どうも、作者です。
いつしか聞き慣れた住人達の喧噪の中を、百鬼、白上と共に歩く。朝食後、俺達は早速キョウノミヤコへと繰り出していた。目的は食料の調達。三食うどん生活だけは回避せねばなるまいと、俺も百鬼も確固たる決意を持ってここに立っていた。
「むしろ三食うどん生活が良いんですけど。」
「白上は静かにしててくれ。」
「フブキちゃんは静かにしてて。」
狂気的な希望をしてくる白上に対して百鬼と口を揃えて言えば、白上はしゅんと静かになってしまう。この件に関する彼女の物差しは当てにならない、いや、当てにしてはならない。そんなことをすれば最後、遠くない未来に食卓が地獄へと姿を変えるだろう。
「でも、うどんと言っても色々種類があるじゃないですか、鍋焼きとか、肉うどんとか。その辺りをローテーションで回せば…。」
未だ諦めきれないのか白上は必死にそんな提案してくるが、百鬼はすぐにその首を横に振って口を開いた。
「フブキちゃん、そうしようにも今は材料が無いから素うどんかきつねうどんしか出来ないよ?」
「そんなことになったら俺は三日でミゾレ食堂に逃げ込むぞ。」
割と実現しうる未来を想像して思わず苦々しく顔が歪む。
「あ、でも一応三日は大丈夫なんですね。」
「そりゃうどんは俺も好きだし…けど、物事には限度があってだな。」
別に肯定的な意見をしている訳では無いから期待に染まった眼をこちらに向けないで欲しい。キラキラとした視線を右から左へ受け流して、これ以上この話題が続かないよう祈る。幸い白上もその辺りは理解しているようで、食い下がってくることもなかった。
キョウノミヤコで食料の調達をしようと思えば、当然以前と同じ通りへと出る。ずらりと道の脇に並ぶ露店には変わらずに様々な食材達が並んでいた。
しかし以前の様に物珍しさを感じる事は無い。ふと目に入ったあの果物はこんな味でケンジが好んでいた、その時にこんな事があった。そんな思い出が連なって思い起こされる。
「…透くん。」
ふと横から呼びかけられて視線を向ければ、百鬼が心配そうにこちらへ覗き込んでいた。どうやらいつの間にか考え込んでしまっていたらしい。
「大丈夫?」
「…あぁ、大丈夫だ。」
そう問いかけてくる百鬼に笑みを浮かべて無事をアピールする。自分で思っている以上に引きずっているようだ。何せまだ昨日の出来事だ、人間はそんな短期間で心の整理がつく程単純にはできていない。後悔があるなら尚更に。
「それより食料だよな。まぁ、俺は荷物持ちくらいしか出来ないけど。」
「ん、必要なものを見繕うのは余に任せて。」
頼り甲斐のある彼女についひれ伏したくなるがここはグッと堪えておく。本当に彼女が居てくれて良かった。
「…あの、お二人とも白上のこと忘れてませんか?」
「ん?」
「え?」
ふと後ろを振り返ればしょぼんとした様子でこちらを見ている白上の姿に、そう言えば三人で来ているのだったと思いだす。
「え、あ、いや、そんなことは無いぞ。な、百鬼。」
「ごめんフブキちゃん、余ちょっと忘れてた。」
「おい、百鬼?」
慌ててフォローしようと百鬼へバトンを繋ぐも、そのバトンはあらぬ方向へと投げ飛ばされてしまう。正直は美徳とも言うが時と場合によっては優しい嘘も必要で、今は正にその瞬間であった。
「わーん、透さんとあやめちゃんの馬鹿ー!!!」
案の定、それを受けた白上は涙ながらにそんな捨て台詞を置いて何処かへと走り去ってしまった。俺も百鬼も遠ざかっていくその背をただ呆然と見送る。
「フブキちゃん、行っちゃったね。」
「まぁ、最後は百鬼がトドメ刺したんだけどな。」
チラリと視線を向けて見るも百鬼は何のことか把握できていないようで、こてりと小首を傾げていた。とはいえ、存在を忘れていたという点では俺も同罪だ。帰ったら少し優しくしてやろう、昼食もうどんが良いかもしれない。
