僕と侑の家は隣にある。いつも遊びに行くってなると、集合するが、玄関から出てすぐの廊下などで大体鉢合わせて,そのまま一緒に行くという事がよくある。だから僕たちは、現地に集合するように話し合っていた。そして当日、胸を躍らせて乃亜に見送られて家を出て、歩夢と遭遇した。
「あ,悠雅くん。おはよう」
「おお,歩夢」
「お母さんからチキンもらってきたよ。」
「あ,そうなんだ…」
「?どうしたの?」
「ごめん。今年はそれぞれのカップルで過ごそうって話になったんだよ。」
「あ,そうなんだね。」
「うん。だから今日は彼氏と過ごしてよ。」
「そっか〜残念…」
「まあ〜まあ〜2人でしかできないことあるでしょ?」
「2人でしかできないこと……//」
歩夢は考える。そして気づいたかのように顔を赤くする。
「じゃあね。僕侑と約束あるから。」
「うん。バイバイ」
そう言って僕はアパートの階段を駆け降りる。一階まで降りて出入り口の自動ドアが開く。外に出ようと歩こうとした時、携帯の着信音が鳴る。侑からだった。僕はアイコンを横にスワイプして,電話に出る。
「もしもし?」
「もしもし,悠…雅……はぁ…ヘクシュン!」
「どうした?」
「ごめん。エホッエホッ。ちょっと風邪っぽくてさ。まあ〜熱あるんだけどさ。」
「え、風邪じゃん。大丈夫かよそれ。」
「うん。たいしたこと…はぁ…ないよ。エホッエホッ」
「大したことあるだろ。待ってろ今行くから。」
「大丈夫だって。移しちゃったら悪いから、自分の家にいて。」
「いや,心配だからそっち行くよ。それに自分の家は…ちょっと邪魔しちゃうから。」
「あ,乃亜くんとかいるのか。」
「行く場所もないし,移ってもいいから行くよ」
「クリスマスなんだから,風邪ひいた私は気にしないで。楽しみなよ」
「侑こういう時は、人に頼ったっていいんだよ。弱ってる時ぐらい自分のこと考えろよ。体が弱ると心も次第に弱まるから。」
「………」
侑は何も言わなかった。
「彼女が弱ってる時こそ彼氏の出番だと思うからさ。」
すると彼女が言った。その声は弱々しく,少し泣いているようのも聞こえた。
「今日…両親がどっちもいなくて1人なの…」
「うん」
「寂しいから…近くにいて…悠雅」
彼女は弱っているのを可愛いと思ってしまう僕はきっとダメな彼氏なんだと思うが、ほんとに可愛かった。
「わかった。今から行くね。」
「うん。ありがとう。待ってるね。」
そうして彼女との電話を切って階段を駆け上がった。
そして息を切らしながら、侑の家のインターホンを鳴らす。
「入っていいよ〜」
中の侑にそう言われドアを開けようとするが、鍵は閉まっている。
「侑,鍵閉まってる」
「あ〜ごめんね。今開けるよ」
こちらに近づくにつれて重たい足音と息切れした呼吸音が大きくなる。そしてやっと鍵が開いた。
俺は開いたドアを勢いよく引いた。
「侑!」
すると彼女が倒れてくる。それを俺は片腕で支える。どうやらドアに寄りかかっていたらしい
「大丈夫か?」
「…うん。大丈夫。ありがとう。上がって。」
「お邪魔します〜」
上がったらわかる。彼女は予想以上にふらふらしていて,壁に触っていないとまともに歩けない状態だった。いつもより顔が赤く,熱があると一目でわかるほどに。しかも熱冷ましを何もしてないみたいだ。
「侑…」
「何?」
一つ一つの行動スピードが倍以上に遅い侑が僕の方に振り向く。僕は侑を追い抜かし、屈む
「さすがにふらふら過ぎて見てられないからおんぶ」
「ありがとう〜じゃあ,お言葉に甘えて〜」
