サラブレッドに生まれ変わったので、最速を目指します   作:Budge

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ここで速報です。本日はNHKマイルカップ前編をお届けする予定でしたが、作者が騎手の問題を何ら解決していない事に気づいたため予定を変更し、急遽鞍上確保編をお送りいたします。しかも投稿間近になって文の改善案を思いついたため、投稿時間も遅れてしまいました。

タイトルに付きましても、全くの思いつきであり他に良いものが浮かばなかったためにこのようなダジャレになってしまったことを深くお詫び申し上げます。

それから作者の風邪気味の症状は無事解消いたしました。

以上ニュース速報でした。


騎手(やね)がいないなんてやーねー

【エアシャカール】クラシック世代総合スレpart7【チアズグレイス】

 

329:名無しの勝負師 ID:thgWvSWQH

ところでお前ら、今年の馬券の調子はどうよ

 

334:名無しの勝負師 ID:yN5IT05cw

チアズグレイスとマヤノメイビーのお陰でほくほくになったけどラガーレグルスのせいで真冬に逆戻りや

 

338:名無しの勝負師 ID:ZwcIlu68k

ラガーレグルスはなぁ・・・元々ああいうところがある馬だったってインタビューに答えてたけど酷かったな

 

342:名無しの勝負師 ID:JSBMWPMHp

ラガーレグルス、ダービー一週間前にゲート再審査だってよ

 

345:名無しの勝負師 ID:XzDpMOyr4

あー、やっぱり再試験か。あれは酷かった、まさかスタートすらしないとは

 

350:名無しの勝負師 ID:ioBgbMRlY

ラガーレグルスが出ない!出ません!

 

352:名無しの勝負師 ID:t1sHF++YH

俺はリーヴァとエアシャカの馬単買ってたんだけど、馬連にしとけば当たってたなぁ

 

356:名無しの勝負師 ID:WjyvDFXZ8

それはそうとそろそろマイルカップだけどお前らの予想はどんな感じ?

 

371:名無しの勝負師 ID:FMUCHSGgO

やっぱプレストンっしょ、実績がダンチ

 

378:名無しの勝負師 ID:5uDyzLwwG

今回は食い下がってきたレジェンドハンターもいないしプレストン一択でいい感じかな

 

392:名無しの勝負師 ID:al84iV0bB

そうか?自分的には末脚が切れるマチカネホクシンとかイーグルカフェもいい感じだと思うが

 

396:名無しの勝負師 ID:dAwTABE1y

イーグルwwwカフェwwwまぐれでG3勝っただけの馬乙wwwマチカネホクシンもOPすら勝てない雑魚www

エイシンプレストンしか勝ちませんなぁwww

 

399:名無しの勝負師 ID:UiGjrCKF3

言うてマチカネホクシンは朝日杯3着なんだよなぁ

 

407:名無しの勝負師 ID:n1OmdvqB/

うーん、末脚って言うとエイシンプレストンもそういうタイプの馬だし、やっぱり一強か?

 

418:名無しの勝負師 ID:r17VfI5cj

お前ら、大変だぞ

>>horse/news/00002310

 

422:名無しの勝負師 ID:laTaaSp/T

何だ何だ

 

427:名無しの勝負師 ID:8X0KlKLsM

>>418

エイシンプレストン・・・骨折だと・・・!?

 

429:名無しの勝負師 ID:4rnCIyQ9I

>>418

何故か見れないんだが

 

432:名無しの勝負師 ID:i01etwUHT

>>429

そういう時はパソコンの電源入れ直すと直るかも。

それでも見れんかった時用にまとめとくわ

・エイシンプレストン骨折

 

・幸いにも軽度の骨折で年内には復帰できそう

 

・とりあえず放牧して治療に専念する

 

441:名無しの勝負師 ID:jcKyDVP6U

>>432

㌧クス。しかし骨折かぁ。年内復帰ならまだいいけど

 

445:名無しの勝負師 ID:zMmE8Hrha

>>396

プレストンしか勝たんニキ息してる?

