今回、原作に出ていないウマをウマ娘化して、自分なりにキャラを作って出しています。
それが嫌だ、許せないという方は、そのままブラウザバックしても構いません。
また、今回はあくまで試験的なものも兼ねており、詳しいことは後書きに書いてあるので、そちらを参考にしてください。
沖野さんからセクハラ未遂を受けてから、半月が経った。
いや~、時間が過ぎるのは本当に早いね。あっという間だったよ。
でも、その間はなかなか濃密な時間を過ごしたと思う。
クラスにも馴染めてきて、お昼ご飯を一緒に食べることも多くなった。その代わり、オグリ先輩やタマモ先輩とご飯を食べる機会は減っちゃったけど、2人とも私が中央で上手くやれているのを見て安心してくれた。
午前中の授業も、最初はついていくのに苦労したけど、今ではなんとかついていけてる。
たぶん、午後の例の映画鑑賞トレーニングの影響なんだろうね。なんだか、頭の回転が前よりも早くなってる気がする。
その映画鑑賞トレーニングも、最近は過去のレース映像を交えてやるようになったし、実際にレースを観に行ったりした。おかげで、須川さんから「最低限身についてきたな」と言われた。
2週間やって最低限なのは早いのか遅いのか微妙なところだけど、遅くはないと思いたい。
そして、季節はそろそろ夏。
ウマ娘にとって、やることが多い季節だ。これからさらに忙しくなってくる。
そんな中、
「う˝ぁー・・・」
私は暑さで死にかけています。
え?まだ初夏だよね?なんでこんなに暑いの・・・?
「大丈夫かー?」
「あまり・・・」
「ここまで暑さに弱いのも珍しいなぁ」
元々、ウマ娘は暑さに対してそんなに強くない。平熱がヒトよりも高いからだ。
だから、夏のトレーニングは熱中症対策を徹底的にするんだけど、私の場合、そもそもトレーニングができるかも怪しい・・・いや、今はまだ映画鑑賞トレーニングが続いてるから、そこまで大きな問題はないけど。
でも、そうか、これが都会のコンクリートジャングルというやつか・・・トレセン学園の周囲にはあまりビルの類はないけど、それでも暑くない・・・?
「地元が涼しかったのかなぁ・・・」
「そうなん?」
「避暑地ってほどじゃないですけど、建物もアスファルトも排気ガスも少ないんで、日陰に入ったり風が吹けば快適だったんですよねぇ」
たしかに娯楽は乏しいかもしれないけど、私からすれば走ってるだけでも楽しかったから、特に不自由とか退屈は感じなかった。
「まさか、こんなにも早く地元に帰りたいと思うことになるとは・・・」
「いや早すぎやろ。もうちょっとがんばれや」
「さすがに冗談ですよ」
半分くらい。
「てか、教室は冷房効いとるやろ」
「それはそうなんですけど、冷房の涼しさだとそれはそれで体調崩しそうなんですよねぇ」
「あ~、たまにおるなぁ、そういうの」
「あと、外に出たくなくなっちゃいますよねぇ」
「それもわかるなぁ」
「ちなみに、オグリ先輩は・・・聞くまでもないですかね」
「?」
そんな朝っぱらからアイスなんてほおばってたら、暑さなんて気にならないだろうね。
私もアイス買い溜めしようかなぁ・・・でも、毎日は出費がかさむから、棒ジュースを凍らしておこうかなぁ。でも、冷蔵庫なんてでかいもの寮部屋に入れるのも現実的じゃないし、まずは小型の冷凍庫でも探そうかなぁ。
そんなことを話しながら校舎に着いてからは2人と別れて、私は自分の教室に向かった。
教室に入ると、中はガンガンに冷房が効いていて、いっそ涼しいを通り越して肌寒いくらいだった。
「あ˝~、生き返るぅ~」
自分の席に着いた私は、そのまま机の上に突っ伏した。
う~、どうせウマ娘に転生するなら、もうちょい頑丈な体にしてほしかったかなー神様ー。スタミナはあるのに脆いとか、短命待ったなしじゃん。
須川さんに相談して、本格的に体づくりを始めてもらおう。じゃないと、この夏を切り抜けられる気がしない。幸い、まだ机上とはいえレース勘は身について来たから、須川さんも一考くらいしてくれるはず。
「ハヤテちゃん、大丈夫?」
さながら生ける屍のような状態になっていると、隣から声をかけられて。
「あぁ、グラン。おはよう」
「おはよう、ハヤテちゃん」
話しかけてきたのはグランアレグリアだった。私の隣の席で、初日に囲まれていたところを脱出するきっかけを作ってくれたあの救世主の娘だ。
「それで、どうしたの?先ほどからゾンビみたいになってるけど」
「夏バテ・・・の一歩手前、って感じかなぁ」
「えっ、まだ5月だよ・・・?」
「もうすぐ6月だけどね。でも、都会の暑さを舐めてたのは否めないかなぁ。地元の方が数段涼しい」
