【完結】色づく想ひ    作:ワンダーS

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どうも作者です。

誤字報告くれた人ありがとうございます。

以上。


三階

 何とか大神の機嫌を直し、下にいる白上と百鬼に合流する。

  

 昼食後は特に予定もなく、四人でボードゲームに興じてみたり、いつの間にか現れている神狐のシキガミが持ってきてくれる飲み物を飲みながら雑談したりと、ゆっくりとした時間が流れた。

 

 それからしばらく経ち、暇を持て余していたところに急に神狐が現れた。

 

 「あ、神狐、どこ行ってたんだよ。それにその恰好は?」

 

 見れば神狐はいつもの着物ではなくメイド服を着ている。

 似合っているが、何故そんな服装を。和の中にいきなり洋が入りこんで違和感しか感じられない。

 

 「この服の方が合っておるかと思っての、それより透。少し手伝いを頼んでもよいかの?」

 

 合ってるって、一体メイド服で何をするつもりなんだか。

 服装に関しては疑問が尽きないが、手伝い自体はまんざらでもない。

 

 首を縦に振り、肯定を伝える。

 

 「うむ、こっちじゃ。」

 

 そう言うと、神狐は階段の方へと向かっていく。

 

 「悪い、ちょっと行ってくる。」

 

 「分かった、頑張ってね。」

 

 「いってらっしゃい。」

 

 「お気をつけてー。」

 

 三人に断りを入れて神狐の後を追う。

 付いて行けば、神狐は二階を通り過ぎ、さらに上の階。三階へと進んでいく。

 

 二階は客間が主であった。三階はどうなっているのか期待に胸を膨らませながら階段を上がる。

 

 階段を上り切る。

 どうやら、この宿は三階建てであったらしい、これより上に続く階段はなく、目の前に大きな襖があるのみだ。

 

 見たところ入り口は目の前の襖以外には見受けられない。

 神狐に促されて、襖を開ける。

 

 「…広いな。」

 

 襖の奥には大きな畳張りの広間が広がっていた。

 しかし、それだけで他には何もない。ただの畳の空部屋のようになっている。

 

 「それで、俺は何をすればいいんだ?」

 

 まだ肝心の内容を聞いていなかった。

 横にいる神狐に問いかける。

 

 とはいえ、何もない中ではやることも限られているだろうが。

 

 「そうじゃな、まずは横の襖を開けてもらえぬか。」

 

 横。

 

 目を向ければ、確かに入り口から見て右側にまた襖がある。

 こちらに何か置いてあるのだろうか。

 

 前まで歩き、襖にと手をかけてスライドさせる。

 

 「…え、外に続いてるのか。」

 

 てっきり部屋が続いているかと思えば、視線の先には相変わらず灰色の空と雪の積もった白い山が見える。そろそろ日が沈む頃合いだろうか、空は一層暗くなっている。

 どうやら、ここはベランダのようになっているようだ。 

 

 前に進んで手すりに手をついて下を覗けば、イズモ神社が一望できる。

 

 「透、その辺りに座布団が置いてあるじゃろうう、それを持ってきてもらえぬか。」

 

 「座布団?」

 

 部屋の中から声を掛けられ左右を見渡せば、確かに天日干しにでもするように座布団が並べられている。

 日光などでもしない中、何故外に置いてあるのかと疑問に思うが、気にせず置いてあった五枚の座布団をもって中に戻る。

 

 「おぉ、それじゃそれじゃ。次はそれを適当な感覚で置いてくれ。」

 

 「適当って言われてもな…こんな感じで良いか?」

 

 取り合えず五角形の頂点に来るように置いてみる。

 神狐は気に入ったらしく。一つ大きく頷いて見せる。

 

 しかし、何故こんなことをとは思わずにはいられない。

 手伝うこと自体に不満はない、世話になっている以上できる限り力になろう。だが座布団を取り込むだけのことに手伝いが必要とは思えなかった。

 

 どうして神狐は手伝いを頼んだのだろうか。

 

 「なぁ、神…」

 

 「ありがとうの、透。それで次なんじゃが。」

 

 理由を聞いてみようするが、神狐と被ってしまう。

 とにかく今は聞けなさそうだ。

 

