【完結】色づく想ひ    作:ワンダーS

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どうも、作者です。


個別:白上 10

 

 「透さーん!ちょっと来てくださーい!」

 

 白上が表に出てから少しして、外からそんな声が聞こえてくる。

 何か問題でも発生したのか。そう考え、足早に玄関へと向かう。

 

 室外に出れば少し控えめな太陽の光が顔を照らす。

 

 さて、白上は何処にいるのだろうと辺りを見渡せば、意外とすぐにその姿を見つける。

 丁度鈴のある場所の下辺り、ちょっとした段差となっている辺りに腰掛けている。 

 

 それともう一人、白上の他に見覚えの無い、年は大体10辺りだろうかという少女が白上と一緒にいる。

 あの子が鈴を鳴らした参拝者か。

 

 そちらへと向かえば、白上も気が付いたようで軽く手を振ってくる。

 

 「白上、何かあったのか?」

 

 「はい、ちょっと問題が発生しまして。

  あ、こちら近隣の村に住んでいるサヨちゃんです。」

 

 白上が紹介すれば少女は会釈をしてくるため同じく会釈を返す。

 その後軽く自己紹介だけして、本題へと話が移る。

 

 「それで問題って?」

 

 「それが、サヨちゃんの飼ってるペットがいなくなってしまったみたいでして。」

 

 なるほどそれで捜索するのに協力してほしいと。

 しかし、大神がいないこのタイミングとはまた運が悪い。

 

 「分かった、協力するよ。

  サヨちゃん、探してる子がどんな動物か教えて貰っても良いかな。」

 

 なるべく怖がらせないように、サヨちゃんへとペットの特徴を聞く。

 これで泣かれでもしたら正直立ち直れる気はしない。

 

 そんな心配とは裏腹に、サヨちゃんは頷くとゆっくりと話し始める。

 

 「猫のプーちゃん。

  白くて、赤の首輪をつけてるの。

 

  昨日からずっと探してるけどどこにもいなくて…。」

 

 「白い猫か…ありがとう。」

 

 「あの、透さん。なんで一瞬白上を見たんですか?」

 

 昨日から探して見つからないのなら辺りの山の中にいるかもしれないか。

 

 確実ではないが一応シキガミを飛ばせば大神とも連絡が取れるだろうし、ここは頼らせてもらおう。勿論取り込み中であれば、地道に探すしかないが、どの辺りにいるのかだけでも分かれば効率はぐっと上がる。

 

 飛ばすなら白上のシキガミよりは伝令に特化しているちゅん助のほうが良いだろう。

 

 「じゃあ、大神にシキガミを飛ばしてくるからちょっと待っててくれ。」

 

 「透さん、なんで白上を。」

 

 聞こえなーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『一応占星術で見てみたんだけど、シラカミ神社とその飼い主の女の子の住んでる村の間の山中にいると思うよ。

  即急だったからあんまり正確な位置が出せなくてごめんね。』

 

 大神の元から帰ってきたシキガミのちゅん助から言伝を聞く。

 今どこにいるのかは知らないが遠隔からここまで情報がもらえるだけでありがたい。

 

 「十分すぎる、助かったよ。

  ありがとう。」

 

 礼を言伝にして再びちゅん助を飛ばす。 

 通話ができればもっとスムーズなのだが、現段階でそれを実現する知識はない。

 

 神狐辺りなら知ってそうだが、今は良いか。

 とにかく、これで捜索の目途はついた。

 

 足早に二人のもとに戻れば、何やら青い小さな炎のようなものが間でふよふよと浮かんでいるのが目に入る。

 

 「連絡ありがとうございます。

  結果はどうでしたか?」

 

 「ん、あぁ、ある程度範囲は特定できたみたいだ。

  それより、それは?」

 

 たち上がりこちらへと寄りながら聞いてくる白上に答えながらもやはり気になって目が離れない。

 百鬼の鬼火に似ているが、色合い的には別物だ。

 

 現在、サヨちゃんの近くを漂っているそれは熱を発してはいるようだが、比較的低温の炎のようで燃え移る心配はなさそうだ。

 完全にちょっと離れて使える湯たんぽである。

 

 「鬼火ならぬ狐火です。

  以前イヅモ神社に行った際にセツカさんに教えてもらいまして。

 

  流石にちょっと冷え込んできたので。」

 