「山の中で過ごしていたんだよね?」
「うん。避暑地ほどじゃないけど、けっこう快適」
中央に来てからは、一番仲良くなったウマ娘かな。他のクラスメイトと比べても話してる時間はかなり長い。
けっこうフランクな感じで接してきてくれるし、なによりめちゃくちゃ美人。ものすごいキラキラしてる。
私の周りには美人が多いけど、グランみたいなタイプは他にいないかな。
「正直、夏は地元に戻ろうかなって」
「だけど、少しはこっちの暑さに慣れた方がいいんじゃない?」
まぁ、それはそうかもしれない。
須川さんの話だと本格化はまだ先だけど、やっぱり体づくりは早いうちに最低限やった方がいいかもしれない。それが難しいなら、夏休みは地元に戻ってゆっくり過ごしてみるのも一つの手だ。
その辺りの加減は、全部須川さんに任せよう。
「そういえば、グランは今週だっけ、デビュー戦」
「うん。府中の1600m」
グランはティアラからのマイル路線だから、私と当たることはまずない。
今の段階だと、私が走れる一番短い距離は2000mで、グランが一番得意な距離が1600mだから、どうあがいても無理だね。グランが2000m走れたら話は別かもしれないけど。
でも、こうしてよく話しかけてくれるのに一緒に走れないってのは、少し寂しい気がするな・・・。
よしっ!
「グラン!」
「うん」
「併走やろう!」
「・・・うん?」
* * *
「ってことでいいよね、須川さん?」
「どういうことかは知らんが、本当に大丈夫なのか?」
「レースで走ることがないなら、併走してもらっても大丈夫でしょ?」
「そういうことじゃなくてだな。グランアレグリアのトレーナーの許可は大丈夫なのか?」
「グランの距離なら大丈夫だって」
レース前は故障を避けるためにハードなトレーニングは控えさせるのが普通だけど、向こうも私のことが気になっていたのか、グランの距離である1600mを条件に了承してもらった。
「だが、お前1600mは並以下だろ?それに対して、グランアレグリアはスプリンター寄りのマイラーだ。まともな勝負にもならんと思うが」
「だからこそ、だよ。せっかくだから、マイラーのスピードってのを体感したいんだよね」
私の課題はスピードだ。なら、スピードが重要なマイラーの走り方を見れば何か掴めるかもしれない。
トレーニング場で準備運動をしながら待っていると、グランがスーツの女性を連れてやってきた。あの人がグランのトレーナーかな?
「・・・なんだ、おハナか」
「なんだ、とはなんだ。そんなに意外か?」
「お前さんが併走を了承した、って意味ならそうだな」
「あれ?知り合い?」
沖野さんのときもそうだったけど、思ったより須川さんって顔が広い?
それとも、
「知り合いだが」
「そうじゃなくても有名ってパターン?」
「・・・そうだ」
やっぱり。須川さんってそういうところあるもん。
「東条ハナ。トレセン学園最大にして最強のチーム“リギル”のトレーナーだ。シンボリルドルフを中心として、三冠ウマ娘やその他強豪が所属している、と言えば伝わるか?」
「え、やばいじゃん」
あの会長が所属してるチームのトレーナー?そんなのやばいに決まってるじゃん。
ていうか、
「もしかして、そんなチームに所属してるグランもやばい?」
「マイルであれば、おそらく同世代最強格だ」
同世代最強のマイラー、か。なるほど。
これは俄然、興味が出てきた。
「・・・楽しそうだな」
「そう?だって、マイラー最強格とステイヤー最強格の併走って考えたら、熱くならない?」
「自分で最強とか言うのか」
「違うの?」
「・・・」
目を逸らしちゃった。かわい・・・くはないけど、照れちゃって~。
まぁ、自分で言うのもなんだけど、私だって同世代なら3000m級のレースなら一番強いだろうって自覚はある。当然、その事実に胡坐をかくつもりはないけど。
それに、最強格のマイラー相手にマイルで挑むんだから、勝てるとは思ってない。というか、勝負になるとすら思ってない。
でも、だからこそ、そんな敗北を経験するのも悪くないかもしれない。
圧倒的な力の差。そんなものを一度は感じてみたいかなって。
「・・・お前も酔狂な奴だよな」
「そうかな?」
「併走とはいえ、仮にも『負けてみたい』なんて思うウマ娘、俺は見たことも聞いたこともない」
「あはは。まぁ、中長距離だったら負けたくないけど、不得意なマイルで最強のマイラーに挑むんだから、いっそ開き直ってもいいんじゃない?長距離になったら結果は逆になるだろうし」
「・・・まぁ、お前の頭が大概おかしいってのはわかった」
須川さんも大概失礼じゃない?面と向かって頭おかしいって普通言う?
