サラブレッドに生まれ変わったので、最速を目指します   作:Budge

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☆祝☆アーモンドアイ、エピファネイアの牡馬を出産!

まずは母子ともに無事で何よりです。アーモンドアイの2022の健やかな成長を祈ります。


この年のスプリンターズステークスの出走馬が少なくて、慌てて表を作り直したのはナイショ。

ついでにセキトが存在するというパラドックスで枠順も再抽選しておきました。



本走、スプリンターズステークス(前編)

秋・・・というには少々夏の暑さが尾を引く中山競馬場の芝生の上。赤い馬体のサラブレッド、セキトバクソウオーが躍動していた。

 

週末に控えたスプリンターズステークスの追いきりだ。

 

「頼むぞー・・・!一面に使えるような動きをしてくれよ・・・!」

 

本命候補ということもあってかコースの脇にはあらゆるスポーツ紙のカメラと記者が、決定的瞬間を逃すまいとずらりと並ぶ。

 

『獅童さん、あんなにいっぱいいるけどどうするよ』

 

セキトはそれを見て、ちらりと背中の鞍上に意見を求めるが、獅童は至極冷静なまま呟いた。

 

「駄目だよ、センセイから全力でいくなって言われてるんだ、むしろ力を抜いてほしいくらいかな」

 

美浦から中山への輸送はあまり距離もなく、セントウルステークスのときと比べれば負担も大したことはない。

 

しかし長距離輸送にて何度も車酔いを繰り返したセキトバクソウオーを太島は輸送に弱いと判断し、しかも現状馬体はベストに近い。

 

これ以上体重を減らす必要もないので、一杯には追いたくなかったのだ。

 

『あいよ』

 

セキトは軽く返事をしてから獅童の言った通りにスパートの準備をしていた脚の力を抜いて、キャンターも同然のスピードでのんびりと走る。

 

「あはは!まさかほんとに力を抜いてくれたのかい!?」

 

獅童はその様に、まさか本当に通じるとは、と笑っていたが、好タイムとダイナミックな写真を求めて集まってきた記者たちにとってそれは笑い事ではなかった。

 

「おいおいおいおい・・・まさかこのままゴールする気か・・・!?」

 

鞍上の手は多少動くものの、腰に携えたままのステッキが使われることはないままセキトバクソウオーはゴール板を駆け抜け。

 

終わってみればその内容は、人馬ともにほぼリラックスしたままのノーステッキ、ノーアクセルというG1の追いきりには似つかわしくない馬なり調教。

 

「よーし、バクソウオー、お疲れ様」

 

『ふーっ・・・こんなもんか、遅く走るってのも案外大変なんだな』

 

追いきりと言う名の実質調整を終えた人馬がコース上から引き上げようとしていたとき、太島はアテが外れた記者たちからの質問の嵐に答えていた。

 

「なんというか、その、追い切りと言うにはちょっと・・・」

 

その中からはG1の直前にしては内容が物足りないといった、そんな質問も飛び出して。

 

それに対し太島は反論するでも同意するでもなく、受け流すように答える。

 

「タイムは見てのとおりですがね、大丈夫です。本番では実力を出せると思いますよ」

 

強気とも弱気とも取れる回答に、一面はこれで決まりと確信していた多くの記者たちは、仕事が増えるなあと心の内で肩を落として嘆いたのだった。

 

 

 

 

第35回 スプリンターズステークス(G1)

 

 

XX01年 9月30日

芝1200m 中山 天候 曇 馬場状態 

 

枠 番号 馬       名    性齢鞍 上斤量

1  1 (父)セキトバクソウオー  牡4 獅童 57

   (父)ダイタクヤマト    牡7 江戸 57

     トロットスター    牡5 蛇井 57

     メジロダーリング   牝5 真中 55

      ビハインドザマスク  牝5 幸長 55

     テネシーガール    牝4 谷町 55

    (外)シンボリスウォード  牡6 前頭 57

   (外)トキオパーフェクト  牡6 森末 57

      ブレイクタイム    牡4 梅原 57

  10 (外)ジョンカラノテガミ  牡6 加藤 57

   11   ユーワファルコン   牡4 肥畑 57

  12 (外)ゼンノエルシド    牡4 立川 57

   13 (外)フィールドスパート  牡3 萩川 57

 

