サラブレッドに生まれ変わったので、最速を目指します   作:Budge

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アイエエエ!?ダイヤチャン!?ダイヤチャンナンデ!?(油断してジュエル全部サポカに突っ込んだ人)

・・・とにかく、予想が当たってジュエルを貯めていた人は、おめでとうございます。自分は財布と相談しながらダイヤちゃんをお迎えするかどうかよく考えたいと思っています・・・。



決着!高松宮記念

『ショウナンカンプとセキトバクソウオー!全く並んでのゴールイン!!ちょーっとこれは、ここからでは分かりません!3着にアドマイヤコジーン、4着には外から追い込んだスティンガー!第32回高松宮記念は大接戦のゴールとなりました!!』

 

 

前回までのあらすじ。俺とショウナンカンプは、激しく争ったまま高松宮記念のゴール板へとなだれ込んだ、以上!!

 

 

「はあはあ・・・お疲れ様、セキト」

 

『・・・っはぁ、はぁっ、はぁっ・・・疲れたぁ・・・!』

 

「ふー、すごい走りだったぞ、カンプ」

 

『はぁ、はぁっ、聞いてたけど、クソ速ぇ・・・』

 

それから間もなく、お互いの鞍上に手綱を引かれてスピードを落としつつ。

 

『はー、はー、いやあ、すげぇ戦いだった・・・』

 

思わずそう漏らしてしまう程には、凄まじいレースだった。たった1200mの戦いながら、こうして人馬ともに疲労に襲われているという事実が何よりの証拠だ。

 

「セキト、少し歩こうか」

 

『そう、だな』

 

立ち止まって息を整えていると、ジュンペーから歩きなさいという指示が出た。クールダウンの為である。

 

しかしレース直後に歩けっていうのもなかなかしんどいな・・・ゆっくり歩けば、なんとか大丈夫か?

 

『バクソウオーさーん!』

 

息を整えながらゆっくりと歩いていると、少しばかり先に行っていたショウナンカンプが速歩でこちらに寄ってきた。

 

『やっぱ、聞いてた通りクソ速いっすね・・・バクソウオーさん』

 

『へへ、まあな』

 

俺も、彼も同じサラブレッドなのだ。勝負が終われば敵も味方もありゃしない。全くの横並びでゴールしたお互いの健闘を称え合って。

 

ジュンペーとショウナンカンプのジョッキーさんもお互い握手を交わした後に何やら話しているようで、そのまま2頭仲良く並んで歩き続けていると1コーナーからスタンドへと戻ってきた。

 

3着のアドマイヤコジーンを始めとする他の連中が色々なことを口にしながらさっさと出口に戻っていくのを眺めながら、ちらちらと掲示板に目をやるものの中々結果が出ない。

 

ゴールのリプレイ映像が流れる度にお客さんからはどよめきや歓声が起こり、アワシマアナもはっきりとしない物言いをしているためどちらが勝ったのか分からんし・・・というか、正に今それを判定しているのか。

 

考えてみれば今まで俺が勝ったレースって、写真判定になってもすんなりと結果が出るくらいの着差を付けていたんだよな、と思い出す。時間がかかったのは、昨年の京王杯スプリングカップくらいじゃないか?

 

『あら?あなた・・・なんだか逞しくなった?』

 

『お、スティンガーか、久しぶりだな』

 

出口に向かう馬たちの中からは話しかけてきたのは、あの時激しく競り合った張本人だった。

 

そして、現役として顔を合わせるのはこれが最後。

 

『ねえ。聞いたと思うけど、私これで最後なのよね。正直もうちょっと走っていたかったわ』

 

やれることはやれたけど。とどこか引退に対してやや不満げなスティンガー。

 

『いやいや、母親になるんだろ?それだって立派な仕事だよ』

 

ある意味、自分が走る以上にな。そういう意味も込めて彼女にそう話しかけると。

 

『そう・・・なのよね。私もお母さんになるなんて。ちょっと想像がつかないけど・・・ホントのことなのよね』

 

意外にも母親になることに関しては悪い気はしていない、というかこれはよく分かっていない様子。うーん。申し訳ないが俺だって分からねえや。

 

けど。

 

『あんなに速かったあんたの子供だ、きっとその子も速いんだろうな』

 

真っ直ぐに見据えたまま放ったその期待だけは、本当だ。

 

鋭い脚を繰り出せる彼女の仔もまた、素晴らしい脚を持った子になるのだろう。

 

ま、俺なんかよりも牧場の人や、馬主さんの方が、よっぽどそう思ってるんだろうけどな。

 

『・・・』

 

っと、あれ?スティンガー?いきなり顔を赤くしたまま動かなくなって、一体どうしたんだ?

