サラブレッドに生まれ変わったので、最速を目指します   作:Budge

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エフフォーリア、3歳にして天皇賞を勝利するとは。相手が弱いわけでもないし、やはりダービーはツキが無かっただけだったんですね。それと直線、授業参観モードのノリさんがw

今回も除外する馬は収得賞金とくじ引きで決めましたが、ミスターサウスポーが除外となった結果、セキトが縁のあるライバルにサンドイッチされるという奇跡が発生しました。

馬柱の構造も変えましたが、スマホ故にパソコン版を表示したらえらいこっちゃに・・・。


力走、NHKマイルカップ(前編)

雲一つない爽やかな快晴の空が広がる初夏の気配が漂い始めた東京競馬場。

 

NHKマイルカップ、まだ外国産馬達にダービーの門が固く閉ざされていたこの時代においてはマル外ダービーとも呼ばれ、将来を拓く意味でも重要なレースであった。

 

そんな4歳マイル王の座を射止めるべく集ったのは、若きスピード自慢たち18頭と、その背にまたがる騎手たち。

 

1分30秒のドラマが、また今年も始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

第5回 NHKマイルカップ(G1)

 

 

XX00年 5月7日

芝1600m 東京 晴れ 馬場状態 

 

枠 番号 馬       名    性齢鞍 上斤量

1  1 (外)ファイターナカヤマ 牡4萩 川 57

   2    トッププロテクター 牡4 原  57

   (外)トーヨーデヘア   牡4前 頭 57

    (外)アグネスデジタル  牡4波止場 57

   (外)ノボジャック    牡4秋 川 57

       マイネルブライアン 牡4南 雲 57

   (外)スイートオーキッド 牝4縦 川 55

    (父)ハセノバクシンオー 牡4多 村 57

      プラントタイヨオー 牡4谷 総 57

   10 (外)マチカネホクシン  牡4谷 譲 57

  11 (父)セキトバクソウオー 牡4獅 童 57

   12 (外)イーグルカフェ   牡4丘 本 57

  13    ユウマ       牡4江 戸 57

   14 (外)ラヴィエベル    牝4小 野 55

   15 (外)ダイワカーソン   牡4蛇 井 57

  16 (外)マルターズスパーブ 牝4肥 畑 55

   17 (外)ネオポリス     牡4紀 伊 57

   18    ピサノガルボ    牡4大 田 57

 

 

 

 

 

よう。どこの誰が聞いてるかは知らないが、セキトバクソウオーだ。只今満員の東京競馬場で、絶賛パドック周回中である。

 

今日のレースは2走ぶりで2回目のG1、NHKマイルカップ。朝日杯の時と比べるとパドックの人の数とざわめきがスゲェな、流石東京と感心していたら客席の一箇所からまばゆい光が放たれた。うおっ、眩しっ!

 

じゃなくて、そこのお客さんパドックで、というか馬を撮る時にフラッシュは厳禁ですよ!誰か教えてやってくれ!

 

「ちっ、あの野郎シメてやろうか」

 

『ちょわー!?』

 

『うわぁ!何かピカッとしたぁ!』

 

それを見てセンセイはこっそり舌打ちしてるし、周りの馬は今のは何だ!?と混乱しかけていたから『大丈夫だー!今のはただの光で何でもないぞー!』と大声を出したら次第に騒ぎも収まっていった。

 

ふう。大事なレースの前にこんな事で出走取消なんてなったら俺も寝覚めが悪いからな。なんとか落ち着いて良かった。

 

さてと、仕切り直して。問題だった俺のコンディションは、獅童さんが騎乗が決まってからの2週間しっかりと乗ってくれたお陰で惚けていたのが嘘のように気合十分。

 

何も起きなければ力を出しきれる。そう確信できる程だ。踏み込む脚の一歩一歩がしっかりと地面を捉え、自然と首がアーチを描く。

 

今日は相変わらずロボット歩きの馬口さんだけじゃなく、センセイも並んでの2人引きだ。自信の表れと万が一に備えてだろう。まあ、俺は暴れたりしないけどな!

