来賓室、といえば聞こえは良いがIS学園のそれは学生寮の設備に毛が生えた程度のものとなっている。そもそも、『高い独立性を保持する為』に普段は外部の人間を入れる事自体が稀になっているからだ。年間の行事の中で外部から人が来る事こそあれど、その時ですら一日限りの滞在の日程となっている。結局、この学園におけるそれはやむを得ない場合のみに使用されるような、避難所のような役割だと言えた。
その為、ベッドは学生寮と同様に、見た目は質素だが快眠を得る為には十二分なものを使用し、家具周りは例えば黒檀をふんだんに使ったとか、金装飾を施してあるという訳でも無い。勿論、天井から豪勢なシャンデリアが吊り下がってもいない。強いて言うならば、寝室とリビングが分けられている程度だが、これは来賓とその関係者との打ち合わせ等する為のもので、至極当然の措置と言えた。そして、今まさにこのリビングでは、正しくその使用目的が成されていた。
「面倒な事になったな」
千冬は呆れた様子で、目の前の布張りの二人掛けソファーに座るイツァムに告げる。
昨日の鈴音との非常識極まりない模擬戦の結果を受けて、生徒の反応は実に極端に別れた。方や、我先にとイツァムに模擬戦の申込みを試みる者、方や恐れを成して距離を取る者、と。
そんな状況でイツァムが学園内を歩けば途端に大騒ぎになる。こうして今、彼女が来賓室にいるのも、半ば無理やり千冬に押し込められた事によるものだ。そんなイツァムの表情はどこか浮かない。それは、昨日の模擬戦に満足していない訳でも、自分のとった行動による影響の大きさを憂えた訳でもなかった。
「ま、ま。良いじゃありませんか。模擬戦を申し込んだ方にとってもいい刺激になったでしょうし、こちらとしてはISアリーナのアピールになったんですし」
イツァムの隣に座っていた灰色のスーツに身を包んだ妙齢の女性は嬉しそうに手を叩いた。彼女の目元の皺は震え、後ろで一本に束ねた白髪混じりのダークブラウンの頭髪が揺らぐ。その度に、イツァムは眉間に皺を寄せて視線を窓の外に向ける。
「バージュ、と言ったな。ISアリーナの運営責任者として今回のイツァムの行動は独断専行だと思わないのか。あんな喧嘩同然の殴り合いが、ISアリーナの常なのか」
「いんやあ。私なんぞがトップランカーをどうにか出来ませんしねぇ。責任者と言っても所詮は雇われの身分ですから。それに、『私どものアリーナ』は相手を戦闘不能にさせる事が最終的な目的なので、多少危なっかしいのも、ま、ご愛嬌ってところです」
千冬が彼女の名を告げその責任の所在を問うても、その女、バージュは大げさな身振り手振りをまじえて口元を歪ませる事に終始する。
なるほどこれは不愉快だ。千冬は、イツァムが先程から一言も喋らない理由を悟った。目線で訴えかけてくるイツァムのその姿勢は、また別の意味で不愉快にさせる。
「あぁ、それと。コルナートへの改修工事はおかげさまで順調ですよ。この後また現地の状況と進捗について業者と打ち合わせの予定が入ってまして直ぐに戻らなければなりません。天下のIS学園を是非とも見学させてもらいたいという気持ちもあるんですが、こればっかりは仕方ありませんねぇ」
そんな二人の事など視界にすら入っていないかのようにバージュは一人、海洋プラットフォームの改装工事について話す。実に楽しげなその様子は、千冬はおろか、イツァムに対してすら挑発をしているようだ。
どうぞさっさとお戻りください。そのまま二度とIS学園の敷居を跨ぐ事の内無いように。案内などもってのほかだ。千冬は、心の中で思いのままに毒づく。ふとイツァムの様子を伺うと、彼女は自身の眉間を指先で押さえながらこちらを見ていた。どうやら考えている事は同じらしい。敵の敵は味方、という言葉を思い出した。この場を表現するにはいまいち適切でないようだが、今の感情を踏まえると、どうしてもそれがしっくり来てしまうように思えて仕方なかった。
