今日はクリスマスイヴ。イエス・キリストが生まれた日で、年に一回しかない世界共通のビッグイベントだ。でも,今日の俺は乗り気じゃない。確かにエマさんと言う大切な彼女がいる。そんな彼女と並んで歩くには俺はあまりにも不釣り合いすぎるのだ。根暗で低身長,だからといってイケメンでもないし,ずば抜けて何かができると言うわけでもない。こんな奴と付き合ってくれるエマさんが優しいと思う反面、俺には理解できなかった。
(不釣り合いか…そうかもね。自分で言うのもなんだけど…身長はもっと欲しかったな〜三年にして,彼氏組で一番低いは,ちょっと威厳ないな〜どうせもう成長期終わりそうだからな、もう求める気もなくなるよ)
そんなことを思っていると,待ち合わせの場所で俺のことを探してキョロキョロするエマさんの姿があった。
「あ,エマさん!こっちこっち」
そういって俺は手を振る。それに気づいたエマさんも元気よく手を振りかえす。
「待たせちゃってごめんね。」
「ううん。俺が早く来すぎただけだから。」
こんなに不釣り合いだ。なんだの言ってるくせに,内心結構楽しみなのだ。出かけるのは楽しみだが,もし、俺のせいでエマさんがなんか言われるかもしれないと思うと,毎回ストッパーがかかる。本当はもっとイチャつきたい。そう思うたびに,あらゆることを自問し,そのままタイミングを逃すのだ。
「どうしたの?」
「ん?いや,エマさんが綺麗でね、見惚れちゃってた。」
「ふふ,ありがとう。輝弥くんも似合ってるよ。」
「//あ,ありがとぅ…」
「さぁ,早く行かないと席埋まっちゃうよ。」
「うわぁ,ちょっと,エマさん落ち着いて。」
彼女は俺の前に来るなり手を掴み、俺は引っ張られる。
「どうしたの?」
「はぁ…映画2時なんだから,そんなに急がなくても間に合うよ。」
「でもいい席取られちゃうよ…」
「まだ12時だよ?2時間もあるからゆっくり行こうよ。」
「うん…わかったよ。」
「俺も楽しみにしてるからさ,もしものことがあったら嫌だからさ。」
そう言って俺は彼女の手から自分の手をするりと抜く。
「あ…」
「どうした?」
俯く彼女に俺は顔を近づける。
「え?ううん。なんでもない。」
「そっか。」
「映画館だけじゃなくてフードコートの席も無くなっちゃうから行こう!」
「え…ああ…うん。そうだね。」
(ごめん。エマさん。この時間帯ピークだから,多分もう空いてない………)
そんなことを思ったが口にせず,エマさんの隣を歩いた。
「もう空いてないね…」
「そんな悲しい顔しないで。時間潰せば、すぐ空くから」
俺の予想通り,席は既に埋まっていた。
「エマさん?」
「あ,ごめんね。どうしたの?」
「なんで謝ったの?」
「輝弥くんが何か言ってたのかと思ってね」
「俺何も言ってないけど,でさ,エマさん。空くまでの間に,映画館のチケットとか色々買いに行こうよ。」
「うん。ありがとう。」
「いいって,今日は俺がエスコートするからさ。」
彼女はホッとしたように笑った。やはり俺は笑っている彼女が好きだと改めてを思った。
「この服とかどうかな?」
「うん。エマさんらしいと思うよ。」
更衣室から出てきた彼女に俺は言う。
「じゃ,これで決まりっと、着替えるから,後ろ向いててね…」
「うんわかってるよ。」
そう言ってカーテンをした更衣室に俺は背を向ける。
「でも,俺がみた中で一番可愛かったの,熊の着ぐるみなんだよな〜」
「な,なんでそれ知ってるの?!」
口に出ていたことに驚いたが,後ろを向いていてバレなかった。
「え,高咲さんからもらってね〜」
「は,恥ずかしいよ〜」
「なんなら俺のホーム画よ!」
「輝弥くん?!//」
「はい…すいません…」
