サラブレッドに生まれ変わったので、最速を目指します 作:Budge
そして、余ったジュエルはサポカに回しましたがこちらは見事に爆死ン。
新シナリオは、その・・・いろいろすごかった(小並感)ですし、初育成のはずのキタちゃんが29戦29勝のバケモノになって科学の力ってすげー、としか。
本編では、獅童さんとジュンペーが、セキトの取り合い!?
よう、セキトバクソウオーだ。
XX02年に入って、早くも一ヶ月と少し。
牧場に帰省して、疲れを癒やした俺は無事に帰厩を果たした訳だけど。
厩舎で騎手としての復帰を果たしたらしいジュンペーと再会したのもつかの間、センセイと獅童さんが入口から入ってきて。
・・・これは、俺を巡っての争奪戦の予感!?
「あれ、センセイ・・・と獅童、さん?」
厩舎に入ってきた二人を見て、リラックスしていたジュンペーの表情が一気に引き締まった。
改めて入ってきた二人を見やると、なにやら神妙な面持ちをしている。あー、やっぱりそうか。
俺の為に争わないでと言いたいところだけど、共にレースに挑める騎手は残念ながら一人だけ。どこぞのハリウッドのリムジンみたいなこともできないし、望むだけ叶わぬ願いなのである。
「まずは、ジュンペー。よく帰ってきてくれた」
三人の間を気まずい沈黙が支配する前に、センセイが口火を切った。うん、それは本当にそうだ。
落馬からの復帰がかなわない騎手ってのは山ほどいる。復帰してもケガから復活できない人もな。
有名所で言うと天才と言われながらも落馬によって若くして引退した某騎手のお父さんとか、某チケゾーの騎手さんとかだな。
そんな中でこの世界に帰ってきた、それだけでもジュンペーのやったことは価値があるってもんだ。
しかし、競馬界ってのは勝負の世界だからな。それだけではダメってのは、ジュンペー自身が一番よく分かっていることだろう。
「センセイ、ありがとうございます・・・けど、獅童さんを連れてきた、ということは」
「うん、それはぼくから説明する」
センセイに質問しようとしたジュンペーを遮るように、獅童さんが口を開く。
「改めてはじめまして、ジュンペー君。今のセキトの主戦をやらせてもらっている、獅童宏明だよ。『セキトに乗るのは君が復帰するまでの間だけ』。今までは確かにその条件でやらせてもらっていた。けどね」
相手の瞳を真っ直ぐに見据えながら、更に好戦的な言葉が紡がれていく。
「2歳の末に乗ったのが最後、復帰したばかりの君と、3歳から今までに至るまでの背中に跨ってきたぼく・・・どっちがセキトをうまく扱えるか、なんて明らかだろう?」
獅童さんの普段は見せないようなその鋭い眼差しには、「こいつだけは渡さない」という意思が込められている。ひえぇ、おっかねえ。
『なんかヤバいのがいる!?』
『やばいぞ!!なんかやばいぞ!!?』
そのただ事ではない雰囲気に当てられたか、厩舎の他の連中も嘶いたり、落ち着きをなくしたりとちょっと騒ぎが大きくなってきた。
『大丈夫だって、あれはただの人間だ!』
ちょいちょい、俺も周りの連中を宥めてますがマズくないっすかこれ。
「馬が・・・獅童!」
そのことに気づいたセンセイが獅童さんに鋭く声をかける。ふー、助かったぜ。
「太島さん・・・?あ、これはすみません」
獅童さんはハッとしたような表情をした後、センセイの顔を見て、申し訳無さそうに一つ頭を下げてから深呼吸をひとつ。
しかしジュンペーに向ける視線と、言葉の鋭さだけは何一つ変わらないままで。
「要するに、僕も君もジョッキーだ。何もしないまま『主戦交代です、はいそうですか』、って納得できる訳がないよね」
そのセリフに、ジュンペーがゴクリと生唾を飲み込みながら頷く。
ジュンペーの様子を確かめるように、獅童さんは言い放った。
「だから、こうしようと思うんだ・・・どちらがセキトを上手く、扱えるか勝負だよ」
『・・・で、結局一番疲れるのは俺なんだよなあ』
一週間後、高松宮記念に向けての追いきり。
今、俺の目の前では二人の主戦がバチバチに睨み合っている。
