ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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奴が来た。ついでに修羅場も来た。

ようやく、ようやくここまで来れた。

私が目指していた場所。

少し時間が掛かっちゃったけど、これで約束を守れる。

今すぐ行くから。

だから、待っててね、ハヤテちゃん。

 

 

* * *

 

 

夏休みも終わって、二学期に突入した。

まだまだ夏の暑さは残っているけど、たぶんこれからどんどん涼しくなっていくだろうから、夏バテ気味だった私としてはそれまでの辛抱だ。

ちなみに、夏休みの間は来たる本格化に備えてトレーニングの内容も他のウマ娘と同じくらいまでレベルを引き上げた。というか、今まで私の体調を考慮して低くしてたのを元に戻した、ってのが正しいかもしれない。

主にやったのは、スピードトレーニングとパワートレーニング。まぁ、前々から言ってた課題に取り組み始めた、って感じ。

まだ始めて1ヵ月も経ってないけど、ようやく前に進み始めた感じがして、早く走りたくて体がうずいてくる。とはいえ、やっぱり他の仕上がりが早いウマ娘と比べると私はまだ仕上がっているとは言い難いから、ホープフルステークスに出れないのはもちろんだけど、場合によっては皐月賞もギリギリになるかもしれないって言われた。

ホント、なんでそんな状態でデビュー戦走らせたんだろうね?んで、なんで勝てたんだろうね?

なんかもう気になっちゃって須川さんに聞いたら、

 

「ゲームのステータス的に言うなら、ハヤテは“初期ステータスは他よりも高いけど成長速度は遅い”って感じだな。デビュー戦の水準で言えば大差勝ちできるポテンシャルを持っていたが、今は成長速度の差でどんどん追いつかれる、あるいは追い抜かされるって感じだ。どちらかと言えば晩成型に近い。だからこそ、クラシックの前半は苦労するだろうが、本当の勝負は菊花賞になると思っておけ」

 

って言われた。

なるほど、そう言われると分かりやすい。

須川さんが言ったのも、周りに追い抜かされても慌てなくていいってことだろうし、私は私のペースで頑張っていこう。

 

「おはよー」

 

こっちに来てから初めての新学期初日の教室に入ると、なんだかざわざわと騒がしかった。

なんか既視感があるなぁ、この感じ。

とりあえず、近くにいたクラスメイトに話しかけてみる。

 

「ねぇ、なんかあったの?」

「あっ、ハヤテさん。実はですね、地方からまた編入生が来たらしいんです」

 

へぇ~、夏休み明けなのはともかく、私に続いてまた地方からやってくるなんて珍しい。

 

「ただ、スタッフ研修生としてなので、レースで走ることはないみたいです」

「・・・ふむ?」

 

・・・なんだろう。地方から来たスタッフ研修生って、ものすんごい覚えがあるんだけど。

私の直感が正しければ、たぶん一発でわかる。

 

「どんな娘だって?」

「綺麗な白毛の方らしいです」

 

はい確定。身に覚えしかない。

クラスメイトにお礼を言って、荷物を自分の席に置いたらちょっと教室の隅に移動して須川さんに電話した。

 

「もしもし?」

『おう、どうした。珍しいな、そっちから電話なんて。何かあったか?』

「ねぇ。イッカクがスタッフ研修生として編入してきたっぽいんだけど、なんか聞いてない?」

『・・・あ?まだあれから半年も経ってねぇぞ?なんかの間違いじゃないのか?』

「クラスが地方の白毛のウマ娘がスタッフ研修生として編入してきたって話題で持ち切りになってんだけど」

『・・・マジ?』

「マジっぽい」

 

スタッフ研修生とはいえ、中央って3,4か月勉強して入れるようなところだけ?

 

「それで、なんか聞いてる?」

『・・・いや、俺は聞いてない。もしかしたら、他のトレーナーの間だとそういう話が広まってた可能性もあるが、珍しい白毛とはいえ、レースに出ないスタッフ研修生となると優先順位は低くなる。俺のところに届く前に自然消滅した可能性もなくはない。そういうハヤテこそ、連絡をもらったりしてないのか?』

「ない、はず。少なくとも電話はもらってないし、メールとかも来てない。もしかしたら、サプライズ的なノリにしたかったとか?」

『あり得なくはないな・・・』

 

なんか緊急事態を前にしたような会話だけど、私たちからすれば実際緊急事態だ。

なにせ、あの愛が重いことで定評があるイッカクが来たのだ。

今の私の状況(様々な先輩に構ってもらったり、グランに世話を焼いてもらったり)を見てどんな反応をするか、まったく予想できない。

 