「そこ、なにコントをしている」
「コントじゃない」「コントじゃないですよ?」
「息ぴったりじゃないか」
「偶然だ」
「私の方で合わせてみました」
「おい」
自分のトレーナーをからかってみようっていうちょっとしたお茶目だよ?
「・・・ハヤテちゃんは、トレーナーさんと仲がいいんだね?」
「そりゃあ、わざわざ地方に来てまで面倒をみてくれたからね~。もう私にぞっこんなんだよ」
「誤解を招くような言い方はやめろ」
「違うの?」
「あくまで選手として、ウマ娘としてだ」
「やっぱり。そう思ってるんだ~」
「こっ、こいつ・・・!」
なんだろう、今日の須川さんはいつもよりもからかい甲斐があるぞ。
もしかして、東条さんがいるからかな?
なら、グランと併走するときは須川さんからかい放題?
「グラン、これからもよろしくね」
「え、えぇと、こちらこそ・・・?」
「じゃあ、親愛の印に・・・」
「バカ話はそこまでだ」
グランにじゃれようと思ったら、東条さんが話を切り上げた。
ちょっと不完全燃焼だけど、今回は私が頼んだ側だから、これ以上迷惑はかけられないか。
「それで、今回の併走はグランアレグリアのデビュー戦に合わせて1600mでいいな?」
「はい。そういえば、グランの脚質ってなに?」
「私は追い込みだね」
「私はやるとしたら大逃げだけど、それで終わらせるのももったいないなぁ・・・じゃあ、800mまではグランのすぐ前を走るようにするよ」
「いいの?」
「うん、いいよ。今回は私がグランの走りを体感したいから」
「そういうことなら、わかった」
今回の併走は私の要望だけど、グランに気を遣って、ていうのもあるから、できるだけグランに有利な条件を整える。
・・・でも、ぶっちゃけマイルは専門外だし、ちゃんとグランのトレーニングになるかな。そこだけがちょっと不安だ。
「合図は私が出す。2人とも、準備はいいな?」
「はい」
「大丈夫です」
「では・・・スタート!」
東条さんの合図と共に、私とグランは同時に駆けだした。
宣言通り、最初はグランのすぐ前辺りをキープする。
とはいえ、ただ前を走るだけなのもつまらないだろうから、位置取りで揺さぶりをかけてみる。2人しかいないとはいえ、走行ラインを制限すれば走りにくくなるのは間違いない。
・・・はずなんだけど、グランが動揺している気配を感じないし、走り方がぶれる気配もない。どうにも抑え込めてる感じがしない。
やっぱり、この手の技術はまだまだって感じかな。
なら、地力で勝負するしかない。
元々、私のスタイルは大逃げ。むしろ地力勝負が私の土俵だ。
(こっからが、勝負!)
4本目のハロン棒を過ぎたタイミングで、私はスパートをかけた。
グランの足音が遠ざかっていくのを感じながら、じわじわと加速を続けていく。
さすがにコーナーでの加速は難しいけど、その分ロスを抑えてできるだけ減速しないように駆け抜けていく。
最終コーナーを抜けた時点で、私とグランの差はだいたい7バ身。
これなら、この差を保ったままゴールに・・・
「ッ!!」
たぶん、グランも最終コーナーを抜けた。その辺りで、言いようのない感覚が背筋を走った。
言ってしまえば、悪寒、みたいなもの。
これ、厳密には違うけど、いつも地元で感じてた直感と同じ・・・?