 今は諦めて、取り合えずはやることを片付けることにする。

 それからしばらく、やはり手伝いの必要のなさそうな作業が続いた。

 

 細かなところの埃を取る。

 

 円形のテーブルを運ぶ。

 

 身の丈程ある瓢箪を持ってくる。

 

 ここまでやれば流石に神狐がやろうとしている事にも目星がついてくる。

 最後に、下の階からシキガミの持ってくる大量の料理たちをバケツリレーの受け取り、テーブルの置いていく。テーブルは大き目なはずだがそれが埋め尽くされてしまうほどの量がある。

 

 ラスト一つの料理を何とかテーブルの上に収めれば、その光景に達成感すら覚えた。

 

 「お疲れ様じゃ。こき使ってすまなかったのう。」

 

 畳の上に座りこみ一息ついていると神狐がねぎらいの言葉をかけてくる。

 

 「このくらいどうってことない。だけどシキガミを使えばもっと楽だったんじゃないか?」

 

 いいタイミングなので気になっていたことを聞いてみる。

聞けば、神狐はシキガミを普通よりも多く同時に使役できるらしい。なら、手が足りないなんてそう起きるとは思えない。

 

 「む…そうじゃな、手伝ってもらったからには答えぬわけにはいかぬな。

  ほれ、これを見てみよ。」

 

 言って神狐はくるりと後ろを向き尻尾をゆらりと前に出す。

 昨日も見たように、見事な毛並みの尻尾が二本。

 

 「…あれ、減ってる?」

 

 違う、昨日みた尻尾は確かに三本あった。

 数え間違えたかともう一度数えるもやはり二本しかない。

 

 「今は少し力が落ちていての、シキガミの使用に制限がかかっておるのじゃ。

  明日の朝には慣れてくると思うのじゃが、こればかりはどうしてもの。それで主に手伝いを頼んだのじゃよ。」

 

 尻尾の数が力の指標になっているのか。

 消費が一定以上になれば減っていくのだろう。

 

 その原因となった出来事と言えば…

 

 「それより、そろそろ三人にも声を掛けねばな。」

 

 考え込んでいるところに神狐が話しかけてくる。

 

 「え、あぁそうだな。じゃあ、ちょっと呼んでくるよ。」

 

 任せるのじゃ、と神狐に見送られて下の階へと降りる。

 

 一階に到着して三人を探して辺りを見渡すが誰もいない。

 そういえば、先ほど料理を運んでいる際も姿を見かけなかったな。

 

 外にでも出ているのか、料理も出来ていることだしすぐに見つけないとな。

 

 三日ぶりの鬼纏い。

 イワレの流れが改善したことで効果が上がっているらしく、危うく床を踏み抜きそうになった。

 

 床に穴を開けたら多分、怒るんだろうな。

 

 慎重に力を込めていざ探しに外に出ようとしたその時だった。

 

 「透君、どこ行くの?」

 

 「へ?」

 

 後ろから大神の声が聞こえてくる。

 今まさに探しに行こうとしたところで急に声を掛けられ、驚き振り向けばそこには髪を少し湿らせた大神が立っていた。

 

 「あぁ、温泉入ってたのか。三人がいなかったから探しに行こうと思ってたんだ。」

 

 恐らく白上と百鬼もその内上がってくるのだろう。

 そう言うことなら、外に出る必要もなく助かる。

 

 「そうだったんだね、何かあるの?」

 

 「俺も詳しいことは聞いてないんだけど」

 

 だが、確証はなくとも流石にあの準備内容を見れば、嫌でも察しはつく。

 

 「…まぁ、見てからのお楽しみということで。」

 

 だが、ここは濁しておく。

 期待していろと神狐は大神に伝えていた。なら俺が憶測でいう訳にもいかない。

 

 それから大神と二人、白上と百鬼が出てくるのを待った。

 

 

 

 

 

 

 「よくぞこのイズモ神社に来てくれた。今宵は思うまま飲んで騒ぐと良い!」

 

 神狐の音頭で杯が音を立ててぶつかる。

 

 最後の夜ということで神狐は宴会を催してくれた。

 先ほどの手伝いははすべてこの為のモノであったということだ。

 

 三階の大部屋の中、五人でテーブルを囲む。

 用意された料理の多さに、三人は見るなり目を剝いていた。

 

