【完結】色づく想ひ    作:ワンダーS

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どうも作者です。


個別:白上 4

 

 それはいつものように鍛錬を終えて水浴びから帰ってきた時の事だった。

 

 「あ、透さん。」

 

 「白上、どこか出かけるのか?」

 

 冷え切った体を温めようと炬燵で暖を取っていると、外行の恰好で腰に刀を差した白上が現れる。

 基本的に外出はしない白上がまた珍しい。

 

 「はい、オツトメがあるのでキョウノミヤコにちょっと。」

 

 「へー、オツトメね…オツトメ?」

 

 聞きなれない単語に思わず白上を二度見する。

 

 「オツトメですけど…そんなに驚くことですか?」

 

 驚愕につい口が開く。

 

 やはり聞き間違いではないようだ。

 このような反応をされるとは思っていなかったようで、白上は不思議そうに首をかしげている。

 

 「いや、白上からそんな言葉を聞くとは思わなくて。」

 

 「何ですかその反応は。

  透さんの中で白上はどんな人物になってるんですか?」

 

 言いながら白上は不服そうにジトリとした視線を送ってくる。

 どんな人物も何も…。

 

 「毎日ゲームしてる大食い狐。」

 

 「…」

 

 表情をそのままに白上は無言のまま刀を取り出しハリセンへと形状を変え振りかぶる。

 この間、約一秒以内である。

 

 「あたっ!」

 

 振り下ろされたそれは見事に脳天を捉える。

 いくらハリセンと言えども鉄製のそれはそれなりに痛みを与えてくる。

 

 「一応これでも私はシラカミ神社の神主なんですよ?

  いつもゲームばかりしてるわけではないです。」

 

 いかにも怒っていますといった空気を漂わせながら白上は顔をつんと横に向ける。

 

 「悪かったって。

  けど仕方ないだろ、出会ってから一度もそんな姿見かけなかったんだから。」

 

 カクリヨに来てシラカミ神社に居候するようになってからこれまで、基本的に異変の調査にかかりきりだったのもあるが、それ以外では本当にミゾレ食堂できつねうどんを食べるか部屋でゲームをしてるかの二択であった。

 

 オツトメのために外出している姿など見たことが無いのだ、そう思うのも仕方ないだろう。

 

 「…そう言えばそうでしたね。

  透さんと出会ってからは比較的落ち着いていたのでその必要もなかったんですよね。」

 

 「落ち着いてたって、何が?」

 

 まだオツトメの内容自体は聞いていなかった。

 一概にオツトメ言っても色々とあるだろうし。今のところ想像もついていない。

 

 「ケガレの発生です。

  人的なモノだけでなく人間の活動で自然発生するものですから定期的に払って回らないとなんですけど、ここ最近はめっきり発生してなくて。」

 

 つまり白上のオツトメとはケガレを払って回ることなのか。 

 

 確かセイヤ祭の際にもケガレが発生しなかったと言っていた。おかげで白上とペアで踊り、自分を見失いかけたが…この話は今は良いか。

 ともかく、今まで発生していたケガレが一定期間中発生していなかったと。

 

 「今になってオツトメを再開するってことは、また発生しだしたのか。」

 

 「そうなんですよ。時期的にやっぱり前の異変騒動が関係してたんじゃないかとは思うんですが…。」

 

 まぁ、断定はできないか。

 既に解決したことだし、因果関係は気にはなるが後の祭りだ。

 

 「しかも、今回は一時期収まってた反動なのか発生量が多そうなんですよね。

  正直狐の手も借りたいくらいで…。」

 

 そこで白上は不意に言葉を区切った。

 どうかしたのだろうか、と不思議に思っていると、その視線が真っ直ぐこちらを見ていることに気が付く。

 

 え、何?

