【完結】色づく想ひ    作:ワンダーS

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どうも作者です。


セイヤ祭(下)

 「透さーん、こっちですよー」

 

 集合場所に到着すれば、視界の先で白上が大きく手を振ってくる。

 見れば既に三人共揃っている。

 

 「悪い、待たせた。」

 

 「大丈夫、余もさっき来たばっかりだから。」

 

 何故か得意げな百鬼。

 そこは胸を張るところではないと思うが、百鬼なりに気を使ってくれているのだろう。

 

 「みんな揃ったことだし状況を説明するね。と言っても時間はあんまりないから歩きながらで。」

 

 キョウノミヤコの外れ、人通りの少ない道を歩きながら大神は説明を続ける。

 

 「クラウンはキョウノミヤコでって言ってたけど、実際には少し違うみたい。」

 

 「違うって何が?」

 

 含みのある言い方に百鬼が聞き返す。

 

 「占星術が指し示したのがキョウノミヤコじゃなくて、その外側だったの。」

 

 そういえば今歩いている方向もキョウノミヤコの何処かというよりは、その逆に向かっている。

 

 「うちも忘れてたよ。この辺りで一回ウツシヨとカクリヨが繋がったことがあったでしょ?」

 

 「以前にも…あ、そういえば。」

 

 大神の説明にピンと来たらしい白上の視線が俺の方を向く。

 しかし、こちらに心当たりはなく未だに疑問が浮かんだままだ。百鬼も同じ様に首を傾げている。

 

 「多分分かるのはうちとフブキだけだと思う。

  だってその場所は透君を見つけた場所だから。」

 

 「俺を…」

 

 それなら俺自身が知らないわけはない。そう考えたが…そうだ、カクリヨに来て白上達に助けられた後俺は意識を失い、次に目が覚めた時にはシラカミ神社であった。

 

 一度は足を向けようとしていたがそんな機会もなく今に至っている。

 

 「透くんを見つけた場所だと何かあるの?」

 

 当事者ではない百鬼にとってはあまり理解のしやすい内容ではないだろう、そこに関しては俺も同じようなものだ。

 

 そんな百鬼の素朴な疑問に大神が応える。

 

 「単純に一度開いたことのある場所だから開きやすい環境じゃないかっていう推測もあって。

  だけど、何よりあれを見た後だともう一度開いてもおかしくないって考えても不思議が無いの。」

 

 前者は納得できる、元々原理があまり判明していない現象だ。一度開いた場所をマークするのはごく自然な流れだ。

 

 しかし、もう一度開いてもおかしくないとはどういうことだろう。

 それほどまでに印象的なものだったのか、それとも前例のあるモノだったのか。

 

 「今回も同じかは分からないけど、見てみたら納得はできると思う。」

 

 その言葉に一抹の不安がよぎる。 

 一応そこから出てきたのだが…まぁ、体が消えかけるくらいだ、ロクなものでもないか。

 

 

 

 

 キョウノミヤコを出てそばにある小山を登る。

 小山と言えどもそれなりに標高は高そうで、頂上までは少し時間がかかる。

 

 「透さん、一応これ持っておいて下さい。」

 

 いざその一歩を踏み出そうとした時、白上がそう言って何かを手渡してくる。

 反射的に受けとったそれを見てみれば、手の中にはお守りが握られている。

 

 「白上、これは?」

 

 「念の為の保険みたいなものです。…あ、寺宝なので後で回収はさせて貰いますね。」

 

 「へー、寺宝か…寺宝?」

 

 思わず手の中を二度見する。

 

 これが寺宝?

 どう見てもただのお守りだ。いや、寺宝だからといって特別なものでもないのか?

 

 というか、そんな大切なものをひょいと渡さないで欲しい。

 

 「はい、特にこれといった力はありませんけど持っておいて下さい。」

 

 白上はらしくも無くやや強引に勧めてくる。

 

 今ひとつ意図が理解できないが、まぁ気休めの様なものか。

 あるのとないのとではある方が良い。

 

 それに折角の好意だ、無碍に断る事もない。

 

 「ありがとう、借りとくよ。」

 

 受け取れば、白上は安心したように息をつく。

 それを不思議に思いながらも追及することは無かった。

 

 

 

 

 しばらくして空を覆いつくさんと伸ばされていた木のトンネルが急に開けた。

 辺りには季節外れな花々が咲き乱れており、ここだけ別の世界を切り取ったかのような広間になっている。

 

 「あれ…。」

 

 言って百鬼が指をさした先に視線を向ける。

 なるほど、先ほどの大神の言う通りだ。あれなら確かにそう考えるのも頷ける。

 

 それは穴というには些か乱雑が過ぎた。

 まるで景色の一部を、空間の一部を切れ味の悪いナイフで切り裂いたような。

 

 それは、穴ではなかった。

 裂け目だ。

 

 その先に綺麗な花畑はなく、ただ何も見えない、何もない空間があるだけ。

 あれがウツシヨに繋がっているのか、本当に?