いや、顔とか雰囲気自体は穏やかなんだけど、その、心の内側の「絶対譲らねぇ」感がだだ漏れというか。
さっきも今日はよろしくと握手した手をお互い握力マックスで握り合ってたし、なにやってんだか。
ここまで二人がヒートアップしている理由。
それは、俺の主戦を巡っての勝負がこれから始まるからだ。
コースの外にはいつの間にやら勝負を聞きつけたらしい野次馬が集まってるし。はあ。やり辛いなあ。
・・・気を取り直して。その勝負の内容ってのは、ウッドコースを右回りに走ってゴール前一杯、
ただし前半の15ー15部分でズレた分をゴールタイムに加算するから、飛ばしすぎても負けるし、抑えまくって脚をためるってのも駄目。そもそも俺はスプリンターだし、ぶっ飛ばすなんてもっての外だけど。
この勝負、俺のコンディションの差ってのを考慮して、今日の内にジュンペーと獅童さんでそれぞれ一回ずつ、2回分走るからかなり疲れそうなんだよなぁ。
勿論一回目と二回目の間には十分休憩を挟むけど、それでも元気満タンな一回目の方が有利ではあるだろう。
けれど、皆さん、お忘れではないかい?俺は頭脳明晰なんだ。ちょっとしたズルなんてチョチョイのちょい。
ひょっとしたらそもそもセンセイはこうなるって分かってて承諾したような気もするけど、まあ、その。先に言っておこう。
はっきり言って俺が本気を出す、出さないで調節すればいい、只の八百長です本当にありがとうございました。
「では、始めるか。ジュンペー、獅童、好きな方を選ベ」
その真剣勝負(八百長)に挑む二人の順番を決める重要なくじが、太島センセイの手に握られた二本の割り箸だ。先っぽが赤いほうがアタリで好きな順番を選べるって寸法だ。
「あ、先引きます?」
二人同時に手を出そうとして、ジュンペーが一瞬手を止めた。
「いやいや、ここは君が先にどうぞ?」
「じゃあ・・・」
しかし獅童さんは一番手をジュンペーに譲り、それぞれジュンペーが右、獅童さんが左の割り箸を選ぶ。
「選んだな?それでは・・・結果はこうだ」
センセイは二人の意思を確認するように左右を見やってから、そっと手を開いた。
その結果は。
「ははっ!ついてるなぁ」
声を上げたのは獅童さんだった。確かに手に取った割り箸の先に赤いマジックが塗られている。
「ああ・・・もう」
一方のジュンペーはガックリと肩を落とし、項垂れている。そんなに気を落とすなよ。
・・・ま、どっちがどっちを選ぶにせよ。
俺の腹は、とっくのとうに決まってんだけどな。
「はぁっ!行けっ!セキトっ!!」
『おうよ!』
道中は緩く、しかし直線では鋭く。
アタリのくじを引いた獅童さんは、やはり先攻での騎乗を望んだ。
俺からしてみればいつも通りの何も変わらぬ調教。迫力があるように見えるのは、それだけ獅童さんが激しく追っているということだ。
それに応えるよう俺もまた身体を沈ませ、加速したままゴールのポールを駆け抜ける。
「セキト、お疲れ様・・・この分なら、ぼくの勝ちだな」
手綱を引きながら声をかけてきた獅童さんがほくそ笑む。
そして、タイムを測っていたセンセイも感嘆したような顔でその記録を読み上げてから、ため息を一つ。
「・・・この時期としてはかなりのタイムだな、誤差は約0.2秒、流石だ」
おお、やるな獅童さん。ほぼ誤差なしとは。
で、問題のジュンペーはっと・・・おいおいおい、ガッチガチじゃねーか。
まー、そりゃそうだよな。俺も背中に乗せてたから分かるけど獅童さん本気だったもん。
落馬とかで休んでた期間もそうは無く、ハングリー精神だって十二分。そんなベテラン騎手に復帰したばかりの騎手が勝てるかなんて言われたら、そりゃほとんどの奴が無理って言うだろう。
だけど、安心しろ、ジュンペー。俺は、ただの馬じゃないからな。
休憩を挟んで、午後。
同じコースの同じ場所、変わったのは鞍上だけ。
「・・・セキト、きょ、今日は、よろ、しくな」
相も変わらずガチガチなジュンペーの、震える手が首に触れた。あー、もう。なんじゃこりゃ、こんなんじゃ俺の方まで緊張する、っての!
