【完結】色づく想ひ    作:ワンダーS

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どうも、作者です。


個別:百鬼 4

 

 キョウノミヤコから帰ってきた後、夕食を食べ終えてからシラカミ神社の自室にて習慣の刀の手入れを行っていると、不意に襖がノックされた。

 

 普段は誰かが部屋に来ることは少ない。

 白上がゲームでも誘いに来たのかと適当に当たりをつけつつ刀を鞘に納めて、腰を上げる。

 

 「はいはい…、って、百鬼か。

  どうしたんだ?」

 

 襖を開ければ、目の前に立っていたのは白髪の赤い鬼の少女の姿。

 こんな時間に部屋に来るとは珍しい、と思わず彼女をじっと見つめてしまう。

 

 「今からみんなで銭湯に行くから透くんも呼びに来たんだよ。」

 

 「銭湯?

  揃っていくのは珍しいな。」

 

 このシラカミ神社には風呂は無いため基本的に近くの村にある銭湯を利用するか、裏の水場で水浴びをすることが主になっている。

 しかし銭湯に行くにしても、全員で行くというのは案内して貰った時くらいのものだ。二人、三人で行くこともあるが、それ以外はそれぞれが好きな時間に行くことが多い。

 

 というか俺の場合は道中が同じだけで、どうせ一人になるのだからあまり変わらないのだ。

 

 「なんだかね、色々とひと段落ついたからみんなで疲れを取りに行こーって、ミオちゃんが。」

 

 「あぁ、そういう事か。」

 

 なにせ。セイヤ祭に調査と昨日だけで大きな問題が二つも片付いたのだ。

 特に調査についてはふた月以上前から取り組んでいたこともあり、達成感は一際だが疲労もまた同様だ。

 

 「分かった。

  俺も銭湯には行こうと思ってたし、すぐ準備する。」

 

 それに、この時期の極寒の中での水浴びは流石に応える。 

 

 「じゃあ待ってるねー!」

 

 了承すれば百鬼はパタパタとその場を後にした。

 それを見送ってすぐにささっと外行きの準備を整えて、荷物を持って部屋を出る。

 

 足早に玄関から外へ出れば、既に三人とも荷物を持って待機していた。

 

 「悪い、待たせた。」

 

 急いだつもりだったが一番遅れてしまったようだ。

 一応詫びを入れるが、全員気にした様子も無い。 

 

 「そんなに待ってませんから、気にしないで下さい。」

 

 「あはは、急な話だったし仕方ないよ。

  それじゃあ、透君も来たことだし。しゅっぱーつ!」

 

 「「「おー!」」」

 

 大神の号令に合わせて上げられた声が重なり、シラカミ神社の境内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 近くの村まではさほど離れておらず、歩いても十分行ける距離だ。

 そのため走ればものの数分と掛からずたどり着けるのだが、別に急いでいるわけでも無いためゆっくりと歩いていく事になった。

 

 「ところで白上、昨日は結局屋台を回り切れたのか?」

 

 とはいえ、勿論ただ歩くだけではなく雑談を交えながらだ。

 ふと気になっていたことを聞いてみれば、鼻歌交じりに歩いていた白上は獣耳をペタリと垂れさせて露骨に落ち込んでいく。その反応だけでも、十分に結果は伺えた。 

 

 「…駄目だったんだな。」

 

 「はい、九割がたは回り終えたんですけど…あと少しの所でタイムオーバーでした。」

 

 無念です、と肩を落とす白上。

 しかし、一日でキョウノミヤコの屋台を九割も回ったという事実は何よりも強烈であった。

 

 「それでも九割は回ったんだ…。

  フブキちゃんのお腹どうなってるの?」

 

 「もう、あやめちゃん。

  恥ずかしいからあんまり見ないでくださいよ。」

 

 目を丸くして白上の腹部を凝視する百鬼に、さしもの白上も恥ずかしいのかほのかに顔が赤くして腕で腹を隠す。

 