 

 そして、もう一つ。 

 その裂け目の前には誰かがいた。

 

 こちらからはシルエットしか見えないが、確かに裂け目の前に人影がある。

 

 四人で視線を合わせる。

 あれが仮にあの裂け目を発生させた人物だとするのならば、慎重に行かなければならない。

 

 だがその考えは常にその逆の結果を引き起こす。

 慎重であることを意識すればするほど、世界は不条理を突き付ける。

 

 一歩踏み出せば静寂の間にパキリと音が響いた。

 その音に、自分が均衡を破ったことを理解する。

 

 足元には折れた小枝。

 

 人影がこちらを振り向いた。

 その顔は見えない。だが、驚いている様にも見える。

 

 しかし、そこからの行動は素早かった。

 そんな人影は身を翻したかと思えば、凄まじい速度でこちらに迫り、襲いかかってくる。

 

 その手には僅かな光を反射させている刀。

 明らかな敵対行動。

 

 狙いは音の発生源である俺だ。

 

 既に切迫する刃。

 だが、まだ反応できる。

 

 咄嗟に刀を抜き放ち、その軌道上に置いて受け止めようとする。

 刀と刀がぶつかる、そう思われた瞬間だった。

 

 「あ?透じゃねぇ…」

 

 ピタリと触れ合う寸前で刀が止まり、そんな声が聞こえてくる。

 それと同じく俺の心も驚きに満ちていた。

 

 目の前に来てようやくはっきりと見えたその顔が紛れもない、先月出会った同郷の友人、茨明人であったからだ。

 

 明人が声を発したと同時に、俺も声を掛けようとした。

 しかし、明人の声も、俺の声も、途中で途切れることとなった。

 

 明人の刀が止まった後の一瞬、恐らくは俺が刀を構えずにいれば首にそれが当っているかどうかのそんな瀬戸際。

 

 視界の端で、何かがぶれた。

 

 「がふぁっ!?」

 

 次の瞬間、光が明人の顎を捉えた。

 

 まともにそれを食らった明人の体は上空へと上がる。

 高く、高く、まるで打ち上げられた花火のように、その体は舞い上がった。

 

 あまりの出来事に呆気に取られる。

 

 発射源には刀を振りぬいている百鬼の姿。

 

 その心情はいかがなものか。

 舞い上がった明人が音を立てて地面に落ちる。

 

 そして、その場の全員の心をやっちまったという空気が埋め尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ご、ごめんなさい…。透くんが危ないと思ってつい…。」

 

 「俺も悪かった、いきなり切りかかったんだからな。こうなって当然だ。

  ただ…かなり、その…」

 

 その言葉の先は何となく理解できた。

 

 目の前には顎を抑えて胡坐をかいて座っている明人の姿がある。

 少々の怯えを含んだその瞳は、気まずそうに目を逸らしている百鬼の姿を映し出していた。

 

 花火の不発弾となってからしばらくして明人は失っていた意識を取り戻した。

 見事なまでにジャストミートした顎への一撃は無事に、彼の脳を揺らしていたようだ。

 

 この出来事は彼にちょっとしたトラウマを植え付けるには十分すぎる程であった。

 その始まりを作ってしまったのだと思うと申し訳なさが心を包む。

 

 「その…ごめんな明人。」

 

 「ははっ、なんでお前が謝るんだよ。」

 

 乾いた笑い声が響く。

 その顔はもう怖いものは無いと言わんばかりに晴れ渡っていた。

 

 「それにしても…」

 

 そう言うと明人がこちらを見てくる。

 かと思えば、意味深ににやりと笑い寄ってくると、腕を首に回してくる。

 

 「おいおい、透、順調そうじゃねぇか。」

 

 「順調って何がだよ。」

 

 三人には聞こえないように声を落として言ってくる明人に困惑する。

 その顔は先ほどまでとは打って変わって面白がるような笑みが浮かんでいる。

 

 「何ってあの三人との関係だよ。見た感じあと一歩ってところか?

