12月までクッソ忙しくて震えますが、初投稿です。
惑星間交易が活発化した銀河社会において、その交易を狙った海賊行為を働くものが現れるのは必然であり、そう言った犯罪組織あるいは集団は
尤もその名称は本来ならば宇宙において、私的目的で、他の航海の安全を脅かす行為をする者の総称であり、当然ながらコスモ歴が制定される以前から存在してる。
しかし、スペースパイレーツと呼ばれる組織が、単なる犯罪組織に留まらず、銀河を征服するために銀河連邦と対立するテロ集団として人々に認識されている時点で、彼らが行った一連の行動が銀河に多大なる影響を及ぼし、数多の惑星に甚大な被害をもたらした事は語るまでもないだろう。
銀河連邦が創設され、旧銀河連邦軍が設立された段階で最大の障害はスペースパイレーツであり、出来て間もなく満足な戦力が無かった旧銀河連邦軍は、戦力の充実とプロパガンダのため――"銀河最強の海賊"と当時呼ばれていたバウンティ・ハンターをその傘下の軍団ごと召集し、対スペースパイレーツの副司令官に任命したのだ。
それは名目上は確かに
その首領は元々、侵略種族やスペースパイレーツ嫌いとしては名の通ったものであり、召集される前から幾つものスペースパイレーツ拠点を滅ぼし、数多の侵略種族を根絶しており、無辜の民には英雄視すらされていたのである。
そして、銀河に畏怖と恭敬を集め、蔑称と愛称の両面から"
海賊提督は旧銀河連邦軍に降って以来、より一層凄烈さを増し、銀河連邦のためにあらゆる脅威を常に第一線で排除し続けた。尤も目的と行為は逆だったかも知れないが、銀河連邦が今の地位を築けた一因は間違いなくその圧倒的な武力を持てた事だろう。
かのスペースパイレーツ司令官のリドリーが、まだ自身の力を過信していた頃、たった4隻の戦艦で移動していた海賊提督に20隻以上の船団で奇襲を掛けて挑んだ結果、己の船団は全て壊滅し、戦艦の悉くを破壊及び拿捕され、這う這うの体で一人だけ敗走したフォーマルハウト海戦は余りにも有名と言える。それ以来、リドリーは極めて狡猾になり、己がサムス・アランに滅ぼされてその生涯を終えるまで海賊提督の前には姿を現さなかったのは言うまでもない。
しかし、スペースパイレーツがサムス・アランによって壊滅し、一大組織としてのスペースパイレーツが消え去って暫く経ったある日――。
海賊提督が突如として銀河連邦を後にし、主を追って支配種に隷属する習性を持つ種族の直属配下の殆ども失せた。
何らかの不履行や不義があったのか、スペースパイレーツの壊滅で用済みとされたのか、はたまた全く別の理由なのかはわからないが、出来過ぎたタイミングのため、少なくとも銀河連邦の上層部が絡んでいると言うことは誰の目にも明らかだった。
しかし、銀河連邦の明らかな弱体化は、日陰者達にとっては吉報以外の何物でもない事は確かだろう。
そのため、再び銀河の征服や略奪を目論む小規模なスペースパイレーツ達が、銀河の各地で急速に芽生え、鳴りを潜めていた侵略種族たちが侵略行動を再開し、銀河連邦にとって新たな脅威となった事は当然と言える。
結果、スペースパイレーツや侵略種族の代わりなどこの宇宙には幾らでもおり、銀河連邦は"力"の本質を何も理解していなかったのだろう。
◇◆◇◆◇◆
銀河に点在する新たなスペースパイレーツのひとつ。
それが今、1隻の小型戦艦を捕捉し、略奪の為に大型戦艦2隻で追い立てていた。
単独で航行する何処かの国の小型戦艦など、スペースパイレーツにとっては自ら首を差し出しているような格好の的であり、彼らが敵意を剥き出しにして襲い掛かる事に不思議はないであろう。
大型戦艦2隻で左右から挟み込むように追撃しており、小型戦艦は左右からの砲撃を船体を覆うエネルギーバリアで防いでいるが、誰が見ようとも陥落するのは時間の問題に思えた。
スペースパイレーツらは左右から大型戦艦を寄せ、小型戦艦に集中放火を浴びせる。対する小型戦艦はエネルギーバリアでそれを受け続けるばかり、彼らの熱狂は最高潮に達する。
故に彼らは誰一人として、小型戦艦が変形して伸びた大型砲塔が片方の大型戦艦へ向けられた事に気付かなかった。
