ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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ここは乙女ゲーの中ですか?

食堂でタマモ先輩をドン引きさせてから、学園の案内を再開した。

いや~、それにしても中央の食堂は本当に何もかもがおいしいね。これだけでも中央に来た甲斐があったよ。

今向かってるのは例の都市伝説にまつわる場所で、その道中でもいろいろと案内させてもらっている。

あと、オグリ先輩って泳ぐの苦手だったんだね。

プールを案内してもらったときに明らかにテンションが下がってたからなんでだろうと思ったけど、タマモ先輩がこっそり教えてくれた。

そして、最後に案内されたのは中央広場だった。

なんでも2人が言うには、ここに例の都市伝説にまつわるものがあるらしい。

はてさて、何があるのやら。

 

「これや」

「これですか?」

 

タマモ先輩が指さすのは、3人のウマ娘が背中合わせになって水瓶を担いでいる像だった。いや、水瓶からは水が流れているから、どちらかと言えば噴水に近いのかな?

 

「これは・・・」

「三女神の像や。名前くらいは聞いたことがあるんとちゃう?」

「あ~、言われてみれば・・・」

 

三女神。

すべてのウマ娘を見守り、導くとされる三柱の女神で、すべてのウマ娘の始祖とも言われている。

実在するのかどうかさえ分からない伝説じみた存在だけど、中央にその像があるのは知らなかった。

 

「それで、その三女神の像が何か関係があるんですか?」

「私たちウマ娘は、誰かの想いを背負って走ると言われているんだ」

「それは観客とか他のウマ娘に限った話やなくて、顔も名前も知らない、住んでいる世界すら違う何か、なんて話もあるんや」

 

タマモ先輩の話を聞いて、私の心臓がドクンッと脈打った。

住んでいる世界すら違う。それはつまり、私の前世の記憶の世界・・・?

 

「そういうのをウマソウルなんて呼んどる奴もおって、中にはこの三女神像の前やレースの最中に誰かの声を聴いた、なんて話もあるんや」

 

「うちとオグリンはそういうのはなかったけどな」とタマモ先輩はそう茶化すけど、私はどうにも他人事に思えなかった。

それこそ私は、想いどころか記憶や人格すら引き継いでいる存在で、もっと言えば私の前世はウマではなくヒトだ。

 

「そして、ウマ娘はそんな背負った誰かの想いを力に変えて走る。そんな話もあるんや」

 

そんな私は、いったい誰の想いを背負っているんだろう?

 

「・・・なんか、よくわからない話ですね」

「まぁ、感覚って言うにも曖昧すぎるからなぁ。本当に都市伝説みたいなもんやし、そんな深く考えんくてもええって」

「そんなもんですか」

「そんなもんや」

 

タマモ先輩の言う通り、深く考えても仕方ない話なのかもしれない。

ただ、どうにもタマモ先輩の話が頭の中に引っかかる。

もしかしたら、私の中にある思い出せない前世の記憶と何か関係があるのかもしれない。

生まれ変わりの自覚はあるのに前世の記憶を思い出せないのは三女神の仕業かもしれないってのは、私の考えすぎかな?

もし本当に神様なんてものがいるのなら、教えてほしいものだ。

 

「ッ!?」

 

次の瞬間、頭に突き刺すような痛みが走った。

電流が流れるどころかナイフでも突き立てられたかのような激しい痛みに、一瞬バランスを崩して思わず地面に膝をついてしまう。

そんな私の様子を見てオグリ先輩とタマモ先輩が慌てて私に近寄ってきた。

 

「ハヤテっ、どうかしたのか?」

「ちょっと、頭痛がして・・・たぶん、大丈夫です・・・」

「ほんまか?保健室に行かんくてもええか?」

「はい。本当に大丈夫で・・・っとと」

 

痛みは治まったけど、衝撃が強すぎたせいで上手く立ち上がれない。

 

「いや、立ち上がれん時点でダメダメやん。やっぱ保健室に行こか」

「いえ、本当に頭痛は大丈夫なんで・・・一過性だったみたいで、今は痛くないですし」

「でもなぁ・・・」

「それだったら、寮に行けばいいのではないか?」

「それや!ナイス提案やオグリン!」

「それでは、私が運んでいこう」

「ちょっ・・・!」

 

私が何か言う前に、オグリ先輩は私を抱き上げた。

俗に言う、お姫様抱っこってやつで。

 