  それで本命は決まったのか、まさか三人同時か。おいおい、面白くなってきたじゃねぇか。」

 

 余程気になっていたのか、畳みかけるように聞いてくる明人。

 何がこいつをここまで駆り立てるのか。

 

 「何言ってんだよ、まだそういう関係じゃないって。」

 

 既にカクリヨに残る決意は出来ている。

 しかし、だからと言ってそんな急にそういう話になるとは限らない。

 

 「まだ…な。ま、その辺のこと今度詳しく聞かせろよ。」

 

 俺の答えに満足したのか、明人はあっさりと回していた腕を解く。

 

 「お話も終わったみたいだし、事情を聴きたいんだけど良いかな。」

 

 それを見計らって大神が声を掛けてくる。

 

 「構わないぞ、それで何が聞きてぇんだ?」

 

 改めて向き直り、明人は真っ直ぐに視線をこちらに向ける。

 

 「ここに居た理由と、何をしていたのかの二つだけ。」

 

 そうだ、衝撃が大きすぎて頭から離れていたが根本的な問題はそれだった。

 あれから明人とは音信不通、何をしていたのかさえ分かっていない。

 

 俺たちがここに来たのはクラウンからの情報があったからだ、だが明人はそんなこと知る由も中田はずだ。

 それなのに、現在明人は目の前にいる。その理由は聞いておかねばならない。

 

 「理由はここで変なイワレの流れが見えたからだな。俺のワザのことは透と黒髪の嬢ちゃんには話してただろ?

  そんでその調査に来てみたらあんなものがあったからな、色々調べてた所にお前らが来たんだよ。」

 

 そう言って明人は空間の裂け目を指さした。

 依然としてその形を変えることなくそこにあるそれは、何処か不気味な存在感を発していた。

 

 明人のワザはイワレの流れをその眼で見ることが出来ると聞いている。

 

 「次はこっちの質問だ。あれについて何か知ってるのか?ここに来たってことはただの裂け目ってわけじゃねぇんだろ?」

 

 「あぁ、あれは…」

 

 明人の質問にここまでの経緯を話す。

 クラウンの事、あの裂け目がウツシヨに繋がっている事。

 

 それを聞いた明人は予想とは裏腹に驚く様子も見せずただ事実を受け止めていた。

 

 「驚かないのか?」

 

 疑問に思い聞いてみる。

 

 もしや既に知っていたのだろうか。

 いや、それならわざわざ聞いてくるわけないか。そうする理由もないはずだ。

 

 「いや、驚いてるぞ。…そういうことだったのか。」

 

 明人は納得したようにしきりに頷いてる。

 そして改めて裂け目へと目を向け、口を開く。

 

 「ただ…残念だが一つ訂正だ。

  あの裂け目はウツシヨには繋がっていない。」

 

 その言葉に俺たちの間に動揺が走る。

 繋がっていない、それが真実であればクラウンの言葉は嘘であったということになる。

 

 ならば、あの裂け目は何なのか。

 

 「あー、悪い、正確にはウツシヨには繋がっているんだろうが、あっちに行くことは出来ないって意味だ。」

 

 「え、それはどうして?」

 

 大神が聞き返せば明人は裂け目に向かって歩きながら付いてこいと手を振る。

 それに従い言われるがままに、俺たちも裂け目へと近づく。

 

 近づくにつれてよりはっきりと裂け目の全貌を捉えることが出来る。

 断面を見ることは叶わないが、それでもその奥行きは確かにここではないどこか別の空間とつながっていることを示している。

 

 「そもそも入れもしないんだ。あれがどこに繋がっているのか確かめようがねぇ。

  …こんな風にな。」

 

 再び裂け目の前に立つと、明人はその手を裂け目の奥の空間に向けて伸ばす。

 しかし、裂け目を超えるか超えないかの地点でその手は見えない壁にぶつかったかのように空中で止まる。

 

 それを見てようやく理解した。

 進まないのだと、あそこより先には。

 

 「つまりどこに繋がっていても関係ないんですね。使うことが出来ないなら無いのと同じということで。」

 

 「そういうことだな。だからウツシヨに繋がってても帰れないなら意味がねぇ。」

 

 明人があまり驚かなかったのはこれをしていたからのようだ。

 

 話し終えると明人は落胆したように小さくため息をつく。 

 それはそうだ、帰れる手段を見つけたのにもかかわらず聞いた時には既にその方法が使えないと分かってしまったのだから。

 

 「…でも、これどうしよっか。」

 

 大神が裂け目を見つめて言う。

 確かに、このまま放っておくというわけにもいかないだろう。 

 

 「イワレで強引にこじ開けてるみたい…一応、透くんのワザでそのイワレを取れば閉じると思うけど…。」

 