小型戦艦の砲塔からバトルシップほどのサイズで藍色の鉄球に似た形状と質感をした何かが一直線に放たれ、大型戦艦の外部装甲に突き刺さる。
しかし、大型戦艦からすれば無視出来るレベルの被弾であり、苦し紛れの一撃以外の何物でもないと彼らは考えたことだろう。
鉄球が解放されるように変形して、明らかに質量を無視して膨張し、大型戦艦の10分の1程のサイズの奇妙な兵器に変わらなければ――。
『■■■■■■□□■……』
それは何かを格納して仮面のようなカバーで隠している箱型の本体装置を核に、先端部がクローになっている機械製の巨大な腕と、円柱状のデバイスの付いた尻尾にあたる部位が生えているという奇妙な姿をした異形の兵器であった。
また、その巨大兵器は、機械特有の駆動だけでなく、明らかに生き物のような呼吸による動きと身振りが見られる。
これを知る者が居れば戦慄した事とだろう。
旧銀河連邦軍製造半機械生物兵器――"ナイトメア"。現在の銀河連邦の法律では禁止にされている筈の生体兵器。その上、実際に殲滅に使われた大量破壊兵器だったからだ。
◇◆◇◆◇
それでいい。おお、素晴らしい。
船長席の椅子に背中を預けたあなたは、ついさっき開けたお気に入りの銘柄の酒を傾けながら空中に投影されている立体映像を眺めていた。
立体映像ではスペースパイレーツの大型戦艦が、船外に取り付いたナイトメアによって、次々と砲塔やミサイルハッチを区画ごと破壊され、船体は徐々に火だるまの鉄屑へと変わる。更に対岸の戦艦もナイトメアに付いたレーザーにより、武装を焼き切られて丸裸になって行く。
当然、あなたが設計した重力操作装置がこの宙域全体に広がっているため、ミサイル等の重量のある兵器の一切を無効化すると共に離脱を不可能にしていた。
また、蜂の巣に発煙筒を差し込んだように慌てて発進したバトルシップは、重力操作と重厚な装甲の前にまるでナイトメアの相手にならず、数多の武装によって羽虫のように次々と叩き落とされる様は、爆ぜ沈む戦艦と合わせて久々に酒が進む光景である。
「なんだあれは……」
あなたの横で立体映像を眺めてサムスが困惑しているため、説明しなければならない。
ナイトメア――。
旧銀河連邦軍時代にあなたが開発した大型の半機械生物兵器であり、未だにあなたが改良を続けている個体である。
『マスター、明らかな兵器運用目的の生物兵器の開発は違法では?』
きちんと法律を覚えているE.M.M.I.はとてもかしこい。しかし、生物兵器を一から造ると違法だが、既に存在している生物兵器を改良するのは合法なのだ。
また、旧銀河連邦軍時代には生物兵器に対する法律が存在しなかったため、開発した当時は法を犯しているという認識すら無かった。
実際、あなたが旧銀河連邦軍時代に開発した数多の生物兵器達によって、銀河連邦は銀河の覇者の不動の地位を手に入れた礎になったと自負している。
まあ、旧銀河連邦軍に生物兵器開発の第一人者としてあなたが生物兵器にとてもお熱だった頃。急に生物兵器に対する法整備と軍縮が同時に来たため、あなたはイメージの大切さと言うものを学んだのだ。
『類似例を検索……検索……ヒット。エガス・モニス。ロボトミー手術の発案者と類似点が多々あると進言します』
「ろぼ……?」
地球人種が宇宙に出る前の歴史上の人物さえ押さえているE.M.M.I.は勤勉なのだろう。
元々、あなたのナイトメアは尻尾に付随しているモーター型重力操作デバイスを利用して、周囲の重力の大きさ・ベクトルを自在にコントロールする重力操作能力を持つ。
そして、両腕に4門ずつ装備している連装ビーム砲による砲撃、頭部の生体部から発射する直進型レーザー、ターゲットを自動追尾するホーミング弾、敵の攻撃を吸収する小型ブラックホールの生成などの武装を取り揃えている。
更に暗く重厚な見た目からは想像し難いほど機動力が高く、巨体から繰り出される突進攻撃は高い耐久性と合わせて驚異的な威力を持つのだ。
更にあなたのナイトメアの生体部分には、かつてあなたが捕獲したファントゥーンのDNAが組み込まれており、次元を超えて移動するための特殊器官を人工で生み出し、発達した高密度の神経系を機械系統で再現する事により、限定的だが、"次元の狭間を移動して実体を消す特殊能力"を有している。