「あ!?」
そう思ってたら、いつの間にかグランに抜かされていた。
ていうか、グランが最終コーナーを抜けてから10秒も経ってないはずなのに、まるで当然のようにあっさり抜かされた。
ていうか、なにあの尋常じゃない末脚!?7バ身の差をあっさり詰めるどころか、むしろこっちが7バ身突き放されそうなんですけど!?
どうにか着差は5バ身に抑えたけど、慣れない走りをしたせいで嫌に疲れた。
ゴールした後、私は動揺と興奮を抑えきれないままグランに詰め寄った。
「ちょっ、グランっ。な、なんなの、あの末脚!7バ身くらい差があったはずだよね!?」
「ハヤテちゃんの加速時間が不十分だったから。もし最初から大逃げされていたら、ここまで差はつかなかったと思うよ?」
「いや、それでも勝てる気まったくしないから。20バ身くらい差をつけてないと勝てそうにないから」
まぁ、そんなペースで走ったら終盤でスパートかけれずにズルズル下がって、結局負けるだろうけど。
にしても、勝てるとは思ってなかったけど、グランってこんなに強かったんだ・・・。
これ、マイルなら敵なしじゃない?
「2人とも、お疲れさん」
そこに、須川さんがスポーツドリンクを持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
「ありがとう、須川さん」
「これくらいいいさ。それで、どうだった、ハヤテ?」
「よほどじゃない限り、デビュー戦勝つよ、これ。須川さんも見たよね?ていうか、私より見えてたよね?」
「あぁ。さすがに俺も驚いたが・・・」
クラスでは「元気な娘だなー」って思ってたけど、たぶん普段は闘志が表に出ないタイプだ。
なんか、こんなやべーのと競わなくてよくてホッとしてるの半分、競い合えないのが残念なのが半分って感じ。
「どうだ?中距離以上はまだ難しいが、マイルなら比類ない強さを発揮するぞ」
「いや、本当ですよ東条さん。いい経験をさせてもらいました」
「それで、どうする?もう1度か2度走るか?」
「そうですね。少し休憩したら、お願いします」
「いや、グランアレグリアはともかく、ハヤテは必要か?」
「須川。さすがにその言い方は感心しないぞ」
「そーですよ、私だって慣れない走りをしたんだから、ちょっとくらい疲れて・・・」
・・・ん~?なんか、頭がクラクラしてきたような・・・
「おっ、おい!ハヤテ!?」
「ハヤテちゃん!大丈夫!?」
「医務室に運ぶぞ!グランも手伝ってくれ!」
3人が慌ただしく話してるけど、なんか意識が遠のいていって、何を話してるのかはわかんないや・・・
前書きにも少し書きましたが、ちょっと方針転換を考えてます。
今までは2019年のウマの名前をベースにオリジナルの名前を出す、シングレに近い方針をとる予定でしたが、いっそこのまま現実通りの名前で出そうかなと考えています。
理由は、2019世代ではなく2020世代で、あの某無敗三冠馬を出したくなってきたからですね。というより、それだけに限った話ではないんですが、時代を作ったウマもいるのに全部名前をいじるって行為に、なぜか今になって拒絶反応が起きてしまいまして。
ただ、原作の方で出てないウマ、それもゴリゴリ最近のウマを勝手にキャラ化すると、それはそれでいろいろと問題が出かねないので、おいそれと実名のまま出すのもちょっと怖いんですよね。よっぽど問題ないとは思いたいですけど、それでも怖いものは怖いので。突然の予定変更というのも考えたらなおさら。
なので、念のためアンケートを取っておこうかなと。
特に期限は考えていませんが、今話に対する反応も見ながら決めていこうと思います。
実名路線に関するアンケートは、ハーメルンとTwitter両方でやります。Twitterのアカウント名はあらすじにあるので、そちらを参照してください。
とはいえ、アンケート云々は自分がヘタレてるだけなので、よほど反対意見が出ない限りは路線変更していくつもりではありますが、できるだけ読者や競馬ファンの方々に不快な表現は避けていくように心がけます。
今回試験的に出してみたグランアレグリア。ネタバレ防止のためにも詳しいことは伏せますが、2019世代の中では牡馬・牝馬ひっくるめても明らかにずば抜けてやべー奴。グランなら、本物でも条件同じなら似たような結果になりそうな気がしなくもない。