【完結】色づく想ひ    作:ワンダーS

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どうも作者です。

感想くれた人ありがとうございます。

以上


占い

 

 目を覚ますと、まだ日も登っていない早朝だった。

 

 やってしまった、どうせならもう少し寝ておけばよかった。

 しかし、寝ようにも眠れそうにない程には目が覚めてしまった。

 

 仕方ない、外に出て刀でも振っておこうか。

 

 そう思い、階段を下りていると、とんとんと、音が聞こえてくる。

 

 何の音だろうか、キッチンの方から聞こえてくる。

 

 覗いてみると、大神が朝食を作っているところだった。

 

 「大神、おはよう」

 

 「わあ!?びっくりしたー。

  って、透くんか。おはよう、朝ごはんはもうちょっと待ってね。」

 

 耳をぴんと立ててこちらを振り返ると、笑顔を返してくれる。 

 朝から穏やかな笑顔に癒される。

 

 割烹着を着ており、何故か無性に似合っている。

 

 それにしても、こんな時間から準備してくれていたのか。

 

 「なぁ、大神。俺も手伝ってもいいか。」

 

 「え、いいよいいよ、座って待ってて。」

 

 手をパタパタとさせながら断られるがそう簡単に引き下がるわけにもいかない。

 

 「手持ち無沙汰なんだ、何かさせてくれると助かる。」

 

 「んー、…じゃあ、お願いしようかな。」

 

 何とか許可をもらうことに成功する。 

 よかった、これで断られたらどうしようかと。

 

 しかし、毎日四人分の量を一人で作っているのだと思うと大神には頭が上がらない。

 

 「それで、何をすればいい?」

 

 「えっとね、そこのジャガイモの芽をとって皮をむいてくれる?」

 

 「了解」

 

 それからは黙々と包丁を持ちジャガイモやほかの野菜たちの皮をむいていく。

 

 やはり毎日作っているだけあり大神の手際はよく、日が昇りだすころにはあらかたの仕込みは完了してしまった。

 

 「透君、ありがとね。いつもより早く終わったよ。」

 

 「いや、野菜の皮むきしかできなかったし。それより、大神の手際の良さに驚いたよ。」

 

 「それほどでもないけどね。…じゃあ、うちはそろそろ二人を起こしてくるよ。」

 

 そう言って、フライパンとお玉を持つと出て行ってしまう。

 …いつもなら、そのメンツの中に俺も入っているんだよな。

 

 今朝はたまたま早く起きて大神の手伝いをしたが、有意義な時間を過ごせた。

 

 これからも、同じ時間に起きてみようかな。

 

 心の中で呟くと同時に、けたたましい音と、二つの悲鳴が上がった。

 

 

 

 

 「あ、透くん。こっち来て―」

 

 朝食の後、キッチンの前を通りかかると大神の声が聞こえる

 

 どうしたのだろうか、言われるがままにキッチンへと入る。

 

 「ごめん、これ上の方に置いて欲しいんだけど、いいかな。」

 

 その手には少し大きめの箱がある。

 

 「いいけど、なんだこれ?」

 

 持ってみると、大きさの割にそこまで重くない。

 

 「フブキのお菓子。」

 

 即答されたその言葉に、反射的に目をそらす。

 

 あー、そっか、お菓子なんだこれ。

 

 先日のお説教が脳裏に浮かぶ。あれはもう経験したくないな。足のしびれが酷かった。

 大神は、ニコニコしながらこちらを見ている。

 

 わかってます、言いませんし取りません。 

 

 上の棚に箱をしまうと、扉を閉じる。

 この高さだと確実に白上では届かない。

 

 「いやー、まさか透くんがねー。

 

  信じてたのになー。」

 

 からかうように言ってくる大神に両手を上げ降参のポーズをとる。

 意外と意地の悪い面もあるな。

 

 勘弁してくれ。

 

 「ごめんって、反省してます。」

 

 「ふふっ、よろしい。」

 

 笑う大神。

 

 根に持っているわけではないらしい。

 

 しかし、本当にいいやつなんだなと思う。話していて飽きないというか、大神に限らないが気まずくなることがない。

 

 特に、大神は実家のような安心感がある。

 

 「あ、そうだ、透くん占いに興味ある?」

 

 唐突に大神が聞いてくる。

 

 その眼は何かに期待しているように輝いている。

 特に興味があるわけではないのだが、そんな目をされれば、正直に告げるわけにもいかない。

 