 

 

遂に迎えた、G1、スプリンターズステークス。

 

枠順抽選会で太島センセイが豪運を発揮したようで、俺が背中に背負うゼッケンには、名前とともに「1」の数字が刻まれていた。

 

パドックに一歩足を踏み入れた瞬間、耳はざわつく観衆の声を捉え、G2やG3とは比べ物にならないほどの、肌がぴりりと痺れるような張り詰めた空気を感じ取る。

 

『おお・・・これだよ、これ、G1はこうでなくっちゃ』

 

これこそ競馬だよと俺は身震いした。

・・・武者震いだぜ?

 

「セキト?」

 

何回もG1に連れ回したおかげか大分大舞台でも動きが良くなってきた馬口さんに心配されたが、大丈夫だと言う意味を込めて短くひん、と鳴く。

 

「大丈夫、のようだな」

 

逆側で同じく俺を引く太島センセイが、その意図を読み取ってくれる。俺は動じてなんかいないぞと堂々と歩く内に、程なくして馬口さんもほっと胸をなでおろすのが分かった。

 

今日は朱美ちゃんも来ているらしいが、と周りを探していると、取材陣に捕まっているのが見えた。マジか、レースの後のプライベートタイムまで邪魔してくれるなよ。

 

一体何を聞いているのやら、と耳を傾けると。

 

はあ。『本命サイドにしては直前の動きが悪かったように思えますが』?いや、それは今俺の手綱を持って隣を歩いているお方に投げかけるべき質問でしょーが。

 

と思っていたら、初メディアで緊張こそしていたものの内容は意外としっかり受け答えしていて拍子抜けした。

 

というかこれ、内容的にセンセイが仕込んだな?さすが策士、太島昇。

 

 

・・・さて、話がずれちまったが、今回出走するメンバーは全部で13頭、G1にしては少々少なめになっちまったが、これはこれ。今年もスプリンター頂上決戦としてふさわしいメンバーが集っている・・・と思う。

 

その中には俺と前走が一緒だった、昨年の覇者であるダイタクヤマトや、同じくよもやの大好走を見せたテネシーガールちゃんの姿もある。

 

他にも夏の間に重賞を2勝した快速牝馬メジロダーリング、安田記念2着からのリベンジを図るブレイクタイム、最近は成績が上がらないが、層の厚い98年世代において重賞2勝を達成しているトキオパーフェクト等、粒ぞろいだ。

 

・・・そして、俺が誰よりもリベンジを望んでいる相手も、2つ目の王冠を求めて出走を表明していた。

 

俺が存在している影響か、史実からシャッフルされた馬番3番に収まったその相手は、心なしか前に会った時より一回り大きく見える。

 

『・・・やぁ、また会ったね』

 

『よう、今日こそは負けねぇぞ』

 

電撃の末脚、トロットスター。

 

秋の王座をも手中に収めんとする、高松宮記念の覇者である。

 

こいつにハナ差差し切られて初G1のタイトルを逃したのが記憶に新しい。

 

『いやあ、前のレースは力が入らなくてなんかヘン!って思ったまま負けちゃったけど、痩せ過ぎだったんだねぇ。今日はその辺もばっちりだから、負ける気がしないよ!』

 

『痩せ過ぎ?』

 

疑問に思った俺が電光掲示板に目をやると、トロットスターの名前の横の馬体重を示す数字が、確かに+24kgと表示されている。

 

いや、大きく見えると思ったら物理的に大きくなってたのかよ。

 

って、突っ込んでる場合じゃねぇな。

 

パドックを周回する限られた時間の中で、他のメンバーの好不調を推し量る。

 

 

すぐ後ろのダイタクヤマトは何も喋らないが、顔がやる気に満ちている、要警戒。

 

トロットスターは言わずもがな。こいつを倒さなければ俺の栄光は訪れないってくらいには仕上がってやがる。徹底的にマークしておこう。

 

他には・・・メジロダーリングが春に比べると自信をつけたような表情をしていたり、ユーワファルコンがしっかりと気合を表に出している・・・ユーワファルコン!?