白上の行方は知れないがその内帰って来るだろうと、二人で通りを進む。
「おーい、兄ちゃん!!」
すると、ふとそんなこちらへ呼びかける聞き覚えのある声にびくりと体が震えた。声の出どころへと目を向けてみれば、大きく手を振る中年の男性の姿。彼はそのままこちらへと近づいてくると、百鬼に目を向け、次にキョロキョロと何かを探すように視線を下げる。
「おっと、今日は二人だったか。あの子は留守番、いや、遊びに出てると見た。あのくらいの子は遊び盛りだからな、すぐに何処かへ出かけちまう。」
「…えぇ、そんな所です。また看板ですか?」
邪気の無い男性にそう言われて一瞬言葉が詰まるが、予想はできていただけに、そこまで不自然なく笑って返答できた。この人とは会うたびに看板を運ぶ事が多いため、どうにも看板の人というイメージがついてしまっている。
しかし今日のところはそういう訳でも無いようで、男性は「あぁ、違う違う。」と、豪快に笑いながら手を横に振る。
「最近キョウノミヤコに居るようだから、もしかしたら渡せるんじゃないかってな。ほい。」
そう言って男性が手渡してきたのは大きな袋。見た目よりもずっしりとしたそれを、あまりに突拍子も無く渡されるものだからつい困惑してしまう。
「これは…。」
「前に奉納品に油揚げを大量に加えておくと言っただろう。けど奉納品の量も限られてて、どうせなら兄ちゃんたちに直接渡しておいた方が良いと思ったんだ。」
それでわざわざ探してくれていたようだ。そう言えばそんなこともあったと思い出しながら、男性へと頭を下げる。
「ありがとうございます。」
「いやいや、礼を言うのはこっちの方だ。兄ちゃんに言われたらわしの立つ瀬がない。」
それからしばらく話した後男性は去って行き、去り際にはこちらに大きく手を振っていた。こうした短いやり取りの中でも、彼の人柄の良さは十分に感じ取れた。いや、彼だけではない。この街の住民は誰も同じように人が良い。それだけに、ケンジが孤独となっていた事がどうしてもやるせなく感じた。
(…これじゃ、ただの八つ当たりだな。)
どうにも思考が偏る。傍から見て見れば今の俺は酷く醜く映る事だろう。
引っ掛かりがあるのだ。心の奥底にのどに刺さった魚の骨の様に取れない、大きな引っ掛かりが。幾ら呑み込もうとしても、その引っ掛かりが幾度となく邪魔をする。
あまりにも目に余る自分の弱さに自己嫌悪に陥っていると、ふと先ほどまで隣にいたはずの百鬼の姿が見当たらないことに気が付いた。
「あれ、百鬼?」
その呼びかけに答える声は無い。辺りを見渡してみるがそれらしい姿は無かった。少し目を離した瞬間に何処へ行ってしまったのだろう。
白上に続いて百鬼ともはぐれた。どうしたものかと頭をかいていれば、ふと自らの持つ袋を見て名案が浮かぶ。思い立ったのなら即実行。袋の中の紙袋の一つを取り出して開ける。
すると、油揚げの香ばしい匂いがふわりと風に乗った。
「って、流石にこれで釣れるわけ無い…。」
「油揚げっ!!」
苦笑しながら袋を閉じようとしたところで騒がしく白上がその姿を現し、思わず言葉に詰まる。正直冗談半分で、まさか釣られて出てくるとは思っていなかった。にも関わらず本当に出て来てくるものだから、様々な感情が渋滞を起こしている。
しかし、彼女はそんなことお構いなしに鼻息荒くこちらへ詰め寄って来る。
「と、透さん、その油揚げは何処で!?」
「え?いや、街の人にさっき礼にって貰って…。」
「貰っ…!?」
余程の激情に駆られているのか、それ以降白上はぱくぱくと口を開け閉めしていた。
「もしかして、この油揚げの事何か知ってるのか?」
