「あ、大食い大会の運営からメール来た」
「そうか」
聖蹄祭も近くなってきた頃、聖蹄祭の準備とトレーニングで忙しい日々を送っていたら、大食い大会を開催している運営、というかスタッフかな?からメールがやってきた。
ちなみに、グランのサウジアラビアRCは普通にグランが3バ身半離して快勝した。ちょっと掛かり気味だったのか、少し出遅れ気味のスタートから前めでレースを進めていたけど、それでも勝ったのはさすがだね。
それと、この間も私の着せ替え人形化は止まらなかった挙句、当日に着る衣装は本番まで秘密とか言われた。それ着る側からすれば一番怖いパターンなんだけど、大丈夫?はっちゃけた衣装とか持ってこないよね?
そんな一抹の不安を抱えながらもトレーニングとクラスの準備は怠らなかったけど、ついに大食い大会の方からも詳細が送られてきた。
「えっと、場所は学内の模擬ステージで、対戦者は・・・オグリ先輩と、スペシャルウィーク先輩?」
そういえば、スペシャルウィーク先輩って今まで話したことがなかったな。でも、オグリ先輩ほどじゃないにしても大食いだって聞いてるから、油断はできない。
「それで、勝負内容は・・・次郎系ラーメンの特別盛だって。そういえば、食べたことないなぁ、次郎系ラーメン」
画像で見たことはあるけど、実際にお店に行って食べたことはないね。
なんか、敷居が高そうというか、胃もたれしそうで気が向かなかったというか。
「提供は、ラーメン三ハロンだって。知ってる?」
「あぁ、ウマ娘向けのメニューもやってるところだな。たしか、オグリキャップとスペシャルウィークも通っていたはずだ」
「マジかぁ・・・」
そうなると、経験値の差は歴然かなぁ。
一応、私も知識として食べ方は知ってるけど、情報として知っているだけなのと実際に経験があるのとでは、天と地ほど差があるからなぁ。
よし!そうとくれば!
「須川さん!」
「ダメだ」
「え~、なんでぇ~?」
「聖蹄祭は来週だろうが。この短いスパンでカロリーの塊のようなやつを喰わせられるか。お前はただでさえ食うんだから、こっちも体重管理大変なんだぞ」
基本的に、私はというか、ウマ娘はあまり太らない。もちろん許容量はあるけど、その許容量を超えない限りは体重に大きな変化は表れない。
逆に言えば、調子に乗って食いまくると割とすぐに太る。ウマ娘は甘いものを好むからなおさら。
次郎系ラーメンも、言ってしまえば炭水化物の塊。そうやすやすと食べさせてもらえない、か。
でも、何も対策しないでオグリ先輩に挑むのは愚の骨頂だ。
どうすればいいのか・・・
「・・・うん、こうなったら最終手段を使うしかないよね」
「最終手段?」
ピンとこずに首を傾げる須川さんを横目に、私は携帯を操作してとある人に電話をかけた。
「もしもし、ちょっといいですか?頼みたいことがあるんですけど・・・」
* * *
「う~ん、こうもあっさり上手くいくとは思わなかったなぁ」
「あはは・・・まさか、こんな早く戻ってくるなんてね」
翌日、そんなことを呟きながら、私は例の無料優先券を持って栗東寮を訪れた。めっちゃ目立ったのはこの際置いておこう。
昨日電話したのはフジキセキ先輩で、ゴルシ先輩にアポをとって改めて焼きそばを食べさせてもらえないか確認したところ、快く引き受けてくれた。
「これでゴールドシップとのあれこれが解決できるならお安い御用だよ」って言ってくれたから、本当に助かった。
さすがに泊まりではないけど、夕食時にお邪魔してゴルシ先輩に焼きそばをごちそうしてもらうって形になった。
んで、和解の建前を武器に須川さんにも納得させた。次郎系ラーメンと焼きそばじゃ勝手は違ってくるだろうけど、同じ麺類だしウォーミングアップと考えればちょうどいい。
とはいえ、条件としてイッカクを監視として同行させることになったけど、まぁあってないようなものだと考えよう。どうせいくら食べようとトレーニングメニューで頭を抱えるのは須川さんだし。
「それで、フジキセキ先輩はなんて言ってたの?」
「んっとね、トレーニングが終わった後、7時くらいに来てほしいって。なんか、いろいろと準備するみたい」
まぁ、天井ぶち抜いて待ってた時もわざわざ鉄板を用意してたし、今回も一応過去のいざこざを水に流そうってのが趣旨だから、いろいろとはりきってるんだろうね。
んで、今は6時半。ちょっと早いけど、別に早いうちに来て損はないよね。
「あ。2人とも、こっちだよ」
玄関から中に入ると、フジキセキ先輩が私たちのことを待ってくれていた。
「こんにちは、フジキセキ先輩。今回はありがとうございます」
「別に構わないよ。私としても、以前のことは重く見てたからね。これで万事解決できるならお安い御用さ」
「そう言ってくれると助かります。それで、ゴルシ先輩は?」
「ちょうど準備してるところだよ。ただ・・・」
「ただ、なんですか?」
問いかけると、フジキセキ先輩がわずかに言いよどんだ。
え、なに?また想定外の事態でも起こったの?ゴルシ先輩が何かやらかしたとか?