 

その姿を見た瞬間、俺の中で高松宮記念の出来事がフラッシュバックした。

 

こいつ、自分が勝てないと踏んで、まさかの進路妨害をしてきたんだよな。

 

ヤケを起こして俺の進路妨害をしてきた姿は哀れですらあったが、再びやられようものならとんでもない。

 

レースの後キーゴールドに諭されていたようだが、一応警戒しておこう、と決めたところで。

 

『止まーーれーーー!』

 

パドックに騎乗命令の野太い声が響き渡った。

 

 

 

 

G1の舞台に相応しく飾り立てられた地下馬道を、蹄を高く鳴らして進む。豪華な雰囲気のせいだろうか、その音すらいつもより高貴なものに感じられるような気がする。

 

「さて、今日はどうします?」

 

その最中、早くもゴーグルを装着した獅童さんがセンセイにそう尋ねた。

 

センセイはそんな獅童さんを見て、一つ咳払いをしてから他陣営には聞こえないくらいの声で話し始めた。

 

「場合にもよるが、差しか・・・先行だな。あまりに速いようなら後ろで脚を溜めてほしい」

 

「はい、わかりま・・・」

 

「ああ、それと」

 

返事をしようとした獅童さんを制したセンセイが、付け足すように続けて言ったのは。

 

「・・・トロットスターだ、前でも後ろでも、どこにつけるにしてもとにかくトロットスターをマークしろ」

 

更に周りに聞こえないよう、うんと小声で放たれたその言葉が、センセイの真意であった。

 

トロットスターをマークか・・・オッケー。今度は俺が、あいつを差し切ってやる。

 

「・・・了解!」

 

獅童さんも口角を釣り上げながら、作戦に承諾の意を示したのだった。

 

 

 

 

『夏も過ぎて、日も短くなってきました今日この頃、夕暮れに包まれた中山競馬場で、1分少々のスプリンターたちの祭典が開かれます。沈む陽よりも早く、ライバルよりも速く駆け抜けたただ一頭が最速の称号を得られますスプリンターズステークス!いよいよ本馬場入場です!実況は(わたくし)、淡島克也です』

 

 

 

『今年こそ、今度こそ!俺がG1馬になる番だ!』

 

「さぁ、行こうか!」

 

『昨年骨折に泣いた赤い馬体が、ゼッケン1番、堂々最初に入場してまいりました!最速の父の背中を超えて!春のリベンジに燃えるセキトバクソウオーと、鞍上獅童(しどう) 宏明(ひろあき)!』

 

 

『僕にだって意地はあるからね・・・素直には負けないよ』

 

「力自体はあるんだ、ここでそれを証明したいな!」

 

『さぁこちらはその昨年の覇者!最低人気からの大逆襲でしたが今年は本命サイドの3番人気、連覇の偉業達成は成るのでしょうか!?歴戦の猛者、ダイタクヤマトと江戸(えど) (あきら)!』

 

 

『あははっ!いいねっ!全部出しきれそうで楽しみだよ!』

 

「過去一の仕上がりだ、一頭怖いのがいるが、ここを逃す手はない!」

 

『一気にスプリント界の頂点に駆け上がった充実の春は、まさかの大敗で幕を閉じました。しかしまだ春秋スプリント連覇の夢は潰えていません!心も身体もでっかく構えて!春のスプリント王者、トロットスターと蛇井(へびい) 政史(まさし)!』

 

 

『夏ではっきり分かったわ・・・私のスピードは、ここでも通用するって!』

 

「思わぬチャンスが手に入ったもんだ!大田さんには悪いが、オレがこいつで勝たせてもらう!」

 

『自慢の快速を武器にして、牡馬をあっと言わせた真夏のスプリント女王が入場です、直“千”一気のスピードで、望み通りの戴冠式となるか、メジロダーリングと鞍上乗り代わって真中(まなか) 敏晴(としはる)!』

 

 

『昨年はあいつにウラをかかれたけど、アタシだって自信はあ、あるんだから!』

 

「今度こそ、目に物見せるぞ!ビー!」

 