 「あ、美味しい。フブキこれ食べてみて。」

 

 「ホントですね、これ好きな味です。」

 

 大神の勧めた肉料理を食べた白上も同意を示す。

 

 「余も食べたい!ミオちゃん、余の分も取って!」

 

 「うん、いいよ。」

 

 百鬼にねだられて大神が皿によそって渡す。

 相変わらず所帯じみてるな。

 

 ふと、横にいる神狐に目を向けてみる。

 

 メイド服を着ているのも、完全に雰囲気のために着ているだけらしい。

 神狐自身は何もせずただその光景を見ている。

 

 「透君にせっちゃんも、これ食べる?」

 

 「いいのか?ありがとう大神。」

 

 手を伸ばしてくるので皿を渡せば、先ほどの料理を取り分けてくれる。

 しかし、神狐は手を振っていらないことをアピールする。

 

 「神狐は食べないのか?」

 

 先ほどから見ているばかりで、何も手を付けようとしないので思わず聞いてみる。

 

 「妾か?うむ、体が小さい故あまり食べれないのじゃ。」

 

 「小さいって、自分から言うのかよ。」

 

 初対面の時も小さいと言われて文句を言っていたが、実は特に気にしていないのか。

 そう考えると、今まで気にしていたのは何だったのだろうかと疑問に思ってしまう。

 

 「自分で言うのはよい、事実じゃしな。ただ他人から言われるのは癪に障るだけじゃ。」

 

 理不尽だ。

 やはりその辺りの配慮は必要なようだ。

 

 げんなりとした気分をもろとも飲み干すように木製のコップを傾ける。

 

 「透よ、せっかく用意したのにあっちは飲まぬのか?」

 

 あっちと言われて指さされた方に視線を向ければ運んできた瓢箪が置いてある。

 確かに、自分で運んできておきながら手を付けないのも勿体なく感じるが…。

 

 「…あれを見た後に飲むのは少し抵抗があってな。」

 

 「あれ?」

 

 疑問符を浮かべる神狐とそろって前を見る。

 

 「ミオちゃん、今度はあれ食べさせて。」

 

 「いいよー。はい、あーん。」

 

 そこには、親鳥から餌をもらう小鳥のように口を開ける百鬼と、それに応じて食べさせている大神の姿がある。

 無論、普段からこんなことをしているわけではない。

 

 「もう酔っぱらっておるのか。じゃが、鬼は種族的にも酒には強かったはずなのじゃが…。」

 

 神狐が言うように、あの瓢箪の中身は酒であった。

 どうやら百鬼は酔うと直情的になるらしく、今も普段以上に大神に甘え切っている。

 

 あんな風になってしまうのではないかと思うと、どうにも飲むのは躊躇してしまう。

 目を離したのはほんの数分だったはずなのだが、既にあの状態になっているのはなぜだろうか。

 

 「あれ、瓢箪の中身もう半分になってませんか?」

 

 白上も気になったのだろう、瓢箪に触れて中身を確認していた。

 軽く白上よりも大きな瓢箪にいっぱいに入っていたはず。どんな速度で飲んだんだ。

 

 体積的に入らないと思うのだが…つくづくカミの体はでたらめに出来ているらしい。

 

 「…透くん、何飲んでるの?」

 

 気が付けば、百鬼がこちらを見ている。

 正確には俺の持つコップにその視線が注がれている。

 

 マズイ、対象が大神からこちらに切り替わってしまった。

 

 「水…ですけど。」

 

 「んー?」

 

 不穏な気配を感じてつい敬語になってしまう。

 それを聞いた百鬼はテーブルを四つん這いでくるりと周り込んで来て、ずいと顔を近づけてくる。

 

 「余のお酒が飲めないっていうの。」

 

 「近い近い、めんどくさい酔い方してるな!」

 

 尚もこちらに向かってくる百鬼を抑える。

 酔いが回っているせいか力自体はそこまで強くないが勢いが凄い。

 

 変に振りほどけば火に油を注ぐことになりそうでそれをすることもできない。

 

 「こら、あやめー、透君に迷惑かけたらだめだよー。」

 

 大神が後ろから百鬼を引っ張り、引きはがす。

 解放されてほっと息をつく。

 

