サラブレッドに生まれ変わったので、最速を目指します   作:Budge

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ウマ娘の新シナリオたのしいぃィィィィ(発狂)

旧シナリオの方でもキタちゃんとバクシンオーがストーリー中で絡みまくるの流石サイゲさんわかってるとしか言いようがない。  

そしてガチャで引き当てたのをきっかけに改めてリアルキタサンブラックを調べたら巨大化エピソードと最終的な馬体重に戦慄した件。ヒシアケボノとたったの10kg差とか

・・・ふぅ。作者が戯言を語り終えたので、本編突入します。



再びの中京へ

時の流れってのは存外に早く、いつも通りに過ごしている内に3月に入っていたらしい。その間に獅童さんとジュンペーが俺を巡って起こした春の乱の余韻もいつの間にやら過ぎ去っていて。

 

周囲の話題がクラシックへと移りゆく中、俺にとって一つ確かなのは高松宮記念が近づいてきたんだな、ということだった。

 

正に今、俺は中京に向かう馬運車に乗り込んでいるところだ。近くでは近々レースに出ると言っていたイーグルカフェ、マンハッタンカフェも別の馬運車に乗り込んでいて。

 

どうやら三者三様、一気に出発することになりそうだな。

 

 

『不甲斐ないレースだけはしてくれるな!』

 

『それはお前の方だろうが!?』

 

『センパーイ!!しっかりやってくださいねー!!』

 

『そっちもなー!』

 

嘶きあいながら頑張れ、そっちこそ!と何度もお互いにエールを送っていると、不意に馬口さんが声を掛けてきた。

 

「セキト、この子も乗るからよろしくね」

 

『おっ、相乗りか、構わねぇぜ』

 

一度厩舎に引っ込んだ馬口さんが連れてきたのは、少しおどおどした様子の鹿毛の馬・・・ってか、この感じは。

 

『おお・・・女の子か』

 

『ひぇ、バクソウオーさんだ・・・よ、よろしくおねがいしまひゅ!』

 

やっぱりそうだ、この子は牝馬ちゃん・・・女の子だ。そのせいだろうか、俺と同じ馬運車に乗り込んだのを見た瞬間、マンハッタンカフェはともかくイーグルカフェの嘶きに文句が混じってきたような気が・・・。

 

でも気にしなーい。イーグルカフェ、悪いが今回はお前の運がなかっただけだ。次の機会には誰かかわい子ちゃんと一緒だといいな。

 

あ、でも基本牡馬と牝馬を一緒に輸送することはないって聞くし、これって人間側からしたら牝馬にあんまり興味を示さない俺だから実現したのか?

 

だとすると・・・あぁ、色々とごめんなイーグルカフェ。引退のその時まで強く生きろ。その後はハーレムパラダイス(という名のさらなる地獄だけどな)だぞ。

 

 

「じゃあ、こっちから先に出ますね」

 

結局この牝馬ちゃんが輸送準備をしている間にイーグルカフェとマンハッタンカフェの乗った馬運車は鋼鉄のドアを固く閉ざして、そのまま発車してしまった。

 

『バクソウオー!少し話したいことがある!』

 

あ、動き出してからイーグルカフェの抗議の声らしきものが聞こえてきた。けどここは敢えての必殺聞こえない作戦発動だ。

 

『バクソウオー!!聞こえているのだろう!?バクソウオー!?』

 

・・・ふと、あんなに声を張り上げて、隣に乗っているはずのマンハッタンカフェは色々と大丈夫だろうかと頭に過ぎったが。

 

『返事をせぬか!?バクソウオー!!』

 

うん、あいつだって古馬になったんだ、きっと無事なはず、と問題を意識の外に放り投げる。別の馬運車に乗っている時点で俺はアウトオブ蚊帳なのだ。きっとその内物理的に静かになるはず。

 

『バクソウオオオオォォォォォ!!』

 

その内、思ったとおりに馬運車が遠ざかるに連れイーグルカフェの声も小さくなり、やがて聞こえなくなる。

 

「よし、オッケー・・・セキト、ムード、しばらくしたら動き出すからね」

 

『おう』

 

『はい!』

 