 それで暖を取っていたようだ。

 太陽は出ているものの、まだ空気は冷たいまま。

 

 そんな中をこの子は歩いてきたのだと思えば、どれだけ大事にしているかが分かるというもの。

 

 「詳しい話は取り合えず中に入ってからにしましょう。」

 

 「そうだな。」

 

 一旦サヨちゃんを連れて室内に移動する。

 居間にある炬燵に入れば、よほど疲れていたようでほっと一息ついて若干うとうとし始めている。

 

 昨日からと言っていたし、朝からわざわざ一人でここまで来る程だ、昨夜もあまり眠れていなかったのだろう。

 

 「お待たせしましたー。」

 

 少しして、白上がお盆に人数分の湯飲みを乗せて戻ってきた。

 礼を言って湯呑を受け取り、揃って茶を飲んで大神から聞いた占星術の結果を二人にも共有する。

 

 「ここと集落の間ですか。

  あの辺りは道をそれたら崖に突き当たることがあるので、どこかで動けなくなっているかもしれませんね。」

 

 近所ということもあり、白上はある程度そのあたりの地理に詳しいようだ。

 

 しかし、崖か。

 別にちょっとした段差程度のものなら問題ないが、標高の高い山はいくつかシラカミ神社からでも見える。

 危険な状況である可能性も否定できないか。

 

 「なら早めに探しに行こう…って言いたいところだけど、サヨちゃんを連れて移動するわけにもいかないしな。」

 

 見たところサヨちゃんは普通の一般人だ。

 イワレによる強化などはできるはずもなく、必然的に移動速度が合わない。

 

 このまま連れて行っても負担をかけることになるだろう。

 

 「んー、そうですね。

  親御さんが心配してはいけないので、一度村のほうに送り届けてからにしますか。」

 

 「そうしよう、サヨちゃんは…って、あれ。」

 

 方針も決まったところで確認を取ろうと目を向けてみれば、既にサヨちゃんは炬燵に入った状態でテーブルに顔を突っ伏して静かに寝息を立てていた。

 

 その様子に白上と目を合わせれば、自然と笑みが漏れる。

 

 このまま寝かせてあげたいところだが、早く探しに行く必要があるのも事実なわけで。

 

 「なら…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「透さん、大丈夫そうですか?」

 

 「多分な、これくらいなら問題ない。

  子供一人くらいなら身体強化無しでも運べるさ。」

 

 心配そうに言ってくる白上にそう返す。

 

 現在シラカミ神社から出発して、サヨちゃんの家のある村へと歩いている。

 村まではそれなりに距離はあるが伊達に毎日鍛えているわけでは無い。

 

 そのサヨちゃんはというと、腕の中で今なお寝息を立てていた。

 

 「因みに、身体強化を使わない理由をお聞きしても?」

 

 「…。」

 

 何となく見当がついているのか阿呆を見るような視線が隣から飛んでくる。

 いや、確かに身体強化をした方が確実に楽なのではある。

 

 しかし、それでは意味がないのだ。

 

 「…また鍛錬ですか。」

 

 何とも言えない目で見られて、若干居心地が悪くなる。

 

 「あー、まぁ、丁度今日の朝は何も出来てなかったなーと思って。」

 

 そんなところにお誂え向きなトレーニングがあるのだ、実行しない手はない。

 そう答えるも、白上は腑に落ちないのか首を傾げて口を開く。

 

 「前から疑問だったんですけど、透さんはどうして鍛錬をしてるんですか?

  別にそれが悪いとかの話ではないんですけど…気になりまして。」

 

 「理由か…。」

 

 そういえばあまり考えたことはなかったな。

 最初は確か少しでも役に立つためにと百鬼に頼んだのが始まりだった。

 

 だが、解決すべき問題も無くなった今。それの必要も無くなったわけで。

 

 「…どうしてだろうな。」

 

 「もしかして、自分でも分かってないんですか?」

 

 全くもって白上の言う通りだ。

 

 習慣になったと言えばそこまでなのだが、どうにもそれだけではない。

 百鬼と鍛錬していたから、これもその百鬼が居なくなっても続けていた。

 

 鍛錬自体は楽しいし、やりがいは感じている。

 この辺りなのか?

