「お待たせ。ずいぶん早いねかすみちゃん」
「そ,それは…たまたま近くに出かけてて!」
今日は待ちに待ったかすみちゃんとクリスマスデートで確かに自分も浮かれていて,集合場所に20分前には着く予定だった。しかしそこにはすでに彼女の姿があった。
そして自然と手を繋ぐ。まだ慣れてない2人とも赤くなる。そのままなんにも話さないまま,昼間の道を歩く。
「ヘクシュン…」
「敏男寒いの?」
「ゔんざぶい…」
俺の格好は服の上にコートを羽織っているだけだった。かすみちゃんのように,ニットもマフラーも手袋もしていない。
「じゃあこの優しいかすみんが、この可愛い手袋を貸してあげる」
そして自分の手から手袋を取って俺に渡してくる。
「ありがとう,かすみちゃん。でも,これは…可愛すぎる…かな〜」
「でしょ〜!!」
それはもこもこで暖かそうだが,花柄のピンク。流石に男子がつけるのは気が引けた。
「これ着けてないと,かすみちゃん寒いでしょ?」
「かすみんのことは気にしないで,つけて!」
少し口調が強くなるかすみ。その後俺はかすみの手を引く。かすみは急なことに驚いて何も言えない。
「これは俺の手には小さすぎるから、かすみちゃんが着けて。」
「じ、自分でできるから//」
「そうだね。このまま行ってたら,絶対かすみちゃん折れなかったでしょ?」
「かすみんだって,小さいって言われたら折れるよ!」
「ふーん、そっかー」
「流さないでよ!」
そしてかすみの手に手袋を着け終えると…
「その…ありがと…//」
「その手袋はやっぱりかすみちゃんが着けた方がいいね。可愛い」
「かすみんが可愛いのは当然です……//」
「そうだったね。かすみちゃん」
「今こっち見ないで…」
「ねぇ,かすみちゃん。手袋さ,俺のこと思って貸してくれようとしたんでしょ?」
「………うん」
彼女は少し涙目だった。
「そっか、ありがとう。その代わりと言ってはなんだけどさ,手袋買いに行かない?」
「へ?」
「かすみちゃんが心配してくれたんだから,それに応えないとね」
「急になんで?」
「ん〜いい機会だから買おうかなって。」
「じゃあここの近くにいいところ知ってるから,行こう〜」
「さすがかすみちゃん。物知りだね。」
そして俺は手袋を買って,それをはめる。選ぶ時にかすみちゃんが色々選んでくれて少し嬉しく思いつつ,気恥ずかしい俺がいた。
そして時刻は16時半。あたりはすっかり暗くなっていた。空に星は見えなかった。だがその代わりというように雪が降っていた。
「敏男,敏男!雪だよ!!」
「ほんとだね。」
それを温かい屋内から見る2人
そして彼らは近くにあってベンチに腰掛け,荷物をそこへ置く。
「この一年あっという間だったね。」
「うん。そうだったね…」
「そんな寂しがらないで。また来年あるじゃん。」
「だって、楽しいから……楽しかったら,その分流れる時間も早く感じるからあっという間に終わっちゃうんだもん。」
彼女はそう言いながら,膝を丸める。そしてうっすら涙目になっていた。
「それって確かに楽しいけどさ,すぐ過ぎちゃうんだよね。それってなんか悲しいもん。」
「かすみちゃん…」
「あ,ごめん。かすみん変なこと言っちゃって。はい!ここでこの話はお終…「確かに変だよ。だって矛盾してるもん。今の。」
かすみが話を切ろうとした時に彼は入ってきた。その眼差しを彼女は真っ直ぐ見つめる。
「確かにね。これから色々あるかもしれないよ。受験とか就活とかあるよ。じゃあ逆にあっという間じゃなかったら,その一年は楽しいことが何もなかったって言ったら,それはないじゃん?だからさ,かすみちゃん。あっという間っていうのは充実感。その年にいろんなことがあったから何もなかった日が薄くなってるんだよ。悲しくなるのはかすみちゃんが一年を大切に生きた証拠だよ。」
「…かすみん,深過ぎてわからないけど,敏男ありがとう。なんか安心した。」
「まあ〜難しいかもね〜でも良かったよ」
この静かに振り続ける雪を俺たちは吸い込まれるように見入った。外に溶け込むように静かな俺らの空間はショッピングモール内の空間から隔離されていた。
そして,その空気感を俺は壊した。
「そろそろ帰ろっか。かすみちゃん」
「………」
その言葉に彼女は反応しなかった。ずっと見入っているのかと思った俺はかすみちゃんの方を見る。彼女は,外を見ていた姿勢から動いてなかった。やはりずっと見入っているんだと思った。確かにホワイトクリスマスなんて滅多にないことだ。見入ってしまうのも仕方ない。
「かすみちゃん…かすみちゃん!」
「……うわ!あ,ごめん敏男」
気を引こうと彼女の体を少し揺すった時,その細身の体がビクッと震える。それを見て俺は自分が思っていたことが間違っているということに気がついた。
「かすみちゃん,寝てた?」
「…うん。ごめん敏男。でも,かすみんの可愛い寝顔が見れたでしょ?」
「いや,寝てると思わなくて,見てない。」
「あーあ,もったいないな〜敏男〜」
「まあ〜かすみちゃんといればいつでも見れるから、いいよ」
「//かすみんの寝顔はそんなに安くないです!」
「そうだね。じゃあ、そろそろ帰りますか〜」
「うん。帰ろう。敏男」
その時見せた彼女の満面の笑みを俺は生涯忘れないだろう。そして俺たちはイルミネーションで明るく照らされた道を手を繋ぎながら歩く。手を繋いで入れ,俺の手袋は意味をなさなかった。
「ありがとう。かすみちゃん。」
「ん?どうしたの?急に」
「いやこの数ヶ月,かすみちゃんといたから、すごく充実してたなって」
「何その言い方〜まるでもう終わりみたいな言い方するじゃん!」
「あ,ごめん。これからもよろしくね。」
「//かすみんだって,敏男がいたから…楽しかった…」
「可愛いよ」
「//い、今は可愛いいうな〜!!」
そのまま俺たちは,虹色に光り輝く道を駅まで走った。