俺は彼女から何も聞かされる事がないまま,いつもみんなで集まるファミレスに2人で向かい合い座っている。お昼を食べ終わり,ドリンクをストローで啜り,口を離し,俺は菜々に問う。
「で,クリスマスイヴですけど,いつもと変わらないところに呼んだのは、何か理由があるの?」
「ふふ,そんなこと言ったら,後悔しますよ?」
彼女は不敵な笑みを浮かべる。
「後悔かは俺が決めるとして,何するの?」
「これを見てください。」
菜々は一枚のパンフレットみたいな物を出してきた。
「これ今やってるμ’sのスタンプラリーじゃん。全部回ったら,キャラのクリアファイルがランダムでもらえるやつだよね。」
「そうなんです。で最後にsnow halationの聖地に辿り着くようになっているんですよ。さらにこの台紙も数量が限られているので、ファイルと同じ数しか作ってないそうなので,行ったら,確実にもらう事ができます。」
「あ,そうなんだ。また俺のクリアファイルコレクションが増えてしまうか。それで後悔するってことか?」
「いいえ,それについてはこれから話す事です。」
俺は飲み物とほうれん草のバターソテーを食べながら、話を聞く。
「ほう〜それは?」
「それは…」
菜々が一呼吸置いて口を開く。
「この間絵里さんから聞いた事なんですけど,今日17時のμ’sさんの…ゲリラライブがその聖地であるんです。」
それを聞いた時俺は持っていたフォークをテーブルに落とした。その音が響くまで、俺は意識がないようにぼーっとしていた。
「………え…俺難聴かな〜も,もう一回言ってくんない?」
「だから今日の17時にμ’sさんがあの聖地でライブするんですよ。」
「…うわぁ〜まじか〜感極まって泣きそ〜」
「ふふ,泣かないでくださいよ。」
「疑問なんだけどさ,なんでゲリラなんだ?μ’sは活動禁止令出たとかでもないし,普通に告知したら,相当人集まるのに。」
「それが,これを決めたのが二週間前なんだそうです。」
「そんな短期間で実現まで持っていくなんて………行動力の化身」
「穂乃果さんが天気予報見て,クリスマスイヴと雪が降る日がいっしょだから,忘れられない思い出をって事で言い出したそうです。」
「高坂さんだったら言いかねないね。ライブ中に雪降ったら,すごいいいね。」
「そうですね。それだったら,すごくテンションが上がります!!」
「あ〜その情報だけで十分すぎるくらい幸せなんだがな〜」
「もう,まだ早いですよ」
「じゃあ,ゆっくり回っていこうよ。焦ってまわるよりマシだと思うしね」
「そうですね。もうそろそろ13時ですし、余裕を持って行くなら,もう出ましょうか。」
「うん。そうだね。これ飲み終わったら行こっか」
「では私はちょっとお手洗い行ってきますね。」
「行ってら〜」
と、言ってから五分はたったであろう。ドリンクはとっくに飲み終わって、シャドウバースで対人戦が2回終わるほど時間が長い。シャドウバースとは、簡単に言えば,スマホでできるカードゲームである。前Aqoursさんがコラボしたことで有名だ。俺自身的に一番熱かったコラボはこないだあったコ○ドギアスコラボだ。こんなことを言いながら、3回戦も勝ち,三連勝中の俺。しかし彼女はまだ帰ってこない。
ここに座っていることに退屈になった俺は,コートを着て、荷物を持つ。無論菜々の荷物もだ。彼女の荷物は幸いなことにまとまっており,バックとモコモコのコートだけにまとめられていた。こういう女の子らしさに癒されながら、荷物を持つ。その時ふわっとした菜々の匂いに俺は,意識が持っていかれそうになる。菜々の香りはいつでも優しく包み込んでくれて,安心する。感覚だが,そんな感じがする。そして俺は伝票を持って、トイレとレジがある出入り口へ向かった。
「あれどうしたんですか?こんなところで」
会計を済まして、ドアの前で待っていると,ハンカチで手を拭きながら、菜々が出てきた。
「おかえり。そのまま行けた方がいいんじゃないかと思ってね。はいコート」
「ありがとうございます。お会計はどうなさったのですか?」
「あー俺払ったからいいよ。」
「いえ,そんなの申し訳ないです!バック返してください」
「だって菜々,絶対財布出すじゃん。いやじゃん、彼女にたかってるみたいで」
「出してくれたことは感謝します。でも,それとこれとは話が違います!」
「いいよ〜めんどくさいし〜」
「そういうわけにはいかないんです。」
「頑なだな〜そんなんじゃ男にモテないぞ〜?」
俺はそれを軽く口にした。この言葉でこんなことになるのは俺は気づかなかった。
「………」
その言葉を口にした途端、菜々の雰囲気が変わる。今まで何かを我慢していて、それが限界に達して爆発しそうな顔をしていた。それを見て俺は感じた。“何かが来る”と,しかし俺が予想していた言葉ではなかった。
「私が!モテたいのは、1人の男性だけです!!」
「え………」