「もう,恥ずかしいから,ホーム画にはしないでよ。みんなに見られるから!」
「うん。ごめんエマさん。」
「ほかだったらいいから。みんなに見られるのは恥ずかしい………//」
そう言って更衣室から手だけを出し,俺の裾を引っ張る。
「そうだね。ごめん。」
俺は裾を引っ張る手に自分の手を重ねようとしたが,やはり思いとどまった。
「早く着替えちゃいな。両手使わないときついでしょ。」
手しか出てない彼女に俺はそう言う。
「うん。ちょっと待っててね。」
「………」
俺は何も答えなかった。
(さっきのエマさん可愛かったな〜それなのに…なんでこんなにも釣り合わないのかな。人間は生まれながらに平等?求めよ。さらば与えられん?違う観点からでいいからイケメンになりたかったな…その時点で平等じゃないし,自ら努力することで良い結果を招く…そんなことが今まであったか?頑張ったのはそれなりにいい感じにはなったけど,それはエマさんとの関係をどう変えてくれる…そんなこと求めたって、俺にはどうすることもできないんだよ。)
「お待たせ〜買ってくるね。」
「あ,うん。いってらっしゃい。店の外で待ってるね。」
「ありがとう」
お礼を言われたり,名前を呼ばれるたびに俺のみぞおち付近がグッとなる。その度、エマさんが好きで仕方なくなる。俺に足りないのは勇気だ。そんなこととっくに気づいている。なんならなんでそうなるかもわかってる。何かをするってなった時必ず言い始めるのは、毎回エマさんだ。俺は毎回エマさんの後を追う。それしかしてこなかった俺は、こういう時に自分で何もできないし,決められない。普通に恥ずかしいことはできたり,言えたるするのに………
「輝弥くん。顔色悪いけど大丈夫?どこか悪いの?」
「ん?そんなことないよ元気だよ!」
彼女は俺の顔を覗き込んでそう言った。俺はそれに元気よく答えた。
「そう?ならいいんだけど…無理はしないでね?」
「心配してくれてありがとう。肝に銘じておくよ。」
こうして俺はまた本心を隠して,笑ってみせる。思ったことを,心の奥底にしまっておけば,大体のことはうまくいく。この世界の摂理だ。
「やっぱりクズだな…俺って…」ボソッ
「…何か言った?今」
「ううん。なんでもない。エマさんが楽しそうでね。」
「だって,大好きな輝弥くんと一緒なんだもん。楽しいに決まってるよ。」
「//あ,ありがとう…」
「あ,外のあの木見に行きたいな。行っていいかな?」
「うん。まだ時間あるし,行こう。」
そうして俺とエマさんは外へ出た。
「わぁ〜大きい〜こんな大きな木が日本にもあったなんて…」
「いや,エマさん。これは作り物の木で,これにイルミネーションや飾り付けをかけたりするんだ。簡単に言えばクリスマスツリーってやつだよ。」
「そうなんだ〜よく知ってるね。」
「まぁ〜毎年飾られるからね。この時期は」
「へぇ〜そうなんだね。」
「そろそろ冷えるし,中戻ろ?」
「えーもう少しだけいいかな?」
エマさんがこんなわがままを言うのはあまりなかったので俺は戸惑った。
「…じゃ,もう少しだけね。」
「うん………ねぇ,輝弥くん」
「どうしたのエマさん?」
「あなたはクズじゃないよ。私を助けてくれたから」
エマさんは真剣な表情でそう言った。
「…何言ってんの急にwwクズ?俺そんなこと言ったかな?もしかして誰かがそう言ってた?」
「隠さないでよ…」
エマさんは今にも泣きそうだった。そこまでされて隠すことでもないと思った俺は…