 「けど、ウチも気になってたんだよね。

  フブキって普段は大食いじゃないのに、食べるとなったらいくらでも呑み込んでいくんだから。ミゾレさんもよく首を傾げてるよ。」

 

 「やっぱり、カクリヨでも異常ではあるんだよな。」

 

 ミゾレ食堂。

 シラカミ神社ある山の麓にある食堂で多種多様のヒトやアヤカシ、カミが集まっているらしいが、それを見てきているミゾレさんでも白上の生態は理解できないらしい。

 

 「フブキちゃんのお腹、どこかに繋がってたりして。」

 

 「それ白上的には軽くホラーなんですけど。」

 

 「確かに怖いかも。」

 

 「謎の空間か…。」

 

 揃って自分の胃が知らぬうちに謎の空間に繋がっていることを想像して、確かにそれは怖いと意見が一致する。

 どれだけ強大な力があっても、未知の力には対抗できないものだ。

 

 「…怖いと言えば、夜の山は特に問題ないんだな。」

 

 「何がですか?」

 

 ふと思い立って口にしてみれば、キョトンと白上は聞き返してくる。

 そんな白上と続いて大神を見て、次に辺りの暗闇の森へと視線を移す。

 

 「いや、幽霊とか。

  夜の山奥とか如何にも出てきそうだろ?」

 

 というのもカクリヨに来た当初、キョウノミヤコで骸骨の霊が出ると噂になった時があった。

 その際に白上と大神がホラーが苦手であることを知り、代わりに俺が深夜に街を調査することになったのだ。

 

 雰囲気的にはあまり大差ない、むしろ此処の方が条件としては整っていると思うのだが、やはり霊の噂の有無がその辺り影響しているのかもしれない。

 

 「「…。」」

 

 特に気にした様子も見えなかった理由について考えていると、急に白上と大神は無言のままピタリとその場に立ち止まった。

 

 「…ん?」

 

 「フブキちゃん、ミオちゃん?」

 

 釣られて足を止めて振り返れば、そこにはピクリとも動かず立ち尽くす白上と大神の姿。

 百鬼が声を掛けるも、それに対する応答も特にない。

 

 思わず百鬼と目を見合わせていれば、不意に一陣の風が吹き周囲の木々がざわめいた。

 その瞬間、白上と大神はびくりと身を震わせ、目にもとまらぬ速さで近づいてくる。

 

 「ななな、何でそんなこと言うんですか!」

 

 「言われたら意識しちゃうでしょ!」

 

 詰め寄ってきた二人は顔を青ざめさせて、声を震わせながらがくがくと体を揺さぶってくる。

 

 「ま、待て、世界が揺れる…。」

 

 尚、余裕が無いためか完全に手加減など考えていない模様で、簡単に頭が上下左右へと振り回された。それに伴い、視界に映る景色は目まぐるしく変化していき、三半規管は完全に狂わされてしまう。

 

 軽い気持ちで踏み入った地獄はしばらく続き、ようやく解放された俺は地面へと崩れ落ちた。

 

 「…透くん、大丈夫?」

 

 両手をついて揺れる視界と戦っていると、頭上からそんな百鬼の声が聞こえてくる。

 

 「大丈夫…だけど三分休ませてくれ。」

 

 「うん、大丈夫じゃないんだね。」

 

 結果、四名中三名が顔を青く染める事となった。

 ここで、しばらく銭湯への行軍は停滞することとなる。

 

 少し時間が経って幾らかめまいも収まってきて体を起こせば、未だ顔を青くしたままの二人は身を寄せ合っていた。

 

 「ミ、ミオ、手を、繋ぎませんか?」

 

 「ウチも、繋ぎたいって思ってた。」

 

 震え声で互いを慰める様は何処か幼さを感じさせて、同時に二人がどれ程苦手に思っているかがひしひしと伝わってくる

 

 「…あれ、百鬼?」

 