 

 「まぁ、複雑な男心が関与してるのは間違いないな。」

 

 「…透さん、自分の事常識人だと思ってそうですけど全くの逆ですからね。」

 

 唐突に失礼な奴だな。最近そんな気がしないでもないからやめていただきたい。

 

 「それにしてもー、そうですか、特に理由もないんですか。」

 

 「白上?」

 

 声を掛ければ、白上はぷいと横を向いてしまう。

 あれ、何かやらかしたか?

 

 「いえ別に、白上とゲームするよりも透さんはその鍛錬の方が好きなんだなーと思っただけです。

  はい、気になんかしていませんし。」

 

 そう言う白上は頬を膨らませて分かり易く拗ねていらっしゃる。

 なるほど、これはマズイ。

 

 「それは悪かったって。

  てかこの話解決してなかったか?」 

 

 セイヤ祭の後くらいにも同じようなことがあった気がする。

 その時は特に気にした風でもなかったが、今さら再燃してしまったようだ。

 

 「むー、しましたけど。

  ちょっとモヤモヤするんです。」

 

 「モヤモヤって…。」

 

 まるで嫉妬でもしているかのような物言いだ。

 実際友人が自分以外にばかり構っていたらそう思っても仕方ないか。

 

 「そりゃ鍛錬も大事だけど、それ以上に白上とゲームするのも好きだから。

  そこは覚えててくれ。」

 

 「…本当ですか?」

 

 横を向いて顔を逸らす白上の耳がぴんと立つ。

 それがどの感情を表しているのかは一目瞭然で会った。

 

 よし、何とか機嫌は戻せそうだ。

 

 「あぁ、本当だ。

  昨日のゲームもまだ一本残ってたし、やるの楽しみにしてるんだ。」

 

 嘘偽りのない本心を伝えれば、更に白上の耳が上に伸びる。

 少し簡単すぎる気もするが、今は好都合なため特に何も言わないでおく。

 

 「もう、それならそうと早く言って下さいよー。

  あ、そういえばまた新しいお菓子を仕入れたので楽しみにしていてくださいね。」

 

 ニコニコと満面の笑みを浮かべる白上に若干の苦笑いが浮かぶ。

 ただちょっと機嫌を直しすぎた気もするが、まぁ問題ないだろう。

 

 道沿いに歩いて行けば、やがて小さな村へとたどり着く。

 小さいながらも施設は充実しており、時折利用する見慣れた銭湯も見える。

 

 「サヨちゃんの家は何処ですかね。」

 

 きょろきょろと辺りを見渡しながら白上が言う。

 

 小さな村ではあるが、それなりに住居も多い。

 しかもそれぞれ似たような作りをしているため、どれがどれだか分からない。

 

 そもそも、サヨちゃんの家自体知らないのだからそれ以前の問題ではあるのだが。

 

 「その辺りの人に聞いてみるしかないか。」

 

 未だ眠っているサヨちゃんを抱えて村の中を歩いていれば、丁度よくこの村の住人であろう青年が前から歩いてくるのが見える。

 

 「すみません、少しよろしいですか。」

 

 「はい?って、シラカミ神社の。

  どうしたんですか?」

 

 白上が声を掛ければ青年は立ち止まり、こちらへと視線を向ければ白上の姿を目にして目を丸くする。

 最寄りの村ということもあり、白上の事は当然知っているらしい。

 

 「この子の家を探してるんですけど、ご存じですか?」

 

 白上が聞けば青年の視線がこちらへと移る。

 そして、サヨちゃんの子を見れば心当たりがあったのか声を上げる。

 

 「あ、サヨちゃんか。

  さっきその子の親が探してるのを見ましたよ。

 

  家はあっち側の端の方です。」

 

 方向を指で指し示しながら教えてくれる。

 探してるということは無断で来てたのか。

 

 これは先に送り届けに来て正解だったかもしれない。

 

 青年に礼を言ってすぐに教えて貰った家へと急ぐ。

 少し歩けば、目的の家へと到着する。

 

 家の前には女性が一人立って忙しなく辺りを見渡していた、恐らくサヨちゃんの母親だろう。

 近づくとこちらに気が付いたのか、その女性は血相を変えて駆け寄ってくる。

 

 「サヨっ…!」

 

 大声で名前を呼ばれてようやく起きたのか、サヨちゃんは目を開けるとその声の出所へと目を向ける。

 

 「ふぇっ?…あ、お母さん。」

 

 母親らしき女性の姿を視界に収めれば、サヨちゃんは呆けた顔で呟くように言う。

 やはり、サヨちゃんの母親で間違いはないようだ。

 