そして、過去に鳥人像から解析したモーフボールのデータとサムスからコピーしたモーフボールのデータを、実体を消す特殊能力と組み合わせ、機体内部を霊体化させる事でモーフボールを可能とし、また内部が霊体化しているため、なんと格納時は10分の1以下のサイズで保管することが可能。更にモーフボールのまま船外あるいは対象に向けて射出する事でスムーズな戦闘行為への移行が可能なのだ。
「また、私のデータぬかれてる……」
目を三角にして見つめて来るサムスを他所に、あなたはちょうど酒を半分飲み終えたところで酒瓶に栓をして机にそっと置く。
そして、椅子から立ち上がると首を鳴らし、酒瓶の隣にあった古めかしいモデルのレーザー短銃を手に取ると、立体映像に映るナイトメアに取り付かれていない方の大型戦艦を眺めた。
◆◇◆◇◆◇
「馬鹿な……」
大型戦艦のブリッジにいたひとりのスペースパイレーツがポツリと呟く。
まだ、原型を保てている方の大型戦艦の中にいるスペースパイレーツらは、既に今までの優越感と弱者を嬲る恍惚は何処にもない。
彼らの視線の先には、船体を半ばから真っ二つに折られながら爆発炎上する同型の戦艦があり、その上で爆炎と弾ける閃光に照らされながら天に吼えるナイトメアがいた。
ナイトメアという一切の法と人道を無視した生物兵器の重力操作により、重力の井戸に閉じ込められ、あらゆる計測機器は異常な数値を示し、前進や後退どころか回頭さえもままならない。
彼らは片割れの戦艦が成す術もなく崩れ去る様をただ眺める事しか出来なかったのだ。
「く、狂ってる……」
また、ブリッジにいる誰かがそう呟く。
スペースパイレーツらには、彼らが襲ってしまった相手の方が余ほどに異常な化け物に思えたことだろう。高々、スペースパイレーツの戦艦ふたつを潰す程度に大量破壊兵器を投入するなど正気の沙汰ではない。
しかし、彼らは少なくとも噂では知っていた筈だろう。
歴代の銀河連邦軍総司令官の中で、無能や暗愚等と呼ばれた者は数多居たが、同胞にすら狂人とまで呼ばれた英雄が居た事を。
そして、"それ"はブリッジの中心に突如として現れた――。
何も無かったその場に、あたかも元からあったかのように佇むそれは、僅かな赤黒い雷光を身体から放ち、フェイゾン生命体のようにぼんやりと赤く染まった瞳をしている。
超能力の"テレポート"でも使って来たかのように出現したそれは、スペースパイレーツにとっては誰よりも名と顔の知れた人物であろう。
「"海賊提督"……消えた筈じゃ――」
その人物――海賊提督と呼ばれたモノの返答は、その手にしていたレーザー短銃によるものだった。
スペースパイレーツのひとりが呟いたその言葉は途中で途切れ、心臓に風穴を開けられたまま床に崩れ落ちる。
旧式のレーザー短銃特有の白煙が銃口から立ち上ぼり、殺した相手を眺めて薄く微笑みを浮かべている様が何より印象的だっただろう。
「うっ、うう……撃て! 撃てェ!」
ブリッジにいるスペースパイレーツらは、それぞれが持つ銃器類で掃射を掛ける。
出現した位置が中心のため、四方八方から囲まれているそれは、その全てを身に受け、大量に命中したミサイルの爆炎により姿が隠れた。
20~30秒に渡って掃射され、スペースパイレーツらの弾やエネルギーが一時的に尽き掛けると同時に、誰からと言うわけでもなく攻撃が止む。
「ひっ……」
しかし、黒煙を腕を薙いで払い退け、外皮に細かな傷すらない全くの無傷のそれが姿を表す。
その様だけでも異様だったが、対立したスペースパイレーツらの多くが気負されたのは、それの表情が薄笑みから口の端を三日月のように吊り上げた満面の笑みに変わっていたからだろう。
「あ――」
そして、それが少し足を引いて腰を落とした直後、全身に"シャインスパーク"の光が灯り、瞬時に離れたスペースパイレーツのひとりへ迫ると共に、その頭部を掴み上げる。
「がぁぁぁあぁぁぁ……!!!?」
「船長!? テメェ――」
気遣う部下の言葉は最後まで続かず、船長と呼ばれたスペースパイレーツの頭は果物のように握り潰された。