 と、同時に視界に映る百鬼だったが、その顔に浮かぶ笑みは悪戯心に満ちていた。

 その視線は二人固まっている白上と大神に向けられていて、それを見てすぐに百鬼が何をしようとしているのかを察する。

 

 「…ちょっとだけだから。」

 

 百鬼はこちらへ向いて人差し指を口の前に立てるとこそりとそれだけ言い残して、改めて白上と大神居る方向へと向き直る。

 彼女はタイミングを計るようにじっと二人を見つめ、そしてぐいとその手を動かした。

 

 すると大神の丁度後ろ辺りに虚空から鎧をまとった腕が生えてきて、ちょいちょいと二人の肩を叩いた。

 

 「あやめちゃんですか?

  今はあんまり余裕が無くて…。」

 

 「余、ここに居るよ?」

 

 震えながら応える白上。

 しかし、百鬼の姿が確かに目の前にある事に気が付いて彼女はその口を噤んでしまう。

 

 「じゃ、じゃあ透君かな。

  このくらい、ウチにはお見通し…。」

 

 「俺もこっち側だ。」

 

 白上の後を継ぐように空笑いを浮かべる大神だったが、しかし、俺も百鬼の傍にいることを確認するとすぐに黙り込んでしまう。

 

 「「…。」」

 

 俺と百鬼ではない、白上と大神は互いに手を繋いでいて不可能。

 それを理解した二人は油を刺されていないブリキ人形の様にぎこちない挙動で後ろを振り返り、そして、未だそれぞれの肩に置かれている宙に浮く腕へと視線を向けた。

 

 「にゃああああ!!?」

 

 「いやああああ!!?」

 

 続いて暗闇に鳴り響く悲鳴。

 腕から逃げる様に地を這いかけながら二人は凄まじい速度で背へと回り込んでくる。

 

 「人を盾にするな盾に。」

 

 これの何処がちょっとなのだろうかと思いつつ百鬼へと視線を向けて見れば、彼女はさもご満悦といった風にひとり爆笑している。

 

 「あ、あやめっ!

  こんな事する子に育てた覚えウチには無いよ!?」

 

 「もう、あやめちゃん!」

 

 流石にここまであからさまだと気付かれる。

 二人からの震え声での抗議を受けた百鬼は、笑い過ぎて浮かんだ目元の涙を指で拭った。

 

 「ごめんなさーい。」

 

 ちろりと小さく舌を出しながら百鬼は謝るが、確実に反省していない彼女の様子に白上と大神はぷくりとその頬を膨らませる。

 当然、それだけで収まるはずも無く。直に落ち着きを取り戻した二人に百鬼は襲い掛かられ、もみくちゃにされてしまった。とはいえ百鬼も楽しそうなため、しばらくは放っておくことにする。

 

 「人を揶揄う悪い子はこうですよ!」

 

 「あやめー、覚悟してね?」

 

 「あははっ!フブキちゃん、ミオちゃん、許して…!」

 

 結局、百鬼が解放されたのはそれから数分程経過した後であった。その間、絶え間なく二人からくすぐられ続けていた彼女は息も絶え絶えになりながら、よろよろと崩れ落ちていった。

 

 「天誅です。」

 

 「次やったらこの程度じゃすまないからね。」

 

 「は、はーい。」

 

 やり切ったとばかりに胸を張る白上と大神を前に、笑い疲れている百鬼は気の抜けた声で返す。

 

 短い道中で恐らく普通に歩いていれば既に到着している時間帯だろうに、まだ道は半ば。

 最近はセイヤ祭の準備に追われていてそれどころではなかったこともあり、久しぶりの和やかな空気に皆何処か浮足立っていた。

 しかしそれとこれとは話が別なようで、落ち着いたら暗闇に恐怖を思い出したのか、白上と大神は再び互いに引っ付き合う。

 

 「これから夜に銭湯行けないです…。」

 

 「ウチも、しばらくは夕方に行く。」

 