 起きたところでおろしてやれば、サヨちゃんはてくてくとゆっくり母親の元へと歩いて行く。

 

 「っもう、全くこの子は…。

  すみません、うちの子がご迷惑をおかけしたようで。」

 

 無事を確認して安心したのかほっと息を吐くと、今度はこちらに目を向けて頭を下げてくる。

 

 「いえいえ、迷惑だなんて。

  そんなことはありませんよ。」

 

 手をあたふたと振りながら白上が慌てて否定する。

 それを受けて女性もまだ納得はいかないのか、抵抗ありげに顔を上げる。

 

 取り合えず、サヨちゃんの母親にも事の経緯を説明する。

 俺たちがペットの捜索の手伝いをすると知ったときには、目を丸くして驚いていた。

 

 「それで大体の場所は特定できたので、今から探しに行くところです。」

 

 「そんな、ありがとうございます。 

  私たちも探してはいるんですけど、中々見つからなくて。」 

 

 サヨちゃんの母親曰く、今朝も夫婦そろって探しに行こうとしていたらしいのだが、ペットどころか娘の姿まで消えたと軽く騒ぎが起きていたらしい。

 今も父親がペットの捜索に加えて、サヨちゃんの姿も探しているらしい。

 

 帰ってきたことを伝えてあげたいとは思うが、如何せん今から向かう場所とは逆方向に進んでいるらしく、伝えようがない。

 まぁ、帰ってくれば分かることだ、今はペットの捜索を優先させてもらおう。

 

 説明も終えたところで早速出発しようとすれば、不意に服の裾が引っ張られる。

 

 何事かと目をやれば、サヨちゃんがこちらをジッと見ている。

 心なしか、その顔には不安が浮かんでおり裾を掴む手にも力が入っていた。

 

 「プーちゃん、見つかる?」

 

 裾を掴むその手は微かに震えている。

 大事な家族がいなくなれば心配するのは当然か。

 

 二度と会えないというのは、それだけで心をえぐるものだ。

 

 「勿論、俺たちが絶対に連れて帰ってくるから、お母さんと一緒に待っててくれ。」 

 

 「…うん。」

 

 出来るだけ安心させることが出来るように力強く言えば、サヨちゃんの顔に笑顔が戻る。

 それを確認すると今度こそ出発する。

 

 「透さん、少しいいですか?」

 

 村から出てから山の方向へと向かっていると白上に名を呼ばれる。

 

 「ん、どうした?」

 

 横を向けば

 

 「いえ、この先なんですけど、かなり道が悪くて行き当たりに崖があったりするんです。

  身体強化があってもかなりの高所から落ちると命にかかわりますので、それだけ伝えておきたくて。」

 

 白上のその顔はいたって真面目なものだ。

 それだけ危険もある場所であることをそれが表している。

 

 「崖か…分かった、気を付けるよ。」

 

 恐らく見つけることが出来ないのもここを探索することが出来ないのが関わっているのだろう。

 イワレによる強化が出来ればある程度のリカバリーはきく、しかし、普通の状態ともなれば仮に足を滑らせたとして何かにつかまることすら難しいだろう。

 

 念のため、身体強化を行っておく。

 

 「では行きましょうか。」

 

 「あぁ。」

 

 二人揃って、歩みを進める。

 

 二手に別れたい所ではあるが、キョウノミヤコとは違いこの辺りの地形はよくわからない為、二人で同じ場所をくまなく探すことにする。

 

 冬ということもあり、あまり緑が多いわけでは無いがそれでも木々がそれぞれ枝を伸ばし合っており遠くまで見通せるかというと、否と言うほかない。

 

 「これは…骨が折れそうだな。」

 

 「そうですね、普通の野生動物もいるでしょうし…。

  こういう時に限ってミオがいないんですから。」

 

 大神に頼りきりになるのも考えものだが、それを差し引いてもやはり占星術があればと思わずにはいられない。

 

 「そういえば透さん、一時期占星術をミオに習おうとしてませんでした?」

 

 辺りに目を凝らしながら白上が問いかけてくる。

 

 「ん、まぁな。けど精度は最悪だった。」

 

 一応何度か大神に教えても貰いながら挑戦してみたことはあった。

 しかし、どうにも相性が良くないらしく何かを見ようとすると一つのモノを見ようとしているはずなのに、複数反応があったりと散々な結果に終わった。

 

