どうも、作者です。
評価くれた人ありがとうございます。
以上。
「はぁ…穴があったら入りたい。」
セイヤ祭が終わった翌日。
カクリヨでの日常へと戻ってきた俺は縁側に出て一人、昨夜の出来事を思い返していた。
あの後は白上と屋台巡りをして存分に祭りを堪能できた。
それ自体は文句なしに楽しかった。
しかし、問題はその前の出来事。
「ジンクス強すぎるだろ…。」
白上と踊っている時の思考。何が心臓が高鳴るだ。
正気に戻った後もまだ影響が残っていたためか、笑って流せた。
だが一晩が経過し、改めて思い返すと羞恥に焼き殺されそうになる。
忘れられるのなら忘れたい。
思わず顔を覆って寝転ぶ。
本当にあれは何だったのだろうか。
「そんなところで寝ていると踏んじゃいますよー。」
「ん?」
上の方からそんな声が聞こえてくる。
覆っていた手をどけて声の主に目を向けると、そこには今まさに思考の中心にいた人物、白上フブキがこちらを見下ろしていた。
「あぁ、白上。涼みに来たのか?」
「いえ、通りかかったら見かけたので。
今日はあやめちゃんと一緒じゃないんですか?」
白上はきょろきょろと辺りを見渡す。
いつもであれば百鬼と稽古をしている時間帯だ。
なら何故俺がここに一人でいるのかというと。
「百鬼は何処かに出かけたよ。
用事が出来たからしばらく鍛錬は出来ないらしい。」
行先を聞いてみたがはぐらかされてしまった。
まぁ、見たところ楽しそうにしていたから特に問題はないだろう。
そうして今日は一人で鍛錬を行っていたのだが、一人ではやれることに限りがある。
結果、いつも以上に早くメニューを終えてしまい。やることが無くなってしまったのだ。
同じことを繰り返そうにも精神的につらいものがあり、こうして縁側にいたのだ。
「そうだったんですか。
あやめちゃんなら問題はなさそうですね。」
「全くだ、むしろ百鬼がどうしようもできないことの方が少ないだろうな。」
あるとすればそれこそ二ッチな問題か、カクリヨ規模のもの位だ。
大抵の問題は一人で解決しそうな雰囲気がある。
しかし暇だ。
何をして時間を潰したものか…。
「お暇なようでしたら、昨日約束したように一緒にゲームしませんか?」
昨日…。
また思い出しかけたが、そうだ、そんな話をしていた。
やることも無いし久しぶりにやってみたい。
「良いな、それ。今日はゲームをするか。」
「決まりですね、では早速行きましょう!」
機嫌よさげに尻尾を振る白上の後ろをついて歩く。
部屋の方に行くのかと思えば、何故かキッチンの方向へと向かう。
いや、何故かではない。
この行動には覚えがある。
「白上、言っておくがキッチンには大神がいたぞ。」
「…っ!?」
その言葉に白上は驚いたように毛を逆立たせて立ち止まる。
やはりそうか。
大方、キッチンで菓子でも調達しようとしていたのだろう。
確か前にも同じようなことがあり、大神にばれたときにはこっぴどく説教を受けたものだ。
白上は壊れたブリキ人形のように首を回してこちらを振り向く。
「や、やだなぁ、透さん。し、白上は別に隠しておいたお菓子を取りに行こうだなんて考えていませんよ…?」
「目を泳がせながら言っても説得力無いからな。」
指摘してやれば、白上は目に見えてしょぼんと落ち込んでしまう。
しかし、魅力的な提案であることも確かだ。
友人と菓子をつまみながら他愛もない話をし、ゲームをする。
これ以上ないほど楽しいイベントだ。
その欲求に自分が抗えるかと言われればノーと答えざるを得ない。
「考えがある。」
「おーい、大神。ちょっと良いか?」
「なぁに、透君。」
声を掛ければ大神は作業中だった手を止めてこちらへ振り向く。
何をしているのかと思えば、鍋の前に立ち何かを煮込んでいるようだ。
