「そんなオカルトありえません!!」
原村さんの言葉が頭から離れない。
彼女は目の前にいる私という存在よりも、0にも等しいであろう確率を信じたのだ。
「当たり前です!牌を全て当てる確率は0じゃないんですから」
私にはそれが堪らなく悔しかった。
彼女の発言は、私が嘘つきであると言っているのと同義なのだから。
私だって欲しくてこんな能力を得たわけじゃないのに…
「…もういいです。原村さんがそう思うのならきっとそうなんでしょうね」
これ以上ここに留まるのは無理だと判断した私は、そう吐き捨てて部屋を出ていった。
「待ってくれ!」
嫌な予感がする。俺は慌てて部屋を出た。
他の皆が気づいたかは知らないが、観奈が部屋を出ていく時、涙を流していたのを俺は見逃さなかった。
「観奈!」
すぐに追いかけたこともあり、俺は階段の手前で追いつき、観奈の腕を掴んでその体を抱き寄せた。
危なかった、下へと続く階段を見て俺はそう思った。
観奈が出ていくとき嫌な予感がしたのだ。
思い違いの可能性もあるが、もしかしたらここで観奈が足を滑らせ落ちていた可能性もある。
「…あ」
よく見ると観奈は呆然としている。
まさか本当に気づいていなかったとは。
昔からこういう時だけよく当たる直感、間に合ってよかった。
「観奈、少し歩かないか?」
「…うん」
俺の問いかけに観奈は一言返事をした。その声は消え入りそうな程か細いものだった。
一方その頃、部室では和がある人物から責められていた。その人物とは…
「のどちゃん、いくらなんでも酷過ぎだじぇ!」
「で、ですが…」
部長の久でもなければまこでもなく、優希である。
「のどちゃんは今日私に言ったよね「親しき仲にも礼儀あり」って。
私バカだから教えてほしいんだけど、この諺って「親しくない人なら無礼を働いても構わない」って意味だったっけ?」
「…っ!」
優希の発言に声を詰まらせる和。煽りながらも正論を述べる優希の言葉に言い返す言葉が見つからない。
「優希の言い方はきついけれど、私もその通りだと思うわ。
これは私の推測だけど、能力に関することで昔何かトラウマになるようなことがあったんじゃないかしら」
「そうじゃのぉ。和に否定されて明らかにショックを受けておったし」
「そ、そんな…。私はなんてことを…」
自らの考えだけを押し通し、相手の考えを否定する。
自分の行いに漸く気づいた和は激しく後悔した。
「観奈ちゃんが帰ってきたら謝ろう?私もついてるから」
「はい。咲さん、ありがとうございます」
咲の優しさに少しだけ救われた気がした和だった。
「観奈、少しは落ち着いたか?」
「うん…。ごめんね、迷惑かけちゃって」
部室から飛び出して30分は経っただろうか。
校庭隅のベンチで観奈と京太郎はぼんやりと運動部の様子を眺めていた。
「なぁ、観奈。良ければお前のこと教えてくれないか?」
「え…いいけど」
いきなりのことに戸惑う観奈。しかし京太郎の目はいつになく真剣で、少し考えたが観奈は話すことに決めた。
観奈が語ったのは昔の記憶。能力が発現した後のことだった。
小学3年生の頃、トランプゲームで矢鱈と勝つ観奈にクラスメイトからは空気の読めない奴、所謂「KY」と言われ、気がつけば友達がいなくなっていたこと。
中学に入って仲良くなった数少ない友人に自身の持つ透視能力のことを話した結果、
翌日にはクラス中に知れ渡ってしまい、実演しても手品だの何だのと信じてもらえず、
「嘘つき」呼ばわりされたこと、等々…。
「私の苗字を文字って「洞(ほら)吹き」なんて呼ばれたときはグサッときたよ…」
「観奈…」
自らの思い出を語り悲しく笑う観奈。その顔を見ていられない京太郎は観奈の頭を撫でて言った。
「なぁ…頼みがあるんだ。俺と友達になってくれないか?」
「えっ?!」
いきなりのことに観奈は焦る。
元はといえば観奈の方から「お願い」したことだったので、京太郎に改めて言われるとは思っていなかった。
「い、いいの?」
「あぁ、俺がそうしたいのさ。それとも高校最初の友達が俺じゃ嫌か?」
「嫌じゃないよ!」
首をぶんぶんと振って必死に否定する観奈に思わず笑ってしまう京太郎。
「じゃあ決まりだな。ほら、指切りするぞ」
「うん!」
そう言って指を絡ませる観奈は今日一番の笑顔を見せていた。
「ただいま戻りましたー」
「ただいま…です」
「京ちゃん!観奈ちゃん!」
須賀くんに連れられて戻ってきた私を出迎えたのは宮永さんだった。
私のことを心配していたみたいで、私を見るなり真っ先に駆け寄ってきた。
「観奈ちゃん大丈夫?」
「宮永さん、心配かけちゃったみたいでごめんね。もう落ち着いたから」
そういえば、人に心配されるなんて何時ぶりだろうか。
久しく感じることがなかっただけにとても嬉しい。
「あ、あの…洞内さん…」
「…何でしょうか?」
原村さんに声をかけられ思わず声色が堅くなってしまった。
正直なところまだ原村さんを許すことはできないけど、表面だけでも繕っておかないと。
私、結構根にもつタイプなんです(笑)
「先程は無神経なことを言ってすみませんでした…」
「いいって原村さん。私も落ち着いたし、もう大丈夫だよ!」
「! …ということは」
「うん、これからもよろしくね原村さん!」
許してくれるのか心配していたようで、私の言葉を聞き、その場に座り込む原村さん。
でもね原村さん?
私、「許す」とは一言も発言してないからね?
「ふふっ」
原村さんの表情に思わず笑ってしまったが、まさか私がそんなことを考えているとは誰も気づかないだろう。
竹井部長も私のその姿を見て安心している様だった。
「あの、竹井部長…」
「ん、何かな?」
「私を麻雀部に入れてください!」
「!?」
私の言葉に驚く部長。見れば周りにいる皆、そして理由を知っていそうな須賀くんでさえも同じような顔をしていた。そんなに変なことを言ったつもりじゃなかったんだけど。
「理由を聞かせてもらってもいいかしら?」
「あ、はい。先程言った通り、私は麻雀をするのが好きではないですが、人に麻雀を教えるのは好きなんです。私は須賀くんに麻雀を教える約束をしたから、麻雀部に入った方がその時間を多くとれると思って。それに…」
「それに?」
「…友達と一緒だったら少しは麻雀を好きになれるかもしれないから…」
「…うん、そういう理由なら歓迎するわ、洞内さん!寧ろ入ってくれると嬉しい」
「ありがとうございます!…そういうわけなので、皆さん宜しくお願いします!」
こうして私は清澄高校麻雀部の一員として活動することになったのであった。
「観奈ちゃん、これからよろしくね!」
「オカルト派が増えたのぉ」
「だからそんなオカルトはあr…」
「のどちゃん?」
「…はい」
だ、大丈夫かなこれ…
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