 言いながらこちらに視線を向ける百鬼。

 ウツシヨ出身の俺や明人に気を使っているのだろう。

 

 それは白上や大神も同じらしい、結論を出さない辺り俺たちに判断を委ねてくれているのか。

 

 「それなら閉じちまってもいいんじゃねぇか?」 

 

 「俺も賛成だ。残しておくよりは、ここで閉じた方が後々異変が起こることも無いだろうし。」

 

 これで残しておいたためカクリヨが滅びました。なんてことも可能性は低いだろうが無いとも言い切れない。

 不確定要素は潰せるうちに潰しておく方が良い。

 

 それを聞いた三人も肯定し、満場一致で閉じることとなる。

 

 「『結』」

 

 善は急げ。

 前準備も特にはいらないため早速ワザを発動し、裂け目全体を結界で覆う。

 

 これを閉じれば、いよいよウツシヨへと帰る手がかりはゼロとなるだろう。

 俺はそれでも問題はない。だが明人は良いのだろうか。

 

 ちらりと明人へと視線を向ければ、彼は静かに結界が広がっていく様子を見ている。

 その顔には後悔も何もない。寧ろ安心しているようにすら見える。

 

 そういうことなら、問題はないだろう。

 そう結論付けると同時に結界が完成した。

 

 「『封』」

 

 その言葉と同時に結界は収縮を開始し内部のイワレのみを全て余すことなく回収していく。

 やがて結界は手のひら大の塊となり、支えていたイワレが無くなった裂け目はその姿を消し、後には広がる花畑のみが残された。

 

 それを確認すると、明人は唐突に踵を返した。

 

 「明人?」

 

 遠ざかる背に呼びかけると、一瞬明人は立ち止まる。

 

 「今日の所はこの辺でな、もうここに用はねぇ。

  それで…透。」

 

 背を向けたままで名を呼ばれる。

 

 「顔つきが前とは少し変わったな。

  お前はどうするつもりなんだ?」

 

 どうする。

 何をとは聞かなくても分かった。

 

 これからの事、ウツシヨに帰るのか、カクリヨに残るのか。

 

 「俺は…ここで生きて行こうと思う。

  俺にとって、ウツシヨと同じようにカクリヨも大切な場所になった。」

 

 勿論、帰る手段が見つかれば一度くらい親の顔を見ておこうとは考えている。

 だが俺が根を張るとしたらそれはウツシヨではない。

 

 カクリヨに来て、ここで生活してきて、人々に触れあって。

 俺はここで生きて行きたいと思えた。

 

 明人はそれを聞いて小さく笑いを零す

 

 「だろうな。ま、今度相談位乗ってやるよ。

  …その前に、ちゃんと説明しておけよ。」

 

 「説明?」

 

 疑問の声に答えることなく、明人は颯爽と去っていった。

 その背を見送りながら何のことか考えるが、何も思い当る節はない。

 

 考え込んでいると、ふと、やけに後ろが静かだと気が付いた。

 振り返れば白上、大神、百鬼の三人が目を丸くしてこちらを見ている。

 

 それを見てようやくピンときた。

 明人の言葉、そして今の状況。

 

 過去を振り返ってみるが、カクリヨに残ると決めてはいたがそれを三人には伝えそびれていた。

 

 「透さん…今の話、本当なんですか?」

 

 目を丸くしたまま白上が問いかけてくる。

 折角相談に乗ってもらっていたのにこのありさまだ。

 

 バツが悪く思いながらも、改めて口を開く。

 

 「その、聞いての通りウツシヨには帰らないことに決めた。

  例え帰る手段があったとしても考えは変わらないと思う。

 

  伝えるのが遅くなって申し訳ない。」

 

 流石に怒っているだろうか。

 恐る恐る三人の顔色を伺う。

 

 だが現実は無情とは言うが、今この瞬間ばかりは違ったらしい。

 

 先ほどまでの驚きがそれぞれの表情から徐々に消えていけば、次の瞬間には満面の笑みが浮かぶ。

 

 「じゃあ、これからも一緒にゲームができるんですか?」

 

 「それならうちも家事のこと色々手伝って貰うよ?」

 

 「余も透くんと稽古したい!」

 

 白上が尻尾を忙しなく動かしながら。

 大神が穏やかに微笑みながら。

 百鬼が目を輝かせながら。

 

 それぞれが歓迎してくれる。

 その事実が何よりもうれしかった。

 

 「あぁ、白上達が良ければなんだけど、これからも世話になって良いかな。」

 

 「はい、勿論です!