 「…あぁ、少しだけど」

 

 頷いて見せると大神は嬉しそうに「少し待ってて」とどこかへ行ってしまう。

 

 時間もかからず、大神はすぐに戻ってきた。

 

 その手には何かのカードの束と、何故か黒いローブを羽織っている。

 

 「お待たせしました。それでは、そちらにおかけください。」 

 

 「は、はい。」

 

 リビングのテーブルに座ると妙に芝居がかった口調で大神が喋る。

 

 何かが始まってしまった。とりあえず、付き合うしかなさそうだ。

 

 「それでは、ちょっと先の未来から三段階で占ってみましょうか。」

 

 すると、カードを裏向きのままテーブルに置くと崩して山にして混ぜだした。それをまとめると三つに分けてさらにカットする。

 

 「では、三枚ほど引いてみてください。」

 

 大神はそれを扇状に広げる。

 

 言われるがままにタロットを引いてみると、促されてそれをテーブルに裏向きのまま置いた。

 

 出てきたのは、運命の輪と、恋人、逆向きの死神だった。

 

 「あ、これはいいカードですね。

  透くん、あなたは近いうちに幸運がもたらせる、もしくは出会いがあるかもしれません。もしかすると、もう出会っているかも。

  そして、その人と愛をはぐくみ、新しい道を歩み始めるでしょう。」

 

 割と幸先の良い結果に少しホッとする。

 

 ここで、あなたの行く先は困難にまみれていますなんて言われなくて良かった。

 別に占いを信じているわけではないが、そういわれると不安になってしまうのが人間というものだ。

 

 ふと、大神がこちらに視線を向けていることに気が付く。

 

 「ん、顔になんかついてるか?」

 

 「…いや、ちょっと気になることがあっただけ、気にしないで。」

 

 そういうと大神はタロットカードへと視線を戻す。

 

 大したことでないなら、まぁ、いいか。

 

 「それにしても、見事にいいカードばっかりだねー。

  うちもこんなに良い引きはあんまり見ないよ。」

 

 「死神が出たときはちょっと怖かったけどな。

  逆向きっていうんだっけ、意味合いが反対になるやつ」

 

 そんなことを一時期調べていた気がする。

 

 記憶の抜けどころは相変わらず謎のままだ。

 

 「そうそう、よく知ってるね。死神の場合は再スタートとか復活、再生だね。

  今回の場合は前後の兼ね合いもかねて新しい始まりっていう解釈だよ。」

 

 割と奥が深いんだな。ただ、カードの意味を伝えるだけじゃないというのも面白い。

 

 「ありがとう、大神。かなり参考になったよ。」        

 

 「どういたしまして、こちらこそ付き合ってくれてありがとうね。」

 

 大神はローブを脱ぐと背もたれにかける。

 

 正直占いにはあまり興味がなかったが、実際には割と興味深かった。

 何だかんだで楽しめるもんだな。

 

 それにしても、愛をはぐくむなんて想像もできないな。

 どちらにせよ、俺は記憶を取り戻して、元いた場所に戻るんだ。

 恋人を作ったところで…

 

 そこまで考えて気が付いた。

 

 今まであいまいに考えいてたが、俺は元居た場所に戻ってどうするのだろうか。

 

 記憶を取り戻してこの世界から出ていく。

 ここに来た当初ならばそんな目標を立てていただろうが、今はどうだ。

 

 (…やめだやめ、考えたって答えは分からないさ。)

 

 思考を強制的に止める。

 そうだ、まずは何よりカクリヨの異変だ。これを何とかするのが最優先だ。

 

 それからのことは、その時考えればいい。

 

 「お茶入れるけど、透くんも飲む?」

 

 「あぁ、貰うよ。」

 

 思考を切り替えるにはちょうどいい。

 

 そう返事をすると、大神はキッチンへ行き、しばらくして、湯呑を二つ持って戻ってくる。

 

 「はい、どうぞ。」

 

 「ありがとう。」

 

 二人でまったりとお茶を啜る。

 

 穏やかな時間が流れる。

 ただ、この時間が続けばいいのにと、思わずにはいられないほどには充実しているのは確かだ。 

 大神もリラックスしているのか、耳がだらりとしている。

 

 「…平和だねー」

 

 「本当、…平和だなー」

 

 和んでいると言いたくなるランキング一位の言葉を二人して呟く。

 

 こうして、二人のまったりとした時間はゆっくりと過ぎていった。 

 

 

 





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