 「ありがとう大神、助かったよ。」

 

 「あはは、こうなったあやめの相手難しいからね。後は任せて。」

 

 大神の面倒見が良くて助かった。

 

 そんな俺と大神のやり取りをジッと見ていた百鬼はおもむろに大神に抱き着く。

 無事にまた対象が大神に戻ったようだ。

 

 これで一安心と思い、水を飲もうとすると、同じ体制のまま百鬼がこちらを見ていることに気づく。

 心なしかその瞳には警戒が浮かんでいるようで。

 

 「透君、ミオちゃんと親し気になってる。」

 

 「…唐突だな、普通じゃないか?」

 

 ちらりと大神を見てみれば、彼女も同じ意見のようで頷いている。

 しかしそれを見て、百鬼の瞳に宿る警戒心がまた一段と強まってしまう。

 

 「むー、ミオちゃんは渡さないからね。」

 

 大神にしがみつく百鬼から宣言される。

 何をどのように解釈しているのかは不明だが、どうにも俺が大神を取り上げることを危惧しているようだ。

 

 「いや、取ろうとしてないから変な心配するな。」

 

 そんな取ろうとして取れるわけでもないのにいらない警戒をされては敵わない。

 

 「やっ!ミオちゃんは余のだもん、絶対渡さないかんね!」

 

 「もうどうしろと…。」

 

 どうやら俺の声は届いていないらしい。

 否定すれどもむしろ大神に引っ付き、駄々をこねだす。

 

 そんな百鬼だったが呂律が怪しくなってきた辺りで、大神によって離されていった。

 

 「大変でしたね、透さん。それにしても、随分と仲良くなられたようで。」

 

 「なんだ、白上も酔ってるのか?」

 

 後ろからシラカミが声を掛けてくる。

 こうは言ったが、白上は酔っているわけではなくただからかってきているだけだろう。

 

 白上は楽しそうにくすくすと笑っている。

 

 「透さんの狙いはミオですか?それともあやめちゃんですか?

  お手伝いしますから必要になったら何時でも言ってくださいね!」

 

 からかい半分だが、恐らく本気で言っているのだろう。

 それにしても、こういうのは本来同性でやるようなやり取りなのではないだろうか。

 

 普通に否定するのも味気ないな。

 どう返そうか考えている時、ふと思いついた。

 

 「えっとな、実は気になっているのが…。」

 

 「いるんですね!はい、誰ですか?」

 

 言えばこういった話が好きなのか白上はピンと耳を立てて目を輝かせる。

 

 「お前。」

 

 「はい?」

 

 指さして答える。

 唐突のことで処理が追い付いていないらしく、白上はきょとんとこちらを見つめる。

 

 「だから、実は白上が気になってるんだ。」

 

 「…にゃっ!?」

 

 もう一度、今度は名指しで答えれば流石に理解できたらしい。

 白上の顔が一瞬で赤くなり、あたふたと挙動不審になる。 

 

 あまりにも劇的な反応につい笑いが漏れた。

 それを見て、ようやく白上も気が付いた。

 

 「じょ、冗談ですか。全く、透さんもやることが幼稚ですね。」

 

 「その割には顔赤いぞ。」

 

 取り繕おうとしているが、顔は紅潮したままだ。

 指摘されて、さらに頬に赤みがさす。

 

 「うぅ、ちょっと夜風に当たってきます。」

 

 そう言い残して白上は横の襖を開けて外に離脱してしまった。

 よし、今回は勝った。

 

 高揚感とは違うやってやったという謎の達成感を覚え、ついガッツポーズをとる。

 

 「…主らはいつもこんな感じなのか?」

 

 そんなやり取りを黙ったまま見ていた神狐が口を開く。

 いつも、と言われても思えば最近はキョウノミヤコに行ったりで、こういったことはそれこそ帰ってきてからだな。

 

 「まぁ、最近はだけどな。」

 

 「そうか…。」

 

 それを聞いた神狐の顔はどこか嬉しそうだ。

 

 「それは楽しそうじゃな。」

 

 何を思ってそう言ったのか、俺が知る由も無かった。

 その後も様々な話をしながら、夜が更けるまで宴会は続いた。

 

 

 





気にいてくれた人は、シーユーネクストタイム。
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