UA5000突破している。感謝
以上
もらったトウモロコシを手に下げたまま街を回ってみる。
今回の件に関しては、あまり情報が出回ってないらしく、誰に聞いても、誰かが消えたらしいという答えしか得られなかった。
情報なしには何もできない。何をすべきかが定まらないというのは、また、幸先の悪いスタートだ。
小腹もすいてきたことだし、そこらの茶屋で休憩でもするか。
「「おばちゃん、団子と抹茶を一つずつ。」」
誰かと声が被った。
驚いて横を向くと、同じくらいの背丈の男が立っている。
和服に身を包み、腰に刀を刺している。
「先いきな。」
「あ、どうも」
すっと身を引いて先を譲ってくれる。
なんだ、今日は人の善意によく触れる日だな、などと考えながら、団子と抹茶を受け取る。
この団子、一粒一粒がかなり大きい。食べ応えがありそうだ。
適当に席を見繕い、座って少しして、先ほどの男が横に座る。
「さっきはありがとうございます。」
「いいさ礼なんか、敬語もいらねぇよ。」
からからと笑いながら答える男に、こちらも自然と笑みがこぼれる。
このカクリヨには、先程もそうだが、全体的に気さくでフレンドリーな人が多いように感じる。
しかし、次の一言に、その笑みは完全に凍り付いた。
「同郷のよしみじゃねぇか。」
思考が完全に停まる中、何とかその言葉を飲み込もうとする。
同郷
つまりこの人は
「同郷って、ウツシヨのことですか!」
「だから敬語はいらねぇって。少し落ち着けよ。」
思わず立ち上がると、前のめり気味に問い詰める。。
それでも男は苦笑いを浮かべてゆっくりと制する。
言われるがままに席に戻り、一つ深呼吸を入れる。
そうだ、落ち着こう。まずは話を聞くべきだ。
「…すまん、取り乱した。敬語無しでいいんだよな?」
「おう、そう来なくっちゃな。中々骨のありそうなやつで安心したぜ。」
確認に聞くと、男も嬉しそうに答える。
しかし、すぐに笑みをしまい真剣味を帯びた声で、ただ、と続ける。
「あんた、正直すぎだな。
もっと警戒しとけ。
今の反応じゃ、カクリヨ出身じゃありませんって答えてるようなもんだぞ。」
「…確かに。ありがとう、気を付けるよ。」
その言葉にいいってことよ、と手が振られる。
少し、無警戒が過ぎたな、反省しておこう。
そうか、確かに白上たちが受け入れてくれたからといって、カクリヨの人たちが全員受け入れてくれるとは限らないよな。
しかし、今はそれよりもどうしても気になってしまう。
「それで、同郷ってどういうことなんだ。」
「どうも何もそのままさ。あんたと同じ、ウツシヨの出身ってだけだ。」
こともなげに口にするが、こちらにとっては大事だ。
何せ、自分の記憶に関する手掛かりをこの男は握っているのだ。焦らない方がおかしい。
「俺には、元居た場所の記憶が節々で欠けているんだ。元の自分の名前すら憶えていない。
だから、頼む。ウツシヨについて詳しく聞かせてくれ。」
頭を下げて頼みこむ。
何とか教えてもらいたい。自分がどこから来たのか、そこはどんな場所なのか。
それを知ってどうなるわけじゃないが、それでも知りたいのだ。
これからのためにも。
「そのくらい、茶飲み話にもなるか分からねぇがな。」
そう快諾して、男は話し始める。
「まず、ウツシヨとカクリヨの二つの世界があるのは分かってるよな。
で、俺たちはウツシヨからカクリヨに、あの穴を通って強制的に連れてこられた。
そのウツシヨだが、文明としてはこっちがイワレ関連のものが発展してて、あっちは機械関連が発展してきた世界だ。
本来、二つの世界には明確な違いがあったんだが、ふざけたことに、カクリヨにその機械技術の一端が流れつくことがまれにある。俺たちもそんな現象の被害者だな。
その機械技術の一端だと、ゲーム機やモニタなんかが分かりやすい。
ここまでは大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だ。」
問題なく、今の知識と一致している。
実際に、白上の部屋にも存在するし、何なら発電機までおいてある。
いまいち、それが正しい知識なのか自信を持てていなかったが、ウツシヨのもので間違いはないらしい。
