咲-Saki- 全てを観る少女   作:眠眠バカ

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文章力が欲しくてたまりません。


第2話

私、洞内観奈は幼いころテーブルゲーム、特にトランプを用いたゲームが大好きだった。

 

そう、「だった」のである。

こういう表現をしていることから分かると思うけれど、今では好きではなく、寧ろ嫌いな方である。

 

切っ掛けは小学三年生のとき。

あの日私が能力を発現させてしまったのを境に、私を取り巻く環境は以前とはすっかり変わってしまったのだ。

 

東一局

 

咲配牌:

{三万三万八万九万④④④④578南東}

 

京太郎配牌:

{二万五万六万九万③⑦1279西西白}

 

和手配牌:

{一万七万七万①⑦⑦⑧3668白白}

 

「(はぁ…)」

 

皆の手元を見回して内心で溜め息をつく。

そう、あの日私に発現した能力は透視。

 

相手の手札や伏せられたトランプの数字全てが分かるようになってしまったのだ。

 

そしてその力は麻雀でも威力を発揮した。

皆の手牌から嶺上牌、海底牌に至るまで、全ての牌が見える。

しかもその力にオン・オフなどといったスイッチはなく、自分の意思とは無関係に働いてしまうから質が悪い。

 

 

加えて、麻雀において私はどうも別の能力も持っているようで、それが私の麻雀を好きになれない要因の一つになっている。

 

観奈和了:

{一万二万三万①②③⑥⑥123北北} ツモ:{⑥}

 

「ツモ。ダブルリーチ、面前ツモ、三色同順で2000、4000です。」

 

その一つがこれ。私は「三色」系の役での和了が多いということ。

 

そういえば名字は忘れたけど、照っていう人は誰からだったか「牌に愛された子」って言われてたし、私ももしかしてそうなのかな?

 

それもまぁ私の場合は、牌からの一方的な愛だから表現するなら「牌に愛された子(笑)」とか「牌に(一方的に)愛された子」だろうけど。

 

それにしても…

 

やっぱり、麻雀ってつまらないよね…

 

「えっ?観奈ちゃん、今何か言った?」

 

そんなことを考えてると、宮永さんが私に話かけてきた。まずい、もしかして口に出ちゃってたのかな。

 

「えっ…。い、いや何でもないよ。「麻雀って和了れると楽しいよね」って思ってたから、もしかしたら知らない内に口に出ちゃったのかも」

 

「なるほど!やっぱり、思った通りに和了できると気持ちいいよね!」

 

よく聞こえてなかったことが幸いし、咄嗟についた私の嘘を宮永さんはあっさりと信じてくれたが。

 

しかしそれも束の間、

 

「今「つまらない」って言いましたよね?」

 

という原村さんの一言で全て台無しになった。

 

 

 

 

「「つまらない」とはどういうことでしょうか。洞内さんは麻雀が嫌いなんですか?」

 

余計なことを…。

内心で毒づく私に原村さんは問い詰めてくる。その声はどこか怒りが滲み出ていた。

 

「そうです。私は麻雀が嫌いですが、それで何か問題ありますか?」

 

これ以上誤魔化してもしょうがないと思った私は本心を口にする。

 

それを聞いた皆、特に宮永さんは、信じられないといった顔をして私を見つめた。

 

「宮永さん…。まぁ、いいです。私が何故麻雀が嫌いなのか、これから教えてあげますから。須賀くん、賽を振ってください」

 

…さぁ東二局を初めましょう。

黒い笑みを浮かべながら私は心の中で呟くのだった。

 

 

 

 

「私は麻雀が嫌いですが、それで何か問題ありますか?」

その言葉に此処にいる誰もが息を呑む。それは京太郎も同じだった。

 

こんなに麻雀が強いのに、どうして観奈は麻雀が嫌いなんだ、と京太郎は不思議でたまらない。

しかしそれ以上に不思議だったのは、そんな麻雀嫌いの観奈が何故自分に麻雀を教えることを約束してくれたのかであった。

 

「私が何故麻雀が嫌いなのか、これから教えてあげますから。須賀くん、賽を振ってください」

 

観奈に名前を呼ばれハッとする。

 

取り敢えず言えるのは、この子は放っておけないということ。

そして、この子はどこか昔の咲に似ている気がするということ。

俺で勤まるかは甚だ自信がないが、折角友達になったのだ。

友として咲の時と同じように支えてあげたい。

 

賽を振りながら京太郎はそう決意するのだった。

 

 

 

 

…さあ、東二局を始めましょう。

 

今のは幻聴だろうか。

何処からか声が響きその瞬間、東一局の時と打って変わって禍々しい空気が場を包みこむ。

観奈の放つオーラに中てられた咲は思わず吐き気を催してしまった。

 

「(そんな…。こんなの、昔のお姉ちゃんよりずっと酷い…)」

 