※ ※ ※
模擬戦から一夜明け、鈴音は自分に向けられる視線が普段とは違うものに変っている事を直ぐに悟った。その原因はわかりきっていた。朝から、二組では何かと合間を縫って、イツァムとの模擬戦の感想について質問攻めにされた。撮影されていた動画も見せてもらったが、第三者からの視点でみたら『ステゴロ』にしか見えなかった。よくもこれだけ派手に闘って五体満足でいられるのだから、シールドエネルギーと絶対防御というISの持つ防御機能の堅牢さを改めて実感させられる。
もっとも、当人やISが無事だと言うのは見た目だけの話だ。本来なら誰もやろうとせず、思いつきもしないような『ステゴロ』を受けて模擬戦が終わった後、アリーナのゲートをくぐった先に待っていた千冬に。鈴音はこっぴどく叱られた。反省文の提出のみで済まされたのは、果たして幸いといえるだろうか。
いずれにせよ、鈴音の心は全く折れていなかった。今、彼女の足は震え一つも無く来賓室へと向かっている。目的は勿論イツァムだ。
思い返せば、昨日の模擬戦のきっかけは自分の癇癪と言っても良い。それにも関わらず彼女は快諾し、全力で闘ってくれた。模擬戦の間、鈴音は自分の悩みが消えている事に気がついた。時間の開いた今となってはいくらか再燃し始めたが、それでも以前よりもずっと軽くなっている。一つの物事に集中し始めるとそれ以外が気にならなくなる。というのは我ながら単純だと鈴音は自嘲気味に笑ってしまう。
来賓室は学園の敷地内、教師をはじめとした職員の生活する教員棟の一角にある。場所は事前に確認しておいたが、なにせ初めて足を踏み入れる場所だし、自分がこの場にいるのは不釣り合いという自覚もあった。すれ違う教職員にぎこちなく会釈をして、時折首をかしげる反応をする人もいたぐらいだ。次第に歩みは早くなり、逃げ込むように目的の場所に急ぐ。
そうして進んだ先に、来賓室の扉があった。焦げ茶の、簡単な筋彫りの施された扉が。鈴音は、唾を飲み込み三度その扉をノックする。これが引き金となって、急に緊張してきた。模擬戦で感じた、イツァムの気迫を思い出してしまった。頭を振る。きっと、今の自分は、それに負け時も劣らず、と言い聞かせた。
油の足りていない、金具の擦れる音がした。眼前の扉が開く。だが、鈴音の予想に反して、そこから姿を見せたのはイツァムでは無かった。
「確か、ええと。ハスラー・ワン、だっけ?」
「……凰鈴音。要件は、イツァム・ナーか。入れ。私は席を外す」
扉の向こうから姿を見せたハスラー・ワンは、鈴音の顔を見るなり頷く。そして、中途半端に開いていたドアを広げ中へと招き入れた。促されるまま鈴音が来賓室に入ると、ハスラー・ワンは入れ違いとなってそのまま扉を締める。
鈴音が来賓室に入るのは始めての事だったが、その内装は普段自分が過ごす寮とあまり変わらない事に安心感を覚えた。そして、気持ちを落ち着けてから室内を一瞥すると、ドアから地続きにあるリビングでイツァムの姿を見つけた。布張りの、ライトグレーのソファーに背中を預け天井に顔を向けて妙にぐったりとしている。
「……おぉ、凰か! よく来てくれたね!」
しかし、鈴音に気がつくや否や破顔し、跳ねるように座り直すと対面のソファーに指先を向けた。
「随分疲れてるみたいだけど」
「ははは、中間管理職の気持ちを痛感していただけさ」
トップランカーなのに? と喉元まで出かかった言葉を鈴音はぐっと飲み込んでソファーに腰を下ろす。沈み込むような感覚は無く、むしろ跳ね返されるよな強さがあった。学園の所々に置かれている椅子とそう変わらない座り心地だ。