「うわっ!」
ヒヒン!とわざとらしく大きく鳴いて立ち上がれば、ジュンペーが転がり落ちた。見に来ていた野次馬連中がざわついたが、なあに、下はウッドチップだ。よっぽど強く叩きつけられなきゃ怪我の心配はねえ。
「セーキートー!」
それが俺のイタズラだと気がついたジュンペーはガバっと立ち上がると、やってくれたな、と怒りながらも笑っている。
そうそう、それそれ。俺が鼻を鳴らしながら頷くと、ジュンペーがハッとしたような表情になった。
「セキト・・・まさか、僕の緊張を察して・・・わざとか?」
さぁ、どうでしょうね。脇腹あたりの毛づくろいをして誤魔化してから、身体をジュンペーに押し付けて、早く乗れと急かす。
「ああもう、分かった、分かったよ」
その様子に、問い詰めるだけ無駄と思ったのか俺の背に手をかけ、そそくさと再騎乗するジュンペー。
「ジュンペー!大丈夫か!」
「大丈夫です!」
柵越しに掛けられた心配の声に、軽く手を上げて大丈夫だとサインを送ってから。
「・・・行こうか」
『ああ!』
真っ直ぐに前を見据えるジュンペーに、俺は大きく鼻を鳴らして答えた。
さあ、この時がやって来た。
獅童さんを背に走っているときも、牧場で安らぎの時を過ごしているときも、心のどこかでは。
待って、待って、待ち続け。
焦がれて、焦がれて、焦がれ続けて。
そして、年が明けて、ジュンペーを見てから俺だって、考えて、考えて、考えた。
その上で、こうするって決めたんだ。
悪いな・・・獅童さん。
G1を勝たせてくれて、ありがとう。心の底から感謝しています。
俺を手放したくない、と思えるほどの馬にしてくれて、ありがとう。
そして、それに恥じない、名馬になりますから。
どうか、俺のワガママを許してください。
「いけっ!」
『おらああああっ!』
ジュンペーの拍車に応えた俺の蹄が、獅童さんの時とは比べ物にならないほど力強く、ウッドチップを叩きつけた。
『ふぃー、走った走った』
「・・・まさか、こうなるとはな」
「自分でも、驚いてます・・・」
二回目の調教の後。センセイはストップウォッチを見ながら、ジュンペーは俺の背中に乗ったまま、二人で呆然としていた。
俺のタイムが、獅童さんが騎乗していた時よりも遥かに上・・・道中の誤差を差し引いたとしても、余裕で相手の記録を上回っていたからだ。
しかし、流石に本気で走ったから疲れたな・・・ストップウォッチをチラ見したら、うっかり獅童さんのタイムに対して1秒近い差を付けてしまったのはやりすぎだったか?
その獅童さんはセンセイからタイムを告げられると一言二言会話を交わし、唖然としたような顔の後に一瞬苦虫を噛み潰したような顔をしてからそれを隠すように顔を伏せていたが。
「・・・ふふ、ははは!そうかそうか、ここまでやられちゃったなら、仕方ないね」
やがてしばらくすると、何か吹っ切れたように大きく笑いだした。い、一応頭の方は大丈夫ですよね?
それから獅童さんは俺とジュンペーの下に歩み寄ってくると。
「ジュンペー君。やっぱりセキトは、君と一緒に戦いたいみたいだね、動きが全然違ったよ」
「セキトが、僕と?」
掛けられた言葉に、きょとんとするジュンペー。流石獅童さん・・・というか、あ、バレた?
大きく頷いてから、獅童さんは俺を撫でる。
「じゃなかったら、二本目の方のタイムが良い、ましてや1秒近くも差が開くなんて、ありえないからね・・・そうでしょ、セキト?」
あー・・・バレてました。思いっきり。やっぱりベテラン相手に隠し事は出来ないね。それでも誤魔化そうとそっぽを向くと、何がおかしいのか再びふふふと笑う獅童さん。
そこに、ジュンペーが慌てたように話しかけた。
「そんな、実際のレースで何が起きるかなんてわからないのに、復帰したばかりの僕が乗るなんて・・・」
「いいや」
弱気なその言葉を撫で切るように、獅童さんは今度は首を横に大きく振って、続ける。
「セキトに選ばれた・・・セキトが選んだのは、僕じゃない。君なんだ」
「選ばれた・・・」
その言葉の重みを、しっかりと受け止めようとするジュンペー・・・って、俺の意思をそんなに重く受け止められても困るんですけど?なぁ、おーい?
「そう。ここまで気持ちよく差を付けられちゃったら、ぼくはもう諦めるしかないよ」
幸いなことに、セキトの活躍のおかげで乗り鞍も増えたからしばらくはやっていけないこともないしねと呟く獅童さんからは、やっぱり俺のことを諦めきれないというニュアンスも伝わってくる。けれど、それを表に出さないのが貫禄ってもんだ。
「獅童さん・・・僕、がんばります」
「うん、期待してるよ」
ジュンペーもそれを感じ取ったらしい。ようやくのことで絞り出した一言を、獅童さんは確かに受け取って。
そのまま背中を向けて、サムズアップした右手を高く掲げると、ゆっくり何処かへと立ち去って行った。
恐らく、俺が現役の間はこれでもう彼に会うことはないだろう。そのどこか寂しそうな背中を見送っていると、早くもこれで良かったのか?と後悔の念が湧いてきて。
もっと上手く別れを告げられたのではと思っても、やっぱり現実では何もできなくて。
「・・・セキト」
結局そのまま佇んでいると、背中のジュンペーが声をかけてきた。
『なんだ?』
俺が鼻を鳴らしてそれに応えると。
「勝とうな。絶対に」
そう力強く放たれた言葉が、耳に入ってきた。
『おうよ』
そうだ。これは俺が決めたことで、俺が選び取った未来。
現役中唯一のワガママは、この後の活躍で許してもらうとしよう。
『これだったらいいだろ?なあ、獅童さん』
俺は、すっかり遠ざかって馬の目でも見えなくなった獅童さんの背中に、勝利を誓ったのであった。
次の高松宮記念・・・こりゃあ、負けらんねえな。
ウイナー・イズ・ジュンペー。
土日のどっちかにおまけ?の掲示板を更新するかもです。
月曜日の予定は・・・セキト、再びの高松宮記念へ。2年ぶりのジュンペーとのコンビはどうなるか。