「おいしょ。大丈夫そう?」
「うん。大丈夫〜えへへ」
「どうした?」
「いや,彼氏いてよかったなって。」
部屋に着いた俺は彼女をベッドに寝かせる。そして冷蔵庫からポカリと熱冷まシートを取り出す。
「ポカリここ置いとくね。熱冷まシート貼るよ。」
「う、うん」
「行くよ,少し我慢してね」
「ピエ〜」
「ふふ,侑これ昔から苦手だもんね」
「冷えたタオルだったら、いいんだけどね。」
「まあ,一通りのことはしたし,もう一回寝なよ」
「うん。あ,悠雅」
「ん?」
「手//」
彼女は毛布を鼻までかぶって左手だけど毛布から出す。その顔は赤くて,熱だけのものではないようだった。
「居なくならないから,安心しなよ。つなぐけど。」
「えへへ〜ありがとう」
そして握ったまま侑は寝てしまった。その時コップを持ってくるのを忘れたことに気づいてコップを取りに行った。戻ると左の腕だけがベッドから落ちていた。俺はその手を慌てて握った。早く良くなれと願いを込めて……そして僕と侑は、眠りに落ちた。
何分やっただろうか…覚えてないが、僕は起きた。侑は寝息がしているからまだ寝ているだろう。寝起きだからか、意識がはっきりしない。わかるのは,侑の家で寝たことと左手に温もりを感じることだった。目を開けると,外が明るく,少し眩しかった。段々と慣れた目で周りを見渡すと,侑はやはり寝ていて,僕の左手には侑の右手が重なり繋がっていた。僕は起き上がって、侑を見る。彼女はすやすやと眠っていた。僕はその子に微笑み、頬に接吻をする。その後頭をずっと撫でていた。撫でながら時間を見ると,もう14時を回っていた。
「んん…あれ,私寝て…た?」
「あ,おはよ。侑。起こしちゃったかな」
「んん,悠雅?あ,そうか私!」
驚いて勢いよく起きあがろうとする侑を悠雅が止める。
「熱出してるんだから安静にね。」
「うん。ずっといてくれたんだね。」
「まあ〜彼氏だからね。食欲とかある?お茶漬けぐらいは食べられるかな。」
「うん。ありがとう。でも悠雅ご飯作れないじゃん。」
「お湯入れるくらいはできるわ!」
「ふふ,そのくらいはできるか〜」
「ほら,大人しく寝てろよ。病み上がり」
「はーい」
そして彼はキッチンへ向かった。その背中をずっと見つめていた。
「できたよ〜」
「おお〜早いね〜」
「お湯入れるだけだからね〜。食べれそうか?」
「うん。おいっしょ。」
「起き上がる体力は戻ったんだね。よかった」
「一眠りしたら戻ったかな。」
「まあ〜まだ完全には治ってないんだから今日は安静にな。」
「そんなわかってるよ〜」
「ほい。口開けろ。」
彼は徐にお茶漬けを掬ったスプーンをこちらに向ける。
「いや,いいよ〜自分で食べれるし」
「いいんだよ。今日ぐらいは。それにこれ…結構恥ずかしいんだよ//」
「あはは。そうだね、じゃあ頂きます。はむっ……ん〜少しお湯多いかな〜薄いかも」
「え!まじ?あむっ…たしかに薄いな。」
「あとそれ間接キスだけど…」
「あ………//」
自分でも気づかないくらい刹那の間にそれは起こった。僕はそれを認識した途端顔から火を吹きそうになった。それをみながら、侑は俺の頬をつつく。
「悠雅〜?病人より顔真っ赤だよ〜」
「侑,こういうのあんまり気にしないタイプだもんね〜僕だけ恥ずかしがってるみたいじゃん。」
「……私だって恥ずかしいよ。ただ私よりも悠雅が恥ずかしがってるだけだよ。//」
「それが行動に出ないんだよな〜」
「元々今日は顔赤くて,バレてないだけで,いつもだったらバレてたかもね?」
