ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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あれ?地元にいい思い出って無くね?

拝啓、お母さん。元気にしていますか?

私が中央に行って寂しい思いをしていないか、少し心配です。

そんな私は今、

 

「ここは図書室やな。過去のレースの記事からトレーニングに役立つ本、果ては何のためにあんのかよーわからん奴までいろいろあるで。あっ、当然やけど、ここでは騒がんようにな」

「ハイ、ワカリマシタ」

 

「ここは中庭だ。あそこの切り株の中は空洞になっていて、あそこに悔しいことや嫌なことを叫んだりするんだ。それと、たまに中にウマ娘が入ることもあるな」

「え?そうなん?ウチはそんなん知らんけど」

「ソウナンデスカ」

 

大物ウマ娘2人に学園の中を案内されて魂が飛びそうです。というか、半分くらい飛んでます。

いや、うん。両手に花というか、私が有名人2人を侍らせているみたいで落ち着かない。今日は休日のはずなんだけど、なんでか人出はそこそこあるせいでけっこう目立ってる。

うわ~、オグリ先輩とタマモ先輩の間に挟まれてるあのウマ娘誰なんだろうって思われてるんだろうな~。

余談だけど、最初はフルネームに先輩呼びだったんだけど、半ば強引にそれぞれから「オグリでいい」「タマモでええで」って言われて、そう呼ぶに至った。

いややべーよ。いったい私が何をしたって言うんだ。

デビュー戦で目立っちゃったね。たぶんそれが原因だね。

幸い、話の内容は頭に入ってるから聞き逃してるとかそういうのはないけど、緊張で体がガチガチになってる・・・。

すると、学園の全体に響き渡るようにチャイムが鳴った。時間的に、お昼を知らせてるのかな?

 

「あっ、もうお昼や」

「そうだな。なら、食堂でご飯を食べるとしよう」

「ご飯!!」

 

思わずご飯ってワードに反応すると、オグリ先輩とタマモ先輩が揃って私の方を振り向いた。

やめて、恥ずかしいので見ないでください・・・。

 

「なんや、そんなにここのご飯が楽しみやったん?」

「えっと・・・トレーナーから、料理人も一流だって聞いてたので。浦和の食堂も嫌いじゃないんですけど、こっちはこっちでどんな感じなのか楽しみにしてて・・・」

「そうか。ここの料理はとてもおいしいから、ぜひ楽しみにしてほしい」

 

オグリ先輩がそこまで言うんだったら、本当においしいんだろうね。

ようやく緊張がほぐれているのを感じながら、最初よりも少し浮足立ちながら食堂へと向かった。

 

 

 

 

「ここが食堂だ」

「お~」

 

一目見て浦和と違うと思ったのは、すごくおしゃれだなってこと。

浦和トレセン学園の食堂は、なんというか、良くも悪くも学校の中って感じで、テーブルも椅子も四角の長いプラスチックのやつだ。

それに対して、ここは丸いテーブルがいくつも並んでいて、しかも木製だ。学校の食堂というよりは、カフェテリアに近い感じがする。

 

「メニューはいろいろあるけど、おかわりし放題なのは決まっとるから、そこんところ注意な」

「はい。ちなみに、お二人のおすすめはなんですか?」

「私は特にこれといったものはないが、揚げ物はおかわりし放題で絶品だぞ」

「うちは断然、粉ものか鉄板ものやな。さすがに関西のとはちゃうけど、それでも美味いで」

「なるほど・・・」

 

オグリ先輩はともかく、タマモ先輩は単に地元のソウルフードを勧めているだけでは?

まぁ、自分の好きなものを頼めばいいってことかな。

それじゃあ・・・

 

「なら、今日はいろいろなものを食べてみようかな。とりあえず、唐揚げとコロッケ、とんかつに、お好み焼きで」

「え?そんなに食うん?」

「? 食べますよ?むしろ、これくらい食べておかないと後になって動けなくなっちゃいません?」

「たしかに、それもそうだな」

「いや、明らかにオグリんとハヤテちゃんがおかしいからな?」

 

タマモ先輩の大阪仕込み(?)のツッコミが炸裂してるのを聞き流しながら、私は受付口で注文した。

途中、注文を聞いてた店員さんの口がわずかに引きつっていたのが見えた気がするけど、気のせいってことにした。

とりあえず、あらかじめ話し合って決めておいた席に座って2人を待つ。

少し経つと、オグリ先輩とタマモ先輩がトレイを持って私のところにやってきた。

というか・・・

 

「タマモ先輩、ちょっと少なくないですか?」

 

タマモ先輩が頼んだのは小さめのお好み焼き定食1人分だけだ。さすがに少なくないかな?

