サラブレッドに生まれ変わったので、最速を目指します   作:Budge

48 / 103
気になるゲームの発売が近づいており、あまり集中できていないような・・・。

勿論今週一杯はしっかり更新させていただきますよ!


作中の中国語は検索半分、グー○ル先生半分なので合っているかどうか怪しい面もあります・・・。


香港到着!

『・・・んがっ!?』

 

香港へと向かう旅の途中。この馬生で初めて馬らしく眠った俺は、飛行機全体を揺らす様な衝撃で目を覚ました。

 

『んぅー・・・』

 

ステイゴールドと話してからどれくらい経ったのだろう?まだぼんやりとした頭を叩き起こすため、首をブルブルと振る。

 

『よう、ようやくお目覚めかいG1馬サマ?』

 

俺が起きたと気がついたのだろう。ステイゴールドが振り向くように顔をこちらに向け、からかう様に声をかけられる。

 

『ふぁ・・・おはよう、ございます・・・』

 

なんとか口が動くようになってきた。あくびをしながら挨拶を返す。

 

・・・ん?なんで教えてもいないのにステイゴールドは俺がG1馬であることを知ってるんだ?

 

『ハハッ、なんで知ってるんだって顔だな。隣の奴に聞いたんだよ。というかオレ以外はみんなG1勝ってるのな』

 

俺の疑問を見透かすように、彼は笑いながら言った。

 

隣の奴・・・ってダイタクヤマトか!()がひょっとしたら気にしてるかもって思って言わなかったことをこうもやすやすと・・・!

 

何で勝手に教えたんだよと軽く睨んでやろうとしたが、当の馬は目を閉じていて・・・ありゃ、残念ながらあれは熟睡中だ。起きたら絞ってやる。

 

そんな俺の目線に気づいたのだろう。ふとステイゴールドが困ったように『オレはG1とかそんなの全然気にしてねーから程々にしてやれよ』と言ったけど、それとは別問題。

 

このステイゴールドと同い年のG1馬に空気を読むって事はどういうことなのかを後で教えてやるにはどうすればいいのかと考えていると。

 

『ふあぁ・・・おはようございましゅ・・・』

 

『お、おはよう』

 

俺に続いて大きなあくびと共にアグネスデジタルが目を覚ました。

 

『あっ、二頭(ふたり)共起きたんだ。遅いよ、着いちゃったみたいだよ』

 

それに反応して、この飛行機に乗ってから初めて聞く温厚そうな声が耳に入る。これはエイシンプレストンだな。

 

『あー、さっきの揺れはそういうことか。目が覚めたのはラッキーだったわ』

 

どうやら目覚まし代わりとなったあの揺れは着陸の衝撃だったようだ。もし寝起きでいきなり移動するなんて言われた日には・・・すぐに動ける自信がない。

 

そこまで考えたところで『あっ』と小さく声を出しながらダイタクヤマトを見やると、まだまだ夢の中のようだ。どんだけ寝れなかったんだよ。

 

・・・もしかしたら、移動の時まで寝ているつもりか?もしそうだったら面白いものが見れそうだな。

 

 

みんなも大好きだろ、寝起きドッキリ。

 

 

事故もなく無事に着陸したと言えど、まだ機体の扉が開くことはない。俺たちを降ろす場所を目指し、空港の舗装された道を移動しているのだろう。

 

『もう一度勝てばオレの将来は約束されるんだ、なんとしても・・・!』

 

そんな中戦いの地に到着した事を察したのかゼンノエルシドが荒々しく闘志を溢れさせ。

 

『おーおー、張り切るのはいいけど本番はまだ随分と先らしいぜ』

 

『ヒッ・・・そ、そうなんスか・・・』

 

それをステイゴールドがたしなめ(ビビらせ?)たり。

 

『今度走るのはどんな場所なのかな・・・大丈夫かな・・・』

 

アグネスデジタルが未知の世界に臆したのか弱気な言葉を吐き出したから、俺が『今までと同じで何回か練習すると思うぞ』と説明して安心させておいた。

 