 二つの恨みがましい視線が飛んでくる。

 急に矛先がこちらに向き始めたことに思わず苦笑いを浮かべつつ、手を合わせる。

 

 「いや、あまりに普通にしてたもんだから気になったんだよ。

  悪かったって。」

 

 まさか意識の変化だけでここまで影響が出るとは予想できなかったのだ。

 唸り声を上げる二人を宥めながら、何時までもここで立ち止まっている訳にもいかないと、歩みを再開する。

 

 「にしても、そんだけ力を持ってるのに幽霊は怖いんだな。」

 

 カミともなればそれこそ敵なしとでも言うべき存在であるにも関わらずこの怖がりよう。

 そんじょそこらの幽霊など軽く対処できるだろうに、むしろ幽霊の方から逃げていきそうなものだが。

 

 「はい、それはもう。

  いくら力があっても怖いものは怖いですよ。」

 

 そこだけは譲れないようで白上は若干食い気味に応える。大神も、それに同調するように強く頷いていた。

 

 「まぁ、普通そうだよな。」

 

 いくら強大な力を持っていても彼女らはあくまで同じ心を持つ、苦手なものもあれば、好きなものもある人間なのである。高位的な存在とはいえ、心は何処まで行っても平等だ。

 それを今、再確認した。

 

 「透くんは何か怖いものはあるの?」

 

 「俺か?

  んー…。」

 

 百鬼から改めて問いかけられて考えてみるが、中々これといったものは出てこない。一応それらしいものは無いことは無いが、恐怖を覚える程かと言われると頷きがたい。

 

 「特には思い浮かばないな…。

  そう言う百鬼は何かあるのか?」

 

 この中で誰が一番強大な力を持っているかと言えば、それは間違いなく百鬼だ。そんな彼女にも恐怖の対象はあるのだろうか。

 

 「うん、あるよ。」

 

 そんな問いかけに対して、百鬼からは驚くほど速く答えが返ってくる。

 だが、そんな彼女に覚えた違和感に思わず足を止めそうになる。

 

 「多分、これだけは一生克服できないと思う。」

 

 「…そうか。」

 

 続けざまに応える百鬼の雰囲気はこれまで見てきた彼女のそれとは明らかに違っていて、内容について聞くことなど到底できず、俺はただそう相槌を打つことしかできなかった。

 彼女にこうまで言わせるものに興味はある、しかし、これは簡単に立ち入って良い問題でもなさそうだ。

 

 「…ねぇ、あやめ。

  あのシキガミは何時になったら引っ込めるの?」

 

 「?…あ、忘れてた。」

 

 一瞬何のことかと視線を巡らせる百鬼だったが、大神の指さす方向を辿っていくとそこには確かに先ほど百鬼が二人を驚かすために使用したシキガミがふよふよと腕だけのまま宙に浮いていた。

 

 「びっくりした…、一瞬本物かと思った…。」

 

 百鬼がシキガミを戻すと、大神は小声で呟きながら明らかにほっとしたように胸を撫で下ろしていた。確かに誰も意識を向けていない中あれ単体を見つけてしまえば驚きもする。

 

 「そのシキガミ、腕のみのシキガミなんですか?」

 

 「ううん、一応足も体もあるよ。

  頭は無いけど。」

 

 「…もしかして、さっきのちょっとって腕だけって意味じゃないよな。」

 

 「…あ、見えてきたよ!」

 

 ふと思い至って口に出してみれば、しかし百鬼は聞こえなかったふりをして前方を指さして誤魔化すように声を上げた。

 本当にそういう意味だったらしい。

 

 声に釣られて前を見てみれば、提灯に明るく照らされた村の入り口が見えた。規模は小さいながらも住居は多く、その分住人の多さもうかがえる。

 

 村に入り、しばらく進んでいればすぐに目的であった銭湯に辿り着いた。人口が多いこともあってか村の銭湯はかなりの村で一番とも呼べる大きさを誇っている。

 

