その日、朝起きるといつも抱いて寝ている抱き枕に、ピンク色のアホ毛が生えていた。その抱き枕は、低反発のはずなのに、沈まないし、骨があるかのように力加減なく抱きしめることができなかった。でも、その抱き枕は匂いと抱き心地は俺にちょうどであり、好きな匂いだった。この香りとフィット感はあの子そのものだった。
(感覚がはっきりしてる夢だな。璃奈をこうして、抱きながら寝れる日が来るってことなのかな…?でもいい夢だな……さっきから腕重いし、鼻がむずむずするけど……!)
俺は,まさかと思いゆっくり目を開ける。その予想は的中したのだった。俺の腕の中には、彼女である璃奈がすやすやと寝ていた。俺の腕を枕にして……ひょこっと跳ねたアホ毛が呼吸するたびに、俺の鼻の前で、揺れる。その度に、くしゃみを抑えるのに必死になる俺。痺れを切らした俺は、璃奈の体を自分に寄せ、毛が鼻に当たらないようにした。
「んん〜…」
「お、起きたか?」
静かにそう言ったが、璃奈は寝ていた。
「すぅー…」
「寝てる時はこんなに幼い子みたいなのに、何かを作るってなったら、いつもすごいもの作りやがって…この…」
そう囁き、彼女にほっぺをつねる。そのだらしない顔に、俺はつい笑みをこぼす。
「ん………あ、蓮くん。おはよ…」
「お…おはよ…別に、寝顔が可愛かったとか思ってないからな!!」
「…なんの話?」
「な、なんでもねーよ」
「そうなんだ…」
なんで彼女がここにいるかというと、それは昨日のことまで遡る。
〜昨日の夜〜
「ただいま〜」
蓮母「おかえりなさい。」
「お、お邪魔します…」
蓮母「あなたが璃奈ちゃんね。息子がお世話になってるわ」
「い、いえ、こちらこそ、お、お世話になってます。」
璃奈はオドオドしていた。それもそうだ。初見の人には怖く映るこの眼力、女性離れした身長。そして、璃奈と同じようにあまり変わらない表情である。
「すまん。母さん怒ってないんだ。」
「うん。わかってる。」
蓮母「驚いたわね。初めて会う子はいつも怒ってるか確認するのに。」
「私も表情を顔に出すの苦手なので…」
蓮母「そう…その歳で、大変じゃない…?」
「大丈夫です。蓮くんや愛さん…二年生の先輩が協力してくれて、この璃奈ちゃんボードがあるので。」
蓮母「表情を描いてそれを今の表情だと表すのね。」
「そうなんです!」
「どんなのか見せてもらえないかしら?」
「はい。例えば………」
どうやら意気投合してくれたようだ。しかさ…全く表情が動かない2人か会話してるとめっちゃ、喜んでるのかわからない。まあ〜母さんも馴染めてて安心した。璃奈も緊張が和らいだみたいだし。
蓮母「ほら、蓮も上がってきなさい。」
我に帰ると璃奈は母さんともう家の中にいた。
「蓮くん,こっち」
そうして彼女は手招きをした。
「ああ、わかってるよ。」
俺はそうして吸い込まれるように彼女の方へ向かった。
夕食を食べ終えた俺たちはカレカノ水入らずの時間を過ごした。
「蓮くん、今日はありがとう。」
「いいんだよ。俺はただ…璃奈と一緒にいたかった………だけだし…//」
「?なに?」
「なんでもねーよ。気にすんな。」
「………やだ」
「あぁ?」
あまり聞かない璃奈のわがままに俺は耳を疑う。
「蓮くん、話して?璃奈ちゃんボード:プク〜」
「な、なな、なんでだよ!いいだろ別に!!」
すると、璃奈が俺のパジャマの袖を掴む。
「…//」
「言ってくれないと離さないから…//」
いつも内気な璃奈がいつにもなく、積極的だった。うぅ、そんな上目遣いされたら断れねーだろーが!!
