作機を除いて"7機"を銀河連邦に納品予定の系外惑星探査用ロボットであり、未知の生物の捕獲・DNA採取に特化したロボットである。
「武器は何があるんだ?」
そんなものは設計段階で最初から積んでなどはいない。
あなたは自身の技術を軍時転用しやがったら二度と手は貸さないと、銀河連邦には契約時点で強く言ってあるので、表立って滅多なことはしないと思われる。それぐらいの信頼は銀河連邦にあった。
まあ、強いてE.M.M.I.の武器を挙げるのならば強靭な腕力でターゲットを抑え込み捕獲し、頭部のコアから伸びる採取装置で急所を貫き、生物のDNAサンプルを抽出する機能を搭載している事ぐらいであろう。
「……? なぜ急所を貫く必要があるんだ?」
『しゃきーん』
「――――!?」
E.M.M.I.の頭部コアから急に伸びたグレートランスの先端のような採取装置に驚くサムス。
基本的に未開の惑星が未開なのにはそれなりの理由がある。要するに原生生物が極めて強力な個体であったり、全身が凄まじい硬度だったりするため、生半可な方法ではDNAサンプルの採取すら困難なのだ。
全ては宇宙の平和のため――ならば一切の躊躇なく殺してでも奪い取る他はない。
そのため、宇宙で最も硬いと言われているE.M.M.I.の素材を貫通するように開発した採取装置を備えているため、どんな原生生物が来ようとも極めて高確率で調査を遂行してくれる事であろう。
「それなら武器を積めばいいのではないか……?」
どうやら今のサムスは銀河連邦に
あの組織はいつでも内部で権力闘争ばかりしているため、やれ新たな力だの、画期的な武器だのを見つければ、少しでも実権を握れるように保有したがる。その癖、
要は力を握ろうとも、いつまでも弱者であるという思考が抜けない小心者共の集まりなのだ。弱者とはいつ何時でも己を守るための何かを求め続ける生き物。銀河連邦官僚が誇れる事など血統ぐらいしかない。それが弱者故に仕方がない事だとあなたは頭で理解をしているが、許せるかは別の問題であろう。だが、だからこそあなたは彼らの危険性をよく知っている。
逆にあなたには血統はないが、生まれつき極めて強靭な肉体を持ち、他の追随を許さぬ頭脳もあった。それ故に最初から他の銀河連邦官僚と相容れる訳がないのだ。
『いえ、私には標準装備でアイスビームが積まれております』
「え――?」
すると、E.M.M.I.が片腕をブラスターのように構えてポージングしつつ余計なことを口走り始めたため、あなたは真顔になる。
「お前……」
壊れたブリキ人形のように首を動かしてあなたへ"今までの言葉はいったいなんだったんだ"と言わんばかりの視線を投げるサムスに対し、あなたは吹けない口笛を吹いて見せる。
別に言わなかった訳ではない。記憶喪失のサムスに今の段階で話したとしても余り意味はないと考えていたからであり、いつか話そうとは思っていたのである。
その証拠に悪用は決してしないとこの誓約書に確りと予めしたためており――。
『かっちーん』
「悪用しない……?」
何もない壁に向かってE.M.M.I.が構えたクローアームから淡い水色のビームが放たれ、壁面を瞬間的かつ容易に凍り付かせた。
どうやらこのE.M.M.I.は主人の首を獲りたいらしい。採取するのは首ではなくDNAの筈なのにとんだ不良品である。開発元にクレームを入れる他ない。
「とりあえず、どういう事か聞かせて貰おうか?」
『――♪ ――♪』
また脱走したベビーメトロイドがラボに入って来てもそちらに目もくれない辺り、サムスはかなりご立腹なのかも知れない。
ベビーメトロイドはふよふよと飛びつつ直ぐにサムスへ狙いを定めると、E.M.M.I.の眼前を通過した。
『こんにちは、私はエミーです。あなたのお名前と遺伝子情報をご登録ください』
『――――!?』