「ちょっ、オグリ先輩!離してください!恥ずかしいです!」

「だが、君を歩かせるわけにはいかないと思うが?」

「いやお願いなんで!せめておんぶにしてください!さすがにこれは恥ずかしいです!」

「こっちの方が負担が少ないと言うし、私はこのままでいいぞ?」

「私がダメなんですってば!!」

 

これだとオグリ先輩の顔が間近に見えてあばばばばばば・・・

 

「ちょっ、ハヤテちゃん!?大丈夫か!?」

「きゅぅ・・・」

 

結局、羞恥に耐えれなくなった私の頭はオーバーヒートして、そのまま意識は闇に落ちていった。

とりあえず、間近で見たオグリ先輩の顔は美人でイケメンだったとだけ言っておこう。

やっぱウマ娘は美女揃いだわ。

 

 

* * *

 

 

「ん、んぅ・・・?」

 

どれだけ気を失っていたのかはわからないけど、だんだんと意識が戻っていくのを感じる。

えっと、たしか・・・オグリ先輩にお姫様抱っこをしてもらって、それで羞恥心とかがMAXになって気を失っちゃったんだっけ・・・?

目を開けると、そこは知らない天井だった。

辺りを見渡すと、私の上には毛布が掛けられていて、ソファの上で横になっていた。

どうにか起き上がろうとするけど、上手く力が入らなくてソファに体を沈めることになった。

あと、なんかあちこちから視線を感じるような・・・。

 

「あっ、ハヤテちゃん!目覚めたん!?」

 

すると、少し離れたところからタマモ先輩が駆け寄ってきた。隣にはオグリ先輩もいる。

 

「タマモ先輩、オグリ先輩。えっと、ここは・・・」

「無理して起き上がらんくてもええからな。ここは栗東寮のロビーや。いきなり気ぃ失ったもうたから、ここのソファに横にさせてもろたんや」

 

なるほど、道理であちこちから視線を感じたわけか・・・。

そこまで考えが回って、私はバッ!と飛び起きた。

気が付けば、めちゃくちゃ好奇の視線に晒されている!

もしかして、私ってめちゃくちゃ目立ってた上に寝顔を晒してた!?

 

「ちょっ、そんな急に動いたらあかんて。ちゃんと横になっとかんと」

「いやあの、それより私の部屋に行った方がいいんじゃ・・・」

「それもそうなんやけどな、ロビーにハヤテちゃんの荷物を放置したまま運ぶわけにもいかんくて、荷物だけ先に部屋に運んどいたんや。それに、無理に上らずにロビーで寝かした方が、体の負担も少ないと思てな」

「身体の負担はともかく精神的な負担は無視ですかそうですか」

「ひとまず、これで頭を冷やしてくれ」

「あ、オグリ先輩ありがとうございます。でもお姫様抱っこの件は別ですからね」

 

オグリ先輩が用意してくれた氷嚢を頭の上に乗っけて再び横になる。

この2人、根が善人なのは間違いないんだけど、ちょっとフォローの仕方に難がある。

オグリ先輩は、とにかく天然だ。いいことをしているのは間違いないんだけど、結果的に助けられた側を堕としにかかってるあたり、誑しの才能でもあるのか。

タマモ先輩は、良くも悪くもお姉さんっぽいというか、とことん世話を焼いてくる。まるで子供を相手にしているような感覚で看病してくれるから、オグリ先輩とはまた違った距離の近さがある。

そんな2人に献身的に介護されてるもんだから、そりゃあ目立つに決まってる。それも編入生相手となるとなおさらだ。

とりあえず、今はさっさと自分の寮室で寝たいかな・・・。

 

「おや、ポニーちゃんがお目覚めかな」

 

そんなことを考えていると、また別の声が聞こえてきた。

思考を蕩かすような甘い声と共に現れたのは、黒髪をショートカットにしためちゃくそ美人のウマ娘だった。

あと胸がでけぇ。顔もスタイルも完璧とかマジか。っていうかポニーちゃんってもしかして私のこと?

なんだ、ただのイケメンか。

 

「初めまして。私は寮長のフジキセキだ。気分はどうかな?」

「おかげさまで、だいぶ良くなりました・・・いっそ夢を見てるような気分ですけど」

 

有名人2人とイケメンに囲まれてるとか、いつから私は乙女ゲームの主人公になったんだろう。

 

「あはは!面白い娘だね。オグリキャップとタマモクロスが慌てて「いきなり倒れた!」なんて言ってきたから何事かと思ったけど、その調子なら大丈夫そうだね。それで君は・・・」

「あっ、どうも、クラマハヤテです。今日からお世話になります」

「うん、君のことは会長から聞いているよ。気にかけてほしいとも頼まれた。ずいぶんと気に入られたみたいだね」

「あはは、おかげさまで・・・」

 