 

 「透さんのワザって、ケガレを封印できるんでしたよね。」

 

 「え、あぁうん。できるけど…って、まさか。」 

 

 答えを聞いてきらりと目を輝かせる白上に何となくこの後の展開を察する。

 

 「手伝ってください!」

 

 予想は見事に的中。

 凄まじい勢いで頭を下げる白上に、もう少し位躊躇しろよと理不尽な思考が浮かぶ。

 

 いや、実際死活問題なのだろうとは思うが。

 なんといってもキョウノミヤコは広い。そんな中をケガレを払って回るというのは単純に重労働だ。

 しかも今回はいつもより多いときたものだ、ためらっている場合でもないのだろう。

 

 「分かった、手伝うから頭上げてくれ。」

 

 「本当ですか!」

 

 了承すれば、白上は顔を上げ両手で手を握ってくる。

 その様子に本当に一人だときついということがありありと伝わってくる。

 

 「今から出るんだろ?準備してくるから少しだけ待っててくれ。」

 

 「はーい!」

 

 言い残して居間を後にする。

 準備といっても自室にある刀を取りに行くだけなためそう時間はかからない。

 

 すぐに戻ると白上もそれに気づく。

 

 早速シラカミ神社を出て、キョウノミヤコへと急ぐ。

 身体強化をした上での移動なためそこまで時間もかからずに到着することが出来るだろう。

 

 「それで、ケガレはどのくらい発生してるか分かるのか?」

 

 道中、走りながら白上に気になったことを尋ねる。

 ケガレは封印できるが、その対象が分からなければどうしようもない。

 

 白上は思い出すようなそぶりも見失せずにすぐに答える。

 

 「確か今回は八人がケガレをため込んでるみたいです。」

 

 「八人か…。」

 

 少ないようでいて範囲の広さを考えるとかなり多い。

 キョウノミヤコを東西南北で分ければ一つ辺り二人がいることになる。

 

 それにため込んでいるのなら、程度によらず時間はなるべくかけたくはない。

 

 脳裏には変わり果てた姿でいたトウヤ君が思い浮かぶ。

 あのような光景を見るのはもう勘弁願いたい。

 

 「それは大神の占星術で?」

 

 「はい、最近になってまた精度がある程度戻ってきたみたいなんですよ。」

 

 それは初耳だ。

  

 大神の占星術の精度が異変以降、というか俺がカクリヨに来たせいで下がっているとの話だったが…そうか、戻ったのか。 

 気にするなとは言われてはいたが、流石に自分の影響で不便をかけてはどうしても気にしてしまう。

 

 だが戻ったのなら安心だ。

 

 「そっか、良かった。」

 

 「まぁ、本人は戻ってこなくても良かったってぼやいてましたけどねー。」

 

 「ははっ、なんだそりゃ。」

 

 適当に話しながら走っていれば、間もなくキョウノミヤコが見えてくる。

 このひと月で見慣れた光景に我ながら染まってきたものだと笑みが浮かぶ。

 

 「あ、そうでした。」

 

 キョウノミヤコに入る直前で白上が唐突に振り返る。

 

 「ケガレの感知の仕方を伝えてませんでしたね。

  透さん、シキガミを出してもらえますか?」

 

 「分かった。」

 

 言われるがままにちゅん助を呼び出す。

 

 そうだった、肝心の対象の見つけ方をまだ聞いていない。

 危うく片っ端から封印して確かめる羽目になるところだ。

 

 ちゅん助が出てきたことを確認すると、白上も同じようにシキガミを呼び出す。

 

 イズモ神社でも見た小さな白い狐のシキガミ。

 すると出てきたそのシキガミとちゅん助が近づき、何やら鳴き声を上げ始める。

 

 「なぁ、これって会話でもしてるのか?」

 

 「多分そんな感じなんだと思います。

  白上も何を言っているのかは分からないので断言はできませんが。」

 

 ちゅんちゅん、こんこんとその謎の会話は一分ほど続きやがて終えると彼らはその姿を消した。

 …今のはなんだったのだろうか。

 

 「ともかくこれでちゅん助もケガレを探知出来ると思います。」

 

 「なるほどこれで探せるのか。ありがとう。」

 

 同じイワレで構成されている分、シキガミはケガレの探知に向いているのだろう。

 先ほどの謎の会話でそのやり方のようなものを教授されていたのか。

  

 過程はどうあれ、これで準備は整った。

 

