サラブレッドに生まれ変わったので、最速を目指します 作:Budge
本編は一つ前の投稿になります。
この当時はこんな感じの書き込みではなかったと把握しておりますが、こっちの方が書きやすいので勘弁してください。
某日、深夜。
「うーん、終わっ・・・たぁーー!」
もうじき年の瀬という時勢ながら働く人が足りないといわれ、オフィスのデスクで今日の仕事を終えた朱美は思い切り背を伸ばした。もちろん会社には賃金の増額を取り付け済みである。
父親の資産で馬主にはなったが、それを頼りにされては困るとセキト関係以外の金は自分で稼げというのが実次の方針で、朱美自身が実力で入ったのがこの会社であった。
「ふぅ、今日もハードでしたなっと。あっ、そうだ」
書類の作成に使った資料やペン、メモ帳などを片付ける傍ら、ふと最近出来たというインターネットの匿名掲示板に、競馬の話題を扱うものがあると同僚に教えてもらったのを思い出した。
「ちょいと見てみますか・・・お、これこれ♪」
カタカタ、カチカチと職場のパソコンを拝借し、操作して教えられた通りのサイトを見つけると、迷わずダブルクリック。
その中でも興味を引くタイトルがあった。
「今年の朝日杯を語るスレ・・・?セキタンも出てたよね」
【みんなの】今年の朝日杯を語るスレ【トラウマ】
147:名無しの勝負師 ID:HWMzaJVMU
しかし今年の朝日杯は酷かったな。いやレース自体はよかったんだけども。
155:名無しの勝負師 ID:GSAIop2qr
>>147
ワイ、仕事で中継見れなかったんだけど何かあったん?
163:名無しの勝負師 ID:jzhXiFIm5
>>155
ジュンペーが救急搬送されて乗ってたセキトバクソウオーもぶっ倒れた
164:名無しの勝負師 ID:uw77CU5Su
それマ?
166:名無しの勝負師 ID:A/KIl25zp
マジも大マジ。次の日のスポーツ新聞は大騒ぎだったぞ
183:名無しの勝負師 ID:U3T+W7YkL
で、ジュンペーは無事なんか?
199:名無しの勝負師 ID:ONnUlDHSu
分からん。競馬界のこういう情報はなかなか表にでてこないからな
219:名無しの勝負師 ID:a/b9n97UT
そうなんだよな、競馬界って閉鎖的なのがホント駄目
228:名無しの勝負師 ID:0grcLOTbX
あの馬しばらく見ないなーって思ったら予後ってるか故障かのどっちかだと思ってる
246:名無しの勝負師 ID:sysoQMFWG
>>246
地方に行ってたってこともあるで
250:名無しの勝負師 ID:ze53FLEcT
地方っていうと2着のレジェンドハンターもどっかの地方馬なんだっけか
260:名無しの勝負師 ID:JUS4EgMX9
笠松な。オグリと同じところ
261:名無しの勝負師 ID:0aTAaWgrW
はえー。オグリと同郷なんか。そりゃ応援にも力が入っちゃうわな
263:名無しの勝負師 ID:Awb/VQdIt
ライデンリーダー「チラッ」
266:名無しの勝負師 ID:53Z1KuXqL
あなたは子育てに戻って、どうぞ
270:名無しの勝負師 ID:XKOE5D6Wj
それよりもオレは岡田騎手の安否が気になるな。全く情報が出回らないから心配だ・・・それからセキトバクソウオーも
280:名無しの勝負師 ID:9Ub+6ahQ0
ソースがないまま死亡説なんかも出始めてるしな
286:名無しの勝負師 ID:BoasQvjJp
>>280
えっ、あれデマだったん?
291:名無しの勝負師 ID:O0hJHNV6L
デマだよ、公式からそういうお知らせは一切出てない
「死亡説って・・・ジュンペーさん生きてるのになぁ」
馬主である朱美の元には、朝日杯の数日後には岡田が意識を取り戻し、セキトバクソウオーの体調も問題ないという連絡が届いていた。
改めて一般人と競馬関係者のネットワークの差を思い知った形だが、せめて岡田のことに関しては安心させてあげなければと掲示板に書き込むことに。
「えーと、『皆さんはじめまして、セキトバクソウオーの馬主です。岡田騎手は意識を取り戻し、無事であるとの連絡を頂いてます』、と」
299:名無しの勝負師 ID:ZlP26gYTf
皆さんはじめまして、セキトバクソウオーの馬主です。岡田騎手は意識を取り戻し、無事であるとの連絡を頂いてます
300:名無しの勝負師 ID:b8NxpOPLu
嘘乙
301:名無しの勝負師 ID:1vuonEuaT
>>299
嘘乙
302:名無しの勝負師 ID:bQqTt2uLH
>>299
ソースは?