めっちゃ気を利かせてくれてるじゃん。いっそ会長が過保護に思えてきたよ。

 

「それで、どうする?君の部屋に案内した方がいいか、それとも寮の中を案内した方がいいか」

「そうですね・・・先に寮の中を案内してもらってもいいですか?」

 

ここで私の部屋に入ったら、泥のように眠りにつく自信がある。とりあえず、最低限済ませるべきことを済ませてから寝よう。あとお腹も減ってきたし、案内してもらいがてら寮の食堂で食べようかな。

 

「わかった。私は仕事があるから、案内は引き続き2人にお願いするね。それと、寮のルールは学生手帳にあるから、それを確認してもらって。わからないことがあれば、いつでも私に聞きに来るといいよ」

「もちろん、うちらに聞いてもええからな」

 

うわぁ、私ったらモテモテだなぁ。

大丈夫?明日になってとんでもない不幸が襲ってきたりしない?

いや、もしそうなってもオグリ先輩とタマモ先輩が助けてくれそうな気がする。

ここは夢の中ですか?

 

「そんで、今はもう大丈夫なん?」

「はい。もうなんともないです」

「そんじゃあ行こか」

 

この後は、特に変わったこともなく寮の中を案内してもらった。

強いて言うなら、尋常じゃないくらい目立ってたってことくらいかな。

編入生が“白い稲妻”と“芦毛の怪物”に挟まれてるんだから、そりゃあ目立って当然かもしれないけど。

あと、お腹が空いてたから夕飯時なのかと思ってたけど、まだあれから2時間くらいしか経ってなかったらしい。

いや、2時間気を失ってたって考えれば長い方だけど。

一通り寮の中を案内してもらった後は、寮の部屋に案内してもらった。

 

「ここがハヤテちゃんの部屋やな」

「ここですか」

 

部屋の場所は5階の端寄りだった。

まぁ、ちょっと階段上るのが面倒なこと以外は気にならないかな。その階段だって、いつも山を走ってた私からすれば大した問題でもないし。

中の方は、2人部屋ってのを差し引いてもかなり広く、中には2つのベッドとタンス、オグリ先輩とタマモ先輩が運んでくれた私の荷物があった。

 

「普通は2人部屋なんやけど、今はハヤテちゃんしかおらんのやろ?」

「みたいですね。もしかしたら、途中で編入生が入ってくる可能性もありますけど」

「中は部屋の形を変えない限りは好きにしていいんだ。中には、自分でソファを買って置く娘もいる」

「へぇ・・・ん?部屋の形を変えるって、前例があるんですか?」

「あ~、過去に壁に穴をあけようとした奴がおってな」

「え?」

 

なんだその破天荒極まるウマ娘は。ていうか穴開けてどうするつもりだったんだか。

 

「・・・まぁ、そいつのことを話し始めたらキリないし、気にせんでええよ」

「そう言われると余計気になるんですけど・・・」

 

壁に穴ぶち開ける以外の武勇伝があるのか・・・。

まぁ、それだけ派手なウマ娘なら、いつかは話を耳にするかもしれない。今は寮の部屋のことだ。

 

「とりあえず、この後に予定がないなら、このまま荷物を片付けちゃってもいいですかね?」

「せやな。会長からも案内が終わった後のことは特に聞いてへんし、たぶん大丈夫やろ」

「良ければ、私たちも手伝おうか?」

「そうですね・・・せっかくなんで、お言葉に甘えさせてもらいます」

 

ちょっと申し訳ないけど、私1人より3人でやった方が早く済むだろうし、早めに終わらせて損はない。

この後は、オグリ先輩とタマモ先輩に手伝ってもらいながら片づけを進めた。

片付けが終わったら、須川さんに電話しておこう。私が倒れたって聞いて心配してたらしいし。




今さらになって初めて公式の用語集に目を通しました。
いや、まじで情報量がえぐいな。
なので、今まで執筆した内容に齟齬があれば修正していく予定です。

三女神像に関してはゲームの方に寄せました。
べつにアニメみたく普通の銅像でもよかったんですけど、なんとなくこっちの方がいいような気がしたので。
せっかく水瓶を持ってるんですから、水くらい流しておかないと(?)。

ちなみに、オグリんの作画は個人的にシングレの方が好みです。
ゲームやアニメの方も悪いわけじゃないんですけど、シングレの表情がはっきりしてる感じが好き。
あとシングレタマモもかっこよくて最高。
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