「私はアイドルです。ファンだっています。でも,あなたを好きなってしまったんです!そして付き合う事ができました。だからと言って,それは常識の上に成り立っている物です。常識はずれなことなんて私は…そんな不健全な関わり方を快斗さんとはしたくないんです!!」
その後ふと我に帰る菜々。その後自分の言ったことを思い出して,泣きそうになり,彼女はその場から駆け出した。俺はその勢いに負けてその場から動けなかった。
せつ菜side
(やってしまった。あそこまでいう必要なかったのに…出し始めたら,止まらなくなった)
そんなことを思いつつ,彼女は歩道を駆ける。言葉と同じように,出し始めたら,涙も止まらない。それを知っているから,彼女は走った。涙を紛らわすために。
そしてしばらくひたすらまっすぐ走ったところにベンチのある公園があった。ちょうどそこには誰もおらず,泣くにはちょうどよかった。
「うぅ…ぐすっ…なんであんなことを言ってしまったのでしょう…」
そして少し落ち着いたら,涙はすぐに止まった。しかし,自問は止まらない。なぜ言ったのか,なぜ止まらなかったのか,なぜ彼に言ってしまったのか。そんなことを思っても,答えは出てこなかったよ。そしてこんな自分がたまらなく嫌になる。
「もう嫌です…快斗に謝りたい。また前みたいに…戻り…た……い………」
私はそのまま冷え切ったベンチで意識を手放した。
快斗side
(なんで考えなかったんだ。俺のデリカシーのなさが問題だ。菜々に謝らないと。でも,どこにいる…とりあえず,ここで止まっていても仕方ない。菜々の行った方へ走るしかないか)
俺ら2人分の温かい飲み物を買いながら,そんなことを思って,そっちに走った。しかしそう簡単には見つからなかった。時間がかかればかかるほど,すぐ追わなかったことと,自分の捜索能力の無さを呪った。しばらく走ったところに公園があった。そこに見覚えがあるコートを着た女の子が座っていた。
「菜々!!」
呼んでも彼女は微動だにしなかったが,俺は彼女に駆け寄った。彼女は寝ていた。多くの人は,見つけて安心して,寝てるだけだと思うだろう。しかし俺は違った。この状況で自分が見つけるのが遅かったら……と考えただけで,ゾッとして背筋が凍った。このコートしか着ていない状態で少し前に降り始めた雪の中で寝ることは自殺行為である。実際にそうやって死のうとする人もいるくらいだ。
俺は自分のマフラーを彼女にかけ,首と布の間に温かい飲み物を入れて結び,彼女の両手にもう一本の飲み物を持たせ,それに蓋をするように自分のコートをかける。
顔を触るとやはり冷え切っていた。自分にできることを探すも見つからずただひたすらに頭を撫でる。しばらくすると彼女の顔が少しずつ赤くなっていくのがわかった。触ると多少なりとも暖かくなっていた。それに少し安心する半面自分のせいだと責める。
「んん…あれ,快斗さん?」
「!!……菜々〜〜よかった〜」
「うわぁ!ど、どうしたんですか?!」
俺はことの顛末を話す。泣きながら
「そんな事があったんですね。ご心配をかけてしまってすいません。」
「ううん。生きててよかったよ。あとごめんね。昼間は、デリカシーなかった……」
「いえ,私こそあんなこと言ってしまって…でも,快斗さんが好きなのは本当です。//」
「今思ったけど,他の男にモテられると俺的にも困る………//」
「安心してください。私は快斗さんにモテたいので…」
「菜々……」
彼女の頬に手を伸ばす。冷たかったのか,触れた瞬間体をびくつかせる。
「冷たい?」
「はい。でも,すごく…温かい気持ちになります。//」
俺はそんな彼女に顔を近づける。彼女もまた何かを察したように目をつぶって動かない。雪が降り続ける中,俺らは影を重ねる。数秒後俺らは分離する。
「ごめん。カサカサだったね。」
「ムードがあったので,仕方ないですよ。」
「なんかのアニメで言ってたな。“KISSとは何よりも重い契約”みたいなこと」
「確か炎髪灼眼の少女のやつだった気がします。色々あったけど,最後はいい話になるんですよね。」
「あれはよかったね。うん。あっ、そう言えば,聖地行けなかったね。」
「そうですね。結局今日すること何もできませんでしたね。」
「菜々が可愛かったから,結果オーライ」
「もう,やめてください!!」
菜々が少し膨らみ,俺をそれは微笑みながら見る。
「さぁ,冷える前に帰ろうか。」
俺は座っている菜々に,手を伸ばす。
「はい!!」
彼女は俺の手をとる。そのまま手を握る。離さないように。
「これ首の飲み物です。」
「あ,ありがと。マフラーはそのままでいいよ。似合ってるし」
「あ,ありがとうございます//」
「そうそう俺今シャドバ三連勝中〜」
「ほんとですか?!ドラゴンのいつものデッキですか?」
「いや,新しいレジェンド出て,使ってみたら,あれはぶっ壊れ性能だった。」
「そうなんですか?!」
「今度やる時見せるよ」
そんなことを話しながら,彼らは雪が降る道を帰っていった。ちなみに今度やるときとは,電車の待ち時間だったらしく,3試合中ドローに救われず、あまり性能を発揮出来なかったとか。