そうして5頭でなんだかんだと駄弁っている内に時間は過ぎ。

 

『・・・んぐっ、ようやくか!』

 

電車が停車する時によく似た、前方に引っ張られるような感覚を最後に、揺れが完全に収まった。

 

『着いたの?』

 

『ああ、やっとだよ』

 

アグネスデジタルに尋ねられて、俺はつい本音が混ざった答えを返す。

 

確か俺が人だった時代でも東京から香港へ行くのには五、六時間掛かってた筈だからな。

運良く若くして出世し更には結婚、幸せな家庭を築いた同級生から聞いたから多分合ってる。

 

それと比べりゃ随分グレードの落ちる旅だったなとため息をつきそうになった時、ようやく固く閉ざされていた機体後部から外の空気が流れ込んできた。

 

キンと冷えていて、実に12月の朝らしい温度だ。

 

『あっ!開いた!開いたよ!』

 

久方ぶりに見た一色以外の風景に興奮したのか、エイシンプレストンが嬉しそうに蹄を鳴らす。

 

『おいおい、蹄が欠けちまうぞ』

 

『このくらい大丈夫だって!』

 

苦笑しながらそう注意したものの、エイシンプレストンの興奮は収まらないようで、しばらく嬉しそうにしていたのが印象的だった。

 

『んっ・・・寒い、でも、いつもとあんまり変わらないんだね』

 

その一方で、アグネスデジタルは日本とあまり気温の差が無いことに驚いているようだった。

 

そりゃまあ地球は一周4万kmあるんだ、単純計算でマッハ2の戦闘機が全力で飛び続けたって20時間かかる。

 

その半分以下のスピードで飛ぶ旅客機が五、六時間で移動できる距離ならば、そこまで気候に大差はないだろうよ。

 

 

「みんな、お待たせー・・・おや、ヤマトは寝てるのか」

 

その時、タラップを登ってくる人影があった。

 

『あっ!僕の厩務員さんだよ!』

 

すかさず反応を見せたのはアグネスデジタル。そりゃ俺たちが最後尾だからな。真っ先に降りなきゃいけない。

 

「セキト!久しぶり・・・かな?」

 

『よう、馬口さん。待ってたぜ』

 

当然次に現れたのは馬口さん。輸送の間着けっぱなしだった頭絡に引き手を通して、しっかりと握って準備完了。

 

「ほら、ヤマトー、着いたぞー」

 

『ほぁっ・・・うわぁっ!?』

 

ダイタクヤマトもやって来た厩務員さんによって叩き起こされたが、何を寝ぼけたのか横になろうとしやがった。

 

当然事故防止の綱が繋がっているわけだから、それが思いっきりビンッと張り、更にそれに驚きながら飛び起きて。

 

いやぁ、面白いものが見れるとは思っていたけれど、なかなかの反応でしたな。

 

他の連中も笑いを耐えているのが伺えて、ダイタクヤマトは何も言い訳はしなかったもののしばらく気恥ずかしそうにしていた。

 

そんなダイタクヤマトの厩務員さんは一連の動きの後、青ざめた顔で脚元を触りまくり、その馬体に異常が発生していないことが確認できた瞬間大きく息を吐く。

 

まあ、人間から見れば事故一歩手前のヒヤヒヤものだもんな。

 

『ダイタクヤマト・・・こういうことがないよう、輸送の前はなるべく早く寝ような』

 

『うん・・・』

 

俺は優しくダイタクヤマトを励ました。こういう時って、からかうよりこうする方が地味にダメージ大きいんだよね。ま、勝手にプライベートな情報を流した罰ってことで。

 

年上ながら醜態を晒すこの経験が堪えたのか、ダイタクヤマトは『帰りはなんとか大丈夫だと思う』と早くも帰りの便での早寝を決意したようだ。

 

ダイタクヤマトが落ち着いた後には続々と全員の担当厩務員さんが駆けつけ、後はここから降りるだけ。

 

空港の職員さんによってストールの壁が外され、数時間ぶりに一歩を踏み出す。

 