 

そういえば、と俺の後ろを歩く馬に目を向けた。

イーグルカフェ。馬房は隣同士、僚馬にして今日はライバルの一頭である。

 

初めて出会ってからそろそろ一年経つのだが、レースの時の姿は何気に初めてだ。

黒っぽい毛色に黄色と黒いタスキのメンコが似合っててカッコいいじゃねぇかよ畜生。

 

『調子はどうだ?』と声をかけたら

『悪くはない・・・が、貴様も少しは集中したらどうなのだ』

とツッコまれてしまった。ごもっとも。

 

他に気になる馬と言ったら、目の前を歩いているマチカネホクシンだな。

奴とやり合うのはこれで3回目だ。あいつの戦い方は良く分かってる。

 

後方待機策からのラストスパート。あの着実に伸びて上位に食い込んでくる末脚は間違いなくG1クラスだろう。

 

まあ、そのマチカネホクシンなんだが、なぜかこちらをチラチラと見ながらちょっと怯えているようにも見えるんだよな。俺、何かしたっけ?

 

後の馬は・・・スイートオーキッドちゃんに、トッププロテクターと、アグネスデジタル、それからノボジャックと走ったことがある位で、後の馬はよく分かんねぇ。

 

強いて言えば8番の馬が『うぉぉぉぉ!芝でも!バクシンだぁぁ!』と騒いでいて、恐らく俺と同じサクラバクシンオー産駒なのだろうと言うことくらいだ。

 

ブランディスといいコイツといい、バクシンオー産駒ってこんなのしかいないのか?同じ血を引く者として何だかため息が出るやら、情けないやら・・・。

 

そうやって周りをそこそこ気にしながらも歩き続けていると、「止まれ」の号令がかかった。

 

お、馬口さん、今日は自分で止まった。と思ったらセンセイが俺の引き手を持ちながらさり気なく馬口さんも引っ張って止めてる!?

 

す、すげぇもんを見た気がするぞ。

 

 

 

 

 

「よいしょっ・・・と!バクソウオー、頑張ろうな」

 

「獅童、今日の展開はどう見る」

 

小天狗から出てきた獅童さんが俺の背によじ登ると、センセイがそう尋ねた。

 

「そうですね、どちらかというと強い馬がみんな後ろから行く馬ですから、一発を狙う馬が前に集中して早くなるかもしれません」

 

成程。確かにマチカネホクシンにスイートオーキッドちゃんに、イーグルカフェも差した方が強そうとか聞いたな。そんな有力馬達の隙を突こうとするなら・・・獅童さんの言うとおりだろう。

 

「そうだな。ならば今日は後ろから行ってみて欲しい。こいつの脚が本物なのかどうか、確かめるのにいい機会だ」

 

「分かりました」

 

お、今日のプランは差しか追い込みみたいだ。半ば事故だった新馬の時以来だな。

その時以降俺は先行してるから、ひょっとしたら他の馬にとっては思わぬ不意打ちになるかもしれない。

 

再び列が動き出し、地下馬道へとつながる暗闇へと歩みを進めていく。

 

「さぁ、行こうか」

 

獅童さんの呼びかけに俺は鼻を鳴らして応え、歩みを進めた。

 

 

 

『相変わらず音がよく響くなぁ』

 

『セキトバクソウオー』

 

自らの足音が響き渡るのを聞きながら地下馬道を進んでいると、突然後ろのイーグルカフェが呟くように呼びかけてきた。

 

『なんだ・・・っ!?』

 

その声に振り返ると同時、俺は思わず一瞬身体を強張らせてしまう。

 

『貴様には負けぬ。全力でかかってこい』

 

イーグルカフェの用件は、宣戦布告だった。普段の冷静な態度の下に秘めた情熱と闘争心を惜しげもなく溢れさせ、瞳を爛々と輝かせるその姿は、紛れもなくG1の栄冠を狙う「(イーグル)」。

 

その様に気圧された俺は本当にこんなのに勝てるのか?と今まで感じ得なかった迷いと、恐怖が胸に湧き出した・・・恐怖?

 

恐れているのか?俺が?イーグルカフェを?

 

『ああ』とか『そうだな』とか、思わず歯切れの悪い言葉を適当に発しているとイーグルカフェは段々と渋い顔になっていく。すまない、頼むからそんな顔しないでくれ。

 

脚は動かないし、どうしたらいいのか分からなくなりそうになった時だった。

 

「バクソウオー、大丈夫」

 

俺の不安が伝わったのか、獅童さんが俺に触れた。ジュンペーと違って随分長い間馬に乗っているゴツゴツした手だ。

 

「調教通り、のびのび走ってくれればいい。君は強いんだよ」

 

囁くように紡がれた言葉と力強く首を撫でる手が、優しく動く度に俺の不安を小川の水の様にさらっていって、無駄な力が抜けていく。

 

 

・・・よし、大丈夫だ。ありがとう、獅童さん。

 

そうだ、俺はこれからほんの一握りの馬にしか許されないG1という大舞台を走るんじゃないか。堂々としたイーグルカフェを見習え、元人間の俺がビビってどうする!

