ここは図書室。そこで,左の子を好きな少年と右の子が好きなのかわからない少女がいた。その子たちの座る椅子のテーブルには、一冊の本が置いてあった。これはその本の一節である。
ものに対する好きと人に対する好きはやはり違う。そもそも好きとは,“自分以外に人に興味を持ち,精神的,肉体的に関わりを持ちたいと思い,心が惹きつけられる”と言う意味である。しかしそれはあくまで辞書上での意味である。確かに大方合ってると思う。でも,好きとはそれぞれだ。だから一括りに好きとはこういう事だとは、言えない。
「へーそうなんだ。」
「どう?なんかイメージ湧いた?」
「ううん、全然わかんないや。」
「そっか…」
「ごめんね,輝弥くん。」
「え,なんでエマさんが謝るの?」
「だって,好きがわからない私のために色々してくれてるのに……」
「気にしないでいいよ。僕がしたくてしてる事だから」
こういう風に人にしてもらったのに自分は何もできなかった。という状況になった時,彼女はひどく落ち込んでしまう。それをどうにかしたい僕
「そういや最近どう,スクールアイドル」
「ん〜特には変わったことなんてないよ。」
「そうなんだ。また遊びに行っていいかな?」
「いいよ。おいで,輝弥くんが来てくれると私も嬉しいから」
「うん。じゃあ今度遊びにいくよ」
「あ,もうこんな時間!そろそろ同好会行くね。」
「うん。頑張ってね。いってらっしゃい」
「ありがとう。またね。行ってきます」
そう言って手を振りながら彼女は図書室を出て行った。
(好きか〜今言われると好きってなんなんだろ。)
そんなことを思いながら俺は窓の外を見る。その日は雲一つない快晴だった。それを見た僕は「眩しい」や「綺麗だな」とは思わなかった。こんな中でも僕は……
「エマの心をこの空のように,明るくできたらな。」
そんなことを言いつつ、僕は本を閉じ,帰る支度をした。
するとその時だった。
朱衣「輝弥先輩,どうもです」
「あ,朱衣くん。愛さん元気?」
朱衣「はい。おかげさまで」
「そっか、よかったよ」
朱衣「そういえば,輝弥先輩,今日同好会顔出しますか?みんな行くらしいんですけど…」
「あ,そうなんだ。じゃあ、せっかくだし行こうかな。」
朱衣「そうですか。」
「朱衣くんは行かないの?」
朱衣「今日,バスケ部の助っ人で呼ばれてて…」
「そうなんだ,さすが,部室棟のヒーローだね」
朱衣「それほどでもないですよ。それで,多分侑さん…部長さんがなんかいうと思うので,助っ人って言っておいてくれませんか?」
「あー,そういうこと。わかったよ」
朱衣「ありがとうございます。それでは失礼します。」
「うん。頑張って」
そういう時ペコリと頭を下げて図書室を後にする朱衣
(やっぱり,あのぐらい身長あった方がいいんだろうな)
毎回思う。エマさんと自分が釣り合ってないんじゃないかと。同好会のみんなと付き合っている男子は僕より身長が高い。最低でも7センチ差はある。しかも,好きなエマさんにすら届かない。今まで,周りに比べて,少し低いだけとしか思ってなかった身長が,好きな人よりも低いことを思うたび,自分に対する悲しみが込み上げてくる。こういうことを言うと,「個性だから大丈夫だよ」,「そのうち伸びるよ」とか言われる。なら逆に聞こう。身長が低い個性とは,なんの役に立つ?そのうちとは,具体的にいつ?そんなことを党の本人にではなく,頭の中で,ただ唱える………誰も答えるはずがないのに
僕は元の棚に本を戻し,同好会の部室へ向かった。
部室につき,僕はドアをノックする。すると,中から元気よくひとが出てくる。
侑「はーい、あ,輝弥さん。こんにちは」
「こんにちは」
中から高咲さんが出てきた。しかもすごくテンションが高い
「なんかあったの?」
侑「そうなんですよ!さっき全体で合わせたんですけど,その時のシンクロ率が高すぎて,ときめきっぱなしなんですよ〜!!」
「あ〜,そうなんだ。それで,みんな来てるの?」
侑「みんなってなんですか?」
「あれ,今日みんな来るって言ってたんだけどな、男子」
侑「え!そうなんですか?!」
「うん」
侑「そうだったんですね。立ち話させてすいません。中どうぞ」
「ありがとう。お邪魔しまーす。」
中に入ると,それぞれが,各自の定位置で個人練習をしていた。それから続々と彼氏たちがきた。そしていつの間にか、朱衣と敏樹だけになった。朱衣は助っ人で来れないと報告済みだ。
そして休憩していた時にたまたま敏樹が来たらしく、その話で盛り上がっていた。すると凪が……
凪「それより,雑談で時間なくなるけどいいの?」
みんな「あーー!!」と言って散らばっていった。しかしその時辺りは再び騒がしくなった。
かすみ「ひゃう!!」
かすみちゃんがラジカセのコードにつまずいて、頭を打った。その後彼女は気を失った。
その時亡くなったように見えたのか,エマが膝から崩れ落ちた。