  今さらそんなこと聞かないでくださいよ。」

 

 良かった。

 そう思い、つい安堵から息が出る。

 

 やはり不安もあった。

 

 これで拒絶されてしまったらとはあまり考えたくなかった。

 今まで言い出せなかった理由も、案外これが関係しているのかもしれない。

 

 「透さん」

 

 「透君」

 

 「透くん」

 

 三人にそれぞれ名を呼ばれる。

 彼女らは打ち合わせでもしていたかのように息を合わせて口を開いた。

 

 「「「ようこそ、カクリヨへ!」」」

 

 この瞬間からだろう。

 ついに、俺はカクリヨの住人となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん?何だ、あれ。」

 

 キョウノミヤコに戻ろうとした際、花畑の中にきらりと光りが見えた気がした。

 気になりその辺りを見回してみれば、何やら綺麗な宝石を発見する。

 

 拾い上げてみれば、赤い宝石を付けた指輪が月明りに照らされた。

 

 「これ、確かクラウンの…。」

 

 記憶にあるクラウンの付けていた指輪に酷似していたそれが何故こんなところに落ちているのだろう。

 彼の持っていたそれは今はシラカミ神社の奥に眠っているはずだ。

 

 疑問に思いながらその指輪を結界で覆い、ポケットに入れる。

 何はともあれ、あまり良い代物ではなかったはずだ。

 

 一度持ち帰って場合によってはこれも封じておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、お兄ちゃん!」

 

 「こんばんは、トウヤ君。」

 

 キョウノミヤコに戻れば、約束通りトウヤ君のいる中央の広場へと訪れた。

 やはり祭りの中心地というだけありかなりの賑わいを見せていた。

 

 「あら、透さん。わざわざありがとうございます。」

 

 「いえ、約束しましたから。」

 

 奥からヨウコさんも顔を出してくる。

 かなりの盛況のようで、忙しそうにしている。

 

 「見てみて、これ、僕が手伝ったお花!」

 

 そう言ってトウヤさんが指さしたのは数々の花束の中でも一層大きく、美しい花束であった。

 色とりどりの花が添えられており、この広間を飾り立てている物の中でも上位のモノだ。

 

 正直度肝を抜かれた。

 まさかここまで盛大なものが出てくるとは夢にも思わなかった。

 

 「これをトウヤ君が?」

 

 「えぇ、透さんに褒めてもらいたくて頑張ってたんですよ。」

 

 言われてトウヤ君を見てみれば、その顔には期待が半分、不安が半分浮かんでいる。

 自身はあるけど、気に入ってもらえるか分からない、そんな表情だ。

 

 先ほど、自分も同じだったかと親近感を覚えながら笑って見せる。

 

 「凄いな、トウヤ君!こんなに綺麗な花は初めて見た!」

 

 「ホント?やったぁ!」

 

 お世辞などではない、心からの賛辞をそのまま伝える。

 それほどまでに素晴らしいものだと、そう感じた。

 

 それを聞いたトウヤ君の表情から不安が消え、笑みが浮かぶ。

 

 そんな折、不意に広場が一層騒がしくなる。

 何事かとそちらの方向に目をやれば、何やら音楽が流れだす。

 

 「あら、もうそんな時間。」

 

 「そんな時間…もしかして今から後夜祭の踊りが始まるんですか?」

 

 先日の準備の際に聞いた、後夜祭で踊ったペアは必ず結ばれるという例の呪いのジンクス。。

 しかし、思っていた以上に参加者は多い。寧ろこの場にいるほとんど全員が参加しそうな雰囲気だ。

 

 「あの、ジンクスがあるって聞いたんですけど結構参加するんですね。」

 

 気になりヨウコさんに聞いている。

 

 「ジンクス?…あぁ、縁結びの。あれは結ばれた人たちのみに焦点を置いてますから。

  あまり気にしなくても大丈夫ですよ。」

 

 「あ、まぁそうですよね。」

 

 やはり迷信は迷信であるようだ。

 変に気にしていた自分が少し恥ずかしくなる。イワレがあるからと言えすべての出来事に当てはめるモノでもないな。

 

 「…お兄ちゃんは誰かと踊らないの?」

 

 「え?俺か…俺は…。」

 

 トウヤさんに聞かれどきりと心臓が跳ねた。

 自分が参加するとは考えていなったものだから、返しに困る。

 

 しかし良い機会だ。折角だし誰か誘って参加するのもアリかもしれない。

 そう考えたとき、一人の少女の顔が脳裏に思い浮かんだ。

 

 

 

 『さて、誰を誘おうか』

 

 ->白上

  大神

  百鬼

 

 

 

 




次回から個別に入ります。
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