MTG:Realize   作:四季永

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死滅都市決闘演習

『Game Start!!』

 

 ターン1、有人先攻。

「一応言っとくがオレは厳しい方だぜ。理不尽にディスりはしねーが無責任におだてもしねえ。まあ見せてみろ、お前の戦い方」

「・・・半端じゃ勝てない事ぐらい、分かります」

 有人、土地カード島を配置。この島から青のマナを1つ発生。

「一番手っ!」

 マナにより、クリーチャー『メタリック・スリヴァー』を召喚。

「・・オイ」

「えっ? ズルなんてしてないですよ!?」

 突然呆れの視線を向けられた。最初のターンで。

「いやな、先攻でクリーチャー出したのは良いんだよ。でもそいつ見た時点である程度予想すんだよ、経験のあるヤツは。・・ターン終了で良いのか?」

 火弥後攻。

「じゃあこっちも出させてもらうぜ、遠慮は無しだ」

 火弥、森を配置、緑マナ発生、クリーチャー『実験体』召喚。

「うわぁ」

「内心キモいと思ったろ。けどMTGプレイヤーなら面食いは強くなれないぜ、分かるだろ?」

 このシリーズは不気味さ、おぞましさを隠さず表現したビジュアルのカードも多い。それがウリのゲームではあるし、プレイヤーである以上見慣れてはいるのだが・・・こいつはこんな歪な動きをするのか。

「ターン終了だ。解ってるだろーが小型と侮るなよ、はよ潰さないと膨らむぜ」

 

MTG:Realize

第4話

『死滅都市決闘演習』

 

 ターン2。

(炎樹さんのプレイスタイルは多分速攻型、実験体はクリーチャーが並ぶと強くなる・・・攻められる時に攻めるしか無いっ)

 実験体には進化というキーワードの効果がある。これは他にパワー及びタフネスが自身より上のクリーチャーが場に出るたび、P/Tが強化されるというものだ。故にクリーチャーを並べて戦うタイプのデッキであれば、恩恵は高くなる。

「手は読まれるかもだけど・・・召喚っ!」

 有人、森を配置、クリーチャー『筋肉スリヴァー』召喚。

「予想はしてたが厄介なのが来たな・・」

「遠慮はしませんから! 行けっ!」

 メタリック・スリヴァーで攻撃。先程召喚された筋肉スリヴァーには、場にいる全てのスリヴァー・タイプのクリーチャーのP/Tを強化する効果がある。

「2/2か・・・いいだろ、ブロックだ」

 実験体はスリヴァーに貫かれ、破壊された。

「所謂部族デッキって奴だな。何も悪い造りじゃねえ、今んところ破綻はしてねーみたいだしな」

(・・褒められても油断は出来ないっ)

 

 ターン5。

「やっぱり、大型を出されると厄介だ・・・!」

 火弥は4ターン目に5/5の『カヴーのタイタン』召喚。他にはラノワールのエルフが並ぶ。

「どうやったら攻め口を作れるんだ!?」

 有人は4ターン目に『ヴェンセールのスリヴァー』を召喚。このクリーチャーのP/Tは3/3だが、召喚した2枚目の筋肉スリヴァーの効果によって4/4となっている。だがこれでも事態は好転しなさそうだ。