ただ、別に悪いことではないのか、そこまで深刻そうな表情ではない。
「いや、何か問題があるってわけじゃないんだけど、ちょっと大事になってね」
「大事って、どういうことですか?」
「それは見た方が早いかな。こっちだよ」
そう言って、フジキセキ先輩は私たちを食堂に案内した。
中にはすでに特大の鉄板が用意されていて、ウマ娘が総出でテーブルを動かしたり看板をたてかけたりして準備を・・・おいちょっと待て。
「いやいやいや、えっ、ちょっと待ってください。なんでこんな大事になってるんですか?」
鉄板が屋台で見たやつの数倍のサイズがあるのは、まぁまだ良しとしよう。ゴルシ先輩ならそれくらい用意しそうだし。
ただ、なんでこんな寮のイベントみたいになってるの?さすがに聞いてないよ?
ていうか看板はどっから用意してきた?『ゴールドシップvsクラマハヤテ 狂気の食い倒れ勝負!!』ってなに?初耳なんですけど?
「えっと、実はね・・・」
フジキセキ先輩によると、あの特大の鉄板を持ってきたのは、やっぱりゴルシ先輩らしい。
んで、それを食堂に持ってきて設置するんだから、目立つのも当然と言えば当然だ。
そこで、どうしてこんなものを用意したのか聞いた人がいるのも自然な流れではある。
問題はここからで、私のために用意しているって話が流れたんだけど、そこで「あ~、天井ぶち抜きのお詫びね」って納得した人たちと「いやいや、さすがにこのサイズは食べないでしょオグリキャップでもあるまいし」ってあまり信じてない人たちで別れたらしくて、ゴルシ先輩も「い~や、本気であいつの腹を満たすならこれくれぇは必要だぜ!」って豪語して、「だったらその様子を見させてもらおうじゃねぇか!」って流れになって、最終的にこんなイベントにまで発展したらしい。
「え~っと・・・え?マジですか?」
「マジだね」
「・・・私、なんでいつも目立っちゃうんですか?まだデビュー戦しか勝ってない一般編入生ですよ?」
「一般かどうかはともかく、そういう星の下に生まれたんじゃないかな?」
その星、近くにゴルゴル星があったりしません?なんかやたらと絡まれてるんですけど。
ちなみにゴルシ先輩は、割烹着を着て鉄板の前で両手の金属ベラを鳴らしている。初めて見るゴルシ先輩のガチモードだけど、まさかこんな状況で見ることになるなんてなぁ。
ていうか、タマモクロス先輩まで材料の確認してるし・・・って、あれ?
「そういえば、オグリ先輩は?」
「オグリキャップは、スペシャルウィークと一緒に美浦寮の食堂に行っているはずだよ。『真剣勝負の前に相手の手の内を見るのはフェアじゃない』だってさ。わざわざヒシアマゾンにも許可をもらいに行ってたし、聖蹄祭の大食い勝負のことを意識しているんじゃないかな?」
「オグリ先輩・・・」
どうやら、今回の件が聖蹄祭の大食い大会のウォーミングアップを兼ねていることに気付いていたみたいだ。
まさか、そんなに私のことを意識してくれているとは。
オグリ先輩の中では、すでにライバル認定してくれているらしい。
そんなオグリ先輩に、私は胸が熱くなって・・・
「ちなみに、ずいぶんと燃えている様子だったから、もしかしたらスペシャルウィーク共々、美浦寮の食堂で盛大にウォーミングアップしてるかもね」
「オグリ先輩・・・!」
大丈夫?明日の朝食がなくなったりしない?美浦寮の食堂は栗東寮や学園の食堂と違ってオグリ先輩や私がいる想定の量を用意してるか微妙なんだけど?
美浦寮の食堂で初めてご飯を食べた時に、食堂の係の人から向けられた信じられないような眼差しは今でも覚えている。
オグリ先輩が、それも限界まで食べる気満々で来たってなったら、ハチの巣をつついたような騒ぎになるんじゃない?
「まぁ、そういうわけで、遠慮しないで食べていいからね」
「いや、見世物になってる時点で食べづらい・・・あーでも、大食い大会だって見世物になるから変わらないか」
まぁ、本番前のリハーサルと考えればいいかな?