床に倒れ、失った首から体液を流すばかりのそれを残るスペースパイレーツらは唖然とした様子で眺めるばかりであろう。
当たり前だが、ごろつき共の首領は基本的に一番実力がある。それがこうもあっさりと何も出来ずに殺られてしまえば、最早残る船員には何をする術もない。
そんな最中にもそれは歩いて移動し、下ろしたままの短銃を持っていない方の腕に赤い"プラズマビーム"の光が灯り、それを中心にバチバチと音を立てて黒い雷光が発生する。
「ひっ……ま、待て!? こう、こっ、こ……降伏――」
それが近付いて来たスペースパイレーツの1体は命乞いをしたが、その返答は胸から突き抜けて背中に生えた紅蓮の"プラズマ刃"が物語るだろう。
更に脳天へ目掛けて刃を振り上げ、上半身の半分を斬り裂かれたスペースパイレーツは、そのまま背後に崩れ、2度と動かなくなった。
「クソがぁぁぁ!!!?」
すると自棄になったのか、スペースパイレーツらの数名がそれに対して飛び掛かる。彼らが持つ銃器では一切ダメージを与えられない事はわかっているため、力に頼るしかないと踏んだのだろう。
それは幾体ものスペースパイレーツに取り付かれ――異常なまでの剛力故にまるで行動を止めるに至らなかった。
スペースパイレーツらが捩じ伏せる為に手足を押さえ込もうとしようと、その指先を床に着けさせることすら叶わない。爪や牙でどれだけ殴り付けようとも、岩を枝で叩くようにまるで無為。
「今のうちに逃げ――」
その言葉を聞くまで、スペースパイレーツらの抵抗を黙って受け止めていたそれは、急に片腕を水平に掲げて握り潰すように拳を作る。
その瞬間、迸る何かが空間を駆け巡り、ブリッジと他を繋ぐハッチや通気孔等の全てを無惨に押し潰す。
尤も、ブリッジ外に出れたからと言って、宇宙空間はナイトメアが掌握しているため逃げ場など何処にもないが、少なくともブリッジは完全に他の区画から孤立した。
更にそれは片腕に再びプラズマ刃を形成すると、纏わりつくスペースパイレーツらをまるで意に介さずに薙ぎ払う。
回転するようにプラズマ刃を振るうと、纏わりついていたスペースパイレーツらは吹き飛ばされ、プラズマ刃により切り刻まれる。
虐殺――。
幾ら言葉を飾ろうとも、それの行動が本質的にその行為から変わることは決してないだろう。そこに善悪の境界などはまるでない。
これこそが銀河連邦が重用しつつも畏れた力の権現そのものである。
◇◆◇◆◇◆
「――――♪」
『――♪ ――♪』
半ば崩壊した大型戦艦のブリッジにて、船長椅子に座りながら寛ぐあなたは、珍しく鼻唄を歌うほどとても上機嫌だった。
あなたの隣にはゴミのように
死骸の山には何処に居たのか、後から持ち込んだのか、ベビーメトロイドの姿があり、残留している生体エネルギーを吸収し、死骸を灰のようなものに変えている。
「…………?」
すると、何かに気付いたのか鼻唄を止めたあなたは、"テレキネシス"で押し潰したハッチを眺め――その直後にハッチは爆散し、ブリッジに人影が入って来る。
「おい、お前は――…………いらない心配だったな……」
入って来た人影――新たに獲得したスーパーミサイルで壊れたハッチを壊したサムスは、あなたとブリッジの惨状を目にし、大きく溜め息を吐いた。
ブリッジに直接乗り込んで来たあなたとは違い、サムスは別働隊としてE.M.M.I.と共に、安全な区画から乗り込んでいたのである。
『皆様のご協力ありがとうございました』
すると四足歩行で走って来たE.M.M.I.が、サムスに少し遅れてブリッジに現れ、あなたの前に来ると二足で立つ。
そして、胴体部のハッチを開くと、そこから小さな容器を取り出し、よく見れば容器の中に更に小さな細長い容器が大量に詰まったモノがあり、その多くに中身が満たされているように見えた。
「なんだお前……。見当たらないと思ったら今まで何をして――」
『船内の他ブロックに居た生命体の方々"42名"のご協力により、DNAをご提供いただきましたため、サンプルを提出し出します』
それでいい。おお、素晴らしい。
あなたはE.M.M.I.からDNAサンプルを受け取り、設計通りの迅速かつ精確な採取に、これならば製品版は宇宙平和のために銀河連邦の元で活躍してくれるだろうと確信する。