 

478:名無しの勝負師 ID:bd/9oEnF0

今年のマイルカップ・・・これは、荒れるで

 

 

 

 

 

 

エイシンプレストン、骨折により休養。

 

その一報は瞬く間にトレセン中に広がって至るところでその話が聞けるぐらいには騒動を起こし、数日が過ぎてようやく収まりを見せた。

 

そして、丘本さんがイーグルカフェと共にNHKマイルカップに挑むことが正式に発表されると・・・なーんか、俺に乗せてくれって騎手が増えてきたんだよな。

 

どうにも丘本さんがインタビューで「ルドルフ並の賢さがある」とか言ったらしくて、その言葉に釣られたジョッキーたちが若手から中年のおっさんまで、よりどりみどりの目白押しだ。

 

けどどいつもこいつもなかなか重賞に出られるだけのお手馬がいないのも納得できてしまうような奴ばかりでセンセイも渋い顔。

 

『はぁ、どっかそのへんに優秀なジョッキーは落ちてませんかねぇ』

 

今日も鞍上が決まらないまま助手を背中にウッドコースを歩きながらため息をついたが、馬の体じゃただの鼻息になっちまう。

 

結局調教をこなしはしたものの、いまいちピリッとしない無難な走りで終わってしまった。

 

「・・・イマイチ気合が入ってないな」

 

ストップウォッチを見つめるセンセイの眉間が、梅干しのようだ。

 

「申し訳ありません、思い当たる節が無い訳では無いんですが・・・」

 

「思い当たる節?何だ?」

 

「はい、恐らくなんですが・・・今までレースが近づくと、セキトには騎乗予定の騎手が跨ってましたが、今回はそれが決まらないせいで私が乗ってますよね・・・悔しいですが、それが原因のような気がします」

 

助手さん、悔しそうに手綱を握りしめた。

うん、大変申し訳ないんだけど原因はその通りだと思う。

 

まず調教の姿勢が違うんだよ。騎手の方はレースに向けて手応えや癖を確かめるために割と本気で追ったりしてくれるんだけど、助手さんたちは「故障させない」ことを念頭に置いてるんだろう。ムチなんか一杯の指示がなければほとんど使わないし、追い方が優しい。

 

何事も無く馬をレースに送り出すのがお仕事なんだから助手さんたちの調教が優しくなるのは仕方ない事だし正しいんだと思う。だけど、なんというか・・・それが俺にとっては物足りない。一応断っておくがマゾではないぞ、本気で走りたいだけだ。

 

厩舎に戻ってからも誰が乗るんだろうなとぼーっとしたまま。どこか上の空でいるとセンセイが「このままだと回避するしか無いぞ」って困ってたけど、騎手がいないんじゃなー、仕方ないよなー?

 

と、せっかく高めた気合が霧散しそうになっていたその時。馬耳が聞いたことのない声を捉えた。

 

「ああ、なんてことだ、メインレースに騎乗馬がいないなんて・・・ぼくも落ちたなあ」

 

厩舎の前を、一人のおっさんが寂しそうに歩いていた・・・ん?メインレース?騎乗馬?おっさん、騎手なの!?

 

「メインレースに」ってことは少なくとも何鞍かは依頼されてるって事だよな?

 

その呟きが独り言であったせいかセンセイはおっさんの存在に全く気づいていないし、おっさんもこっちに気づいてない・・・この機を逃してたまるか!

 

『おい、そこのおっさん!こっちにこーい!』

 

「セキト!?」

 

「ふぁ!?びっくりしたな・・・」

 

呼びかけは大きな嘶きになった。反応を示したおっさんの方に全力で首を伸ばし、必死に前掻きをする。

 

「なんだ、あの人が気になるのか・・・って、おい、あれはまさか!」

 

おっさんを見たセンセイの表情が驚愕に染まった。

え?あれ?もしかして当たり引いた?