こちらの考えが纏まったところで、男は声をかける。
「続けるぞ。
てか、改めて説明するの難しいな…。
えぇッと、ウツシヨにはこっちと同じなんだが、四季があって、一年のくくりも同じだ。
カクリヨと比べて、高層ビルとか背の高い建物が多いな。
それで…そう、学校がある。
同年代の奴らが集まって、同じ空間で教育を受けるみたいな。」
「…学校?」
「お、これが当たりか?」
聞きなじみのない言葉に思わず声が出る。
何か引っかかるような感覚はあるが、肝心の情報は何も出てこない。
「これはどうだ、クリスマスにハロウィン。」
「それは分かる、12月と10月にあるイベントだよな。」
サンタクロースにかぼちゃや魔女など関連事項も思い出せる。
「じゃあ、誕生日と出身地。これは思い出せるか?」
その問いに答えようとするも、全く思い出せない。
黙ったまま首を横に振ると、男は合点がいったように頷く。
「なるほど、分かったぞ。
お前はお前に関する情報につながる記憶がないんだな。
多分、自覚がないだけで忘れていることがもっとあるはずだ。」
そういわれると、引っかかっていたものが、すとんと落ちた。
自分に関する情報につながる記憶か。だから、自分のことも思い出せないわけだ。
認識できてしまうとそこからは早かった、失っていたものが戻ってくるような感覚。
ゆっくりとぼやけていたものが輪郭を帯びていくような。
「アチッ!!」
すると、突如腕の石が熱を帯びる。
まるで火で炙られるような感覚に、悲鳴を上げる。
少しして、熱は収まったものの、そこに意識を持っていかれた瞬間、輪郭が霧散していき、元通りとなってしまった。
「…おい、どうした?」
「いや、この石が急に熱くなって。
これについては、何か知らないか。」
腕を突き出して宝石を見せて、問いかける。
もしかすると、これに関しても何か知っているかもしれない。
男は興味深げに腕の宝石を見ると、少し間をおいて答える。
「うん、知らねぇ。」
しかし、流石にそこまでは知らないらしく、いい笑顔でそう返された。
まぁ、そうだよな。このことまで知っていたら、なんて虫のいい話はあるわけがない。
だが、かなり収穫があったのも確かだ。
何だかんだ、自分の忘れている記憶を正しく認識できていなかった。
そのことに気が付けたのは大きい。
「そっか、ありがとう。かなり参考になった。」
「なんてことはないさ。俺も久しぶりに故郷の話ができて楽しかったよ。」
この人に会えてよかった。おかげで色々と知ることもできたし、何より、同じ境遇の人間と知り合えたのは精神的に助かる。
「それで、最初から気になってたんだが、トウモロコシもって何してたんだ?」
そんなに大量にと、俺の横側においてある袋を見ながら男が問う。
当然の問いに、つい笑いが漏れる。
「これは貰い物なんだ。ここへは、ちょっと調べものにな。」
「ふーん、…調べものって、神隠しの件か?」
的確に核心をついてきた男に驚きつつも肯定を示す。
もしかすると、同じ目的なのかもしれない。
「そうか…」
すると、男は顎に手を置き、考え込んでしまう。
「なぁ、その調査、俺も手を貸すぞ。」
すぐに顔を上げると男はそう提案してくる。
こちらとしては協力者が増えるのは助かるが…
「いいのか?ここまで、世話になりっぱなしだが。」
「いいさ、むしろ渡りに船ってやつだ。
俺も、その件を調べにここに来たんだよ。」
確認に聞くが、そういうことなら協力した方が効率的だ。
「じゃあ、よろしく頼む。
…えっと。」
そういえば、自己紹介をしていなかった。
名前も知らずにここまで話していたのだと思うと、おかしな気分になる。
それは、あちらも同じようで、同じタイミングで噴き出す。
「はは、悪い、俺は透。
本名は分からないからそう呼んでくれ。」
「おう、俺は『茨 明人』だ。
よろしく、透。」
男、明人はそ言うと手を伸ばす。
「よろしく、明人」
その手を握り、固く結ぶ。
こうして、カクリヨにおいて始めて同郷の友人ができた。
友人ルート書くのも面白そうだなと、片隅で考えておる。
気に入ってくれた人はシーユーネクストタイム