「君を目で追うようになったのはいつからだっただろう。演劇部でも飛び抜けた表現力を持っていた君は、入った当時から、すごい存在感だった。俺はそんな彼女、月食翠に憧れた。その表現力の裏に何があるとも知らずに………これは蒼天寺日菜斗と月食翠が紡ぐ甘くすっぱい恋物語である。」
「冒頭こんな感じどうかな?」
「そうですね〜恋と言うものに私自身疎いもので…あまり参考にならないと思いますけど…」
「いや〜、僕自身もあまりそう言った経験がないからさ、見よう見まねだし、手探りなんだよね。」
「じゃあ、なんで恋愛を書こうと思ったんですか?」
「んん?そうだね〜書きたいと思ったから。そんなとこだよ。」
「いつもファンタジーやバトルものだったのに、何があったんですか?」
「さぁ、なんでだろうね。完全感覚野郎だから。気分だよ。」
そんなことを言いつつ、僕の部屋のゲーミングチェアに座りながら、パソコンに小説の文章を打ち込んでいく。しずくちゃんは、キャスターが付いてない背もたれのある椅子に座りながら、僕が書いているところを眺めている。
僕はペンネーム、ガヤマテとして気ままに小説を書いている。今までバトル系、転生日常系を書いて今回の恋愛小説で三つ目の作品だ。きっかけはさっきも言った通り気分でやりたいなと思った…だけではないけど、大体はそんなとこだ。
え、なんでガヤマテかって?昔小説漁ってた時に、気に入った作品の小説家さんたちの名前をもじらせてもらったんだよ。あ、でもちゃんと許可は取ってるから、気にしないで欲しい。それにあの人たちは僕なんかとは次元が違うから一緒にされたら迷惑だろうし。
「あ、翔くん!」
「おぉ、びっくした〜どうしたの、しずくちゃん。」
黙々とタイピングしていたら、急に叫ぶように呼びかけられた。
「あ、ごめんね。ちょっと変換ミス気になっちゃて…」
「ん、どこ?」
「ほらここ、言ったていうのが行ったになってます。」
体を前のめりにして、画面の間違っているところを指さす。その時僕の右肩に何か柔らかいものが乗る。
(こ、ここ、これって……ま、まさか〜だ、だめだ!!集中〜しずくちゃんが真剣に言ってくれてるのに、僕がこんなんでどうする、集中だ〜)
「………あ、ほんとだ//。ありがとう、しずくちゃん。」
「はい!あれ、顔が赤いですけど、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫だから。気にしないで〜ハハハ〜」
彼女が顔を覗き込んでいたから僕は慌てて顔を左に逸らす。
「熱でもあるんでしょうか?ちょっと失礼しますね。」
「あ、いや、ほんと、大丈夫だって//」
しずくちゃんは僕のおでこに手を伸ばす。僕はそれを防ぐために、両の手で顔を覆う。
「動かないでください!!」
「え…あ………はい…」
急にしずくちゃんが大きな声を出したので、その迫力に負けて、僕は手を離す。手を膝に置き、俺は硬直した。
「よろしい。それでは…熱はなさそうですね。暖房の効きすぎですかね?」
「あ〜そうかもね。さすがしずくちゃん!冴えてる〜」
「…あの、さっきから何か焦っているような…」
図星を突かれて、動揺する。
「え、焦ってる?僕が?まあ〜確かに早く小説書き終わらないとだし…?」
「そういうことじゃなくて、さっきから、私が変換ミスをした時からずっとよそよそしいような気がします。」
「………………ひ、否定はしません…//」
流石に隠せなくなったと思った僕は意を決し、言うことにした。
「どうしてですか?変換ミスを指摘したのが気に入らなかったのですか?」
「それは断じて違う!なんなら僕気づいてなかったから、ほんとにありがたかった。」
真逆の反応が来て、少し食い気味で彼女に返答する。
「ではどうして?」
「……怒らない?」
「怒りません。」
「罵倒しない?」
「しませんよ。」
「わかった。話すよ。」
「はい。自分のペースでいいですよ。」
「ありがとう…その…さっきしずくちゃんが指摘した時に…その、柔らかいものが………右肩に乗って…んん!!」
俯きながら、話していて一瞬何が起こったかわからなかったが、どうやら俺の口をしずくちゃんが両手で押さえていた。彼女の顔は、赤面していて、耳まで赤くなっていた。
「そ、それ以上は…い、言わないで…ください//」
「う、うん。ごめん…//」
「いいえ、私こそ…//」
そこから沈黙が流れる。すると、それを壊すように、しずくが口を開いた。
「こんな空気なので、あえて聞きますけど、恋愛小説を書こうと思った本当の理由を教えてくれませんか?」
「気づいてたんだね。前から書きたいとは思ってたんだけどさ、想像だけだとわからないこといっぱいだったんだけどさ、恋をして、しずくちゃん色んな日々を過ごしてきたから、今だったら書けるかなって思ったんだ。」
「そう…だったんですね。//」
「だからこれからも一緒に色んな日々を過ごしていこうね。」
僕は立ち上がり、そう言って彼女に手を差し伸べる。しずくちゃんは泣いていて、鼻から下を手で覆い隠した。
「はい!」
そして彼女が僕の手を取った時、手を引いてしずくちゃんを抱きしめた。彼女はこの展開を察していたかのように、ふふっと笑い、体をさらに密着させた。
「やばい終わらない〜しずくちゃん指摘お願い!」
「うぅ、少し恥ずかしいです…」
「大丈夫!僕はウェルカムだから!!」
俺は振り返って、しずくちゃんに親指を立てる。そんな彼女は膨れていた。座っていた椅子に置いてあった座布団を丸めて、
「エッチ………//」
と言い放ち、彼の頭をポコポコ叩く。
「ちょっ、しずくちゃん?!やめてよ〜」
「そんなことを言ってないで、手を動かしてください!!」
「わかった、わかったから」
世はクリスマス。街中にカップルがいっぱいあるいているなか、彼らは自分だけの空間で愛を深めていくのだろう。
ホワイトクリスマスとも気づかずに………