ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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出すよりも隠す方が恥ずかしいとかこれもう訳わかんねぇな?

ゴルシ先輩と仲直り(?)してから数日後、ついに聖蹄祭がやってきた。

んで、問題の私の衣装なんだけど・・・

 

「えっと~・・・え?本当にこれ着るの?」

「うん。絶対にハヤテちゃんに似合うって!」

「え~・・・?」

 

それ本当?

むしろ、私のイメージに合わない気がするんだけど・・・。

 

「・・・グランはどう思う?」

「いいと思うよ?ちなみに、許可もらってイッカクにも見せたけど、イッカクからもお墨付きはもらってるから」

「うそでしょ・・・?」

 

君らいつの間にそんな仲良くなったの?ていうか、軽く情報漏洩にならない?

でもまぁ、着ないって選択肢はなさそうだ。

私は諦めて教室内に仕切りで作った即席の着替えスペースに入って、制服を脱いで用意された衣装に着替える。

 

「・・・誰か、背中のチャック閉めてくれない?手が届かない・・・」

「はいはーい」

 

クラスメイトに背中のチャックを閉めてもらって、仕上げにカチューシャを付ければ完成だ。

 

「・・・着替えた」

「「「キャー!!」」」

 

着替えスペースから出ると、クラスメイトから黄色い悲鳴があがった。

私に用意された衣装は、いわゆるゴシックロリータ、ゴスロリってやつで、色は黒を基調に所々白が混ざった定番になっている。

しかも、ごちゃごちゃにならない程度に小物やリボンがあしらわれているあたり、気合の入り方が尋常じゃないのが容易に想像できる。

いや、たしかに私って身長は140ちょっとしかないけど、だからってこれはちょっと違うのでは?もっと他にありそうな気がするんだけど。

ただ、そう思っているのは私だけみたいで、クラスメイトからはもみくちゃにされたり写真を撮られたりでてんやわんやになってる。

 

「うぅ・・・なんでこんな・・・」

「いや、ハヤテちゃんって私服の方が露出多くない?脚露出とかへそ出しとか珍しくないじゃん」

「それは、そうだけど・・・」

 

恥ずかしがっていると、グランから素の顔で疑問をぶつけられた。

確かに、私の普段着はホットパンツとか丈が短めのTシャツが多くて、脚とかへそはよく見える。

ただ、それは私が暑いの苦手だから流れでそうなったというか、感覚的に水着を見せびらかすのと大して変わらないというか・・・

 

「だって、制服以外で女の子らしい格好するなんて、初めてだし・・・なんか、恥ずかしい」

「「「キャアーーーーー!!!」」」

 

黄色いをすっ飛ばしてただの悲鳴が教室に響き渡った。

え、なに?そんなに?

 

「・・・グラン。私ってそんなに可愛い?」

「うん。ていうか、そういう格好で恥じらってる姿がレアすぎるってのあるかもね」

 

そう言いながら携帯のカメラで激写してるあたり、グランも相当だよね。

 

 

* * *

 

 

とにもかくにも、イヤイヤ言ってられないから役割通りプラカードを持って客引きに出た。

んで、このプラカードなんだけど・・・クラスの宣伝だけならまだしも、『餌付けしたら割引券プレゼント』がマジで実装されてた。さらに恐ろしいことに、最初はこれを持って1人で回らないといけないという。

いや正気か?普通に考えてこんなのやってくれる人なんていないと思うんだけど。

 

「あっ、ハヤテちゃん!」

「ほう、ずいぶんと珍しい格好をしているな」

 

プラカードを持ちながら呆然としていると、イッカクと須川さんに声をかけられた。

今回ばかりは、いつもの格好の2人が羨ましく感じる。

 

「やっぱり、ハヤテちゃんはこういう服を着た方がいいよ!」

「えぇ・・・?いつもと違い過ぎて落ち着かないんだけど・・・」

「慣れれば大丈夫だから!次からはワンピースとかも買ってみよう!」

「いや、恥ずかしいから勘弁して・・・」

「・・・それよりも、俺としては餌付けって部分が気になるんだが。どうなってんだ?」

「あ、それは見ての通りとしか」

「正気か・・・?」

 

やっぱそうなるよねぇ。

オグリ先輩と違って、私は世間様にまで大食いが知れ渡ってるわけじゃないからね。一般客からすれば「なんだこれ?」ってなるのがオチだよ。

もしこれで集客できるとしたら、大食い大会の結果次第になる。

 

「大食い大会で頑張る理由がまた増えたねぇ」

「いや、今日くらいは多少羽目を外しても構わんが、その服で大丈夫なのか?次郎系ラーメンなんだろ?」

「その辺は大丈夫。替えが1着あるから」

「これをもう1着用意したのか・・・」

 

ちょっとクラスの服飾担当がガチすぎる気がするけど、その辺はいったん置いておこう。

 

「ちなみに、大食い大会はいつ始まるんだ?」

「昼前くらいかな?」

 

一般客が入ってくるのは10時からだから、短くても1時間ちょっとはキツイかもしれない。

でも、逆に言えば大食い大会が終わった後はちょうど昼ご飯時になるから、そこがねらい目だ。ここで注目できれば、クラスの売り上げに大きく貢献できることになる。

問題は、次郎系ラーメン特別盛を食べた後で餌付けサービスができるかどうかだけど、その辺は気合で頑張ろう。

明日の体重が恐ろしいことになるかもしれないけど、時には未来を顧みない無鉄砲も必要なんだ!