そんな彼女の様子を見ていれば、嫌でもこの油揚げに何かあると分かる。そう思い問いかけてみれば、白上はさらにそのテンションを上げて目をグルグルと回しながら説明してくれる。
「知ってるも何も、それはあの麵屋マボロシが独自の技術で作っている油揚げで、稀にしかお目にかかれない代物ですよ!そんなものを貰えるだなんて、驚きすぎて眩暈が…。」
「俺は匂いだけでそこまで分かる白上に驚きだよ。良いから一旦落ち着け。」
取り合えず白上に深呼吸をさせて落ち着かせる。一応彼女からは袋の中身が見えない筈なのだが、匂いだけでそこまで分かるものだろうか。
白上もようやく状況を整理できて来たのか、更に一つ息を吐いてこちらへ目を向ける。
「ふぅ、透さん、一体何をしたらこんなものが貰えたんですか?」
「俺も白上から聞いて初めて知ったよ。ちょっとした人助けの筈だったんだがな…。」
先ほどの男性の姿を思い浮かべながら呆然と呟く。こちらからしてみれば大したことの無い手伝いだったにもかかわらず大層なものを貰ってしまい、驚きと共に申し訳なさまで感じてしまう。
「今度改めて礼を言わないとな…。」
「その時はぜひ白上もご一緒させてください。」
まぁ礼を言われたところで先ほどと同じような反応をされそうだが、せめてまた困っているようなら必ず力になろう。と、二人決意を固めていれば、白上がきょろきょろと辺りを見渡しだす。
「あれ、そう言えばあやめちゃんとは別行動ですか?姿は見当たりませんが。」
「別行動というか、気づいたら居なくなってたんだ。その様子だと白上も居場所は知らないよな。」
もしかすると二人が合流していたかもと思い聞いてみるが、やはり彼女も知らないようで「はい。」と白上は答える。だがそうなると本格的に百鬼の行方が分からなくなった。こういう時占星術でも使えれば良いのだが、生憎と俺はそれに関してからきしで、白上も扱えないとの事。
つまりはお手上げだ。当ても無しにしらみつぶしで探し回るしか…。
「透くんただいまー。あれ、フブキちゃんもいる。」
と、足を踏み出した所で丁度百鬼が間延びしそう声で言いながら戻って来る。出鼻をくじかれ、少々崩れ落ちかけた。
「百鬼、どこ行ってたんだ?」
「えへへ、ちょっと気になるものがあったから。」
百鬼は誤魔化すような笑みを浮かべてそう答えながら、すっと自然な動きで何かを背に回す。気になるが、隠すという事は聞かれたくないという事だろう。
三人揃ったところで今日の目的の一つを果たそうと改めて通りを回り、持ち帰る荷物を順調に増やしていけば、すぐに両手が塞がってしまった。やはり肉類と比べると野菜は一つ当たりの体積が大きい分嵩張ってしまう。しかし、幸い持ちきれなくなるよりも先に調達しておきたかったものは集められた。尚、油揚げは白上が後生大事そうに抱え込んでいる。
「後はお肉とか、あんまり常温にしたくないモノだけ帰り際に調達するだけ。」
「分かった、なら一旦これだけ置きに行くか。」
そう言って、俺達が向かったのは昨日まで暮らしていた空き家。ここ以外に荷物を置ける場所が思い浮かばなかったためだ。
「透さんとあやめちゃんは、ケンジさんとここで暮らしてたんですね…。」
家を見て白上が呆然と呟く。彼女へは事情だけ話していたが、思えばケンジともあったことが無いのだったか。
「あぁ、とはいえ十日程度だったけどな。」
答えつつ玄関から中に入り、両手に抱えていた荷物を降ろす。白上も同様に油揚げの入った袋を置いた。
「それじゃあ荷物も置いたことだしそろそろ行くか。」
空き家を出てしばらく、俺達はキョウノミヤコの外れにある墓地へと足を踏み入れる。キョウノミヤコへ来たもう一つの目的、それがケンジに会いに来ることだった。