「炬燵の調子が悪くてな、見てもらいたいんだが今大丈夫か?」
そんなところを自らの欲のために邪魔をするのは心苦しいが、これも幸せのため。
丁度炬燵も温度調整が緩くなってたところだったことだし、一概に無駄なことではないはずだ。
「んー、ちょっと待ってね。」
大神は火を止めると割烹着を外す。
そんな大神を連れてキッチンを出れば、白上が隠れている辺りに視線を送る。
後は白上が上手くやることを願うのみだ。
「うん、これで大丈夫だと思う。」
「修理もできるのか…。」
原因さえ特定できればと考えていたが、大神はあっさりと直してしまう。
どうやら衝撃が加わったことで中の取り付けられている装置の位置がずれていただけのようだ。
心当たりが一つあるが、まぁ口にはしないでおこう。
「悪かったな忙しいところを邪魔して。」
「ほとんど終わってたから問題ないよ。
それじゃあうちは戻るね。」
笑顔を浮かべると大神は去っていった。
罪悪感は感じるが、作戦自体は成功した。
あちらの首尾はどうだろうか。
期待半分不安半分で白上の部屋へと急ぐ。
「白上、入るぞ。」
「はーい。」
辿り着き襖をノックしながら声を掛ける。
中からの返事が来たことを確認してから襖を開けて部屋に入る。
そこにはニヤニヤと笑いながらこちらを見る白上。
結果は…聞くまでもなさそうだ。
「まさか、こんな悪戯っ子みたいなことをすることになるとはな。」
「みたい、じゃなくて実際にそうじゃないですか。
ていうか考えたの透さんですよ。」
そうだった。
そう言って笑い合う。
白上は俺と大神がキッチンを離れた後、隠していた菓子類を取り出し部屋まで無事に運搬していた。
これで準備は整った。
「そういえば、白上の部屋に来るのも久しぶりだな。」
言いながら部屋を見渡す。
前に来た時と別段変わった所は見られないが、一か所だけ、明らかに詰まれているゲームの数が増えている。
一体何処から調達しているのだろう。
するとそれを聞いた白上の目がすっと細められる。
「はい、最近透さんはあやめちゃんやミオと一緒にいることが多くて白上には構ってくれませんでしたからね。
覚えてますか?最後にゲームをしたのがいつだったか。」
その言葉に部屋の空気が一転する。
冷や汗が背を伝い、思わず白上から目を逸らしてしまう。
見事に地雷を踏み抜いたようだ。
確かに基本的に鍛錬だったり家事なんかでその二人とはよく一緒にいたが、白上とは何かを二人でということが無かった。
「その、悪かったって。ほら、異変も解決したし、これからはゲームする機会はいくらでも…。」
「ふふっ。」
何とか機嫌を取ろうと焦って弁明していると、それを見て白上が小さく吹きだす。
そこでようやく、自分がからかわれているだけだと理解する。
「おいこら、性質悪いぞ。」
「すみませっ…想像以上に焦っていたので耐え切れませんでした。」
笑い交じりの白上に、お返しとばかりに半目で見返す。
そうだった、こういうことを本気で気にするような奴ではなかった。
「でも、遊べなくて寂しかったのは本当ですからね?」
「分かってる、明日以降もゲームしよう。」
そう答えれば白上は満足そうに頷く。
一人でやるゲームも楽しいが、やはり誰かとやている方が会話や経験も共有できてより楽しめるものだ。
しかし、別にそれは俺でなくとも良いはずなのだが。
「そういえば大神とはやらないのか?
大神なら基本的に時間は空いてるんじゃないか。」
家事をしている時間を覗いても、よくお茶を飲んでまったりしていることが多い。
百鬼や俺は鍛錬に出ることもあるが、大神はそう言ったことをしている様子もない。
聞けば、白上はバツが悪そうに頬を掻く。
「あー、ミオとのゲームは今自制期間中でして…。」
「自制?
