今日はついてきてくれて,ありがとうございますね。翔くん」
「いいよ。しずくちゃんが誘ってくれなかったら,僕が誘うつもりだったからさ。」
「本当ですか!なら,今度は私のこと誘ってくださいね」
「うん。じゃあ行こっか」
今日はしずくの誘いで,演劇を見に来ている。誘いを受けた時からすごくこの日が待ちきれなかった。しかしだ…
(なんで二人なんだよ〜//それにあまり見られないしずくちゃんの私服…新鮮でかわいいな〜こんなの好きになるって…いや,好きだけど!)
そんなことを考えていたせいか,僕は最寄りの駅を出てから、ずっとしずくのことをチラチラ見ていることに気が付かなかった。すると,痺れを切らしたしずくが声をかけてきた。
「翔くん//」
「は,はい!なんでしょ?」
しずくは立ち止まって,右手を頸に当て,赤面し,俯きながら、
「あの,あんまりチラチラ見ないでください…緊張しちゃうじゃないですか…//」
「あ…ご,ごめん。//」
「…チラ見するんだったら、凝視してくれたほうがまだいいです。//」
「あはは,じゃあそうさせてもらおう……………え?」
「翔くんにだったら…いい…よ?」
「え,それってどういう…」
「い,いいから早く行きますよ!//」
それからというもの,演劇が終わるまで、二言ぐらいしか会話をしなかった。僕がさっきの言葉で演劇に集中出来なかったのは,わかりきっていた。
「いや〜,よかったですね!特にラストシーン,恋人を庇って死んでしまうという展開になんとも打ち抜かれてしまいました。」
「ふう〜,それにしても結構歩いたから疲れちゃったね。どうする,どっか行って休む?」
「じゃあ、私の家の近くに公園があるので,そこに行きたいんですけど…」
「そこ行こっか」
「ありがとうございます!」
それから電車に乗り,しずくの家の最寄りまでの五駅間に話していたら,しずくが小さくあくびをした。
「ふうあ〜,ちょっと眠くなってきちゃいました。」
「着いたら起こすから、寝てていいよ。」
「ふぁい…じゃあ、寝かせてもらいますね…」
「うん。おやすみ,しずくちゃん」
その言葉が届く前に彼女は夢の中へ行ってしまった。しずくちゃんの寝顔は幸せそうだった。それはとても可愛くどこか幼く見えてギャップを感じた。すると僕のスマホのバイブレーションが鳴った。
L○NEが一件きた。送ってきたのは,蓮だった。
そこには,“右向いて”と書いてあった。僕は座っていたところから身を乗り出して見ると,そこには蓮と璃奈ちゃんがいた。
すると,蓮は自分のスマホを指さした。僕はどういうことか分からず,首を傾げると突然バイブレーションがなった。急なことに僕はびっくりした。
「ん…」
しずくちゃんが音に反応するように声を出した。しかし起きてはいなかった。
ほっと胸を撫で下ろし,僕はそっとスマホのバイブレーションを切った。
“で,蓮はなんでこの電車乗ってんの?”
“璃奈と遊んでたから、そっちは?”
“しずくちゃんと演劇見に行ってた。”
“あ〜そうなん,付き合ってんの?”
“いや,まだ…そっちは付き合ってんの?”
“うん。ついこないだからね。
てかさ,打つのめんどいからそっち行っちゃダメ?”
“え〜今はちょっと…”
“なんで?”
“今しずくちゃん寝てるから,起こしたくない。”
“あ〜そういうことね、じゃあ、桜坂さんによろしく。”
“わかったよ。そっちも天王寺さんによろしく言っといて。”
そんなことを言ってると,蓮たちが降りる駅に着いた。ドアが開き,僕が手を振ると,蓮は手を振りかえし,天王寺さんは一礼し、ドアの外へ消えていった。
その後,のんびりしていると,目的の駅の一個手前の駅まで迫っていた。
「しずくちゃん,起きて」
「……」
「しずくちゃ〜ん,起きてくださ〜い」
僕はほっぺを突いたり,つねったりした。
「ん……ふぇ…?」
「おはよう,しずくちゃん。」
「……翔くん…?」
どうやらまだ寝ぼけてるみたいだ。
「そうだよ。立てる?」
「…無理です…」
『次は前田〜前田〜』
すると,降りる駅のアナウンスが鳴った。
(ん〜どうしよっかな〜降りないわけにもいかないし…)
「ん…」
「…? どうしたの,しずくちゃん」
徐に手を広げるしずく
「……ぶ…して」
「ごめん,もう一回言ってくれない?」
「おんぶ…して」
「あ〜,おんぶね。わかったよ〜………え?」
「んん」
急かすしずく
「//っわかったから,駅出てからね」
その時,ドアが開き,僕はしずくちゃんの荷物と,しずくちゃんの手を握って駅の外まで走った。その後,眠そうなしずくちゃんを椅子に座らせ,おんぶをした
「翔くんの背中寝ちゃいそうですね〜」
「今寝られると,困るんだけど…」
「翔くん,大好きです。」
しずくちゃんは,ぎゅっと抱きつき,密着してきた。
「え//」
僕が振り返った時には、しずくは寝てしまっていた。
その隙に
「僕もだよ。しずくちゃん」
と聞こえないように呟くのだった。
その後,起きたしずくちゃんに拒まれたが,そのままおんぶし、家まで送ったのだった。
公園のことは………完全に忘れていた。