幾つも立ち並ぶ中、開いたロケットの引っさげられた墓はすぐに見つかる。近づいて行けば、ふとその前に花が添えられていることに気づいた。恐らくアヤカちゃんだ。昨日は取り乱していたが、今日も来てくれていたらしい。
「そちらがケンジさんの…。」
「うん、このロケットの写真の真ん中に映ってるのがケンジくんだよ。」
百鬼が説明すれば、白上はゆっくりと前に出てそっとロケットを手に取る。
写真の中のケンジは、直前に涙を流したために少し目元を少し赤く腫らしているが、そんなもの気にならないくらいに満面の笑みを浮かべている。
「…幸せそうです。」
「そうだな。ケンジはずっと、幸せそうにしてた。最期なんか目も見えなくて何も聞こえないのに、それでも幸せそうに笑ってた。」
思えば昨日の早朝だった。丸一日と少し、まだそれだけしか時間が経っていないとは信じられない。するりと力の抜けた手を、失われていく温もりを、俺は一生忘れないのだろう。
昨日の事を思い返していれば、とんっと軽い衝撃と共に右腕に重みが加わる。見てみれば、百鬼が立ったままこちらに寄りかかるようにしていた。その表情は見えないし、見ない方が良いのだろう。
そよ風が地面に生える草花を揺らす。暫く、そのまま静かな時間が流れた。
「ケンジさんは、どんな方だったんですか?」
ゆっくりとロケットを元の場所に戻した白上は視線をそのままにそう問いかけてくる。どんな子だったのか、あらためて問われると、少し返答に迷う。
「…一番は、大人びた子だったよ。良く気が付いて、他人の事を考えてた。」
考えを纏めながら口を開き、そう答える。最初の出会いからそうだった、ケンジは周りの子の事を考えて行動していた。背景の事を考えれば一概に良いこととは言えなかったが、しかし行動自体は立派だった。
「それに…。」
と話しかけた所で、空から何か舞い降りて来てケンジの墓の上に着地した。それは小さな鳥の姿をしていて、見覚えのある無害そうな瞳をこちらへと向けている。
「…ちゅん助?」
名を呼べばその小鳥、ちゅん助は元気よく鳴き声を一声上げた。その様子を思わずぽかんとしてちゅん助を見入ってしまう。
「やっぱり、透さんのシキガミですよね。」
「ずっと出したままだったけど、透くん戻して無かったの?」
二人も驚いているようで目を丸くして呆然としている。一向に戻ろうとしないちゅん助はケンジと行動を共にしていたが、昨日はケンジの事で頭が一杯で、一応パスは繋がっているのだから問題は無いし、消費も少ないため完全にちゅん助の事を失念していた。
「そうみたいだ。ちゅん助、悪かった。」
素直に反省しつつ手を差し出す。いつもなら乗って来るのだが、しかしこの日は違った。ちゅん助は手に乗らず、代わりに手の平には畳まれた紙が置かれた。
「紙?」
それを見た百鬼がぽつりと呟くが、今の俺はそれに答える余裕を持ち合わせていなかった。何故ならその紙が、いや言伝が誰からのモノなのか、ちゅん助から伝わって来たためだ。
「…ケンジからだ。」
言えば二人が息を呑む音が聞こえてくる。ゆっくりと丁寧に紙を開いて行く。
『にぃちゃんへ』
その文字が出てきたところで、ぴたりと紙を開く手が止まった。これは恐らくケンジが最後の言葉を伝える為に書いた言伝だ。そう考えると、一瞬躊躇いが出てくる。
だがここで読まないという選択肢はそもそも存在しないのだ、二人が固唾を飲んで見守る中、意を決して紙を開く。
『ねぇちゃんを手放すなよ!』
「…ん?」
そして出てきた一言に、思わず疑問の声を上げる。読み間違いか、そう思って読み直してみるもやはり変わらない。他に何かあるかと思えば、やはりそれだけで、狸もいなければ毛虫もいない。最期の言葉がたったこれだけ。
「ぷっ…くくっ…。」