『おそらく、早ければ今日中にでも俺のところに来るはずだ。話はそれからだな』

「わかった」

 

そう言って、私は電話を切った。

 

「ふぅ・・・」

「どうかしたの?」

「わっ!」

 

思わず息を吐くと、いきなり後ろから話しかけられた。

後ろに立っていたのはグランだ。

 

「は、ハヤテちゃん・・・?」

「あ、あはは。ごめん、ちょっと考え事してて」

「そっか・・・それで、何があったの?」

「う~ん・・・」

 

果たして、情報が事実かどうか確認してないのに言っていいものか。

まぁ、どうせいつか話さないといけなくなるかもしれないし、とりあえず言っておこう。

 

「えっとさ、なんか地方から白毛のウマ娘がスタッフ研修生として編入してきたって話が広まってるでしょ?」

「そうだね。実際に見たって人もいるらしいし」

「それ、もしかしたら私の知り合いかもしれなくてさ」

「そうなの?」

「あくまで多分ね。向こうでそういう話をしたから、もしかしたらって思って。でも、連絡とかもらってないから、さっき念のためトレーナーに確認したんだよね」

「それで、なんて言ってたの?」

「聞いてないって。だから、いまいち自信が持てないんだけど・・・」

 

そんなことを話していると、先生がガラガラとドアを開けて教室に入ってきたから、私たちも急いで自分の席に座る。

そのまま朝礼に入って連絡事項を話すと、最後に私を名指しで呼んできた。

 

「最後に、クラマハヤテさん。話があるので、昼休みに職員室に来てください」

「・・・授業が終わったらすぐですか?」

「はい。昼食を食べる前に来てください」

 

あぁ・・・これは確定したわ。十中八九イッカクだわ。

さて・・・昼休みに職員室、ね。

それまでに、覚悟を決めておこうか。

 

 

* * *

 

 

「来ちゃったなぁ・・・」

 

授業が終わって、朝に先生に言われた通りに職員室にやってきたわけだけど・・・気が重いというか、どんな顔をすればわからないというか・・・。

でも、本当にイッカクが来たんなら、嫌な顔をするわけにもいかない。

 

「よしっ!」

 

両頬を叩いて気合を入れなおして、私はドアを開けた。

 

「失礼します。クラマハヤテです」

「こっちです。来てください」

 

声がした方向を見ると、担任の前には教室での噂通り、そして見覚えのある白毛のウマ娘が立っていた。

そして、私が入ってくるなり、そのウマ娘、イッカクが私の方に走り寄って来た。

 

「ハヤテちゃん!」

「わわっ、と。久しぶり、イッカク」

 

イッカクが思い切り抱きついてくるのを、私は全身で回転しながら受け止めて、そのまま抱え上げて担任のところに持っていった。

 

「・・・あまり驚いていないようですね?」

「まぁ、教室が地方から白毛のウマ娘が編入してきたって話で持ち切りだったので、なんとなく予想してました。白毛も珍しいですし」

「そうですか。なら話はわかりますね?」

「はい。私がイッカクの案内役をするってことですよね?」

「その通りです。頼めますか?」

「いいですよ」

 

私と違ってスタッフ研修生となると、他の誰かに頼むのも難しいだろうからね。ここは私が適任だ。

 

「それで、どこに行けばいいかは私が好きにしていいんですか?」

「はい。できれば全体を周ってほしいですが、順番は問いません」

「わかりました。それじゃあ、失礼します」

 

そう言って、私はイッカクを連れて職員室を後にした。

 

「よし、先に食堂に行こう。お腹空いた」

「もう、ハヤテちゃんったら」

 

腹が減ったものはしょうがない。というか、そもそも昼時だから腹が減って当たり前だ。あ〇りまえ体操でもそう言ってた気がする。

ちょっと急ぎ目に食堂に移動するけど、やっぱりというか出遅れていて、空いてる席を探すのにも一苦労しそうな感じだった。

 

「とりあえず、先に注文しよっか。おすすめはいろいろあるけど、日替わりランチならハズレはないかも」

「わかった。ハヤテちゃんは?」

「んー・・・回鍋肉にしよ。すみませーん、回鍋肉定食爆盛で」

「爆・・・?」

 