鈴音の着席と同時に、イツァムは背を伸ばし始めた。両手を組んで、真上にぐっと引き上げる。口元から唸るような声がもれた。
「今日は下手したらこの部屋で一日退屈に過ごす羽目になっていたかも知れない。貴方が来てくれて嬉しいよ。
さて、喉も乾いた。オレンジとアップル、どっちが良い?」
オレンジで、と鈴音が答えるとイツァムは立ち上がり、部屋の隅に置かれていた冷蔵庫を開ける。冷蔵庫の扉によって彼女の上半身は隠れ、ごそごそと漁る音だけが聞こえる。
程なくして彼女は冴えるようなオレンジ色の紙パックを手に戻ってきた。一度それをテーブルに置き、ソファーに座ってから右手で器用にパックに口を広げる。そして、湯呑を自身の手元に持ってくるとそれに注ぎ込んだ。
「丁度いいコップが無くてね」
そう言いながら、彼女は鈴音の前にオレンジジュース入りの湯呑を差し出す。決して彼女に非がある訳でもないのに、その言葉にたまらず鈴音は苦笑してしまった。
「昨日、模擬戦やった人じゃないみたい」
「なんだいそりゃ。私だって人間だよ」
二人は顔を見合わせると、とうとう笑い声を上げる。イツァムもまた同じような心持ちだったらしい。何故か鈴音は無性に嬉しくなる。そうしてひとしきり笑いあった後、イツァムから話を切り出してきた。
「それで。わざわざここまで来てくれたんだ。どんな用事だい?」
彼女は破顔したままだったが、視線は鈴音を真っ直ぐ捉えている。この視線は、来賓室に向かうまでの間、ずっと彼女の中にあった枷をいともたやすく壊す。というよりも、この部屋に入った時からすでにそんなものは無くなっていたのだろう。その事にたった今気がついただけなのだと鈴音は思った。
「イツァムさんはどうしてISアリーナにいるの?」
それ故に、ぶつけた。自分の純粋な疑問を。
目の前にいる女帝は、疑いようもなく強い。食堂で初めて会った時、彼女は織斑千冬と闘ったらどうなるかという質問に対し即断を避けた。その時は弱腰だと思った。
たった一度の模擬戦を通してここまで言うのはいささか短絡的かも知れないが、今となっては彼女の言わんとする事が身にしみて理解出来ていた。この人は、自分のあり方にぶれる事の無い自信を寄せている。だからこそ、知り得ぬ事、分からぬ事に対しては虚勢などはらず素直に向き合うのだ、と。
「……私は、模擬戦をする前に貴方の事を調べさせてもらった。それなのに、私の事を話さない、というのは確かにフェアじゃないね。
凰。貴方の見せた意思に『敬意』を払おう。私の事、話してあげるよ」
そんな鈴音の姿勢に、イツァムは軽く頷くとこう応えた。そして、背もたれからずり下がっていた体を持ち上げ、深く座り直す。雰囲気が、変わった。自然と鈴音も背筋を伸ばし顎を引く。二人の視線の高さが揃う。イツァムが自身の過去を話し始めたのは、それから間もなくの事だ。
「私がISアリーナに参加したのは、そこに私が求めていた『本当の強さのあり方』があると信じたからだ。モンド・グロッソは、競技性という制約に囚われるあまり、無粋だと思った。その判断は、間違いで無かった。今でもそう考えている。
私はISアリーナに参加して以来、常勝無敗だった。どんな奴も私には敵わなかった。このまま行けばトップランカーも間違いないなんて持て囃されたし、当時の私もそれを信じて疑わなかった。
でも、トップランカーは、ハスラー・ワンは甘くなかった。私が想像するよりも、ずっと」
穏やかに淀みなく、はっきりとした口調でイツァムは語る。彼女の脳裏には、『その時の事』を、たった今起こった出来事のように鮮明に思い浮かべる事が出来ているようだ。