『確かな実力がありながら、未だ重賞未勝利の現状は、誰より陣営が、ジョッキーが、納得していないことでしょう!初タイトルがこの大舞台というドラマも十分ありえます!悔しさを力に変えて!ビハインドザマスクと、幸長(ゆきなが) 福一(ふくかず)!』

 

 

『この前はもうちょっとだったわ・・・!今日は全力を出し尽くすわ!』

 

「このメンバーならあそこでああして、よし、決まりだ」

 

『前走セントウルステークスでよもやの2着、こちらだって逃げ足全開、快速娘のテネシーガール!今日はどんな波乱を呼ぶのでしょうか、鞍上は谷町(たにまち) 勝彦(かつひこ)

 

 

『これが、我の最後の舞台か・・・。よかろう、皆の者、我が勇姿を焼き付けるがいい!』

 

「これがラストラン・・・!どうにか一発かましてやりたいけど・・・!」

 

『アイビスサマーダッシュで見せた一瞬の輝き、最後の最後で漆黒の剣が名刀の輝きを放つのか、これで引退レースのシンボリスウォードと、前頭(まえどう) 浩希(こうき)!』

 

 

『もうあんなバケモノはいない・・・!だったら、ボクも意地を見せてやる!』

 

「かなりいい感じだな、これはもしかして・・・!?」

 

『最強世代と名高き95年生まれの一頭、層が厚いと言われる世代での重賞2勝は伊達じゃない!復活目論むトキオパーフェクトと、森末(もりすえ) (しゅう)!』

 

 

『ふー、焦らずいきま・・・あれ、これひょっとして休んでるヒマない?』

 

「ほらっ!ブレイク、しっかりして!」

 

『欧州の名血、デインヒルの血を引く快速馬、今日は休む間もなくスピードに乗って、目指すはレコードタイムブレイカー、ブレイクタイムと梅原(うめはら) 健雄(たけお)!』

 

 

『これがG1・・・!よーし、燃えてきた!』

 

「流石ベテラン、歓声が不安だったが、最早動じないか!」

 

『苦節28戦、29戦目の今日が初めてのG1です、ようやく届いた便りは朗報か、それとも・・・ジョンカラノテガミ!鞍上は加藤(かとう) 天光(てんこう)

 

 

『やっぱり走るんだったら、真剣にやるに限るな・・・!』

 

「うん、大丈夫だね!勝ちにいこう、ファルコン」

 

『屈辱の春に羽を休め爪を研いだ隼は、前走1600万下を快勝!再びオープンの空に飛んだユーワファルコンが、上昇気流に乗って大舞台に舞う!手綱を取るのは肥畑(ひばた) 冨安(とみやす)!』

 

 

『このレースを勝つのは、オレだ!』

 

「しっかり仕上がってるし、勢いもある、ここは負けたくないな!」

 

『前走、京成杯オータムハンデを制したように この馬も確かな実力の持ち主です!群雄割拠、激動のスプリント戦線を統一するか!?ゼンノエルシドと、鞍上は立川(たてかわ) 広典(ひろのり)!』

 

 

『はっ、はわわわわ・・・僕なんかがここにいていいんでしょうかぁぁぁ』

 

「マズイな・・・すっかりアガってる。厳しい、が諦める理由にもならんな」

 

『クラシック3歳世代から唯一参戦、若さという力が、大きな夢へと背中を押して。フィールドスパートと、萩川(はぎかわ) 由伸(よしのぶ)!』

 

 

『・・・以上13頭が、今年のスプリンターズステークス、最速の座をかけて争います。発走予定は・・・』

 

 

 

本馬場入場を終え、スタート地点へと向かう途中。

 

「あっ、こら、またか!?」

 

緊張感が高まっていく中、なにか吹っ切れたように、ふとユーワファルコンがセキトへと歩み寄る。

 

『そ、その、あっ・・・セキト、バクソウオー!』

 

歯切れ悪くも確かにその名を呼ばれたセキトは、また何かしてくる気か、と疑いながらもユーワファルコンへと顔を向けた。

 

『なんだ、ユーワファルコン・・・また何かするのか?』

 

『あ、あぁいや!あれはオレが悪かったけれどさ!って違う!』

 

問いただされたユーワファルコンは、慌てたように取り繕ってから息を吸って、大きく吐く。

 

『・・・今日はさ、謝りに来たんだよ』

 

『は?謝るって一体・・・』

 

『本当にすまなかった!!』

 

一体何に対して謝るのか、尋ねようとした瞬間に頭を深く下げられて、セキトは理解が追いつかなくなった。

 

ユーワファルコンが。

 

高松宮記念で、自分を妨害してきたあのユーワファルコンが、頭を下げている?