せつ菜「そんな…かすみさん!かすみさん!」
エマ「嫌だよ,かすみちゃん……」
僕はそんなエマさんを見ていられなかった。
「エマさんもせつ菜ちゃんも落ち着いて,気を失ってるだけだから」
なんで自分があんな動きができたのか,わからなかった。
「ほんと?」
そう言いながら,彼女は上目遣いでこちらを見た。
「うん。だから大丈夫だよ」
そう言った時,僕は彼女の頭を撫でた。その不安な顔を少しでも和らげたかった。その時,彼女の顔はほんの少し赤みがかっていた。
その後,快斗に敏樹を呼ぶように頼んで,自分はかすみちゃんを抱いて、保健室へ向かった。歩いていると,侑が後ろから走ってきた。そのまま何も話すことなく,保健室へ向かった。
そして,ベットにかすみちゃんを寝かせ,侑がおでこに冷えたタオルを置く。
侑「これで大丈夫ですかね?」
「大丈夫だよ,寝ればある程度は良くなるよ。」
侑「そうですか。ならいいんですけど」
「そういや,部長がこっちきてよかったの?」
侑「悠雅がこっちは俺がって言ってくれたので」
「そうなんだ。相変わらず仲良いね」
侑「そんなことないですよ。//輝弥さんはどうなんですか?」
「僕は……」
「中須さん!!」
とあわてて敏樹が入ってきた。その後敏樹の願いで、僕たちは保健室を後にした。
侑「ほんとによかったの?」
不意にきたタメ口に戸惑いつつも僕は答えた。
「大丈夫でしょ。かすみちゃん今日敏樹くんが来てから、ずっと何か引きずってる顔してたから。」
侑「そうだったの?部長なのに気づかなかった…」
「微細なことだったからね、それに目覚めた時に1番最初に見るのは、彼氏の顔がいいでしょ。」
それで会話は終わり,部室に向かって歩く。その時僕はふと思ったことを侑に聞く。
「そういえば、高咲さん。」
侑「ん?何?」
「なんでタメ口になったの?」
その回答に俺は驚くことになる。
侑「同好会全体として絡んでいくんだから,距離を詰めて行かないとじゃないですか。だからタメ口です。」
僕は,三年生に見えないからだと思っていた。しかし侑が答えたのは,全くの別の答えだった。
「そっか〜さすが部長。」
侑「えへへ〜それほどでも〜」
「あと,さっきの話だけど,僕は,付き合ってないけど,彼女が好きだよ。」
侑「そうですか。うまく行くことを願ってます。」
侑の言葉で重りが外れた気がした。今まで何かに繋がれていた体が軽くなったような気がした。
そして部室に着くと……誰もいない。誰かの配慮でみんなを帰らせたみたいだった。
「僕残るから,帰っていいよ」
侑「部長ですから,いるよ!」
「悠雅のことだから,多分待ってるよね?」
侑「それは……」
「行ってあげて、意外と心配性だから」
侑「わかったよ。お疲れ様」
「お疲れ〜」
それから部室の中でポツンと一人でやることもなくぼーっとしていた。すると,ドアから,ノック音がした。
(敏樹かな。帰れるかな)
そんなことを思いつつ、ドアへと歩き出した。
「はーい」
そしてドアを開ける。
「輝弥くん」
「え,エマさん?!なんでここに?」
「かすみちゃんは?」
「大丈夫だよ。敏樹…彼氏がついてるから。」
「そっか。ならよかった。」
「とりあえず入って」
そうしてエマを中に入れる。
その時ふと思った。部室に二人きり。しかも好きな人……
(この状況は自分の理性が持ちそうにない。まずい、これは,勢いで告っちゃいそう…)
「輝弥くん」
「は,はい?!」
急に声をかけられたから,驚いて,声が裏返る。
「頭撫でられた時…ドキドキして,他の人にされても,なんともなかったのに,輝弥くんにされた時だけ,ドキドキしたの。これって……好きってことなのかな。」
「エマさん,それだよ!それが好きってことなんだよ!よかったじゃん。」
これで自分の役目が終わりかと思うと,少し寂しいけど,エマさんが好きをしてたから,それで十分すぎる。
「ねぇ,輝弥くん。私たちみんなみたいに,付き合ってみない?」
「………えっ?」
僕はその言葉を一瞬理解できなかった。
「え,エマさん,付き合うってどう言うことかわかってる?」
「ん〜わかんないけど,輝弥くんとだったら、わかる気がする。」
そう言って彼女はニコッと笑った。
「ダメ?」
そんな顔されたら断れるはずないだろ!!
「う,うん。いいよ//」
「じゃあ、恋人の印//」
「えっ……//」
その瞬間何かが,僕の頬に触れる。それは,少し湿っていて,くうきが流れ,話した時に,チュッていう効果音を立てた。
そう。僕は,恋人の印にほっぺにキスをされたのだ。
「やっぱり,初めてのキスだから,恥ずかしいよ〜//これからもよろしくね。輝弥くん♪」
「うん。よろしくね//」
僕は,この子の行動言動を予想できる気がしない…
その後,お返しにエマさんのほっぺにキスをしたが,した本人の方が,恥ずかしくなるのだった。