その中に、織斑千冬がその名を知らしめたモンド・グロッソを貶めるような発言もあった。そして、つい先程すれ違った赤髪の少女が、イツァムのマネージャーだという彼女が元トップランカーだという話にも驚きを覚えた。だが、どうしてか鈴音にはそれらを事を問いただす事が出来ず、黙ってイツァムの話を聞き続けている。
「私はハスラー・ワンに全く敵わなかった。試験のようにも思えたよ。アイツが試験官、私は単なる訓練生の一人みたいにね。ISの性能差じゃあない。もっと根本的な所での差を刻みつけられるように蹂躙された。左腕を生身ごと吹き飛ばされるのを見ても、切りつけられた左の眼球が空中で飛び散るのを見ても、『私はこんなに弱くない』と私自身が受け入れられなかった。
結局、私は降参せず完全に意識を失うまで闘った。勿論、結果は負けさ」
イツァムの口からため息が漏れ、彼女の指先が既に役目を果たさなくなった左の瞼をなぞった。焼け爛れたそれが触れられるたび、ガサガサと乾いた音が小さく鳴る。
「悔しかった。体の一部を失って、これでもう今までと同じ生活ができなくなるから、とかそんな理由じゃない。今までと同じように、ISを動かせなくなると思う事が辛かった。
だから、こんな体になってもISを乗り回せるようにプロトエグゾスを改造した。私自身もそれに耐えられるように鍛え直した。私の全てを使って、もう一度、ハスラー・ワンとやりあう為に。こんな目にあわせたあいつに復讐って訳じゃない。ただ、挑戦したかったんだ。あの『強さ』に。
それで、『その時』は思ったよりも早く来た。ハスラー・ワンとの再戦、観客はひと目見て分かるほど冷めきっていた。当然だ。IS搭乗者として再起不能と思われる惨敗したんだからね。でも、私にとってそんな事、もう何の関係もなかった」
時折イツァムの肩は震え、言葉に熱が籠もる。しかし、鈴音はその姿に恐怖を感じる事は無かった。膝の上に置いていた拳が、無意識のうちに握り込まれている。脇目も振らず、ただひたすらに強さを追い求める事。半身を吹き飛ばされてでも、という即物的な話ではなく、もっと内面的なところで、今の自分に到底真似出来ない事だと思った。
深呼吸を一つおき、イツァムは言葉を続ける。記憶をたどる様に、視線を手元に落としながら。
「ギリギリだったよ。今度こそ死ぬかと本気で思った。でも、私は勝った。その瞬間、私は『一人の挑戦者』から『トップランカー』になった。『ナインブレイカー』になった。その直後に、ハスラー・ワンはアリーナを去ったんだ」
「その、『ナインブレイカー』っていうのは」
「ああ。称号ってやつさ。ハスラー・ワンが乗っていたISの名前、『ナインボール』って言ってね。ISアリーナが出来てから私が勝つまで、ただ一度の負けも無かったんだ。いつしかナインボールはランカーからも恐れられた。生ける伝説、悪魔がいる、と。誰も超えるの出来ない、名実ともに最強のトップランカーだったって訳さ。
だから、私が史上初めてナインボールを、ハスラー・ワンを倒した時、『ISアリーナの伝説を越えた者』という意味を込めてナインブレイカーという称号が作られて私は受け取った。だから、もし次に私を倒す者が現れたら、そいつが次のナインブレイカーだ」
こほん、と一つイツァムが咳払いをする。その指先が再び紙パックの口を広げ、手元の湯呑にオレンジジュースを注ぐ。かと思えば、一気にそれを飲み込んでしまった。よく見れば彼女の頬は赤みを帯びている。どうやら彼女もまた、自身の昔語りをする中で随分と熱くなっていたらしい。
「私は、勝ち続ける事でその称号を守らなきゃいけない。でも、いつか。誰かが私を超えるという結末は必ず来る。私が、ハスラー・ワンを越えたようにね」