 

首を振るって気合を入れ直してから、しっかりと彼の馬に顔を向け・・・敢えて目線を合わせてから宣言する。

 

『イーグルカフェ。すまねえ、正直ビビってたわ。今の俺がどこまでやれるか分からねぇけどよ。出るからにはG1、狙ってやる』

 

『ふむ、お手並み拝見だな』

 

いつもの調子に戻った俺を見て、イーグルカフェはどこか嬉しそうだった。そうだ、俺が自分でライバルって言うくらいなんだ、全力でぶつかるのが礼儀だよな!

 

その時、スタンドが大きく湧いたのが分かった。最初の1頭目がターフに姿を現したのだろう。

 

 

『お互い悔いなく走ろうぜ』

 

『勿論だ』

 

 

最後に一声だけかけ合って。

 

地下馬道を更に進めば光の向こうから、少しずつお客さんの歓声が大きくなってきた。

 

さあ、本馬場入場だ。

 

 

 

 

 

 

『皐月の空が、鮮やかなブルーに晴れ渡りましたここ東京競馬場。今日は私淡島(あわしま)克也(かつや)がG1、NHKマイルカップの本馬場入場と実況をお伝えしましょう!』

 

 

 

『なんか最近勝てねえな!諦めた訳じゃねぇけどな、コノヤロー!』

 

「正直厳しいが・・・やれるだけやってやろうじゃないか、ファイター!」

 

『3歳以来、勝ち星なくとも心は死なず!G1のリングに舞台は整った!チャレンジャーよ、燃え上がれ!ファイターナカヤマと、萩川(はぎかわ) 由伸(よしのぶ)!』

 

 

『今度こそ・・・!』

 

「チャンスは十分、ここは冷静に、冷静に」

 

『マイル以下なら7戦2勝、4連対!超合金の身体に堅実な走りでビッグタイトルを狙います、トッププロテクターと(はら) 良馬(りょうま)!』

 

 

『折角ダディが来てるんだ!かっこ悪いところは見せらんないね!』

 

「今日は親父に良いとこ見せてやろうじゃないか!」

 

『外国生まれの留学生が、トップ目指して猛進します、北の大地で父も見守っているぞ!デヒア産駒トーヨーデヘアと前頭(まえどう) 浩希(こうき)!』

 

 

『ひえぇ、強そうな(ひと)がいっぱいだぁ・・・』

 

「ビビるな、デジタル。お前はG1馬になれる器だ」

 

『ここまで9戦、ただ1戦を除いて掲示板を外していません、鞍上に導かれ真の実力を解き放つのか!アグネスデジタルと波止場(はとば) (きよし)!』

 

 

『僕、芝はひょっとしてキツイかもしれないけど、出る以上は・・・!』

 

「折角のチャンスだ、逃してたまるか!」

 

『年が明けての初勝利はダートでした。鞍上は乗り代わりましたが、実力は変わりません、ノボジャックと秋川(あきかわ) 典隆(のりたか)!』

 

 

『あれっ今日はこっちで走るの?ちょっと滑るなあ』

 

「初芝は・・・ちょっと厳しいか。だが、やってやる」

 

『デビューから3戦3勝、無敗の進軍はブライアンズタイムから新たな怪物誕生の兆し!マイネルブライアンと南雲(なぐも) 陽二(ようじ)!』

 

 

『今日こそは勝って、我が一族に花を添えますのよ!』

 

「おおっ、いい気合だねー」

 

『前走こそ不覚を取りましたが、それでもこの馬の差し脚の鋭さは一級品といっていいでしょう!可憐な黒い稲妻の走りに乞うご期待!スイートオーキッドど立川(たてかわ) 広典(ひろのり)!』

 

 

『バクシンっ・・・圧倒的バクシンっ・・・』

 

「あっちばかり注目されているが、こっちだってバクシンオーの子だ!」

 

『バクソウオーばかり注目されていますが、ここにもサクラバクシンオーの豊かなスピードを受け継いだ一頭がいます、ハセノバクシンオーと多村(たむら) 一成(かずなり)、大舞台で芝初挑戦です』