「俺はクズなんだよ。自分じゃ何も出来ないし,決められない。それに自分と人を比べて、自分の優れてないところを探しては,平等じゃないだの言って,自分は悪くないと現実逃避。毎回思う。こんな根暗が彼氏じゃ,エマさんも迷惑なんじゃないか,不釣り合いだって。でも,言い出すのが怖くて,こんな奴とも付き合ってくれるエマさんの優しさに、俺は甘えていたんだ…」
(言ってしまった…もう後戻りはできない。本心をぶつけたときほど,人間が弱ることはない。きっとエマさんうんざりしただろうな。こんな奴とひと時を過ごすなんてかわいそうだ。早く終わらせよう…俺はもう,十分なくらい癒された。)
俺は俯きながらそんなことを考えた。そして顔をあげる。エマさんは泣いていた。袖で涙を拭う。こんな状況でも,勇気が出なくて,ポケットのハンカチを出せない。
「ごめんね。輝弥くん。私何も気づけなかった。あなたが苦しんでるのに,何もしてあげられなかった。」
「何言ってんの。エマさん。悪いのは俺なんだ。俺が君と関わったのがいけないんだよ。俺があの時迷った君を助けなかったら,好きになることも,関わることもなかったんだ!」
「じゃあ,なんで助けてくれたの?そう思うなら、なんで?!」
泣いているからか,俺とエマさんは今まで溜め込んだ感情を抑えることができなかった。まずいと思ったけど,ここまできたら言うしかない。
「惚れたんだよ!一目惚れしたんだよ!見た目からわかる、優しいオーラそして,話してみても分かった。その優しさは想像を遥かに絶していた。だから君が好きになったんだ。自分が人になんて言われようと構わない。でも,エマさんが今泣いている!この状況が俺はたまらなく嫌だ!!そんな大好きで止まない彼女を泣かせてしまった………俺は最低な彼氏だ」
「ねぇ,輝弥くん。付き合う時私が言ったこと覚えてる?」
「………」
「好きがわからなかった私に教えてくれたのは、輝弥くんなんだよ。それにあなたは釣り合わないって言ったでしょ?好き同士だったらいいんじゃないかな?周りにどんな目でみられても、あなたと私が一緒に笑い合って助け合って,楽しければ私は十分幸せだよ。だから、輝弥くん。最低だなんて…クズだなんて言わないで…自分の評価を自分で決めないで。あなたが決めてしまったら,私はそんなあなたを好きになったことになっちゃうよ。」
「エマさん……」
「それに,あなたと居たら,好きがわかるかもしれないって言ったけど,私はあなたを好きになった。これは誰の力でもないあなたの力。人の心を動かす力だよ。」
「も,もうやめてよ…嬉しくて涙が出てきちゃうから…」
「ふふ、私も輝弥くんを泣かせちゃったね。お・あ・い・こだね」
「エーマーさーん…ありがとう,改めて出会えてよかった。」
「ふふ,私もだよ!」
気づいたら,あたりには雪が降っていた。俺はそれを見上げ,顔を見合わせて笑い合った。
「求めよ。」
「「さらば与えられん」」
俺がそれを言おうとしたら,エマさんが被ってきた。
「エマさんよく知ってるね。」
「勉強したから。それよりなんで急に?」
「いや,努力はしてないけどさ,デートがロマンチックになればいいなって思ってたんだけどさ,結果的に良い結果になったと思ってさ。」
「まだ,時間あるけど,映画見る?」
「ん〜今日はいいかな。気分的にね」
「そうだね。そういう感じじゃないよね。」
「何かしたいことある?」
「そうだね〜キスしたい」
「キス?!えっと………ここではちょっと//」
「あはは,嘘だよ。今じゃなくていいけど,いつかしたいってだけだよ。今は…手って繋いで帰りたい。」
「うん。はい。」
「エマさんの手冷たい。心が温かいってほんとなんだね。」
「輝弥くんも言えないくらい冷たいよ?」
「かもね」
俺は彼女と出会えたことに感謝しかできない。エマさんを好きになってよかった。俺はこの時初めて神さまを信じた。