それは昼下がりのこと。今日は待ちに待ったクリスマス…にも関わらず、親は2人で毎年の旅行,兄さんと歩夢ちゃんと侑の4人で過ごしていた。例年ではそのはずだった。しかし今年は違った。親はもちろん居ないが今日は,兄さんも朝待ち合わせがあるとかで出かけて行った。その時…
「あれ,兄さんどこか行くの?」
「ああ,今日侑と用があってな。クリスマスだし」
「そっか,問題だけは起こすなよ」
「わかってるわ!お前は俺の親か!」
「まあ〜母さんいないし,兄さん家事何もしてくれないじゃん。」
「だってできないんだからしょうがないだろ!!よく機械壊す機械音痴のお前が壊したもの直すのどんだけ大変かわかってんのか?!」
「そ,それを言われると何も言えない……そういえば,今日みんなで集まるの?」
「いや,俺は特に聞いてないかな。お前も歩夢と過ごしたいです?」
「え!い,いや〜まあ〜…うん」
「じゃあ,今年はそれぞれのカップルで過ごすか」
「そうだね。」
そして彼はハンガーにかかっているコートを羽織り,荷物を持って、玄関で靴を履く。
「じゃあ乃亜行ってくる」
「おん。いってらっしゃい。楽しんでこいよ」
「ああ,乃亜もな」
「余計なお世話だっての」
そして彼はこれからのことが楽しみなのか、満面の笑みで玄関を出て行った。
そして俺は伸びをする。するとインターホンがなる。
「はーい」
「あ,上原です」
「歩夢ちゃん,今開けるね。」
俺はドアを開ける。
「こんにちは。乃亜くん」
「こんにちは。歩夢ちゃん」
「さっき悠雅くんに合ったんだけど,今年はみんなで集まらないんだってね。」
「あ,うん。そうなんだよ。毎年集まってたから、少し物悲しいね」
「うん。でも,乃亜くんいるから、2人でしかできないことも…できるから//」
「//う、うん。そうだね〜」
そこから直立したまま,無言の空気が流れる。
「乃亜くん?」
「あっ,ごめん。立ちっぱなしだったね。中入って。」
「お邪魔しまーす」
「洗濯物とか取り込むから少し座って待っててね。」
「あ,私も手伝うよ。」
「あ,ありがとう〜じゃあ、取り込んだもの,畳んでくれない?」
「うん。わかった。」
そのまま時間が過ぎていく。そして洗濯物ついでに家事を大体終わらせてひと段落して2人でソファーでくつろぐ。
そして俺は彼女に淹れたてのココアを歩夢に渡した。
「はい。ココアだよ」
「あ,ありがとう。乃亜くん」
そのまま2人はココアを啜る。
「そういえば何も作ってないけど,どうする?」
「あ,お母さんからチキンとかだったら、もらってきたよ。」
「そっか,じゃあ,まだ時間あるから,ケーキでも作る?ちょうど生クリームとか生地もあるし」
彼は冷蔵庫から材料を取り出しながらそう言う。
「乃亜くんってケーキ作れるの?」
「ん?そうだね〜母さんがよく作ってて,それ手伝ってるうちに,できるようになってたかな。」
すると歩夢は俺の二の腕をぽこっと殴った。いつもそんなことしてこないのに急にしてきたから俺は戸惑いを隠せなかった。
「…え,歩夢さん?どうしました?」
「私より女子力高いなんて夫がお嫁さんみたいでなんか複雑だなって。しかも婿入り修行ならわかるけど,婿が嫁入り修行してるみたいなんだもん//」
彼女は頬を膨らませる。よほど悔しかったのか,ずっと体を振っていた。
「………//」
「どうしたの?乃亜くん」
「いや,あの,未来の話は、わからないからね//」
俺は恥ずかしくなり、思ったことを飲む。初めは歩夢も首を傾げたが,しばらくしてはっとしたように思いつき顔を赤くして俯く。