俺たちが無事馬運車に収まったのを確認した馬口さんに、俺は慣れた様子で、ムードと呼ばれた牝馬ちゃんは真面目にそれぞれ返事をして。

 

馬口さんが外に出ると俺たちを驚かせないように、しかし旧式で建て付けが悪いのかところどころ塗装がはげ、錆びついたドアがバタン!となかなかの勢いで閉じられた。

 

『ひゃ!』

 

その音に怯んだのか、牝馬ちゃんが可愛らしい声を上げる。

 

お、扉の方はそのまま鍵がかかる音がしたし、一発でうまく行ったようだな。

 

『そんなに驚かなくても大丈夫だって』

 

『でも・・・』

 

『いいから。それよりもそろそろエンジンがかかって、この車が動き出すから準備したほうがいいぜ。ええと』

 

そういえば名前を聞いてなかった、とまごつく俺に牝馬ちゃんはあ、と声を漏らした後、やっぱり真摯に答えてくれた。

 

『私、ピクニックムードって言います!』

 

その後もなんだか事あるごとにビクつく牝馬ちゃん、あ、いやピクニックムードちゃんを宥めようと会話を試みるが、この子は所謂真面目過ぎて勝てないタイプかもなあ。

 

話を聞けばなんと海外生まれなんだそうで。馬主さんに至ってはまさかのスペシャルウィークと同じ人だった。

 

ピクニックムードちゃん自身は去年未勝利戦を勝ってからというもの良いところが無くて自信喪失気味だとか。

 

うーん、悪くはないんだけどなあ・・・恐らくだが、勝てない原因はやる気の空回りだろうか?

 

こういう「やる気故に勝てない」子って、「やる気を出さない」子よりも厄介な時があるんだよなあ・・・ん?

 

バクシンバクシーン!

 

・・・今、俺の脳裏を美少女化した親父が元気に駆け抜けていった気がするが、これは忘れよう。うん。

 

 

『君は、案外力の入れ過ぎかもな』

 

だから、決して君の姿勢が悪いわけじゃないとの励ましも含めつつ、そう発言した。

 

『力の・・・入れ過ぎ?』

 

そのやる気を入れ過ぎな当の本()は首を傾げながら聞き返してきた。ああ、やっぱり自覚してなかったみたいだな。

 

『うん、やるぞーって思うのは良いんだけど、気持ちが強すぎると、身体が強張ったり、脚が上手く動かなくなったりするんだよ。そのせいでいつもの力が発揮できなくなったりする』

 

『んーと・・・あっ!確かに!練習の時はもっと頑張れたのにって思ったこと、あります!』

 

俺の言葉に、納得したように頷くと、そういうことかぁと長年の謎が解けたかのように晴れやかな表情を浮かべるピクニックムードちゃん。

 

『そうそう、後は走り方が合ってない、とかな―』

 

 

 

 

そうやってかわいい後輩(話してる途中でマンハッタンと同い年って分かった)に走り方のイロハを教えていると、それはもう数時間なんてあっという間で。

 

『・・・っていう訳だ、君も勝てない馬じゃないと思うぜ、っと』

 

脚質やらレースのペースのことやら、色々と伝授している内に、無事中京に到着したようだ。エンジンも止まったし。

 

『あれ、振動が消えた』

 

『それが、目的地に着いたって合図だよ』

 

不思議そうな顔のピクニックムードちゃんにそう教えると、またまた成程!と喜びの声を上げる。いや、年齢の割にあんまり出走してないのかな?それとも神経質なだけ?

 

数時間を過ごしただけじゃ判断がつかないなあ、という判断を下したところで、扉がギギギと鈍い音を立てて開く・・・いやマジで大丈夫かこの馬運車。

 

「ふー、中京に着いたよ、セキト、ムード。お疲れ様・・・というか、この馬運車も限界かなあ・・・」

 

どうやら人間の力じゃ扱いに困るくらいにはなっているらしい。最終判断を下す前にどうぞ扉に油でも差してください。それでもダメなら鉄クズ扱いでいいと思うけど。

 

「じゃあ、先にムードをお願いして・・・よし、セキト、馬房に行こうか」

 

『おう』

 

 