 

『スティンガー?』

 

『・・・ハッ!?そ、そんなことを言われても、生まれるまでわからないんだし、その、えっと、さよなら!!』

 

『あ、ちょっ・・・行っちまったか』

 

意識を取り戻したスティンガーは、よりいっそう顔を赤くして、俺の声掛けもろくに聞かないまま全速力に近いスピードで出口へ向かっていった。一体何なんだったんだ・・・。

 

 

しかし、繁殖入り・・・親になる、か。親と言えば俺もショウナンカンプも親父がサクラバクシンオーなんだよな。この結果でまだまだ親父の種付け頭数も増えるんだろう。

 

そう思うと少し可哀想な気がするが、こればっかりは活躍馬を出した種牡馬の宿命。ひょっとすると現実ではあり得なかった配合がされていたり・・・いやいや、無い無い。

 

 

『ああっ!?出ました!!たった今結果が出ました!!』

 

『うおっ!?』

 

と、アワシマアナの一言でスタンドが一際大きく沸き立ち、油断していた俺の身体が跳ね上がる。

 

「おっと、セキト、どうしたんだ?お前が取り乱すなんて珍しいな・・・」

 

ジュンペーが背中から「大丈夫だ、落ち着いて」と首を撫ぜてくれて、俺も一つ、二つと大きく息を吸う。

 

・・・うん、もう大丈夫。

 

『はー、びっくりした・・・悪りぃな』

 

「うん、よしよし」

 

もう大丈夫だ、とジュンペーに顔を向けながらブルルと鳴いたら、ジュンペーの方もそれでいいんだよと言わんばかりに首をぽんぽんと叩く。

 

『・・・セキトバクソウオーさんも、やっぱアレは苦手なんっスね』

 

『ああ。というかアレに関してはどうやっても慣れはしても、平気って訳にはいかないだろうよ・・・』

 

同じように歓声に跳ね上がったらしいショウナンカンプが、まだ落ち着かない様子で俺に話しかけてきたから、俺だってアレは無理だと話す。

 

例えるんだったら、音で壁を作って、それを耳にバーンって叩きつけられるような感覚・・・ってのが近いかもしれん。

 

人間諸君。正直に言ってくれて構わない。よく分からんだろう?俺だって今となってはなんで人間の耳はあんな音が平気なんだって思ってるくらいだからお互い様ってことで。

 

とにかく、高松宮記念の結果が無事に出たらしい。さあ結果を確認しようと顔を上げた瞬間、再びアワシマアナの声が轟いた。

 

 

『確定ッ!!高松宮記念の着順が確定いたしましたッ!一着は7番セキトバクソウオー!!ハナ差の2着にショウナンカンプッ!!セキトバクソウオー、スプリントG1連覇です!!そしてなんとなんと!鞍上岡田順平、復帰後初勝利がなんとG1だあッ!!』

 

『『あ・・・』』

 

その言葉を聞いた瞬間、俺とショウナンカンプはほぼ同時に声を漏らしていた。

 

それは覆らない事実で、お互いを称え合った俺たちの明暗を、一瞬にして分かつ。

 

『勝った・・・』

 

人は無二の喜びと歓声に迎えられる片方()を勝者と呼び。

 

 

『クッソ・・・負けた・・・!!』

 

そして、涙に濡れるもう片方(ショウナンカンプ)を、敗者と呼ぶ。

 

 

「・・・セキト!よくやった!本当によくやってくれたなッ!!」

 

掲示板を何度も見返して、ようやく自分たちの勝利を確信したジュンペーは、半ば抱きつく様に俺の首を一つ、渾身の力で叩いた。

 

『痛ぇっ!?』

 

痛ってぇな!?と思うと同時に、それだけのことを俺はやってやったんだという実感が段々と湧いてくる。

 

G12勝目、秋春スプリント制覇、ジュンペーの復帰後初勝利・・・って、ジュンペーの復帰後初勝利が、G1になっちまった!?