 「確認なんだが合わせて八人からケガレを払えばいいんだよな?」

 

 最後に一応認識をすり合わせておく。

 仮に一人でもとり逃せば相応の被害が出る。それが分かっている以上、そういったリスクは極力減らすに越したことは無い。

 

 「はい、八人です。

  白上は主に北と東を担当するので、透さんは西と南をお願いします。」

 

 「西と南な、了解だ。」

 

 手早く方針を決めると、早速別れてそれぞれの担当する場所へと移動する。

 

 ただやみくもに探すわけにもいかない。

 取り合えず端から順に回ってちゅん助の反応を見ることにする。

 

 結局手当たり次第の調査にはなるが、現状これが一番手っ取り早いのだから仕方がない。

 

 こういう時、大神の占星術のようにピンポイントで場所が分かれば楽なのだが…。

 今度こそ本格的に占星術を教えてもらおう。

  

 今は無いモノねだりをしても仕方がない。

 

 「こい、ちゅん助。」

 

 シキガミを呼び出し、並走するようにキョウノミヤコを駆ける。

 

 セイヤ祭の時ほどではないが道は人であふれている。

 例によって屋根上を走りながら、反応は無いかと確認して回る。

 

 とはいえ、そう簡単に見つかるわけもない。

 ようやく反応があったのは南側の区域がほとんど終わった頃であった。

 

 「この辺り…ってあれか?」

 

 視線の先では妙な人だかりが出来ている。

 

 「あんたが悪いんでしょっ!」

 

 「君だってっ!」 

 

 中心では二人の男女が言い争っており、近づけばそんな声が聞こえてくる。

 鬼気迫る勢いに、見物人たちも面白がるというよりは心配が勝っているようだ。

 

 ちゅん助もその辺りに向かって反応を示していることだし、間違いはないだろう。

 

 「すみません、これはどういう状況なんですか?」

 

 周りに集まっている一人に事情を聴いてみる。

 

 「あぁ、何でもちょっとした言い合いが発展してああなったみたいでな。 

  いつもは仲のいい二人何だがなぁ。結婚も控えてるってのに。」

 

 ケガレは人の悪感情を増強させる。

 いわゆるマリッジブルーの所にでも付け込まれたのか。

 

 ヨウコさんの時は息子がいなくなった心配と恐怖だったか。

 あの時のヨウコさんは最初目も当てられない程に弱り切っていた。

 

 このままケガレが溜まっていくと同じように弱り、最終的には化け物へと変貌する。

 

 「なるほど、ありがとうございます。」

 

 「あ、おいあんた!」

 

 人ごみをかき分けるようにして、中心へと向かう。

 ケガレが原因ならそれを取り除けばすぐに収まるだろう。

 

 「あの、すみません。シラカミ神社の者なのですが…。」

 

 「君がっ!」

 

 「あんたがっ!」

 

 話しかけてみるもどうやら聞こえていないらしく、完璧にスルーされてしまう。

 一応何度か呼びかけてみるが、やはり互いの事しか目に入っていない。

 

 少し心が折れそうになるが、今は置いておく。

 確認は取っておこうと思ったが緊急時だ、許してほしい。

 

 「『結』」

 

 ワザを発動し、二人をそれぞれ結界で覆う。

 いきなりの事で動揺するかとも思ったがざわめいたのは周りの群衆のみで、当人たちはこれでも特に反応は無い。

 

 逆に凄いなこの二人。

 

 「『封』」

 

 結界を縮小させ、ケガレのみを内部に集める。

 やがて手のひら大の球体にになったところで収縮を止める。

 

 こちらに寄せてみてみれば、両方共内部に黒い靄が見える。

 これは前にみたケガレのものと一致している。

 

 ケガレを取ると、流石に違いに気が付いたのか二人は目を瞬かせて辺りを見回し、お互いへと視線を向け合う。

 

 「あれ、どうして喧嘩なんて…。」

 

 「あたいどうかしてた。

  ごめんなさい、みーくん。」

 

 「僕の方こそごめんね、きーちゃん。」  

 