 

獅童(しどう)!」

 

「え、あ、太島さん!」

 

「久しぶりだな、早速だがお前まだ現役だったよな?ちょっと助けてくれ」

 

センセイはおっさんの肩にぽんと手を置いた。獅童さん、か。なにやらセンセイとは面識がありそうだけど。

 

「助けてくれって、何があったんですか」

 

「ああ、それはな、ここにいるコイツ・・・セキトバクソウオーの鞍上が決まらないんだよ」

 

センセイが俺をちらりと見やりながら言う。その言葉に今度は獅童さんが驚愕の表情を浮かべた。

 

「セキトバクソウオー!?あの丘本さんがべた褒めしたっていう・・・」

 

「いや、あれは正直丘本さんの手向けもあったと思う」

 

「成程・・・流石丘本さん」

 

いや、本当に成程。ああやっておけば自分がいなくなっても鞍上がすぐに見つかるだろうって魂胆か。

 

まさか他の鞍上で勝てなかったら巡り巡って自分の懐に収めたりしようとしないよな・・・?

 

うーん、あんな目をしてた位だ、やりかねんってのが恐ろしい。

 

「で、だ。今度のNHKマイルカップ。空いてるか?」

 

「・・・正直言うと、空いてます。ですが自分で言うのもなんですが落ち目のぼくでいいんでしょうか」

 

獅童さんはしょぼくれながら言った。落ち目?いやいや。少なくともセンセイは無条件で信頼しているみたいだし、恐らく問題なのは人脈であってこの人自身の腕じゃないはず・・・多分。

 

「獅童、こいつはな、落馬して数年間勝ってなかった騎手を乗せて2回も勝ったんだ。オレを出し抜いてG1を勝ったこともあるお前が何を言っても言い訳にしかならん」

 

ああ、G1ジョッキーなのか。って本当に落ちてたよ優秀なジョッキー!?

 

「じゃあ、本当に・・・乗っていいんですか!?セキトバクソウオーに!?」

 

獅童さんの顔が、今度は子供のように輝き出した。老けてみたり若返ってみたり忙しい人だな。

 

「ああ、だがその前に、コイツに気合を入れてやってくれ」

 

「え?」

 

流石センセイ、俺もちょっと物足りなかったんだ。

 

 

 

 

 

ぼくは獅童宏彰(ひろあき)。ここ数年ははっきり言って落ち目の騎手だ。

 

昔所属していた厩舎のセンセイの意向であまり他の厩舎の馬には乗ってこなかったんだけど・・・それがよくなかったのかもしれない。

 

騎乗依頼を受けたくても人脈がない。人脈がなければ馬の情報も入ってこないし、結果乗せてもらえるのは勝てるかどうかも怪しいような馬になってしまう。

 

それでもなんとか数鞍への騎乗を取り付け、これで来週もなんとか生活できると思いつつも、メインレースへの未練を呟いていたら、とある厩舎の前で大きな馬の嘶きに驚いてしまった。

 

するとそこから現れたのは、今は引退して調教師になっているけど、昔はぼくと同じG1レースで争うこともあった先輩、太島昇さんその人だった。

 

しかもそのままメインレースに出る馬の鞍上が決まっていないので乗ってくれないかと言われ、その馬がまさかの前走で重賞を勝って、あの丘本騎手がべた褒めしたセキトバクソウオー。

 

ぼくなんかで良いのかと本気で遠慮したが、太島さんは「落馬した騎手で勝てたんだからお前が勝てないなんて言わせない」と押し付けるような形で騎乗依頼をしてきた。

 

そして本番での騎乗が決まると今度は調教をつけてくれだそうだ。

 

どうやらこの馬は調教助手を乗せて走っても、気合が抜けてしまうらしい。乗り味を確かめるついでに気合をつけてくれとの注文を受けた。

 

今は調教コースが開かれているギリギリの時間。

 