「一緒にいたかったから、クリスマスイブ前日に家に呼んで、いっそにクリスマスイブの朝を迎えたかったんだよ………//」
「ふふ、蓮くんやっぱり、押しに弱いね。」
「ち、ちげーし、ただ…璃奈だから、こんなに緊張するんだよ………//」
「え//」
「………」
「………」
き、気まずい…そっちから仕掛けてきてんだから、そんな照れるなよ!
「ご、ごめん。言葉が…見つからなかった。璃奈ちゃんボード:あわわわ」
「いや、こっちこそ、悪い」
「ねぇ、蓮くん。私…もっと蓮くんのこと知りたい//」
彼女は真正面から真剣に俺を見つめて、そう言った。少し照れたが、璃奈ちゃんボードで自分を隠すことなく、俺のことを見た。俺はそれに少し感動してしまった。
「//し、知りたいったなんだよ!」
「それは…マウストゥーマウス…とか//」
「………璃奈がしたいなら…いいけど。//」
「た、例えばだから!他のこともあるから!//」
「いや、いいよ。璃奈が言ってくれたんだから。」
璃奈はボードがあるのに、自分の手で顔を覆った。俺はその手を優しく握り、どかす。その手の奥には、表情は変わってないものの、顔色だけは赤くなっている璃奈がいた。
「顔赤いよ。」
「言わないでよ。わかってるから//」
「璃奈…」
「蓮…くん」
蓮母「蓮〜自分のカバン上持って行きなさい」
「「!!」」
せっかくいいところだったのに〜母〜!!
「待ってるから、行ってきて。」
「そんな深刻な話じゃないけど…じゃあ、行ってくる。」
そう言って彼は階段を降りていった。
「………」(私から言い出したのに、結局全部蓮くん任せだな。)
蓮母「あ、蓮」
「ん?」
蓮母「お母さん隣で寝てるから、思春期の子供の好奇心を止めるつもりはないけど、ちゃんと常識は守りなさいね。」
「な、何言ってんだよ。そんなことしねーよ!それに…大事なのに、好奇心でそんなことできるかよ。」
蓮母「そう。いい彼女を持ったわね。」
「もういいだろ!」
俺は足早にその場を後にした。
蓮母「ツンデレみたいなところは、あの人そっくりね。」
そんなこと言われてるとも知らず、彼は自分の部屋に戻った。
「ただいま〜って寝てるじゃん。」
璃奈は、彼女がずっと座っていた。人をダメにするクッションに座って寝ていた。
「まあ〜寝ちゃうよな。そのクッションだし。」
俺は押し入れから毛布を出して,彼女にかける。
「おやすみ、璃奈」
気づいたら、俺は彼女の唇に自分の唇を重ねていた。
「!!//」
俺はそこからすぐ離れて、ベットに潜った。俺はそれからすぐには寝れなかったが、鼓動が落ち着いた頃に、意識をそっと手放した。
そして現代に至る。
「てか、璃奈クッションで寝てたじゃん。」
「うん。寒くなっちゃって、蓮くんあったかそうだったから。一緒に寝てた………だめ、だった?」
「い、いや、ダイジョブダケド…」
「あ、蓮くん」
「ん?なn………ん?!//」
ちょ!これって………!!
「蓮くん、昨日したでしょ?お返し璃奈ちゃんボード:フンス」
「ちょ…お前、起きてたのか!?」
「いや、あれで起きた。」
「タイミング!!//」
「ファーストキスだね。」
「まっ…まあ〜そうだけど//」
「蓮くん顔赤い。璃奈ちゃんボード:ポワポワ」
「………!!うるさい…しょうがないだろ//」
蓮母「蓮、璃奈ちゃん!朝ごはんできてるから、起きなさい!」
「ん〜」
「はーい」
俺らはそう返事して、一緒に階段を降りた。