それを理解した途端、笑いがこみあげて来て堪え切れずにあふれ出す。
普通最期に言葉を残すとすれば、思い残したこと、感謝、そして恨み言、それらの事について書くものだろう。なのに、ケンジはこんな事をわざわざ言い残した。それが堪らなくおかしく思えた。
「透くん?」
「あぁ、いや、悪い。少し待ってくれ。」
ぽかんと目を丸くしている二人を前に、答えながら何とか呼吸を落ち着ける。
「白上、さっきの話が途中だったよな。」
「え、あ、はい。」
声を掛ければ、白上は驚いたように耳と尻尾をピンと伸ばして返事をする。ケンジがどんな奴だったのか、それをまだ伝えられていなかった。彼の事を端的に言い表すなら。
「凄く我儘で、お節介な子供だったよ。」
そう言い放つと共に心の奥底で引っかかっていたものが取れて無くなり、心身が軽くなった心地がした。あの時のケンジも、きっとこんな気分だったのだ。
話も程々にして墓地を後にした俺達は、残りの食料も調達してシラカミ神社への帰路へついていた。
「…透くん、それで紙にはなんて書いてあったの?余にも見せてよ。」
「だから百鬼にはちょっと見せづらいんだって。」
その道中、やはり百鬼もケンジからの言伝の内容が気になるようでしきりにそう聞かれている。しかし、内容が内容なだけに彼女へ見せるのはどうだろうという疑問が浮かぶのだ。
最後の最後でこんな爆弾を握らされる羽目になるとは、今頃にやりと笑っているに違いない。
「透くんの意地悪。」
「悪い、流石にこればっかりはな。」
一向に見せようとしない俺に、ぷくりと頬を膨らませる百鬼。彼女からしてみればケンジの言伝を読みたいと思うのは当然なのだが、見せた所で恐らく彼女との仲がただ気まずくなるだけなのだ。
とはいえ、百鬼もそこまで気にしている訳でも無いようですぐにその頬を元に戻した。
「そう言えば、フブキちゃんは気にならないの?」
「白上ですか?いえ、気にはなりますけど、白上が読むのは少し違う気がするので。」
百鬼の問いに、けれど白上は一歩引いた位置から答える。白上もケンジも互いの存在は認識してはいたが、結局直接会うことは無かったため、遠慮しているのだろう。とはいえ、本当に中身は遠慮するようなものでも無いのだが。
思わず苦笑いを浮かべていれば、ふと百鬼がじっとこちらを見ている事に気が付いた。
「どうした?」
「ううん、透くん、言伝呼んでから明るくなったなって思って。」
「あ、それ白上も思ってました。」
二人にそう言われて、つい自らの顔を触れる。やはり俺が分かり易いのは変わらないらしい。
「あぁ、ケンジの事を自分なりに整理出来たからな。」
ケンジからの言伝を呼んで、俺はようやくケンジが満足していたこと、本当に幸せだったことを知れた。でも無ければ最後にあんな言葉で終わる筈がない、最後にあんなひょうきんな事が書ける筈がない。満足していたから、心に余裕があったからこそのあの言伝だ。
勿論、完全に引っ掛かりが消え去ったわけでは無い。が、一区切りは付いたのだ。
「…やっぱり、透くんは強いよ…。」
「へ?」
ぽつりと零されたその呟きは聞き取るには小さすぎた。ぼそりと聞こえたそれに疑問の声を上げるが、百鬼はぱっと笑みを浮かべると、そのまま駆けだした。
「シラカミ神社まで競争しよ!最下位はお昼のおかず一品抜きね!」
「透さん、お先に失礼します!」
「おい、百鬼?白上?」
そう言い残して、軽々と走り遠ざかっていく二人の背中。ついで視線を降ろせば、両手いっぱいに下げられている食料達。
「卑怯者!!?」
ケンジの言伝の件を百鬼はまだ根に持っていたのかもしれない。そうして、この日の昼食のおかずが一品消えて無くなったのであった。
気に入ってくれた人は、シーユーネクストタイム。