 二人はそう言って抱きしめ合う。

 何とも超特急な和解だが、元々仲の良い二人だと聞くし原因が無くなればこんなものか。

 

 一応二人を囲むように人混みが出来ているのだが、和解した後でも彼らは意に介した様子もなく、男を肩に乗せるとその倍はあろうかという巨大なその女性はこの場から立ち去って行った。

 

 ぽかんとその様子を周りの人たちと共に眺める。

 こんなにも呆然としたのはいつぶりだろう。

 

 そうしていると、突然背中をばんと誰かに叩かれる。

 

 「あんたシラカミ神社の人だったのか。

  いつも世話になってるよ。」

 

 見れば先ほど話を聞いた人がこちらを見て笑みを浮かべている。

 

 「まぁ俺はただの居候ですけどね。」

 

 「でも実際に今もあんたのおかげであの二人が普通に戻ったんだ。胸を張ってくれよ。」

 

 そう言われると何も言えなくなる。

 

 「ところで、他に様子がおかしな人は見かけませんでしたか?」 

 

 若干照れくさいのを隠すように問いかける。

 ちゅん助での探知もあるが情報があるのなら聞いておきたい。

 

 「この辺だと特には聞かないな。

  力になれなくて申し訳ない。」

 

 「いえ、それだけでも十分です。」

 

 ということは南側はこれで全部か。一応確認だけして次は西の区域に急ごう。

 礼を言い、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南側で遭遇したのは結局あの二人だけであった。

 現在は西側の区域を探索している。

 

 一つ誤算があったといえば、ケガレを封じた結界を持ちながらの移動となったことだろう。

 ケガレを封じはしたがその後のことは全く考えていなかった。

 

 どうやって消せばいいのかは白上に聞いていなかったし、これをここで開放するというわけにもいかない。

 そんなわけで現在周りに球体と小鳥を侍らせながら屋根を走っている不審人物のようになっていた。

 

 幸いそこまで注目はされないが、早くこのケガレを消してしまいたい気持ちで一杯である。

 

 そんなことを考えながら走っていれば、再びちゅん助が反応を見せる。

 いったん立ち止まって下の道へと降り、それらしい人物がいないかと辺りを見回す。

 先ほどのように人だかりができていれば発見もしやすいが、あいにくそのようなものは見受けられない。

 

 「でも近くにはいる筈なんだよな。」

 

 ちゅん助を頼りに辺りを歩き回ってみる。

 すると、路地裏へと続く道で蹲っている人影を見つけた。

 

 小汚いローブを羽織っており顔は伏せられていて確認はできない。

 

 「あの、すみません。」

 

 声を掛ければその人物はゆっくりと顔を上げてこちらを見上げる。

 

 「…なんですか。」

 

 見るからに覇気のない様子。

 ちゅん助もこの人へと近寄っているし、これはケガレの影響とみても問題はないだろう。

 

 「シラカミ神社の者です。

  あなた憑いている良くないモノを取り払いに来ました。」

 

 軽く事情を説明するが、生返事が帰ってくるのみでさしたる興味は見せない。

 かなりの無気力にさいなまれているのだろう。

 

 「今から結界であなたのことを覆いますが危険はないので安心してください。」

 

 「…はい、何でもいいですよ。」

 

 了承が取れたところでワザを発動する。

 結界が体を包むが彼はぼーっとしてそれを眺めている。

 

 ケガレに浸かれると異常事態への対応力でも上がるのだろうか。

 いや、ただ無関心になっているだけだな。

 

 一人納得しつつ、結界を縮小させればやはり内部には黒い靄が溜まっていた。

 

 「なんだか、気分が急に。」

 

 目の前の青年の顔色が見る見るうちに良くなり、驚いたように声が上げる。

 

 「あんたのおかげか、ありがとう!」

 

 「え、あ、あぁ。」

 

 がばりと起き上がると手を取り上下にぶんぶんと振られる。

 テンションの上り幅に付いて行けずに、つい言葉が詰まった。

  

 思っていた以上にケガレの影響は大きそうだ。

 

 「他にもいつもと様子が違う人を探してるんですけど、心当たりはありますか?」

 