そのための急所への採取。そのためのE.M.M.I.なのだ。
『まだ、数名の生体反応があるため、引き続きDNAの提供を呼び掛けに行って参ります』
「………………何かが致命的に間違っているんだが……?」
混乱したような何とも言えない表情をしたサムスだったが、E.M.M.I.は気にせず再び四足歩行で走って行ってしまった。
ナイトメアの重力操作で宙域を掌握している以上、並みの生命体では脱出は不可能な事は伝えたため、決して焦る必要はないのだが、そう言った余裕を持つにはまだE.M.M.I.は学習中なのだろう。
あなたはテレキネシスでブリッジ中に飛び散る血と、自身が浴びた血を拭う。そして、近くの椅子を引き寄せて自身の隣に置くとサムスを呼んだ。
「なんだ?」
そこにサムスが座ると、あなたはリトルリバイアサン号のブリッジから先ほど半分だけ飲んでいた酒瓶とふたつのグラスをテレポートさせる。
そして、両方のグラスに酒を注ぐと片方をサムスの前に掲げた。
「なんのつもりだ……?」
それはもちろん、サムス・アランが実戦でも特に問題なく動くことが出来たという小さな快気祝いのようなものである。
多少、
「そういうことなら……」
サムスはパワードスーツを解除すると、あなたの手からグラスを受け取る。そして、互いに乾杯をする。
直ぐに彼女は中身をちびちびと飲んでいるが、度数の高いものなため、それぐらいの方が楽しめるであろう。
「ああ……チクショウ! なんたってこんな……」
するとブリッジの入り口で声がしたため、そちらを見れば、そこには全身に爆弾を巻き付けたスペースパイレーツの生き残りの姿があった。
どうやらあなたを見た時点でブリッジから逃げ出していたが、E.M.M.I.に追い立てられでもして、最終的に覚悟が決まって死兵と化したのだろう。
纏っている爆弾の量と、それに付いた剥き出しのラベルを見る限り、ブリッジを丸々消し飛ばすには十分な量であった。
動力炉辺りで勝手に自爆していれば、少なくともあなたに船を拿捕されるような事はなく逝けただろうにと溜め息を吐き、船長椅子の背凭れに寄り掛かる。
「うるせぇ! テメェも道連れに――」
あなたはグラスを持っていない片腕をスペースパイレーツへ向け、"プラズマビーム"を放った。
「ぁ――」
生体エネルギーのブーストにより、瞬時にチャージを終えて放たれた赤と黒の極光は、スペースパイレーツの大きさを遥かに超えており、その全身を呑み込むと爆弾ごと跡形もなく消し飛ばす。
掲げたあなたの片腕からは僅かに残った光が漏れ消え、今の光景と感覚を余韻にあなたはグラスを一気に飲み干した。
「お前……本当に強かったんだな」
あなたが居たためかパワードスーツを着る様子もなく、酒を自分で注いでまたちびちびと飲みつつ眺めていたサムスはそんな事を言う。
どうやらサムスが来てからほとんど口にしていなかったため、酒が弱いのではないかと疑われていたらしい。完全にあなたの偏見だが、軍人には下戸か上戸しかいないため、日頃から飲んでいなければそう思われるのも仕方のない事だ。
「いや、そうではないのだが……む?」
あなたがリトルリバイアサン号の厨房から加工肉類のツマミと他の酒をテレポートさせて机に置くと、サムスはそちらに目線が釘付けになった。
そして、空き掛けの彼女のグラスにあなたが酒を注ぐと、彼女は少し頬を緩ませる。
「…………(ちびちび)」
こんなことをしている光景を部隊達に見られたらそこそこ驚かれそうだ等と思いつつ、徐々に力を取り戻す彼女にあなたは想いを馳せ、自然と笑みを浮かべるのであった。
~簡易登場人物紹介~
あなた
俺はバウンティハンターだ……誰が何を言おうとバウンティハンターなんだ……
それ
元スペースパイレーツ(支配種)
サムス
~本日のキルスコア~
それ:78
E.M.M.I.:49
サムス:13
ベビーメトロイド
今日は少しお出かけしてごはんをもらった。うれしい
エミー
おしごとたのしい
ナイトメア
普段は格納庫の隅に転がっている
リドリー(故人)
あなたが殺せなかったので彼の勝ち逃げ
銀河連邦上層部
頭おかしいよこの人……(小声)