急いでコースに向かわなくちゃと背中に跨がって鐙に足を通した途端、セキトバクソウオーはゆっくりと歩きだした。

 

「え、あ、ちょっと」

 

「獅童、止めなくていい、大丈夫だ。」

 

「えっ、ま、まあ太島さんがそう言うなら・・・」

 

大丈夫だと言われても、何が大丈夫なのか。全く見当が付かないままニヤついた太島さんに付き添われつつ馬上で揺られること数分。

 

「えぇ・・・」

 

全く迷うことなく、セキトバクソウオーはウッドコースへと足を踏み入れた。

まさか調教コースの位置はともかく、これから調教であるという事まで分かっていたのか。賢い馬というのは本当らしい。

 

「それじゃあ行って来い、直線は一杯に追ってくれれば後の注文はない」

 

「わかりました。それじゃあ・・・行くぞっ!」

 

引き綱を外しながら太島さんが出した指示はゴール前一杯。十分に離れたのを確認してから拍車でゴーサインを出す・・・早い!

 

なんて反応の速さだ。これならスタートダッシュだけでなく、わざとタイミングをずらして後ろにつけたり、先行争いを避けることもできるかもしれない。

 

そんな風に考えていたのだけれど、それはまだまだ驚きのほんの序の口でしかなかった。

 

カーブに差し掛かった瞬間、足元から伝わる走りのリズムが、全くの別物に変わった。

 

「ピッチ走法!?」

 

先程までストライド走法に近い走り方をしていたはずのセキトバクソウオーが、コーナリングに適した走り方であるピッチ走法を繰り出した、なんの指示もしていないのに、だ。

 

しかもコーナーを抜けると多少苦戦していたがまたストライド走法へと切り替わり、スピードを乗せ始めた・・・まさか、この馬は状況に合わせて走り方を変えているのか!?

 

「なんて馬だ・・・!」

 

ぼくは今の所、ただ乗っているだけだ。それでいて伝わってくる手応えは、まるで冷静に指示を待ち、発射の時を待つミサイルか何かの様。

 

段々と口元がつり上がっていくのを抑えられなかった。本当に、なんて奴だよこいつは。

 

「さぁ、そろそろいこうか」

 

君が非常にひたむきで、走るのが好きで、とてつもなく賢いのはよく分かった。では、どれほどの脚を使えるのか?小手調べと行こう。

 

最後の直線が迫ってきた。再びピッチ走法でコーナーを抜けて、多少ぎこちないながらもストライド走法に変わったその時を狙って、ムチを入れた。

 

 

「・・・これはッ!?」

 

その瞬間、セキトバクソウオーの上体が沈んだ。

後ろ脚の蹴りも、後ろに畳まれた耳も、これでもかと伸びる前脚も。なんだこれは!本当に4歳馬なのか!?

 

惜しむべくは、恐らくそのポテンシャルが、まだ100%に至っていないであろうということ。ストライド走法の切り替えが上手く行かないあたりなんか、その最たる例だろう。

 

でも、それをなんとかするのがぼく達騎手の仕事に他ならない。

 

「はは!いいね!バクソウオー!君となら・・・G1、勝てそうな気がするよ!」

 

ゴールした時には、ぼくはもうこいつの、赤い怪物(セキトバクソウオー)の虜になっていた。

 

 

 

「太島さん!いい馬じゃないですか!伸びもいいし、コーナーで走り方も変わって・・・」

 

「獅童、ちょっと待て」

 

装鞍所でセキトバクソウオーの背から降りたぼくは、太島さんに興奮を伝えようとして、制止された。

 

「いい馬だろう?だからこそ大事な馬だ。その手綱を任せるからには・・・NHKマイルカップ、頼んだぞ」

 

太島さんは期待と情熱のこもった目で、見つめてくる。

 

「・・・はい!」

 

その視線に、ぼくは出来得る限り最高の返事で、応えたのだった。




次回更新は月曜日の22:00予定です。
今度こそNHKマイルカップをお送りいたします。
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