「祝您一路顺风!」

 

その職員さんが俺たちに向かってなにか言ったが、ごめん、俺、多分・・・中国語?分からないんだ。

 

それでも笑顔だったし、悪い意味の言葉は言っていないと思ったから軽く一鳴きして、返事をしておいた。

 

「嗯、马回答・・・?」

 

職員さんはそれに酷く驚いたような顔をしていたけど、後は知らん。

 

「セキト・・・馬運車が待ってるから行こうか」

 

『はいよ。ん?馬口さん、なんでそんな顔してんだ?』

 

お、俺が1番手か。なぜだか多少困った顔をした馬口さんにそう促され、俺はタラップを一歩一歩踏みしめ、遂に香港への記念すべき第一歩を踏み出す。

 

・・・そのタラップが思ったより急な角度だった為、最後は少し駆け足気味になってしまったのは申し訳なかったな。

 

 

『・・・流石に馬運車はこうなるか』

 

香港遠征、行きの方のラストステップ。

 

いよいよ空港からシャティン競馬場へと運ばれるのだが、安全面からか馬運車に乗り込むのは二頭ずつ。

 

『よいしょっ、と・・・あっ、キミと一緒かぁ』

 

俺の隣に乗り込んできたのはアグネスデジタル。よかった、これがステイゴールド・・・はともかくゼンノエルシドだったら余計神経を使う所だった。

 

『知り合いの馬でよかったよ』

 

安心したように顔を綻ばせるアグネスデジタル。それはこっちのセリフだ。

 

『俺もだ、同い年同士、仲良くやろうぜ』

 

そこからは本当にあっという間だった。

 

元々香港国際空港から沙田競馬場って車で40分くらい、世界的に見てもとってもアクセス抜群なのだ。

 

府中駅から東京競馬場への距離なんかには及ばないが、俺達のような遠征馬にはありがたい限りである。

 

『それでさ・・・おや?』

 

『おっと』

 

結局二頭でお喋りを弾ませる内に、目当ての場所まで到着してしまったらしい。馬運車のエンジンが止まり、再びタラップを降りるんだな、と身構えていたら。

 

 

「わお!!この馬すっごくいい馬ネ!!G1勝てたのも納得ヨ!!」

 

 

『・・・は?』

 

開いた扉の先に待っていたのは、グラサンに白スーツ、果ては指に金の指輪。そんな人物が俺を見て大興奮していた。

 

この、どこの成金ですか?と訪ねたくなるようなおっさんは何者だ?俺からしてみたら見るからに怪しい!と訝しんでいると。

 

「おっとと、打扰一下。セキト、この人はね。香港でお世話になるセンセイだよ」

 

『・・・はぁッ!?』

 

拙いながらも中国語を混じえ、おっさんの横から現れた馬口さんが放った言葉は到底信じがたいものだった。

 

いや、どこの世界に白スーツで!グラサンで!金の指輪を着けた!調教師がいるんだよ!

 

「ミスターマグチ、ワタシと話すとき、日本語でOKヨ。そして、ミスターセキト!!欢迎来到香港!ワタシが馴馬師・・・チョーキョーシ?の、(チャオ) 馬飛(マーフェイ)ヨ!」

 

ここにいたよ!!いちゃったよ!怪しさ満点の調教師が!

 

『うっそだろおおおおおぉぉぉ!?』

 

こんな、正しく世界に一つだけのアイデンティティーの持ち主が、俺の世話をしてくれる調教師だなんて。

 

俺の香港遠征・・・どうなっちゃうの?




今回は超個人的&暗い話題なので苦手な方はバック推奨!








作者は某所のリアルダービースタリオン企画の発足・・・というか繁殖牝馬を選ぶところから見守っているのですが・・・その企画を見ていた(見ている)方ならばおなじみ、りく君ことハルダヨリの2019、マルカンハルカゼが1月24日、大井のデビュー戦で帰らぬ馬となりました・・・。

冥福を祈るとともに、幼いクールフォルテと共にあったマルカンハルカゼの名前もまた、忘れないようにしようと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。