「しっかし、キャプテンとみはるん、そしてあたしの風越トップ3と打ってもらえるあんたは超ラッキーだねぇ」
卓へとついた私に猫少女、じゃなくて、池田さんが話しかけてきた。先程の3人の実力は拮抗していたが、やっぱり吉留さんが第3位だったようだ。
そして池田さんが言うように、名門校のトップ3と無名校の私とが練習試合をするなんて普通ならば考えられないことで、藤田プロのお陰でこの対局が実現しているのだと改めて感謝した。
「確かに、無名校の人間が名門校の、しかも上位陣と練習試合なんて普通無いですもんね。超ラッキーですよ」
「あらあら、どうやら観奈さんは強運の持ち主のようですね。お手柔らかにお願いしますね」
私の発言を受けて冗談を言う福路さん。
もしかして、久保コーチが福路さんたちを相手に指名したから警戒してたりするのかな。
今回の目的は相手の戦力の把握だから、言われなくてもお手柔らかにするつもりなんだけどね。
「とんでもない、全力でやっても足元に及ぶかどうか…」
「まぁ、それはやってみないと分からないことですから、全力できてくださいね。私も全力でキャプテンたちに挑戦します!」
吉留さんも自分よりも上の二人に挑むとあって気合いは十分。
そして、その言葉を受け福路さんと池田さんも真剣な表情へと変わった。
むむむ…正直にいうと、能力を使えばそれで粗方偵察は完了してしまうので、私としては怪しまれない程度で適当に打つつもりでいたのですが…。
「(三人が真剣勝負をしているのに私だけ不真面目にやるわけにはいかない、か)」
「…よろしくお願いします」
私のその言葉を合図に吉留さんが賽子を振った。
【東一局 0本場 親:吉留 ドラ表示:{5}】
東家、吉留配牌:
{一万二万②④④2578西北発発白}
南家、福路配牌:
{三万三万八万①③⑤⑦334東東南}
西家、観奈配牌:
{七万八万九万⑥⑦⑧7789北北中}
北家、池田配牌:
{三万五万五万七万②③⑥⑧667南白}
「(よし。いつも通り、良い配牌です)」
三色同順に混全帯么九の二向聴、リーチをかければ跳満まで伸びる手だ。
三人の配牌も悪くないけど、最短距離を知っている私の方が早い。
7巡目
観奈手牌:{七万八万九万⑦⑧⑨789北北中中}
ツモ牌:{七万}
「リーチ、です」
7巡目、私は{七万}をカラ切りしリーチをかけた。
「にゃっ?!」
「は、早い…!」
「…」
私のリーチに対し、池田さんと吉留さんは焦りを浮かべていたものの、福路さんは至って冷静だった。
池田手牌:{五万五万六万七万②③6678 白白横白}
ツモ牌:{発}
打:{七万}
吉留手牌:{二万赤五万六万②④④34578発発}
ツモ牌:{⑨}
打:{⑨}
池田さんが{発}をツモって{七万}を手出し、吉留さんが{⑨}をツモ切りして福路さんへと手番が回る。
福路手牌:{三万三万①③③⑤⑦234東東東}
ツモ牌:{②}
観奈捨て牌:{西⑥四万7西横七万}
そして、福路さんは私の河を見つめると思考を巡らせ…
「(他の二人に聴牌の気配はなし。洞内さんの1巡目と6巡目の{西}以外は全て手出しで、
牌の切り出し位置とツモ牌を入れた位置から考えると、{七万}に絡む萬子の面子が完成しているはず。
萬子の枚数は3枚ですから、萬子待ちの可能性はほとんどないですね。
リーチ時の洞内さんの視点移動から考えて、待ちで警戒すべきはやはり字牌の{北発中}。特に{発中}は生牌だからまず切れないわ。
逆に筒子は持ってる枚数も少なく、持っていてもそれは数字の大きい牌の対子か面子が一つ程度。
そして先ほど吉留さんの捨てた{⑨}が通っていますから、{⑦⑧}以外の筒子は安牌ですね)」
{③}を捨て私の現物である{⑥}待ちの聴牌をとった。
「(うわぁ…何これぇ…)」
手出しか、ツモ切りか。これくらいなら捨て牌読みをするために記憶する人もいるけど、牌をどこから切り出したのかに加えてツモ牌をどこに収納したのかも覚えてるなんて…。
そして、「視点移動から考えて」ってナニソレイミワカンナイ。
デジタルもここまでくるとオカルトと大差無いような気がするよ…。
あまりの記憶力と分析力に軽く引きながら、私はツモを宣言するのだった。
「ツモ。リーチ、一発、自模、三色同順、混全帯么九、ドラは…ないです。3000、6000、です」
「いきなり一発ツモ!」
「一発が怖くて現物を捨てたのに。本当に強運の持ち主だったし…」
私の和了に吉留さんと池田さんが肩を落とした。
ま、まだ始まったばかりなのに、ちょっと落ち込みすぎだと思うんだけど…。
格下と思ってた人に和了られたのがそんなにショックだったのかな。
「あらあら。二人とも、まだ東一局が終わったばかりよ?」
「そうですよ、今回は運良く一発になっただけですし…」
「あら、それは果たして本当かしら。
洞内さんは4巡目には聴牌していたでしょう?
でも、そこでは何もせずに7巡目にリーチをかけた。
カラ切りだから待ちが変わったわけでもないし、そのままヤミテンに構えていた方が和了しやすいはずなのにです。
それにリーチをかけた時の洞内さんの表情、まるで和了りを確信したかのような顔をしていました。
いきなり変なことを聞くようで悪いけれど、洞内さん、貴方…牌が見えてたりしませんか?」
私を覗く福路さんはその両目を開けていた。
麻雀の素人(作者)に福路さんの思考を読むことができるのか、いや出来ない。(反語)