何でまた、ただのゲームだろ。」
「はい、ゲーム自体に問題は無くて…その…。」
話しにくそうに言葉を区切る白上に不安が顔をのぞかせる。
一体全体何が起こったというのだろう。
「山が…吹き飛びまして。」
「待て、これ何の話だったっけ。」
予想の斜め上を行く返答につい話の主題を確認する。
ゲームをして何故山が飛ぶ。
爆弾処理に連動でもしていたのか。だとしても山が吹き飛ぶのは相当だ。
「その…、中々決着がつかないモノですから、ならリアルでつけようという話になって。
相手を山の向こうまで飛ばしたら勝ちというルールで遊んでたら、山が飛びました。」
「…」
あまりの顛末に思わず絶句する。
そんな馬鹿な、そう否定しきれない点がまた衝撃を助長し、その話の信憑性を増している。
白上や大神はそこまで常識外れではないと考えていたが、これは改めておくべきだろうな。
「流石に私たちも反省したんですよ!?しばらくは控えようって。
なので今はミオとはできないんです。」
「…なるほどな。それはやらない方が良いな。」
深い意味はないが、これから鍛錬のメニューを倍にしておいた方が良いかもしれない。決して特に深い意味はないが。
しかし、遊びで環境破壊を進める結果になるとは。
何故カクリヨのカミ連中はこうもでたらめなのだろう。
「そんなことより、早くゲームしましょうよ。
透さんとやってみたかったソフトがいくつもあるんですから。」
誤魔化すように話を区切ると、白上は詰まれているモノの中から目当てのソフトを探し始める。
色々と聞きたいような聞きたくないようなことは多々あるが、俺も白上とのゲームを楽しみにしていた面もあるためそれらを飲み込み、白上のソフト探しを手伝うことにした。
「なぁ、白上。」
「なんですか、透さん。」
モニタの前に二人胡坐をかき、コントローラーを握る。
画面内ではそれぞれの選んだキャラクターが動き回り、互いを攻撃し合っていた。
「お前なんか上手くなってないか。そろそろHP無くなりそうなんだけど。」
「気のせいじゃないですかねー。」
白上はそっぽを向き下手な口笛を鳴らす。
絶対に嘘だ。断言できる。
前ならできなかったような高度な操作を軽々とやってのけている。
「さては隠れて特訓してたな?」
「いえいえ、ただやる相手もなく一人で遊んでたら身に付いただけです。」
やはり気にしていたのか横目でこちらを見てくる白上。
痛いところを突かれて、ほんの少しだけ集中力が乱れた。
「隙あり!」
「あぁ!?」
その言葉と同時に操作していたキャラクターが画面外へと消えていく。
「くっそ、汚いぞ!」
「ふふふ、透さんもまだまだですね。
盤外戦術は基本中の基本ですよ?」
そんな基本があってたまるか。
抗議するもしてやったりとほくそ笑む白上には効果はない。
「もう一回だ、もう一回。次は勝ってやる。」
「…透さんって意外と負けず嫌いですよね。」
悔しさに速攻で再戦を申し込めば白上は小さく笑う。
意外とはなんだ意外とは。
「別に負けるのが嫌いなわけじゃない、負けてそのままなのが嫌なだけだ。」
「世間ではそれを負けず嫌いというんですよ。」
呆れたような視線を向けられる。
自分ではそのつもりは無いのだが、白上にはそう見えるらしい。世界の見え方は人それぞれということか。
不思議な気分に浸りながら開けられている菓子をつまむ。
「お、これ美味い。」
ただのクッキーかと思えば中には溶けたチョコのような何かが入っており、今まで食べたことのない味をしている。
ぽつりと感想が口をついて出る。
「ですよね!それ、白上の最近の一押しなんです。
それが好きならこれとかも気に入るかも。」
言われて差し出された菓子を一つ貰い食べてみれば、こちらも先ほどと同じように新感覚の味。
甘いような、ほんのり苦いような、よく分からないがこの味が好みなのは事実だ。
「白上の選んだものって基本外れがないよな。
こういうのどこで見つけてるんだ。」
「それは秘密です。透さんと言えど、そう簡単には教えられませんよ。」
変な所で口が堅い。
しかし、この味を知ってしまったからにはこちらも簡単には諦められない。
「なら、賭けをしないか?」
「賭け…ですか?」
隣で得意げに尻尾を揺らしてい入る白上にそう宣言すれば、白上は尻尾をぴたりと止めこちらへと視線を向ける。
「そうだ、もし次の勝負で俺が勝ったら一つでいい、この菓子の仕入れ先を教えてくれ。」