 「それじゃあ透くん、また後でね。」

 

 「あぁ、後で。」

 

 混浴という訳でも無いため二つの入り口の前で三人とは別れる。

 何処か寂寥感が胸に灯るが、こればかりは仕方ないと割り切って一人暖簾をくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入浴を終えて再び暖簾を潜って出て来てみるが、一足早かったようで三人の姿はまだ無かった。

 一人、途中で住人にもらったフルーツ牛乳を片手に待っていれば、さほど時間も掛からず三人も出て来て合流する。

 

 「…また同じ道を通るんですよね。」

 

 「頑張ろう、フブキ。」

 

 若干二名ほど必死の決意を固めつつ行きと同様に雑談を交えつつ帰り道を歩く。

 その道中、時折木々のざわめきに驚く二人に比べて、百鬼は行きに比べて何処か落ち着いているように見えた。

  

 不思議に思い百鬼の方へ眼を向けて見れば、彼女の眼は細められていて、如何にも眠たいですと言った風貌だ。

 

 「百鬼、眠いのか?」

 

 「ううん、眠くない。…ちょっと瞼が重いだけだから。」

 

 「それを眠たいって言うと思うんだけどな…。」

 

 謎の見栄を張ろうとする百鬼に思わず苦笑いが浮かぶ。

 もしかすると広い湯舟に浸かって今までの疲れが出てきたのかもしれない。

 

 「…おんぶでもするか?」

 

 「透くん、余は子供じゃないから。

  ちゃんと一人で歩けるから…。」

 

 そう言っている内にも彼女は舟を漕いでいて、今にも意識を手放しそうに見えた。ふらふらと道を逸れて行ってしまいそうではらはらとしながら、そんな彼女を見守る。

 

 「そうか?

  まぁ、限界そうなら言ってくれよ。いつでも背負うから。」

 

 「…うん。」

 

 一応伝えておいたが百鬼が声を掛けてくることは無く、無事にシラカミ神社へと到着した。

 神社へと辿り着くや否や、白上と大神はまるで登山で頂上まで昇り切ったかのような見事なガッツポーズを決めていた。

 

 玄関から室内へと入るが、この頃にもなると百鬼の眠気もピークを迎えていた。

 

 「あやめちゃん、大丈夫ですか?」

 

 「ウチが部屋まで送ろうか?」

 

 「大丈夫だよ。

  ありがとうフブキちゃん、ミオちゃん。」

 

 心配そうに提案してくる二人に、けれど百鬼はふにゃりとした笑顔でやんわりと断る。

 

 「うーん、そうですか?

  …では、白上は自室に戻りますね。」

 

 「じゃあウチも部屋に戻るね。おやすみあやめ、透君。」

 

 本人がそう言うならと、二人はそのまま歩いて行ってしまう。

 その背を見送ってから、改めて百鬼へと向き直った。

 

 「俺も部屋に戻るけど、百鬼はどうする?」

 

 「余も、お部屋に戻る。」

 

 と、いう事なので今日はここで解散することとなった。

 どう見ても今の百鬼は眠気に飲まれかけているため、これが一番良い形の筈だ。

 

 途中までは同じ経路な為二人で通路を歩く。

 自らの部屋へとたどり着けば、百鬼へと軽く声だけかけて自らの部屋へと入った。

 

 今日は朝からキョウノミヤコに赴いたりと動き回っていた。その為か百鬼程ではないが、少なからず俺自身眠気は感じていた所だ。

 

 飯を食って、風呂に入って。

 後は暖かい布団にでも包まれば一日は至高の終わりを迎えるだろう。

 

 「…よし、じゃあ寝るか。」

 

 「うん、余も寝るー。」

 

 返事の無い筈の独り言に返事があった。

 その事実に一瞬思考を停止させつつ、後ろを振り返ればそこには先ほど別れたはずの鬼の少女が立っていた。

 

 

 




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