「あ…ご,ごめんね//」
「ううん。いいよ。その時は俺が歩夢ちゃんのことを嫁にもらうからさ」
「もう!乃亜くん!!//」
「ごめんごめん。じゃあ,ケーキ一緒に作ろっか。歩夢ちゃんの嫁入り修行のために俺が教えるよ」
「うん。一緒に作ろ。」
「じゃあ,何層がいいとかある?」
「いつも乃亜くんのお母さんが作ってるのって何層なの?それ作ってみたいな」
その彼女はどこか楽しそうだった。
「俺らで食べるんだし,一層でいいんじゃないかな?」
「でも,せっかく作るんだったら,悠雅くんと侑ちゃんにも食べてもらいたいな。」
「それもそうだね。じゃあいつも作ってもらってる二層のケーキ作ろうか」
「えへへ,ありがとう。乃亜くん」
それから歩夢ちゃんと、ケーキを作り出した。種類は毎年お馴染みのショートケーキだった。黙々と生地にホイップをかけて広げていく。
「歩夢ちゃん,イチゴの他にも上に乗せてチャレンジしたいのある?」
「そうだな〜みかんとかどうかな」
「ん〜そうだね。ちょうどあるから蜜柑のショートケーキ作ろう」
「クリーム塗り終わったよ」
「オッケー,じゃあ,それ下の層にするから,蜜柑一欠片ずつ大中小の丸を大きい順に並べて」
「わかったよ」
また黙々とそれぞれの作業に没頭した。話題がないわけではない。2人とも根が真面目なだけなのだ。しばらくして2人同時に顔を上げる。
2人は何かを察したように顔を見合わせる。そして乃亜が作っていた生地に蜜柑を乗せ,それをケーキサーバーで掬って,歩夢が作っていたケーキに乗せる。その後それを冷蔵庫に入れた。
「ふーこれであとは一時間待てば食べられるよ」
「お疲れ様。ケーキって結構大変だね。」
「でも,歩夢ちゃんが一緒に作ってくれて助かったよ。1人だと一層作っては冷蔵庫に入れての繰り返しだから」
「私もいい経験ができたよ。」
「嫁入り前のね。」
「もうやめてよ〜//」
歩夢は顔を赤くして冷めたココアを啜る。
「冷めちゃったよね。淹れなおすよ」
「ありがとう。こうして乃亜くんと2人でいると,安心するんだよね。」
「うん。俺もそうだよ。」
電気ケトルでお湯を沸かしながら,そんな話をする。歩夢がココアが入っていたマグカップをキッチンに持ってきた。その時不意に俺は外を見る
「歩夢ちゃん,ホワイトクリスマスだよ。」
「え?」
歩夢はまたも首を傾げて,俺を見る。そして歩夢も窓の外を見る。その時歩夢は珍しいものを見つけた子供のように目を輝かせた。
「まさか降るなんてね。」
「ホワイトクリスマスに彼氏の乃亜くんと2人か〜今年のクリスマスはロマンチックだね。」
「うん。そうだね。」
すると,一時間でセットしていたキッチンタイマーが鳴った。
「あ,そろそろかな。」
「そうだね。ある意味歩夢ちゃんとの初めて共同作業の結晶」
「も,もう乃亜くん!//」
そして俺は冷蔵庫を開ける。それをそっと形が崩れないように取り出す。
「結構良くできたんじゃないかな?どうかな歩夢ちゃん」
「うん。美味しそうだね!」
そしてケーキを6等分にし,ふたつとり,皿に盛り付ける。
そこにフォークを添えて,ココアを置く。
「はいこれ。ココアに余った生クリームとココアパウダー振りかけただけだけど」
「これだけでもなんかオシャレに見えるね」
「でしょ?さて,いい感じにできたところで頂きますか」
「「いただきます!」」
それそれが一口目をいただく。
「んん〜乃亜くんこれ美味しいね。」
「うん。俺も自分で作ったとは思えないくらい美味しいよ!」
そして2人は笑い合った。こんなクリスマスがずっと続けばいいなと俺は思った。