「ほう、面白いですね。ちなみに白上が勝った場合の要求は白上が決めさせてもらいますよ。」
「当然。」
にやりと挑発的に笑って見せると、白上も応えるように口角を上げる。
決まりだ。
気合を入れなおすようにコントローラを握りなおす。
先ほどの一戦でなんとなく白上の操作の癖は理解した。
後はそれに対する最善を尽くすのみだ。
画面の中でカウントダウンが始まる。
数字が減るごとに緊張のボルテージは上昇し、自然とコントローラを握る手に力が入った。
はち切れんばかりに張りつめられた緊張の糸はカウントがゼロとなった瞬間、解放される。
互いのキャラが駆け、ぶつかり合った。
「むっ…。」
始まりが告げられてから数秒、早くも白上は異変に気付いたようで声を上げる。
そう、先ほどに比べて相手の動きが大きく異なっているのだ。ゲーマーならば何かあると気が付くのも当然だ。
「やはり一筋縄ではいきませんね。」
「あぁ、負けられない理由があるんだ。誰が相手でも勝って見せる。」
「お菓子一つでそこまで本気になられると逆に困惑しますよ。」
口を動かしながらも、手の動きは鈍らない。
むしろ互いにより高みへと昇華されていく。
攻撃と防御その両方を互いが最善のタイミングで行う。
結果どちらのHPも減少しない硬直状態へと陥る。
それがどれほど続いただろう。
このままではらちが明かない。
そう判断し、戦いは盤外戦術へと移行する。
「なぁ、白上。」
「なんですか?」
声を掛ければ白上は画面から目を逸らさずに答える。
集中しているようだ、ならば都合がいい。
「前から思ってたんだけど、白上って可愛いよな。」
「はい…はい!?」
処理に時間がかかったらしく、数秒の間を開けて顔を真っ赤にした白上がこちらへと振り向く。
「そこだ!」
その隙を見逃しはしない。
動きの止まった相手に容赦なくコンボを決める。
「あ、あー!卑怯ですよ!」
「盤外戦術は基本なんだろ?」
自ら言った手前何も言い返せないのだろう、白上はぐぬぬと唸りはするがそれだけだ。
やられたことをやり返すのはこうも気分がいいモノなのか。
しかし、これで何でもありとなってしまったのもまた事実。
白上も当然そのことには気が付いていた。
「そうですか、透さんがその気なら容赦はしませんよ。」
そう言うと白上はゆらりと不気味に尻尾を揺らす。
何をするつもりなのか、と自然身構える。
だが、そちらにあまり意識を割くわけにもいかない。
画面の中では未だにキャラクター同士がしのぎを削っているのだから。
警戒しているところ、ゆらゆらと揺れていた白上の尻尾がこちらへと寄ってきていることに気づいた。
「おい…まさか。」
「透さん、知っていましたか?尻尾は第三の腕ともいうんですよ。」
その言葉に続くように、尻尾が襲い掛かってくる。
「ちょっ、卑怯だぞ、白上!」
「いえいえ、教えた手前基本は忠実に守らないとですから。」
尻尾にくすぐられ思うように操作が出来なくなり、キャラクターの動きが鈍る。
そこに畳みかけるように連撃が加えられ、遂には優位だったHpもイーブンまで持っていかれる。
だが、最初こそ急な襲撃で驚いたが、今度はそうはいかない。
何とか意識を目の前の画面へと移す。
極限の集中力を前に外的要因などないに等しい。
それを白上も察したのか、尻尾も元の位置に戻される。
既にお互いの体力は少ない。
次の攻防が最後となるだろう。
一度距離をとり、改めて向き直る。
互いの動きに全神経を集中させ、タイミングを見計らう。
そして、遂にその瞬間が来た。
キャラクターが前方へと駆ける。
権を振りかぶり、奥の手を繰り出すコマンドを入力して…。
「あ、美味しそうなお菓子だね。うちも貰っていい?」
「ひっ…。」
「あっ…。」
後ろから聞こえてきた声にその手を止める。
手だけではない、緊張により体全体の動きが停止した。
振り向いてはいけない。
本能がそう告げるも、既に逃れようのない未来は確定してしまった。
白上と二人、ゆっくり後ろへと振り返れば、そこにはにっこりと満面の笑みを浮かべる大神の姿。
「あの、ミオ?これはですね…。」
「そうだ大神、会話はたいせ…。」
「二人共。」
弁明は大神の言葉一つで途切れることとなる。
表情を変えないままの大神に、俺と白上は黙って裁定が下るのを待つしかなかった。
「正座!」
「「はい!」」
その後、俺と白上は説教を受け。一週間のお菓子禁止を言い渡された。
気にってくれた人は、シーユーネクストタイム。