【完結】色づく想ひ    作:ワンダーS

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どうも作者です。


悩み

 朝、いつもと違う活気に満ちた声に目を覚ます。 

 そうだ、キョウノミヤコの宿に泊まっているのだった。

 

 窓から外を見ると丁度太陽が姿を現している。

 こんなに早くから人が行き交うとは、流石ミヤコ。

 

 それにしても昨日はひどい目にあった。

 あの後、大事なことは伝え忘れないようになど、基礎的なところで繰り返し説教を続けられた。

 

 忘れていた俺が悪いのだが、足が痺れて30分以上動けなくなるとは思わなかった。

 

 それは別として、明人のことは説明したし、協力してもらえることを話すと喜んでいた。

 やはり、人数が増えることには肯定的らしい。

 

 ということで、今日は明人との調査になる。

 何かつかめるといいのだが。

 

 「透さーん、起きてますかー。」

 

 襖の外から白上の声が聞こえる。

 

 普段は寝坊の常習犯なのに、こういう時はしっかりと起きるのか。

 スイッチの切り替えが激しいのは、百鬼と白上の共通点の一つだな。

 

 「起きてる、すぐ行くから先に行っててくれ。」

 

 そう言うと、はーい、という声と共に襖のそばから気配が消える。

 恐らく、百鬼と大神も起きているだろう。

 

 急いで準備をしなければ。

 

 そして、顔を洗い、着替えを済ませると、食堂の方へと急ぐ。

 

 「あ、おはようございます、透さん。」

 

 しかし、予想に反してテーブルに座る白上は見つかるも、百鬼と大神は見当たらない。

 まだ寝ているのだとすると、百鬼はともかく大神にしては珍しい。

 

 「おはよう、あの二人はどうしたんだ?」

 

 「ミオは今あやめちゃんを起こしに行ってます。昨日は夜遅くまで話し込んでましたし。」

 

 百鬼は百鬼だったらしい。

 

 早く起きるときは起きるのだが、基本的に遅起きな鬼だ。

 しかし、遅くまで何を話していたのだろうか。

 

 「何話してたんだ?」

 

 特に何も考えずに疑問を口にする。

 すぐに失敗を悟るも、時すでに遅く。 

 

 白上は意地の悪げな笑みを浮かべる。

 

 「ガールズトークの内容を根掘り葉掘り聞く気ですか?

  あまりいい趣味とは思えませんね。」

 

 正論すぎる返しに、ぐうの音も出ない。

 

 朝というのは一日の始まりであると同時に、一番危険な時間帯なのかもしれない。

 

 「分かってる、失言だった。

  頭が回ってなかったんだ、許してくれ。」

 

 しかし、白上の表情に変わりはない。 

 さては、分かってやっているな。

 

 「へー、まぁ、そういうことにしてあげましょうか。」

 

 「はいはい、ありがとうございます。」

 

 ここで一度会話が途切れる。

 

 しかし、白上と一緒の時の静寂は特に苦にならないのだから不思議だ。

 見ていて飽きないというのもあるのだろうが。

 

 視線を向けると、今は耳を左右に交互に倒している。

 しばらくして尻尾も同じく動き出し、落ち着いたかと思えば今度は尻尾が回りだす。

 

 壊れたおもちゃか何かに見える。

 

 「…何ですか?じっと見つめて。」

 

 露骨に見すぎたのか、気が付いた白上が首をかしげる。

 それに合わせるように尻尾と耳も同じ方向を向くものだから、ついに笑いがこらえきれなくなる。

 

 「いや…、なんでそんなに…耳と尻尾、動かしてるんだよ」

 

 笑い交じりに言うと、白上も無意識で動かしていたのかみるみるうちに赤面していく。

 

 「あ…、これは癖なんです!あんまり見ないでくださいよ。」

 

 後ろに行くに従い、声が小さくなっていく。

 普段は対して恥ずかしがらないくせに、こういう時は照れるのだからおかしなものだ。

 

 しかし、これはいつもいじられる意趣返しのチャンスなのではなかろうか。

 そうでなくとも、意地悪の一つでもしたくなる。 

 

 「いいんじゃないか?可愛いぞ、白上。」

 

 「あぅ…、ぐぅ、この。」

 

 言ってやると、白上はうめき声をあげ、一瞬うつむいたかと思うとこちらをきっと睨みつける。

 あまりの恥ずかしさにか、潤んだ瞳と視線がぶつかると、瞬間視界いっぱいに白が映る。

 

 「痛い!?」

 

 顔に柔らかい何かが当たっと思うと同時に目に走る痛みにたまらず呻く。

 どうやら、尻尾で顔面を叩かれたらしい。

 

 顔には影響はないが、目に当たったためそれなりに痛い。

 

 「この、いきなりなんだよ」

 

 「それはこっちのセリフですよ!」

 

 噛みつくように言ってくる白上に、そちらがそのつもりならと応じる。

 

 「やるのかこの野郎。」

 

 「やってやりますよこの野郎。」

 

 顔を突き合わせていがみ合う。

 これは始めるしかないか、俺たちの最終決戦を。

 

 食堂に剣呑な雰囲気が充満しだし、まさに一触即発となる。

 

 しかし、そんな状況もすぐに霧散してしまう。 

 どちらからともなく吹き出すと、すぐにそれは笑いへと転じる。

 

 「二人共、朝から何してるの。」

 

 しばらく笑っていると、笑い半分、呆れ半分の声音で大神が言いながら食堂へ入ってくる。。

 