先に入口側にいるピクニックムードちゃんに降りてもらい、俺も馬口さんに引かれて滞在厩舎に向かう・・・と。

 

『あ!セキトバクソウオーさんだ!』

 

『へ?』

 

一歩踏み出した所で、俺を呼ぶ嘶きが。

 

急なことに驚きつつ、あちこち周りを見渡しつつようやく見つけた声の主は・・・なんだ?見たこと無い奴だな。

 

えーと、黒っぽくて、脚も右後ろだけちょびっと白くて、鼻先に小さな星がある馬・・・畜生、地味すぎてパッとは出てこねえ。

 

『どうもはじめまして!オレ、トロットスターさんに聞いた去年のバクソウオーさんの走りにスッゲー痺れたんです!』

 

「うわ、こら!止まれ、止まれってば!」

 

なんだか地味なそいつは、引き運動の最中だったらしいが、哀れな厩務員さんをズルズルと引きずって俺のそばまで寄ってきた。

 

『ここで会えるなんて感激っス!!やっぱ次は・・・高松宮記念っスか!?』

 

『こ、これはどうも・・・?高松宮記念は、出るけど・・・』

 

ありゃま。こいつ、俺のファン?ってやつなのか?来て早々にとんでもないやつに出会っちまったもんだ。

 

「カンプ!こら、やめなさい!」

 

あー。そうか。必死に制止しようとする厩務員の一声で、ようやくその正体に察しが付いた。こいつ、俺と同じサクラバクシンオー産駒の・・・

 

『あっ!オレ、ショウナンカンプです!高松宮記念、出るんスか・・・じゃあ一緒っスね。けど、負けないですよ!』

 

うん、そうだよね。

 

ちょっと早口で捲し立ててくるこの牡馬は、ショウナンカンプ。本来の歴史ならば、今年の高松宮記念を制する馬。

 

「カンプ!すみません、突然のことで対応できなくて・・・」

 

「いえいえ、仲が悪いわけではないみたいですから」

 

ショウナンカンプの厩務員さんが頭を下げた。それを見た当のショウナンカンプは何やってるんだ?と呟いていたけど、まあそりゃそうなるよ。

 

『なー、何で謝ってんだ?オレ、バクソウオーさんに挨拶してるだけだぜ?』

 

え、何この子、どうするんだろうと見守ってたら厩務員さんに普通に話しかけてる?ちょ、まさか。

 

『・・・ショウナンカンプ?人間に俺たちの言葉は通じないぜ?』

 

『え?・・・なんだってー!?』

 

もしやと思い指摘してみると、これはこれは大変きれいなリアクション。表情も相まってバラエティ番組なら100点満点だろう。俺たちにしかこいつの面白さがわからないのが残念なくらいだ。

 

『そんなまさか・・・!母さんから聞いた『ニンゲンさんは私達とお話出来るのよ』って話は嘘だったのか!?』

 

『あ、いや、全く出来ないってわけでもないけどさ・・・』

 

「ごめんなさい!大変ご迷惑をおかけしました・・・って、ああ、もうこんな時間じゃないか!」

 

ショウナンカンプの大変強烈なキャラクターが判明したところで、彼の厩務員さんが腕の時計を見て慌てたように歩き出す。

 

「ほら!引き運動に戻るよ!カンプ!ふんっ!」

 

『アーっ!バクソウオーさーーん!!またお会いしましょーー!!』

 

相変わらず俺をキラキラ・・・いや、ギラギラ?した目で見つめるショウナンカンプは、今度は渾身の力を込めた厩務員さんに引っぱられるようにして、ようやく離れていった。

 

「セキト、災難だったねぇ」

 

『全くだよ・・・』

 

馬口さんの言葉に、同意しかない。着いて早々なんだかどっと疲れてしまった。

 

肝心の高松宮記念までは、あと半月前後。

 

ライバルとなる馬との思わぬ遭遇を果たした上、親父の血ってのは暑苦しさのDNAでも含んでいるのだろうかと疑問に思わずにはいられない、そんな一幕だった。

 




無事中京へ!同父のライバルとも遭遇して、いよいよジュンペーと共に大舞台に挑みます。

鞍上の変化は果たして賽の目にどう変化をもたらすのか?

次回は水曜更新予定になります!
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