私の場合、山盛りだと足りないから、さらに上の爆盛にしてもらってる。

なんか、私がオグリ先輩と同じくらい食べる生徒だってことが厨房のスタッフに知られたところ、厨房が阿鼻叫喚の地獄絵図みたいな状態になったらしい。

別に1人増えただけなら、大丈夫な気はするけどねぇ。

 

「よいしょ、っと。どこに座ろ・・・」

 

見渡す限り、席はほとんど埋まってる。

どこかが空くのを待つしかないだろうけど、はやくイッカクを案内したいし、須川さんのところにも連れていっておきたいから、できればさっさと座りたいところ。

 

「ハヤテちゃーん!こっちこっち!」

 

迷っていると、奥の方から私の名前を呼ばれた。

声のした方を見ると、グランが手を振って呼んでいた。しかも、席も2つ確保してくれている。

 

「あっち行こっか」

「えっと、あの人は?」

「グランアレグリア。仲のいいクラスメイト。私はグランって呼んでる」

 

回鍋肉を崩さないように人ごみの間をすり抜けつつ、グランのところにたどり着いて腰を下ろした。

 

「ありがとー、グラン。助かった」

「大丈夫だよ~。それで、そっちの娘が・・・」

「はじめまして、イッカクです。ハヤテちゃんとは浦和で知り合ったクラスメイトです。今日からスタッフ研修生として編入することになりました」

 

おぉっとぉ?イッカク?なんか喧嘩腰になってない?

 

「丁寧にありがとうね。私はグランアレグリア。中央でハヤテちゃんと仲良くしてもらってるよ」

 

ちょっとぉ?グラン?そんなキャラだったっけ?

なんか2人とも、変な対抗意識芽生えてない?

とりあえずツッコミたいけど、変な空気になるのも嫌だから食べて誤魔化そう。

あっ、でも気になることがでてきた。

 

「そう言えば、イッカクって寮はどっちなの?栗東?美浦?」

「実はね、ハヤテちゃんと同室になったんだ」

 

えっ、マジ?競争ウマ娘とスタッフ研修生は別じゃないんだ?

あっ、でもウマ娘なのには変わりないし、ちょうど私が1人部屋状態だったから都合がよかったのかな?

 

「へぇ、そうなんだ・・・」

 

びっくりしてると、グランも相槌を打った。

ちょっとヒリヒリしてるけど、割と余裕を保っている。

 

「・・・ところで、2人はこれからどうするのかな?」

「ん-っとね、ご飯食べたら学園を案内することになってる。でも、先に須川さんのところに行っておこうかな。そっちの方が話早そうだし」

 

とりあえず、ざっくりとした予定を伝えると、グランは「そうですか・・・」と呟いて、すでに少なくなっていたご飯の残りを食べて席を立ちあがった。

 

「それじゃあ、私はチームの方に行ってくるから、これで。じゃあね、ハヤテちゃん」

「うん。じゃあねー」

 

思ったよりあっさり引き下がったグランは、そのまま食堂から出て行った。

これで一件落着、って思ったんだけど、なんかイッカクが明らかに掛かっている様子だった。

 

「・・・えっと、イッカク?」

「・・・なんでもないから、ハヤテちゃん」

 

いや絶対何かあるでしょ。余裕の態度を見せられて焦ってんの?

・・・とりあえず、さっさと昼ご飯食べて須川さんのところに行こう。私1人じゃ手に余る。




夏をちょいとすっ飛ばしました。
まぁ、ジュニアの夏なんてあんまり書くことはないですし、こんなもんでしょう。

イッカクとグランアレグリアの喋り方がちょい被って分かりづらい。
未だに口調の差別化が難しいと感じる今日この頃。
というかソシャゲとか、声優の力もあるとはいえ、あんなにキャラクターいるのによく差別化できるなぁと、つくづく感心します。

そんなことより、今日のぱかライブですよ。
水着ゴルシが一瞬「誰?」ってなった人は多いはず。でも、どっちも解釈一致な水着姿で昇天しそうになりました。
新シナリオは、なんかコメ欄でアイマスアイマス言われてて芝生えました。さすがにクライマックスシナリオよりも強いのが育成できるとは考えづらい、というか考えたくないので、個人的に因子育成特化だとありがたい。
そして、そして、そして!!デアリングタクトですよデアリングタクト!いやもうマジで発狂しました。マジで来ちゃいましたよ。
さすがにコントレイルは来なかったですけど、まぁでも十分すぎるくらいですね。もういっそ失礼にならない程度に存分に本作で絡ませちゃいましょう(盛大なネタバレ)。
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