 

『いやー、えらいこっちゃ・・・』

 

とんでもない記録を作ってくれたもんだな、とどこか棒読みで呟く。いや、やらかしたのは他ならぬ俺自身なんだけども。

 

「セキト・・・ッ!本っ当に・・・!お前は!最高の相棒だよッ!!」

 

感極まった声でそう言うジュンペー・・・って、あれ?ジュンペー、泣いてる?おいおい。いい男が台無しだぜ。

 

『ったく、しゃあねーな』

 

ただでさえ記録づくしの勝利なんだ。そんな顔でメディアの前に出たら格好のネタにされちまうぜと、首をひねって・・・うん、何とかいけそう。

 

「セキト?一体何を・・・うぶっ」

 

頭をジュンペーの顔に擦り付けて、涙を拭き取ってやる。

 

ごしごし。ごーしごし・・・よし、こんなもんかな。

 

一通り拭けたっぽいからこれでいいかと顔を離して様子を伺うと。

 

「・・・セキ、ト?え?今のは何だ?」

 

『よっしゃ、涙は止まったな?それじゃあ行くぞ?』

 

先程とは打って変わって、キョトンとした様子のジュンペーに、俺はスタンドの方へと首を伸ばしてウイニングランを促した。

 

「スタンド・・・?あッ!ウイニングラン!?そうだな、あんまりお客さんを待たせてもいけないし・・・行こう!!」

 

『ああ!』

 

ジュンペーの拍車が、俺の身体を蹴ったのが伝わってくる。よしきた!

 

レースを走り終えてから十分時間も経ったし、今日はいつも以上にサービスをしてやろうかな?と色々な考えを巡らせながら、俺は歓声の湧くスタンドの前を揚々と走り抜けたのだった。

 

 

 

 

そしてー。

 

「申し訳ありません・・・本当にあと少しだったんですが」

 

「いやいや、仕方ないよ・・・あのセキトバクソウオー相手にこの差なんだ、実質勝ちみたいなもんだよ」

 

こちらは待機所。ウイニングランをするセキトバクソウオーより、一足早く待機所へと戻ってきたショウナンカンプを出迎えた陣営に悲観の色は無かった。

 

「それよりも、問題はコイツです」

 

「カンプがどうか・・・ありゃあ、これはちょっと・・・」

 

鞍上、萩川の言葉に調教師である荻窪(おぎくぼ)陽吉(ようきち)氏は、ショウナンカンプの様子がレース前と比べて明らかに変わっていることに気が付いた。

 

『クソっ・・・クソっクソっ・・・!オレのバカ!何で負けたんだッ!なんで、あそこで・・・ウゥッ!!』

 

明けて4歳、とは言えど3歳になってからデビューしたショウナンカンプにとって、初めての大舞台は経験したことがない程非常に苦しく、惜しいレースだった。

 

あと一歩、届かなかった。その思いから全身をわなわなと震わせ、敗北の苦さを噛みしめる姿は人間からは元気と自信を無くしたように映ったようで。

 

「・・・少し明けて、夏のスプリント戦線から立て直しましょう、それでいいですか?」

 

「ええ、そうしましょう。カンプ。今日は本当によく頑張ってくれたな・・・」

 

『うう、おやっさん・・・!』

 

調教師からの提案を快諾した馬主に「次はきっと勝てる」と慰められたショウナンカンプは、悔しさからか一粒涙を流し。

 

そして。

 

『次があったら・・・ぜってぇ負けねぇ・・・!』

 

ほろ苦い敗北が、また一つ若駒を古馬へと成長させたのであった。

 




セキト、高松宮記念制覇!苦手な左回りも何のその!ジュンペーの大記録のおまけつき!

・・・ところで、G1は無理にしても復帰後初勝利が重賞というジョッキーの方はいらしたりしたのでしょうか・・・?

今週水曜は本編更新予定になります、高松宮記念を制したセキトに、また新たな招待状が・・・?
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