「ひえぇ、ソッコーで嘘つき判定された!?一応本物なんだけどなー」
朱美はなるほど、と思った。
顔が見えないインターネット上のやり取りである以上、誰かがイタズラで広めた情報が真実として広まり、真実が偽物として消えていってしまうこともある。
これでは競馬関係者が本当の情報を書き込んだとしても埋もれてしまう可能性は高い。
「うーん、何か・・・本物の競馬関係者だって証明しながら情報提供する方法は・・・そうだ!」
ピコンと頭の上に豆電球が浮かぶが如く、妙案を閃いた朱美はちゃっかり会社のパソコンから掲示板の履歴を削除し、自宅へと急いだ。
「パパ!ただいま!」
「おぉ、朱美、帰ったか・・・っていきなりパソコンに向かってどうした!?仕事の持ち帰りか!?」
「ううん、違うよ」
帰ってくるなりほぼインテリアと化していた自宅のパソコンを立ち上げた愛娘の姿に驚く実次。
朱美はそんな父親を見ることもなく、着席してパソコンを操作しながら言った。
「あたし分かったんだ、一般の人と競馬に関わってる人じゃ、色んな情報のやりとりのスピードが全然違う」
「それはそうだろう」
それが当たり前であるといった反応をする実次。それに対し朱美はこう返す。
「今日ね、匿名の掲示板を見てきたんだ。セキタンやジュンペーさんのこと、一般の人は全然知らなかった。それだけならまだいいんだけど・・・ジュンペーさん、死んじゃったんじゃないかって噂が広がってたの」
「ぬ!?少し姿を見ないから死んだだと、それは少し酷いな」
「でしょ?」
実次も掲示板の内容について聞かされると少しばかり眉をひそめた。
「だからね、あたし決めたの」
朱美は一旦椅子から立ち上がり、そう前置いてから言う。
「競馬関係者が直接情報提供してくれる掲示板を作る!」
「競馬関係者が・・・直接・・・?それは厳しいんじゃないか」
実次はその言葉を否定こそしなかったが、難しいことである、と言い切った。
「ええ、どうしてさ!?」
「・・・あまり言いたくはないが、競馬関係者は自分のところの馬に関する情報は出したがらないだろう。今まで築き上げてきた信頼や、名声の関係でな」
「うぅ、そんなぁ」
朱美のパソコンを操作する手が止まる。
その様子をみた実次は、慌ててフォローするように付け足し始めた。
「だが、馬主自身が自分の馬の情報を公開するか否かは自由だ」
「馬主自身が、って・・・あ!」
朱美に電流走る。
そうだ、自分の馬なら、セキトバクソウオーに関することならば。
その情報をどこまで晒すかは、完全に自分の自由である。
「そっか、そっかあ・・・!」
それに気づいた朱美は、にぃーっ、とイタズラを思いついたような顔をしてから、言った。
「まず、あたしが・・・馬主自身が自分の馬の事を紹介する!それからそれが普通のことになるよう流れを作っちゃえばいいんだ!」
「うむ、理想は高いに越したことはない。だがそれは茨の道だぞ。大丈夫なのか」
娘の思惑を聞いていた実次は頷きながらも、それは容易ではないと警告する。
「大丈夫!こんなのパパっと紹介を作って、パパっと・・・」
不意に、朱美の動きが止まった。
「どうした、朱美」
それを不審に思った実次に問いただされると、朱美はギギギと音がしそうなほどぎこちない動きで振り返り、尋ねる。
「パソコンのサイトって、どう作るの・・・!?」
「・・・まずは、そこからだな・・・」
後日、本屋でパソコン関係の本を買った朱美であったが。
「ひえー!2進数はまだ何となくわかったけど16進数って何!?ソースコードって何ー!?」
その野望は、前途多難のようである。
流石にこれ以上朱美ちゃんの出番がないとまずいと思ったので、朱美ちゃんの話を書きました。
こういう閑話って書いたほうが良いのかな?
次回更新予定は月曜22:00予定です。