「言ったろ、真剣勝負って」

 火弥のターンで筋肉スリヴァーは火力呪文『火葬』で焼き払われた。

「ぐほあっ・・・」

「ブロックしなかったか。反撃する計画でも立ててるな?」

 ダメージを受け、有人のライフは15となる。

 痛い。これは比喩では無い。大型クリーチャーに殴られると本来こういう感覚があるのか。

「始めはそんなモンだ。慣れろとしか言い様が無いわな」

「さっ、最初がこれじゃあっ」

 続く文句にも似た言葉は思い浮かばなかった。6ターン目、どうにか立ち上がりライブラリーからカードを引く。

「・・・今度はこっちの番です!」

 カヴーのタイタンが戦意を無くし、穏やかな顔になって眠り始めた。

「エンチャントか! 確かにこの対処の仕方はアリだな」

 エンチャントとは場のパーマネントに憑依する事で効果を発揮する呪文だ。そしてタイタンに憑いた呪文は『平和な心』、攻撃とブロックの参加を不可能にする効果がある。

「いけっ、スリヴァー!」

「本来ならエルフで防御も出来るんだが・・・くらってやるか」

 ヴェンセールのスリヴァーの攻撃は直撃し、火弥のライフは17となる。その後有人はターンの最後に『夢ツグミ』を召喚した。

「炎樹さんもそういう判断するんですね。てっきりノーダメージとかに拘るかと」

「・・あのな、勝負ってのは最後に勝ってなきゃ意味が無ぇの。残り体力でイキるとかそれこそシロートの考えだから」

 何故かハッとした感覚を覚えた。上手くは言えないが、真剣なんだ、この人は。

「じゃあ行かせてもらうぜ」

 火弥は『火打ち蹄の猪』を召喚。このクリーチャーは場に出たターンで攻撃を行える「速攻」を発動させる事ができ、更に山をコントロールしている事によって2/2から3/3へと強化される。

「さてどうする?」

「ブロックはしませんっ」

 

 ターン7。

「ここに来て並べて来たな・・・部族デッキだからそれはそれで正しい攻め方なんだが」

 現在有人のライフは12、戦場には『筋力スリヴァー』と『毒牙スリヴァー』が新たに召喚されている。前者は色が白である以外は筋肉スリヴァーと同じ能力を持ち、後者は自軍のスリヴァーに「接死」の能力を持たせる能力がある。

「ヴェンセールのスリヴァーで攻撃!」

「ぐっ! ・・そいつ一体だけ、か。大分守りに慎重になってるな」

 火弥の視点からして気になっているのは、夢ツグミの存在だ。夢ツグミには対象の土地一つを好きな基本地形へと変える効果がある。

「ああいうクリーチャーを入れてるデッキって事は・・・だがまずはアタッカーからだ!」

 降り注ぐ稲妻によって、ヴェンセールのスリヴァーが粉々になる。現在有人が生み出せるマナは一つだけ、火弥はその隙を突いてリスティックの稲妻で破壊したのだ。

「くっ・・・!」

「顔に焦りが見えるぜ、冷静になんな」

 火弥は見抜く。有人の今抱いている焦りは「負け」を危惧している焦りでは無い。むしろ彼は勝とうとしている。「勝ち」を求めるのは勝負において大切な考えだ、だがそれに固執するのは時として冷静さを失わせる。戦略が勝利の鍵の一つであるMTGにおいてそれを欠くのは痛手となるのだ。

(勝てるのか? いや、そもそも勝てると思ってないのに、何でこんなに熱くなってるんだ? 何でこんなに次のカードを引くのが怖いんだ?)

 手が震えている。友達とプレイしている時はこんな感覚は無かった。だが同時に覚悟もある。相手が強いから、そんな理由で逃げては、勝負を降りてはいけないと。

 

「良い顔じゃねえか)

「勝てるかは分からないです。でも・・・今ここに来たって事は!!」

 

 ターン8、夢ツグミの能力を発動。場に存在する二枚目の森が沼へと変わる。現在有人の場にある5つの土地、五種類が一斉にタップされる。

「おっとこの感覚は・・・お前の手札に来た、みたいだな」

「また相まみえたな、炎樹火弥。今この場においては貴様は敵じゃ、互いに容赦は不要ぞ」

 

 有人、『スリヴァーの女王』を召喚。

「相変わらずピリピリするぜ、大型かつレジェンドクリーチャーってのは」

 涼しい笑みを浮かべる火弥。それはこの勝負を楽しんでいる者の顔だ。

「じゃあボチボチやれる事はやりますかっ」

 火弥の場にある特殊地形『ケルドの死滅都市』の効果が発動される。この土地には無色のマナ一点を生み出す他に、クリーチャーを生け贄に捧げる事で対象にに2点のダメージを与える能力がある。