その直後、瞬時にE.M.M.I.に捕獲されたベビーメトロイドを解放し、最近何処の部屋にも設置する事にしたベビーメトロイド用の鳥カゴにベビーメトロイドを入れてからサムスと向き合った。
まず、事の発端はあなたが鳥人像の研究をしていたためである。
「鳥人像……?」
鳥人像と言えば、宇宙の様々なところにある鳥人族が何かしらの用途で造ったモニュメントである。
個々の鳥人像には貴重なプログラムが入っていたり、回復装置や、鍵になるなど様々な機能を持つが、共通している事は鳥人像が鳥人族の持つ高度なバイオテクノロジーが導入されたクローン生物でもあるという事だ。
他にも外敵の侵入を察知すると仮死状態が解除されて起動し、侵入者の排除を行うようプログラミングされているバトル鳥人像と呼ばれる個体が、このシップに研究用に数体積まれていたりするが、そちらは今関係ないだろう。
「そっちも気になる」
今重要なのはプログラムが入っているタイプの鳥人像だ。そして、私は考えた。
サムスが惑星ゼーベスの鳥人像からパワードスーツに様々な拡張データをダウンロードしたと言うのならば、逆にパワードスーツからデータを抜けるのではないか?――と。
「できちゃったのか……」
そう、サムスの能力の回復具合を見るついでに試してみた結果、パワードスーツからアイスビームのダウンロードに成功しちゃったのである。
『エミーの両手足とコアにアイスビーム発生機構を内蔵しております』
「無駄にハイテクだな」
とは言え、それが正常にダウンロードされているのか半信半疑だったため、とりあえず手近なE.M.M.I.の設計図を少し弄り、アイスビームをインストールしてみた結果がコレだ。
正直、出来てしまったあなたが一番困惑していた。思いの外、鳥人族のセキュリティは大したことないのかも知れない。
「でもエミーが武装しているじゃないか」
『エミーにはアイスビーム以外にパワーボムも付いてますよ?』
E.M.M.I.がコアのハッチを開閉すると、ポロリと赤く点滅する楕円形の小型爆弾が床に落ち――即座にあなたはパワーボムをテレポーテーションによって船外に弾き出し、直後に船窓から目映い光が一瞬だけ感じられる。
流石は大多数の
しかし、それはそれとして、E.M.M.I.はシップ内で有事のみアイスビームは使用可能とし、パワーボムは禁止とする。
『イエス、マイマスター。殴って良いのは化け物とスペースパイレーツだけですね?』
それでいい。おお、素晴らしい。
「コイツ、戦闘用ロボットだろ」
『……? エミーは惑星外多形態機動調査機ですよ?』
それは銀河連邦に渡すE.M.M.I.には武装を搭載しないだけで、試作機を武装させないとは一言も言っていないし、誓約書にも記載していないからである。
「ずるい、へりくつだ」
それはそう、
とは言え、サムスの不利益になることだけはしないとそれだけは念を押す。乗り掛かった船な上、彼女にはあなたが殺し損ねたリドリーとダークサムスを倒した恩がある。そうでなくとも宇宙を守る彼女への助力ならば惜しむ必要もないだろう。
それにE.M.M.I.を武装させたのは彼女からアイスビームをダウンロード出来てからの話である。彼女はまだ赤色のゼーベス星人に倒されてしまいそうな様子なため、護衛兼スパーリング相手には丁度よいと思ったからだ。
もちろん、既にプログラミングしてある。
『はい、エミーはあなたの安全を守ります』
「えっ――?」
サプライズプレゼントを与えられたサムスが今日見た中で一番呆けた表情をしている様を余所に、あなたは他のE.M.M.I.の開発に戻るのであった。
「えっ――――?」
そういえば、E.M.M.I.には紫色で水中によくいる奴がいますね。
~簡易当時人物紹介~
あなた
わりと頭マオキン族
サムス
相対的常識人
ベビーメトロイド
マスコット
エミー
汚ないベイマックス