 

 

『オレがG1獲って、厩舎を照らすんや!』

 

「しっかり仕上がってる、なんとか応えたいなぁ」

 

『人気はありませんが、この馬だって堅実派!忘れた頃に馬群の中より太陽は昇る!プラントタイヨオーと(たに) 総司郎(そうしろう)!』

 

 

『タニサン、あんなヤツより、ミーのホウがミリョクテキってオシエテあげマース!』

 

「ふぅ、なんとかG1に出られたぞ」

 

『プレストン回避で天才騎手とまさかの再会、またとないチャンスをものにできるか!マチカネホクシンと、大本命ジョッキー、(たに) (ゆずる)!』

 

 

『イーグルカフェには負けらんねぇな!』

 

「よし、よしいい調子だね、手応えも抜群だ」

 

「メンバー最多タイの3勝馬です、クリスタルカップ制覇の勢いに乗って!セキトバクソウオーと獅童(しどう) 宏彰(ひろあき)!」

 

 

『ライバル不在だと!?馬鹿を言うな、吾輩のライバルはセキトバクソウオーである!』

 

「今日の気合は凄まじいな、これなら・・・!」

 

『ライバル不在の大舞台、新馬からの主戦が背中にいるという事実が、この馬にとってどれほど心強いでしょう!イーグルカフェと丘本(おかもと) 雪緒(ゆきお)!』

 

 

『ひっさびさのレースだっ!思いっきり走れるぞー!』

 

「こら、落ち着け、おーい」

 

『昨年の新潟3歳ステークス以来の出走となります、まずはおかえりなさい。そしてようこそG1の大舞台へ!ユウマと江戸(えど) (あきら)!』

 

 

『し、正直勝てるとは思えませんが、精一杯走らせていただきます!』

 

「いくよ、一発を狙ってこう!」

 

『競走馬にとっての美しい人生とは、限りない喜びとは。それはG1を勝つことに他なりません、鞍上大野(おおの) 小次郎(こじろう)と共に、G1の星になる!ラヴィエベルです!』

 

 

『脚も治った、調子もいい、ここはかのテイオーさんばりの快走を狙っていきますか!』

 

「カーソン、調子いいのか。でもまずは無事に回れれば、だな。」

 

『前走久々のレースは実力を出しきれませんでした。今度こそはと東の都にゴールドラッシュを夢見て。ダイワカーソンと蛇井(へびい) 政史(まさし)!』

 

 

『ココハメニモノミセテヤリマショウ!』

 

「いいぞ!桜の無念、ここで晴らそう!」

 

『マル外故に、重賞馬でありながら桜の門は閉ざされました。牡馬を交えたこの舞台、才能開いた乙女の征く道は、花か茨か!マルターズスパーブと、肥畑(ひばた) 冨安(とみやす)!』

 

 

『これがG1・・・燃えてきた!』

 

「これなら実力を出せそうだ!」

 

『年明けデビューの新顔なれど、実力十分一発あるぞ!G1タイトルに手錠をかけろ!ネオポリスと紀伊(きい) 拓美(ひろみ)!』

 

 

『G1、二回目だしもう平気だよっ』

 

「落ち着いてるなぁ、スタートさえ決まればまずまずやれるかな?」

 

『メンバー唯一、皐月の舞台を走った馬です。その経験は、きっとこのレースで生きてくる!ピサノガルボと大田(おおた) 豊吉(とよきち)!』

 

 

『・・・以上18頭、今年も快速自慢が集いましたNHKマイルカップ、発走時刻が迫っています・・・』




ほれ、ア○シマやぞ(爆)
次回更新は水曜22:00、NHKマイルカップ後編をお送りする予定です。


今回の被害馬

・ミスターサウスポー 牡 芦毛

父 マジックマイルズ
母 プリティージャナー
母父 ゼダーン 

・被害ポイント
NHKマイルカップ4着→除外

・史実戦績
53戦6勝
主な勝鞍 舞妓特別(900万下)

・史実解説

芝にダートに平地に障害、様々な条件で使われ6年間で53戦を走り抜いた。実は名前に反して左回りでは未勝利である。

中央で49戦を走った後、2005年に金沢に移籍し連勝、しかし3戦目で2着の後4戦目で4着に敗れると脚を傷めたことが判明し、そのまま引退してしまった。
ネット掲示板を見ると、引退直後に有志の方に引き取られたようだが、近況は不明である。
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