「動けないなら有効活用ってね」

 生け贄にされたクリーチャーは平和な心で封じられたカヴーのタイタン。この効果により、有人の筋肉スリヴァーが破壊された。

「手を打たれる前に通す!」

 スリヴァーの女王が攻撃に動く。現在火弥の戦場にいるクリーチャーは密林の猿人、ラノワールのエルフ、火打ち蹄の猪の三体。

「簡単は抜かせねえぜ」

 密林の猿人がブロックに参加し、破壊される。スリヴァーの女王は7/7の大型クリーチャー、現在の火弥のクリーチャー達が束になってブロックしても倒す事は出来ない。

「後二体か、これさえ倒してしまえば・・・」

「いいや、残念だがここまでだ。分かるだろ? どんな高性能のカードが回って来ても勝てるとは限らねえ」

 

「今回の妾はここまでか・・」

「あっ・・・・」

 スリヴァーの女王が、いとも容易く沈む。

「そして強大なクリーチャーを倒すのも劇的な手段である必要はない。合わせ技でどうとでもなる」

 火弥が自分のターンで召喚したクリーチャー『火炎舌のカヴー』。4/2のスペックに加え、戦場に出た時に対象のクリーチャー一体に4点をのダメージを与える効果を持つ。続けて火弥は稲妻を併用し、合計して7のダメージ。ちょうどスリヴァーの女王を破壊できる値だ。

「切り札がやられて辛いだろーが、まだゲームは終わっちゃいねえ。集中しろ」

 

 

「強い・・・」

「一ケタまで削れたとこまではよくやったと思うぜ、お疲れさん」

 結果は火弥の勝利。ゲーム終了時の彼のライフは8。

「でも悪い気は無かったです。何というか本物のプロと戦えた気がして」

「そう評価してもらえるのも悪い気はしねーが、パンピーには知られないぜ? 裏の世界って奴だ」

 自分の事情をサラっと言ってのける、自分はまだ出来ないのだろう。今の有人にとっては、火弥のその姿は純粋に敬意を表す存在に見えた。

「帰る前にメシでも食ってくか? ギャラリーも盛り上がってらっしゃるしな」

 ゲームに集中していて気付かなかったが、闘技場の観客席は大盛況だった。観客達は二人の闘いに健全に沸き立っていたのだ。

*

「勝手に連れ出して勝手に試験じみた決闘を行い勝手に入隊を許容・・・面白いエースもいたもんだね」

「全部バレてました司令? ・・・ヤバッ」

 一服中にやんわりと圧を掛けてくるのは、この男なりのいじりなのだろうか。

「問い質すなら一点だけだ。本人の意思は尊重したか?」

「・・当たり前じゃないっすか。釘は一応刺したつもりですけど、どうしてもオレ達がヒーローに見えてしょうがないみたいすよ」

「憧れ一辺だけで戦地に赴くのはとても危険な考えだ。火弥なら解ってると思うが」

「あいつの人生の上で必要だと判断したんです。目覚めるのも躓くのも、意味があると思うから」

*

「馬鹿ぁぁぁぁっ!!」

「でぇぇぇぇッ!?」

 朝、出会い頭に思い切りの平手打ち一発。そして、

「まったくあんたって男は・・! 座りなさいそこっ!!」

 説教が始まる。この展開は経験済みだし予想もしていたが、今回は少しばかり彼女の目が潤んでいる。なのに声の圧は普段以上、攻めも返しもイマイチな有人としては大人しく受けるしかない。

「まず!! 何で連絡もせずに学校来てんのよ!?」

「そりゃあ学校あるから来てるだけじゃん」

「あんたねえ!! 誘拐されてよくそんな間抜け面してられるわね!? それが急にこうして朝出会うもんだから」

「えっ僕誘拐されてたの?」

 

「おーい何んなとこで正座してんだ? 遅れっぞー」

「・・・・炎樹さん?」

「ああそんな顔してるとこ悪いがそれの件については後な。オレはカードショップで働いてるって事になっとるからよろしく。彼女は大事にしろよ?」

 

「何だったんだ今のは・・・」

 有人が非日常に飛び込んでいた間、どうやら見慣れた世界に何かの干渉があったらしい。日常と非日常、その二つの世界には昂るモノもあれば、面倒なモノもあるのだと、有人は呑気に納得していた。

 

 

続く

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