 「あ、それなら一人知ってる。できればあいつも助けてやってほしい。」

 

 駄目元で聞いてみたが、心当たりがあるとの事。

 これで過程が大幅に短縮できる。

 

 案内してくれるとのことで、前を歩く青年の後に続く。

 

 歩き始めて数分ほどだろうか、とある家の前に到着すると青年はその足を止める。

 

 「ここに?」

 

 「多分、出かけたりしてなければ。朝にはまだ居たんだけど…。」

 

 言いながら青年は家に入る。

 その自然な様子からここは彼の家、または知人の家なのだろう。

 

 ちゅん助も対象が近いことを示すように鳴き声を上げている。

 

 奥に進んでいくと、確かに一人ベットに座っている人物がいた。

 

 「朝から俺と二人揃って気分が落ち込んでて。何かおかしいとは思ってたんだけど、原因を見つける気力すら湧かなかった。」

 

 確かに、今目の前にいるもう一人の青年も無感情な表情でただ茫然と床を見つめている。

 百鬼のように俺はイワレの状態が見えるわけではないが、ケガレに飲まれかけているのではないかと思うほどに、生気を感じなかった。

 

 早く解放するべきだな。

 

 「『結』」

 

 ワザを発動し、同じ要領で手早くケガレを封印する。

 それが終われば悪かった顔色もマシなものとなり目にも光が戻った。

 

 これで一安心だ。

 

 「まっくん、大丈夫か?」

 

 「もっくん…、うん、さっぱりした気分だよ。」

 

 見たところ友人同士であろう二人は互いの手を取り合う。

 

 「ありがとう、おかげで助かった。」

 

 「僕からも、ありがとうございます。」

 

 直球に礼を言われるとどこかこそばゆいモノを感じる。

 だが、悪い気分ではなかった。

 

 「いえ、二人共無事でよかった。」

 

 これで四人目が終了か。

 どれもまとまった場所に発生していたが、こんなものなのだろうか。

 

 そんなことを考えていた時だった。

 

 「それじゃあ、まっくん。」

 

 「あぁ、今日両親に挨拶に行こう。」

 

 「ん?挨拶?」

 

 挨拶とは?

 他人の事情に踏み込むものではないと思うが、思わず疑問が声に出る。

 

 それに対して案内してくれた、恐らく待っくんと呼ばれている青年は照れくさそうに鼻をこする。

 

 「俺たち、結婚するんです。」

 

 「去年のセイヤ祭の時から付き合っていたんですけど、今年のセイヤ祭でプロポーズを受けて。」

 

 「結婚…。」

 

 その答えを反芻するように繰り返す。

 結婚ということは、この二人は恋人同士だったということか。てっきり友人同士だとばかり…。

 

 開いた口が塞がらないとはこのことだ。

 

 そう言えば去年に結ばれた二人の男同士のペアがいるとのことだが、目の前の二人の事だったのか。

 

 「花火が上がっている中で、負けずに真っ赤な顔でまっくんが頑張ってくれて…。」

 

 「よせよ、恥ずかしい。」

 

 …俺は今何を見せつけられているのだろう。

 

 「もっくん…。」

 

 「まっくん…。」

 

 なにやら手を取り合って、二人の顔が近づいていく。

 既に完全に二人だけの世界が作られていた。

 

 このカクリヨのカップルというのは、世界構築能力がここまで高いのか。

 

 「…お邪魔しましたー。」

 

 二人の顔が引っ付く前にそそくさとその場を後にする。

 流石にあの状況で居座れるほど肝は据わっていなかった。

 

 

 

 

 

 まだ反応を見ていない西側の残りの区域を見て回ったが、特にちゅん助の反応は無かった。

 

 先ほどの二人を含めて、合計四人のケガレを払うことが出来た。

 これで半分が終了したことになるが、白上の方はどうだろう。

 

 取り合えず一回白上と合流するか。

 

 ちゅん助に伝言を頼もうと飛ばそうとする。

 その瞬間、急に視界が閉ざされた。

 

 「だーれだっ」

 

 





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