いつの間にか総文字数が5万を超えている。
次の目標は10万
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以上
「それで、どこで試す?」
二人で北町を歩きながら大神に話しかける。
普段も話したりはするが、こうして二人きりで歩くというのは初めてで、新鮮な気分だ。
今にして思えば、基本的にどこかへ行くときは百鬼だったり、白上だったりと一緒だったため、あまりこういった機会がなかった。
横を歩く彼女に視線を向ける。
先ほどの明人の言葉が思い起こされる。
確かに、優しくて包容力があって、かなり魅力的だと思う。
これはもちろん白上や百鬼にもそれぞれ要素は違うが違った魅力がある。
それは理解できている。
しかし、これが恋慕につながるようには思えない。
心のどこかで、ブレーキがかかってているような、そんな感覚。
そもそも、出会ってまだすぐなのだ、急にそんな気持ちになるわけがない。
「そうだね、あんまり人通りのないところがいいな。
ちょっと目立つから。」
「目立つ?なんかこう、エフェクト的な?」
「そうそう。」
正解とこちらに指を向ける。
それならば路地裏辺りが最適だ、と二人そろって道の脇にそれて細い道へ入っていく。
エフェクトというと、オーラが立ち上るとか、きらきらと光が舞ったりするのかもしれない。
丁度人通りもなくなり、良い感じの場所を見つけると立ち止まる。
「ここなら大丈夫そうだな。」
「うん、人もあまり来なさそうだし。」
いったん、ここで試す流れとなる。
邪魔をするわけにもいかないため、少し大神から距離をとった。
それを確認すると大神は一つ深呼吸を入れる。
「それじゃあ、始めるね。」
そう言うと、目を閉じ、手のひらを上に向けて胸の前に持っていく。
すると、青白い光がそこらじゅうの空間からあふれ出し、その手のひらの中心へと集まっていく。
やがて、それは球体へと形を変えてゆき、綺麗な水晶玉へと変化した。
「…っ」
そのあまりにも幻想的な光景に思わず息をのむ。
こういってはなんだが、その光景と大神の姿は何とも様になっており、その幻想性に拍車をかけている。
これは人前で実行することが憚られるのも納得できる。
間違いなく、人だかりができて注目の的になるだろう。
しばらくそうしていたかと思うと、大神はゆっくりと瞼を上げる。
それと同時に手の上の水晶玉も、元の光へと戻り霧散していく。
「…うん、ここじゃないみたい。次はもう少し向こう側に…って、透君、どうしたの?ぼーっとして。」
大神に声をかけられて意識を戻す。
「いや、綺麗で思わず見入ってた。…それが占術なのか。」
「ふふっ、そうだよ。そう言われるとちょっと照れるね。」
頬を搔きながら笑う大神。
正直、地味なものかと考えていたが、実際には真逆のものだった。
いつまでも見ていたいと思ったのは初めてだ。
「じゃあ、次行こうか。」
その後、いくつかの場所を回ってみるもなかなか当たりは出ない。
何度もワザを使ったためか、大神の顔にも疲労が見え始めてきた。
朝から動きっぱなしだったのだ、そうなるのも当然だ。
かくいう俺も、そろそろ休憩をはさみたくなってくる。
「なあ、大神。昨日見つけた茶屋があるんだが、いったんそこで休憩しないか。」
「え?…うん、そうだね。うちも休憩したいかも。」
誘ってみると、渡りに船とばかりに了承をもらう。
それなら決まるが早いか。
幸い、道順は覚えている。
先導して歩くこと数分、すぐに目的地が視界に移る。
丁度よく席も空いている。手早く注文を済ませて、団子と抹茶を受け取ると、席に着く。
「ふー、ようやく一息つけた」
「うちも疲れたよ。
透君、よくこのお店知ってたね。」
腰を落ち着けると急激に襲い掛かってくる疲労感に足をもみほぐす。
ずっと動き続けるだけでもかなり疲れるものだ。
大神はこれに加えてワザも使っているのだから、俺以上に疲労がたまっているはずだ。
「昨日偶然な、それにしてもなかなか見つからないな。」
「うん、近づいてはいるんだけどね。」
話しながら、抹茶を飲みくつろぐ。
休憩をとるのも、調査を続けるうえで大事な要素の一つだ。
「やっぱり、精度が落ちてるみたい。普段だったらもっと広い範囲でもすぐに見つかったんだけど。」
ぼやかれたその言葉に引っかかる。
「落ちてる?なんでまたそんなことに。ずっと使ってなかったとか。」
使わなければ、衰えるようなものだろうか。
そう推測するも、大神は首を横に振る。
「ううん、ワザが衰えたりすることはないよ、ただ、周囲の影響で通りが悪くなってるの。」
なるほど、キョウノミヤコではイワレが多く集まっていることから、それが影響している可能性があるのか。
後、あった変化といえば。
ふと思い至った可能性にまさかと思いながら聞いてみる。
「なぁ、それって俺がカクリヨに来てからだったりする?」
流石にこれは自意識過剰かと、笑うも。一向に大神が喋る気配がない。
え、本当に?