「じゃあまた今度しようか。間接キス」
「え〜やだよ〜見られるし〜」
「まあ〜さっきみたいなのだったら,何気ないからいいんじゃない?」
「まあ〜何気なくだったら//」
「うん。このスプーン使う?使わないんだったら、変えてくるけど」
「………使う//」
彼女は少し照れながらそう答えて,僕が持っていたお茶漬けとスプーンを奪い取り、自分の口にかき込む。その時侑が自分の胸を勢いよく叩く。どうやら喉に詰まったらしい。
「はい。ポカリ」
侑はまた俺の手から物を取り,勢いよくそれを飲む。そして飲み終わって一言
「お茶漬けとポカリは絶妙に合わない。」
「水の方が良かったね。」
「まあ〜そうだけど,ありがとう」
「いえいえ」
それから彼女はまたお茶漬けを口にかき込んだ。今度は詰まらなかったみたいだけど。
「ごちそうさま〜」
「よく食べたね〜」
「朝から何も食べてないからね」
「それはお腹すいてるか。」
その時冷えピタが侑の額から落ちる。
「8時間ぐらい持つのに乾くの早いね。」
「侑の熱が高かったからじゃね?とりあえず体温測ってみようか」
「机の上にあるからとって。」
「おん…ほいよ」
「ありがとう〜」
そこから測っている間は静まり返った時間が続く。
ピピピピピピピピ
脇の下から音の発信源を出す。そこには…
「「38,7…」」
「まだ全然下がってないね〜」
「とりあえず冷えピタ貼ってもう一回寝るか。」
「うぅ…またか〜」
「我慢だよ〜せーの!」
「つあぁ〜」
侑はよくわからない声を上げた。そして僕は外を見る。その時僕の目にあるものが映った。
「侑,雪降ってる。」
「え?!本当?見たい!」
「立てるの?」
「もちろん!おっこい…おっと」
立ったと思ったらよろけてベッドに倒れる侑。僕はその子に微笑み、不意にお姫様抱っこをした。
「ふぇ…//」
「今日ぐらいは甘えろって。見える?」
「わぁ〜綺麗だね。」
「そうだね。」
それから少し無言になる。不仲とかではなく,ただ外の景色が珍しくて、見入っているだけである。
「そろそろ戻ろっか。汗かいてて,体冷やすのもまずいから。」
「うん…」
「そんな顔すんなよ。また見れるって」
「そうだといいな〜」
そんなことを話しながら 侑を寝かせる。
「ねぇ悠雅?こっち来て」
「何?」
「もっとこっち」
「なんだよ〜?」
………チュ
寝そべる侑に顔を近づけた瞬間頬に少し湿ったものが触れる。そう,僕は侑にキスされたのだ。まるで僕が侑にしたかのように。
「な,なな,なんだよ急に?!?」
「私が寝てる間にしたでしょ?そのお返し〜」
バレてたのかよ〜!?完全に寝てると思ってたのに!!
「じゃあ,そろそろ寝るね。」
そう言い,強引に俺の手を掴んで満面の笑みで
「おやすみ」
と言ってきた侑に僕は…
「お,おやすみぃ〜」
と引きつった笑みで答えた。
それからさっきのキスが忘れられなくて,どうにもわからず、ベットに顔を埋めた。そして俺もそのまま意識を捨てた。
侑ママ「ただいま〜風邪どう〜?あ…あらあら〜」ニヤニヤ
侑パパ「どうしたんだい?」
侑ママ「それがね〜見て〜」
侑パパ「あ〜そういうことか。悠雅くんが面倒見てくれてたんだね。」
侑ママ「しかも手も繋いじゃって〜可愛いんだから〜」
侑パパ「侑の面倒を見てくれるのはありがたいけど,悠雅くんも風邪をひいたら大変だ。」
侑ママ「そうね。毛布でもかけてあげましょうか。」
こんな会話が繰り広げられているなんて,僕はもちろん侑も知らなかった。わかるのは朝起きたら,僕に毛布がかかっていたことだけだった。