やがて、彼女の口から出た言葉。それはかつての自分が、そのままそっくり今の自分のもとへやってくるのだという事実。なまじ、今の立場だからこそ、トップランカーだからこそ痛みを覚える程に分かる事なのだろう。
だが、鈴音は彼女が諦めている訳でも悲しんでいる訳でもないのだと感じた。むしろ、その事実を喜んでいるように思えた。
「……それでも、トップランカーを続けるのね」
「勿論だとも。いつか必ずやってくる『自分にとって都合の悪い結末』というのは、私だって怖いさ。でも、それは越えていかなくちゃいけない。私に敗れていった者達や、これから現れるであろう私を超えてくれる者の為にね」
イツァムはさも当然だと、自信をもって応える。鈴音は、無性に気恥ずかしさを覚えた。イツァムの話を聞く内に自分にも似たようなところがあると少なからず考えていたのだが、改めて考えれば、それの指し示す所に計り知れぬ程の距離があった。これでは、まるで自分は我儘を振りまく子供じゃないか。そんな嫌悪感すら覚えてしまった。
「その、そういう純粋な強さへの意思に憧れるな、って思って。何となく、あたしがISに乗る理由が不純のように思えて」
無意識の内に嫌味のような感情が溢れてしまい、たまらず俯く。
しかし、イツァムはというとしばらく唸るように思案した後、シンプルでいて、もっとも的確な感想を発した。
「……惚れた男の為か?」
鈴音は、途端に体が強張り顔が熱くなるのを感じた。その最中、イツァムの跳ねるような笑い声が耳に入ってきた。
「あっはっはは。カマかけだったんだけどまさか図星とはね。それでいて私に挑戦する。本当に面白い娘だ。
良いじゃないか。ISアリーナの中には、囚人だっていた。政治的なメッセージを出したくて参加してるのもいたし、賞金を家族の治療費に充てる為に参加してるようなのもいた。私みたいに純粋に強さを求めるんじゃなくて、あくまで結果として強さを求めるような、ね。とにかく色んな理由でISアリーナに参加するんだ。それと同じようなものだよ」
実に楽しげにイツァムは笑った。しかし、自分がその中に含まれても良いのだろうかと、鈴音の内心は羞恥と歓喜、悲哀がひどく複雑に混じり合う。それを察したのか、イツァムの顔がぐいと近づく。そして、鈴音の前で左手の人差し指をピン、と伸ばした。鈴音の目線は、自然とそれを追う。
「経験則でアドバイスを一つしよう。物事を成そうとする時は『やるべき事』と『出来る事』の二つがある。大抵の場合、この二つは同じにはならない。ほんのちょっとズレたり、正反対になる事だってある。それは時に『迷い』となって自分を苦しめる。やがて、足も止まって、物事に対する思いだって消え失せてしまう事だってあるだろう。その中で、成し遂げようと前に進んでいく事は困難を伴う。
結局のところ、『やるべき事』はいつだって変わらず、私達はそれに合うような『出来る事』を探していくしかない。だからね、その『二つが一致したと心が思った』のならば、『迷い』を振り切って進むんだ。それが最終的に成功したか失敗したかは些細な違いさ。
重要なのは、決断し実行するという『揺るぎない意思』。その『意思』が、全てを変えるんだ」
揺るぎない意思、鈴音は心の中でその言葉を繰り返す。果たして、自分にもそのようなものがあるのだろうか。イツァムのように、例え半身を失ったとしても揺らぐ事のない強さが。
そこに至って、頭を振った。きっと、彼女が伝えたい事はそういう事ではないのだろう。もっと、内容を単純化させてみる。果たして、自分が成し遂げたい物事とは何だっただろうか。そして、それに対して自分やるべき事とは。自分が出来る事とは。
にわかに、視界が開けたような心地があった。自然と鈴音は笑顔となり、それに応えるように、イツァムは頷いた。