「えッと…実は最後に透君を見つけた場所を見た切り、精度が落ちてるんだよ…ね。」
気まずそうに語る大神。
もはや、自分が疫病神の類なのではないかと思えてしまう。
「あ、でもいいこともあったから。寧ろ今の状態の方が良いって言うか。
透君のせいだとか考えてないから、安心して!」
気遣ってかそんなことを言ってくれるも、今はその優しさが痛い。
どうしようもなかったのは事実だが、それでも申し訳ないと感じる。
しかし、ここでくよくよしても始まらない、いつか何らかの形で報いるしかない。
「そういってくれると助かる。」
ということで、この話題は打ち切ると、しばらく団子と抹茶に舌鼓を打つ。
しかし、自分の知らないところまで影響が出ている物だな。
そういえば、あの二人はどうしているだろうか。
白上は普通に調査をしているだろうが、百鬼は昨日見つけた人物の追跡をしている。
大した騒ぎも起こっていないようだから問題はないと思うが。
「…二人が心配?」
見透かしたように言い当てる大神にドキリと心臓が鳴る。
本当に他人の心の機微に聡い。だからこそ、まとめ役を担えているのか。
「俺が心配するほどやわじゃない事は分かってるつもりなんだが…どうしてもな。
傲慢かもしれないけど。」
自嘲気味に笑いながら答える。
二人共、大神も含めると三人は俺よりも腕っぷしも、経験も遥かに上だ。
そんな相手の心配をするのは何とも滑稽だろう。
「それは違うよ。」
しかし、大神はその言葉を強く否定する。
「心配してくれる人がいるってことは、それだけで恵まれてる。
特ににうちやフブキはよく問題を解決してて、頼ってくる人はいるけど、心配してくれる人は少ないんだ。あやめちゃんはいわずもがな。
もちろん、頼られるのは好きだけどね。どうしても、そういう人たちはこの人たちは頼っても大丈夫って考えちゃうんだよ。
だから、それは透君が人をちゃんと見ている証拠。
うちは透君のそういうところ、好きだよ。」
その言葉に心が少し軽くなる。
だが、最後の一言は必要だったのだろうか。そこまで言われれば流石に照れの一つもする。
本人も余計だったと思ったのか、少し顔を赤くしている。
それでも否定はするつもりはないようだ。
その事実が、さらに空気を気まずくさせる。
これも、明人が変な話をしたせいだ。今までならこの程度笑って流せた。
「あー、そうだ、そろそろ行くか?」
丁度食事も終わった所で、声をかける。
今すぐ、この空気を換えたい。
「うん、十分休んだしね。行こっか!」
同じ思いだったのか、大神も必要以上に明るく答える。
まさか、大神とこんなことになるとは思ってもみなかった。
白上と百鬼相手でも恐らく同じ結果になりそうだ。
占いでは、近いうちに恋人ができるらしいが…。
(まさかな…)
脳裏にあの三人が思い浮かび、すぐに頭を振ってかき消す。
どこまで恋愛脳になっているんだ。
ふと、いつかと同じく右腕が熱くなる。
以前より熱が弱くなっているが、ゆっくりと、思考が元通りになる。
どういう原理かは知らないが、今は助かる。
「透君、どうしたの?」
「いや、何でもない」
不思議そうに聞いてくる大神にそれだけ返すと、いつの間にか前にいた大神に追いつくため、走り出す。
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