 「おはよう大神。」

 

 「おはよう透君。」

 

 挨拶を返すと大神も席に着く。

 

 「あやめちゃんは起きましたか?」

 

 確かに起こしに行ったはずの百鬼がいない。

 白上も気づいて大神に聞く。

 

 まだ、部屋だろうか。

 

 大神は少し苦笑いをしながら食堂の入り口を指し示す。

 すると間もなく百鬼が目をこすりながら入ってきた。

 

 「おはよー」

 

 明らかに眠そうなその声に三人そろって笑いをこらえる。

 普段ですら朝は弱い中、夜更かしをしたのがこたえたらしい。

 

 そして雑談を交えながら朝食をとると、早速調査が始まる。

 

 同時に宿を出て、そこで分かれると、昨日の団子屋へと向かう。

 明人はすでに到着しているのだろうか。

 

 待たせては悪いと、少し駆け足になって走り始めた時だった。

 

 「おいおい透!」

 

 名前を呼ばれ、後ろからいきなり首に手を回される。

 

 驚き振り向くと、そこには今から落ち合う予定だった明人がいた。

 

 「明人!?何でこんなところに。」

 

 「いいんだよそんなことは。それよりなんだよ透。お前見た目以上に太ぇ野郎じゃねぇか。」

 

 「は?」

 

 ニヤニヤとからかうように言ってくる明人に、何が何だかわからず困惑する。

 

 しかし、明人はそんなことはお構いなしにと話し続ける。

 

 「それで、本命はどの娘なんだ。あのしっかりしてそうな黒髪の娘か?それとも白い狐の娘か?ちょっと抜けてそうな白髪の娘か?なんだよ、カクリヨ生活満喫してるじゃねぇか!」

 

 笑いながら背中をバシバシ叩いてくる明人に、ようやくこうなった原因を理解する。

 

 先ほどの宿から出てくるところを見ていたのか。

 それで、勘違いをしているのだろう。

 

 「いや、本命も何も、あの三人は普通の同居人だよ。」

 

 改めて考えてみると、関係性の説明があやふやな気がするが、まぁ同居人が一番無難だろう。

 自分で言ってみて意外としっくりときたのだから間違いない。

 

 だが、明人はそうでもなかったらしく、楽しそうだった顔が転じて引いたような顔をする。

 

 いや、なんでだよ。

 

 「は、あんな美少女たちと同居しておいて考えたことない?…ちゃんとついてんのか。」

 

 「ついてるよ!…というか、あいつらには恩があるんだ。そういう目で見るのは失礼だろ。」

 

 それを聞いた明人がついには後退り始める。

 その眼は明らかに理解の範疇の外にいるものを見る眼だ。。

 

 なんだその反応は、甚だ遺憾だ。

 

 「あのさ、透。感情ってのは理性とは相反するものでな。いくら頭でどうこう考えても結局は想いは想いなんだよ。

  勝手に色づくものなんだ。

 

  だから、お前がそういう感情を抱いていないってのはつまり。」

 

 「つまり?」

 

 「お前はホモ。」

 

 「よしそこに直れ、叩き斬ってやる。」

 

 どうやら俺たちの友情はここまでのようだ。

 昨日出会って今日敵対するとは、ある意味ドラマがある。

 

 何とも短い友情だった。

  

 「おっと、待て待て、流石に冗談だって」

 

 刀に手を伸ばそうとすると、明人は手を振りながら言う。

 その言葉に、今回だけだぞと思いとどまる。

 

 別に偏見があるわけじゃないが、勝手にそう思われるのは気に食わない。

 

 「だがよ、その前の言葉は本当だぜ?」

 

 「前って?」

 

 その後にすべて持っていかれて気に留めていなかった。

 

 何と言っていただろうか。

 

 「想いは勝手に色づくってことだ。

 

  お前があの娘たちに恩義を感じていようといまいと、それはお前の想いが色づかない証拠にはならない。

  そんなことばっかり考えてると、濁っちまうぞ。」

 

 濁る…

 

 ふと、自分の右腕の宝石に目が行く。

 他の人からは透き通って見えるものだと考えていたが、これは見る人の心を映すのだろうか。

 

 「ま、いつか実感するだろ。その時は相談くらい乗ってやるさ。」

 

 俺があの三人を好きになる。

 これは友人としてではなく恋愛的な意味として。

 

 そんな日が来るのだろうか。

 

 ただでさえ、大きい悩みがどんどんと大きくなっていく。

  

 「そんな難しい顔すんなって。協力してやるから、気楽にいけよ。」

 

 「…分かってるんだけどな。難しいなこういうの。」

 

 悩むことになった原因に言われたくはないが、相談できる友人ができたのは心強い。

 

 しかし、こいつからこんな話題が出てくるとは思わなかった。

 あまり恋愛に聡いタイプには見えないが。

 

 「意外だな、そういうこと言うとは思わなかった。」

 

 言うと明人の表情が少し曇る。

 

 「…あぁ、少しな。」

 

 しかし、すぐにいつも通りの顔に戻る。

 どうやら深く話すつもりはないらしい。

 

 何かあったのだろうか。

 疑問に思うが、あまり立ち入って聞くのもなんだ。

 

 朝から話すような内容でもなかった、これから調査が待っているのだ。切り替えて行こう。

 

 「…よし、そろそろ行くか。」

 

 「だな。改めてよろしくな透。」

 

 拳を突き出してくる明人に拳を合わせる。

 

 こいつとは長い縁になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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