 

何が起きたのか、一瞬訳が分からなくなりそうだったがなんとか持ちこたえ、次は何をするのかと相手の出方を伺う。

 

しかし、その予想と反してユーワファルコンの口から出てきたのは、謝罪の言葉だった。

 

『オレさ・・・はっきり言って、妨害がどんなに恐ろしいことかって分かってなかったんだ』

 

『(まあ、そうだろうな)』

 

あの時点での言動からしてそうだと思っていたセキトだったが、敢えて口には出さずに無言で頷く。

 

『それがさ、レースにでちゃダメだ!って言われて、オレが何をしたんだって思ってるときに・・・見ちまったんだよ』

 

 

出走停止処分期間中であっても、調教自体は出来る。ユーワファルコンも仕切り直しのためコースを走っていたのだが、偶然にもその近くで2歳馬が二頭、こちらは併せ馬の形で走っていた。

 

早期入厩を果たし、新馬勝ちや2歳の内に勝ち上がれるとさえ言われるエリート組だ。

 

しかしその途中で、片割れがふざけだす。

首をもう一頭の胸元に引っ掛けたり、わざとぶつかったり、走りを邪魔して遊びだしたのだ。

 

そうしている内、不幸にも二頭の足がもつれ合い。お互い吹っ飛ぶように転んだ二頭は・・・どちらも意識はあるものの自力で立ち上がる事はなかった。

 

そして、迎えに来た馬運車に乗せられたその日以降、二頭はトレセンから姿を消し。

 

その時は意味がわからなかったものの、後日、どこからか漂ってきた独特の臭いと誰かがすすり泣く声で、ユーワファルコンは全てを理解してしまった。

 

それは、ヒトの間では線香と呼ばれるものの臭い。そんなものがトレセンに流れるということは・・・つまり、どこかの馬の「死」を意味する、とユーワファルコンは先輩にあたる馬から聞いたことがあって。

 

ユーワファルコンは憤り、同時に顔が青ざめた。

 

 

高松宮記念の、あの日。ふざけだした2歳と自分、そして被害にあった2歳とセキトバクソウオーに、なんの違いがあったのだろうか、と。

 

もしも・・・もしも。

 

自分とセキトバクソウオーが、2歳たちのようになっていたら?

 

 

 

『・・・そうか』

 

恐ろしく、悲しい出来事を経験したユーワファルコンの目は、セキトと初めて戦った中日スポーツ杯の時のようなまっすぐな眼差しに戻っていた。

 

話を聞いていたそのセキトも、いつから真剣に聞き入っていて、今度は納得したように、大きく頷いてから少し口元を緩ませて言う。

 

『その2歳たちには悪いが・・・またお前と真剣勝負ができて、うれしいよ』

 

その言葉は、ユーワファルコンを認め、赦すということに他ならない。

 

『・・・ああ!』

 

セキトの返答に、ユーワファルコンは勢いよく答えながら一筋の涙を流した。

 

 

「さぁ、そろそろ行くよ」

 

『おう』

 

『あっ、オレも!』

  

「こっちも行こうか!」

 

獅童の指示に従って走り出すセキト。

それを追うようにしてユーワファルコンの鞍上、肥畑も軽く愛馬の腹を蹴り、こちらもゆったりとターフを駆けていく。

 

 

夕暮れの中山で、いよいよ待ち焦がれた大舞台の発走が、近づいていた。




・今回の被害馬(番外編)

強いて言うなら架空2歳馬二頭・・・かな?

↓以下戯言



実を言うと、小説を書き始めた時、最初に意識した舞台がここでした。
やっとここまでこれました・・・しかし、バクソウオーのバクソウ伝説は始まったばかりなのである!
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