ただ、タマモ先輩的には反応するところが違ったらしい。

 

「いやいやいや、ちゃうやろ。ウチが小食なのは認めるけど、普通に考えてオグリんの方がおかしいやろ」

「? そうか?」

 

オグリ先輩はというと、山盛りの焼きそばを頼んでいた。いや、山というよりは塔に近いかもしれない。軽く腕1本くらいの高さだし。

でも、

 

「? 別におかしくないんじゃないですか?」

「いやどう考えてもおかしいやろ!うちらからすればいつものことやけど、初対面からしたら明らかに常軌を逸した量やんけ!」

「いや、私も食べようと思えばそれくらいはいけますよ?今日はトレーニングの予定がないので抑えめですけど」

「え?それで抑えめなん?」

「そうですよ?」

「・・・オグリんといいスペシャルウィークといい、地方出身のウマ娘は大食いってジンクスでもあるんか?」

 

タマモ先輩の言っていることはよくわからないけど、別に多く食べれるならそれに越したことはないんじゃないかな?健康な体を作るには健康な食事が一番だし。

揚げ物を大量に摂取するのが健康的なのかって言われると自分でも疑問だけど。

 

「ま、まぁ、ハヤテちゃんの食事感覚が普通とちょいとズレとるのは置いとくとして、今のところ見学してて何か聞いときたいこととかあるか?」

「そうですね・・・なんか、七不思議とか都市伝説的な話ってありますか?」

「なんや、そういうのに興味あるんか?」

「まぁ、なんとなく?」

 

どちらかといえば、他に聞きたいことが思い浮かばなかっただけなんだけどね。

 

「にしても、都市伝説なぁ・・・せやったら、昼飯食べた後にあそこに行こか」

「む、あそこだな?」

「せや」

「いや、私にはなんのことかさっぱりなんですけど」

 

これがツーとカーってやつですか。今日会ったばかりの私には到底分かりえない、かつてのライバル同士だからこそ通じ合う何かかな・・・?

そう考えると、萌えと燃えが同時に襲い掛かってきそうでなんかヤバくなってきた・・・!

 

「そういえば、ハヤテ。一つ聞いてもいいか?」

「ひゃい!?な、なんですかっ?」

「? どうかしたのか?」

「い、いえいえ、何でもないです、はい!」

 

あ、危ない危ない。本人たちを前に邪な考えを持ってしまうところだった・・・。

 

「それで、なんですか?」

「君は地方から移ってきたが、地元に友人やライバルはいるのか?」

「あ、あ~・・・」

 

なるほどなぁ。そういえば、オグリ先輩は私と違って、カサマツのレースで活躍してから中央に来たから、そういうライバル的な存在がいたのかな。

でもなぁ、友人とかライバルかぁ・・・。

 

「そうですねぇ・・・実は、友達と言える娘って2人くらいしかいなくて、他のクラスメイトとかからは避けられてたんですよねぇ」

「なんや、ハヤテちゃんが強いからって嫉妬してたんか?」

「いえ、逆ですよ、逆。そもそもトレーナーに声をかけられたのが、初めての試走でダントツ最下位だったときなんですよねぇ」

「そうやったん?あ~、でもハヤテちゃんって映像見た限りゴリゴリのステイヤーやから、むしろダートの短距離やとそうなってまうんか」

 

タマモ先輩の呑み込みがすごく早くて助かる。

 

「山で走ってた悪癖のせいでもありますけどね。そんな状況でスカウトされちゃったもんですから、最初はつい申し出を断っちゃったんですよ。他の生徒の前で。それで周りからヒソヒソされて・・・まぁ、その後の方がもっと問題だったんですけど」

「その後?」

「さっき言った2人の友達のうちの1人が地元で有望だったウマ娘だったんですけど、レースの道を蹴飛ばして私のアシスタントになるって言い出して、その話があっという間に広がって余計に・・・それで先生からも煙たがられちゃって・・・」

「あ~・・・なんちゅうか、いろいろあったんやなぁ」

 

しみじみと呟いたタマモ先輩に私も思わずうなずいた。いや、ホントだよ。

ついでに言えば、その友達がヤンデレのごとく重い女になっちゃったんだけど、そのことは言わないでおこう。

 

「そういうわけだったんで、学園側でやる予定だった送迎会も私の方から断って、見送りもその友達2人だけにしてもらって、ここにやってきたんですよ」

「なるほどなぁ・・・」

「そうだったのか・・・」

 

オグリ先輩は私の話を聞いて少し悲し気な表情になる。

この反応を見る限り、オグリ先輩は私よりは交友関係に恵まれてたのかな。

 

「まぁ、別に気にしないでください。ぶっちゃけ、地元に思い残したことなんて母親のことくらいですし、その母親も頑張れば走ってでも日帰りで帰れますしね」

「そうか」

「まぁ、ハヤテちゃんの交友関係にうちらがあーだこーだ口を出すこともあらへんか」

「それにですね、私のアシスタントになるって言った友達・・・白毛のウマ娘でイッカクって言うんですけど、スタッフ研修生として中央に行くんだってすごいやる気になってるので、もしかしたらこっちでも会えるかもしれないんですよね」

「そうなん?」

「えぇ。まぁ、0からのスタートなんで道のりは長そうですけどね」

「そうなのか。一緒になれるといいな」

 

まぁ、一周回って恐怖を覚えそうな気迫で臨んでいるんですけどね、初見さん。

そう考えると、地元に碌な思い出がねぇな、私。

 

「そういえば、オグリ先輩はどうなんですか?そういう地元の友達とかって」

「そうだな、私は・・・」

 

オグリ先輩に話を振ってからは、なごやかな空気でご飯を食べながら話をすることができた。

やっぱ、地方出身同士の地元トークって強ぇわ。

ちなみにこの後、デザートに山盛りパフェも食べた。

タマモ先輩から信じられないようなものを見るような目で見られたけど、オグリ先輩と分け合ったんだし普通では?




今年の皐月賞、まだ結果しか見てないですけど、なんかすごいもつれてますねぇ。
この感じだと、この後のダービーも菊花賞もまじで予想できなさそう。
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