とりあえず、先にゴルシ先輩に挨拶はしておこう。
「ゴルシせんぱーい」
「おう!来たなクラマハヤテ!」
「どうも。今回はどれくらい用意したか聞いても?」
「ざっと30人分ってとこだな!でも、お前さんなら食べきれると信じてるぜ!」
いや、さすがに多いです。とは言えなかった。
まぁ、ウマ娘基準かヒト基準かで変わってくるけど、ヒト基準ならいけるかな?さすがにウマ娘基準だと10人分くらいが限界だし。
「ちなみに、前の芦毛の怪物盛りは?」
「あれは10人分だな!」
よしっ、ならギリいける。
小さく安堵すると、私たちに気付いたタマモ先輩がこっちにやって来た。
「おっ、ハヤテちゃん。もう来とったんか」
「はい、7時からってのは聞いてましたけど、早めに来ておいた方がいいかなって」
「ははっ、ええ心がけやな。オグリンも少しは見習ってほしいわ。遅刻はせぇへんけど、ほんまマイペースやからなぁ」
でしょうね。
「おーっし、準備できたぜ!」
その時、ゴルシ先輩が鉄板の前に立って両手に金属ベラを持ち、材料を後ろに並べて構えた。
あぁ、もう準備ができたのね。
「それじゃあ、行ってくるね、イッカク」
「えっと、頑張ってね・・・?」
イッカクはさっきから状況についていけなくなってたみたいだけど、最後にどうにか声を絞り出した。応援が疑問形なのは、まぁしょうがないか。
すると、フジキセキ先輩が木箱で作った即席の壇上にマイクを持って上がった。いや、めちゃくちゃノリノリじゃないですか。
「それでは今から、ゴールドシップとクラマハヤテの大食い勝負を始めよう!とはいっても、ゴールドシップは作る側でクラマハヤテは食べる側。この勝負の勝敗はクラマハヤテがゴールドシップが作った焼きそばを完食できるかどうかで決まるよ!」
いったいどんな勝負なんだと思わなくないけど、それよりも今は目の前の焼きそばに集中しよう。
すでにゴルシ先輩は焼きそばを焼き始めていて、いい匂いが漂ってくる。
いやもう、なんでゴルシ先輩の焼きそばってこんなに美味しそうっていうか美味しいんだろう。焼きそば屋を本業にした方がいいんじゃない?
「ようし、こっちはできたぜ!」
「いただきます!」
第一陣が焼き上がったと同時に、私は手を合わせて焼きそばに手を付けた。
今回は特に時間制限はないから、前と違って一気に流し込むんじゃなくて、ゴルシ先輩が焼きそばを作るペースに合わせて口に運んでいく。
おかげで、前よりも余裕をもって味わいながら食べることができる。もちろん出来立ての焼きそばも美味しいけど、下の方でおこげのついた部分もコントラストになってこれまた美味しい。
ゴルシ先輩も私のペースを考えてくれているのか、一度に焼く分を5人前くらいにしてちょうど私が食べ終わるのと同時に焼きそばが焼き上がるようにしてくれている。
焼きそばが出来上がるのは、だいたい15分。焼きそばが出来上がると同時に私も食べ終えてを繰り返していたら、1時間半後に焼きそばをすべて食べ終えることができた。
「終了ー!なんと、クラマハヤテが焼きそば30人分をすべて食べきったー!まさに、オグリキャップに引けを取らない食欲だー!!」
食堂からは、焼きそばを食べきった私に向かって惜しみない拍手が送られてきた。
そこに、ゴルシ先輩がガッと少し強引に私と肩を組んできた。
「いい食いっぷりだったぜ、クラマハヤテ!ゴルシちゃんも完敗だ!」
「あはは、ゴルシ先輩の焼きそばが美味しかったからですよ。よければ、今後も食べさせてもらっていいですか?」
「おうよ!あれはまだ有効だからな!いつでも食べに来てくれていいぜ!」
こうして、私とゴルシ先輩の仲直りも兼ねた焼きそば大食い大会は無事に終了して、私は上機嫌で美浦寮に帰った。
ちなみに、翌日しっかり体重が大幅に増加した。
いや、断じて太ったわけじゃない。別に見るからに体形が丸くなったわけじゃない。ただちょっと質量が増加しただけで。
まぁ、そんな言い訳が通じるはずもなく(体形が変わってないのはガチだけど)、須川さんから太り気味解消特別メニューを課せられることになった。
内容に関しては思い出したくもないからあまり言いたくないけど、せっかく食べた分を吐き出すような事態は避けたとだけ言っておこう。
うまよんのラーメン回好き(唐突)。
まぁ、自分は食べるなら博多ラーメンを選びますが。あの細麺がたまらん。
それはそうと、1回でいいから金船焼きそば食べてみたい・・・食べてみたくない?
レシピ公開するかどっかしらのイベントで販売してもろて運営。
ガチャチケとイベント分のジュエルで回してたら、なんかライトハロー3凸できました。あとは虹結晶が用意できれば完凸や。
ついでに虹チケでクリークも完凸できました。
キタちゃんとかファインみたいな需要の塊は未だに無凸ですけど、まぁそこはフレ枠と手持ちで誤魔化せる範囲なので。