 「ないものねだりをしても仕方ないしな。

  地道に探すしかないか。」

 

 「そうですね。

  幸い色は白らしいですし、見落とすことは無さそうなのが救いですね。」

 

 特徴としては白い毛並みで、赤い首輪をつけている事。

 流石に同じ特徴を持った野生動物はいないだろう。

 

 それぞれシキガミを呼び出し、ちゅん助は空中から、白上のシキガミは木に登ってこちらからは見ることのできない場所にも目を増やし、しばらく歩きながら散策する。

 

 しかし中々それらしい痕跡は見つからない。

 そもそも、思っていた以上に野生動物がいなかった。

 

 考えてみれば、この時期基本的に冬眠する動物も多いのだろう。

 

 「…あっ。」

 

 そんな中、不意に白上が声を漏らす。

 立ち止まった彼女に合わせるように足を止めて、彼女に目を向ける。

 

 「もしかして、見つけたのか?」

 

 「はい、シキガミから反応がありました。

  こっちです!」

 

 言うと、白上は方向を指さしてすぐにそちらへと駆け出す。

 そんな白上の後を追って走っていると、辺りの木々が開けてきた。

 

 ようやく白上が立ち止まったところで追いつけば、改めて辺りを見回す。

 

 端的に言えば、目の前にあるのは崖だった。

 

 前方の遥か下の方に、木々の姿がうっすらと見える。

 下を見るのすらためらってしまう程の高さだ。

 

 「多分、この下の方に…。」

 

 そんな崖の下を覗き込むように白上が端へと近づき舌を見る。

 落ちてしまうのではないかと、冷や冷やとしながらそれに倣えば、少し下の方に岩が人ひとりが乗れるくらいの大きさで平坦に突き出ているのが見える。

 

 そこに…見つけた。

 白い毛並みの赤い首輪をつけた猫が座っている。

 

 恐らくあれが目的の猫に違いない。

 

 何故こんなところにいるのか疑問が湧くが、今は置いておく。

 

 「だけど、どうやって救出する?

  手を伸ばして届く距離でもないだろ。」

 

 「んー、そうですね。」

 

 見たところその突き出た部分は大体二メートルほど下にある。

 これでは腕だけでなく、体ごと伸ばしてもまだ届かない。

 

 「あそこに降りるしかなさそうですね。

  体重も軽い方が良いので白上が行きます。」

 

 「そうなるか…。」

 

 正直あまり気は進まない。

 しかし、現状それしか方法が無いのも確かだ。

 

 現在の持ち物と言えば、いつもの刀くらい。

 他に役立ちそうなものは無かった。

 

 「透さん、登るのと降りるのを手伝って貰っても良いですか?」

 

 「あぁ、分かった。」

 

 そして、猫の救出ミッションが開始された。 

 

 白上の手を掴み足場へと降ろしていく。

 これで足場が崩れたら終わりなため、ゆっくりと慎重に。

 

 段々と高度を下げて行き、遂に足場へと白上の足が着く。

 

 「どうだ?」

 

 これで駄目そうなら、引き上げる。

 白上は軽く足を付けて足場の強度を確認する。

 

 「大丈夫そうです、一旦手を離しますね。」

 

 するりと白上の手が離れる。

 それだけで肝が冷え、本当に問題ないか不安になる。

 

 「よしよし、怖かったですねー。」

 

 そんな心配とは裏腹に、白上はその猫の元まで近づくと両手で抱き上げる。

 猫も助けてくれると分かっているのか、特に抵抗は見せなかった。

 

 これで後は引き上げるだけ、ここまでは順調に進んでいる。

 白上がこちら側へと近づき、猫を抱いている手とは逆の手をこちらへと伸ばそうとする。

 

 「わっ!」

 

 その瞬間、横薙ぎに強い突風が吹いた。

 崖の側面ということもあり、遮るものもなく白上はその風にあおられて少し体制を崩した。

 

 バランスを保つために、白上は横に足を移動させる。

 

 だが、それが間違いであった。

 その部分が脆くなっていたのか、白上の足の乗っている部分の足場が崩れる。

 

 「あっ…。」

 

 捕まるものも何もない。

 掴もうと伸ばした手はただ空を切る。

 

 白上の体は、そのまま宙へと投げ出された。

 

  





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