しかし、咲の異変をいち早く察知した観奈が「ごめんなさいね」と言うと、

まるで今のが嘘だったかのようにそのオーラは消え去ってしまった。

 

「試しに少し気を放ったつもりだったんだけど、そこまで敏感だったとは思わなくて。でも、もうこの対局でこんなことはしないから気にしないで」

 

その言葉に安堵する咲、同卓している和や京太郎も止めていた息を吐き出した。二人とも汗が流れていて、咲とは程度の違いはあれど観奈の放ったオーラに気圧されていたのは確かだった。

 

「(観奈ちゃんは強い。でも、気圧されて何もできないんじゃダメ。お姉ちゃんと仲直りするため、全国に行くためにはもっと強くならないと…!)」

 

そのためにはまず、観奈ちゃんを越える!

思わぬ強敵の出現にある意味で感謝しながら、咲は新たな目標を立てるのであった。

 

 

 

 

東二局

 

「カン!」

 

咲の声が室内に響く。嶺上牌に手を伸ばすと、さも当然のごとく咲は和了りを宣言した。

 

咲和了:

{②③④66778三万三万■七万七万■} ツモ:{8}

 

「…ツモ!面前ツモ、タンヤオ、イーペーコー、嶺上開花。2000・4000にリーチ棒一つだね」

 

嶺上開花での和了り。これはいつもの通りだが、和はそのいつも通りに違和感を感じていた。

 

「(何故、この局洞内さんは何もしてこなかったんでしょうか)」

 

この局、観奈は全く攻めの姿勢を見せることがなかった。

流石にツモ切りはあまりしていなかったが、それでも手を進めようとしている雰囲気を和は感じることが出来なかったのである。

 

そして更に不可解なのは観奈の捨て牌。

京太郎や和が捨てた牌を観奈は同巡で捨てることが多かったのである。

 

観奈に遊ばれているのだろうか、そう思った時だった。

 

「原村さん。勘違いしないでほしいんだけど、私は別に遊んでないよ?」

 

「…えっ?」

考えていることを読まれたことで、和は驚きのあまり一瞬思考を停止させた。

きっと顔に出てたのだろう、そうでないと思考を読むなんて出来るわけがない。

 

「それよりも宮永さん。さっき言ってた「思い通りに和了れたら~」って、もしかして嶺上開花のこと?」

 

「そ、そうだよ!でもよく分かったね」

 

「まぁね。和了する確率の高い役という意味では、私の場合はさっきの「三色」なんだよ。そういった意味では似てるのかな?」

 

「うん、きっと似てるんだと思うよ。だって…」

 

「「私も最近まで麻雀が嫌いだったんだから」」

 

「え?」

声が重なり今度は咲が戸惑いの声を上げた。

 

「それにしても、お年玉をかけて家族麻雀っておかしいよね?普通賭け事はしちゃダメって教育するのが親なのに。しかもそれが原因で照さんとは仲が悪くなっちゃってるし」

 

「な、な、何でそれを知ってるの…?」

初対面で教えたはずのないことを何故か観奈は喋っている。混乱の最中、咲はやっとの思いで声を絞り出すと、

 

「理由?それはさっき覗かせてもらったからだけど。まぁこれは能力の副産物的なものだから、宮永さんの±0みたいなものだと思うといいよ」

余りにも衝撃的なことを告げられた。

 

「そんなオカルトありえません!!」

それを聞いた和が立ち上がり、観奈を睨み付ける。

なぜそれほどまでに食って掛かるのか。

和を見て観奈は流石に呆れていた。

 

「えー…。いいよ、じゃあ私の能力教えてあげるから」

「だからそんなものは…!」

 

「はい、いくよー。九萬」

未だに騒がしい和を尻目に観奈は山に手を伸ばし、宣言してから牌を捲った。

 

一回目:{九万}

 

「はい、次。二索ね」

 

二回目:{2}

 

三回四回と、どんどん当てていく観奈を誰も止めることができず、結局海底までの全ての牌を当ててしまった。

牌を見透かす能力。観奈にその能力があることを咲達は信じるしかなかった。

 

「…で、これでもまだ信じてくれないようですね」

 

「当たり前です!牌を全て当てる確率は0じゃないんですから」

ただ一人、和を除いては。

 

決定的だった。ここまでやってダメなら、もう何をしてもこの人には信じてもらえないのだろう。

和の言葉は観奈の傷を深く抉った。

 

「…もういいです。原村さんがそう思うんならきっとそうなんでしょうね」

 

全く信じようとしない和に失望した観奈は吐き捨てるように告げると、鞄を持ち走ってドアへと向かう。

頬には一筋の涙が流れていた。

「…っ。失礼、しました」

「お、おい観奈!待ってくれ!」

それに気づいた京太郎が堪らず部室から飛び出し、観奈の後を追う。

 

「観奈ちゃん…」

中断された対局。咲のスコアは奇しくも±0であった。




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