 

「ちなみに、明日以降は強化バージョンのダイエットメニューをこなしてもらうからな」

「ぁい」

 

骨はイッカクに拾ってもらおう。

そんなことを話していると、スピーカーから放送が流れた。

 

『長らくお待たせいたしました。これより、秋の大感謝祭、聖蹄祭を開催いたします』

「あ、始まった。それじゃあ、私は行ってくるね」

「頑張ってねー」

 

そこでイッカクたちと別れて、プラカードを持って学内を周り始めた。

 

「コスプレ喫茶やってまーす。ぜひ来てくださーい」

 

敢えて餌付けの部分は省きながら宣伝するけど、果たしてどれだけ効果があるものか。

こういうのって、他の名前が知れ渡ってるウマ娘がいるところに流れがちな気がするんだよねぇ。リギルとかまさにそれだし。会長の存在が大きすぎる。

それにしても、めっちゃ屋台並んでるな。いい匂いが漂ってくるし、大食い大会が無かったら食べ歩きしてたかも。ていうか、この日のために朝ごはんほとんど食べてないからめっちゃ腹減ってきた。

まぁ、大食い大会があるし、一応餌付けシステムもあるから買わないけど。

 

「あのー、ちょっといいですか?」

 

しばらく歩いていると、女の子連れの女性から声をかけられた。親子かな?

 

「はい。なんですか?」

「えっと、プラカードに書いてある餌付けなんですけど、大丈夫ですか?」

「え?あ、はい。大丈夫ですよ」

 

マジで釣れた。

えっ、マジで?あ、娘さんが興味を持ったのかな?

 

「お姉ちゃん、いっぱい食べるの?」

「あはは、そうだね。オグリキャップって知ってる?あの人と同じくらい食べるって言われてるかな」

「そうなの?お姉ちゃんすごーい!」

「えへへ、ありがとうね」

 

しれっとオグリ先輩の大食いが公然の事実になっているのは置いておくとして、こういう無邪気な子供は癒されるわ~。

ちなみに、女の子が差し出してきたのはたこ焼きだった。

 

「はい!お姉ちゃんどうぞ!」

「ありがと。あむ、はふほふっ、んっ。はい、お姉ちゃんからもどうぞ」

 

たこ焼きを差し出してくれた女の子に、割引券を渡す。

ちなみに、割引券の内容は合計金額から2割引きと、けっこう豪華だ。餌付けのために買う分、お得に設定することにしたってさ。

女の子とお母さんに手を振って別れ、宣伝に戻った。

にしても、思っていたよりも子供が釣れるな。いや、2,30分に1人くらいのペースだし、ほとんどの人はプラカードを見るだけでスルーしてるから、やっぱり餌付けに興味を惹かれる人はほとんどいないっぽい。あるいは、私の知名度がまだそんなにないからかもしれないけど。

 

「って、もうそろそろ集合時間じゃん」

 

気付けば、大食い大会の集合時間が迫っていた。

ある程度余裕を持っていたつもりだったけど、思っていたより子供たちの相手に時間をとられちゃったかな。

とはいえ、万が一のために客引きは会場付近でやってたから、時間には余裕で間に合う。

小走りで会場裏の控室に入ると、すでにオグリ先輩と黒鹿毛に流星が入ったウマ娘が待っていた。この黒鹿毛のウマ娘が、スペシャルウィーク先輩かな。

 

「すみません。遅くなっちゃいましたか?」

「いや、時間には間に合っているから大丈夫だ」

「わー!可愛い衣装ですね!あ、私スペシャルウィークって言います!今日はよろしくね、クラマハヤテちゃん!」

「よろしくお願いします、スペシャルウィーク先輩」

 

スペシャルウィーク先輩が両手でガッチリ握手しながら、ブンブンと大きく振り回す。

なんというか、めちゃくちゃフレンドリーな先輩だな。

あれ?でも・・・

 

「そういえば、司会の人もいるんですよね?誰なんですか?」

「あぁ、それは・・・」

「あ?なんでい、あたしが最後じゃねぇか」

 

ちょうどその時、控えの出入り口から鹿毛をツインにまとめてキツネ?のお面をつけたウマ娘が入ってきた。

たしか・・・

 

「イナリワン先輩、ですよね?」

「おうよ!お前さんとははじめましてだな、クラマハヤテ」

 

イナリワン。オグリ先輩と並んで永世三強って呼ばれてるウマ娘だ。オグリ先輩と同じく地方から中央に移籍してきて、G1レースを荒らしまわったって言われてる。

でも、なんでそんな人が司会に?

 

「イナリワンは場を盛り上げるのが上手くて、イベントの司会に呼ばれることが多いんだ」

「おうよ!江戸っ子ウマ娘のあたしにかかりゃ、どんな舞台でも盛り上げるなんてわけもねぇさ!」

 

はぇ~、私には到底できそうもないなぁ~。

たしかに、江戸っ子ってお祭り好きな感じが・・・ん?ちょっと待って?

 

「あれ?でも大井って江戸じゃむぐっ」

「それでイナリワン。もう準備はできてるのか?」

「ん?いや、まだでい。けど、もうすぐ準備できるから準備しとけって言われたな」

「そうなんですか!楽しみですね!」

 

素朴な疑問を口にしようとしたら、オグリ先輩に口をふさがれた。

オグリ先輩の顔を見たら、なんか深刻そうな顔で首を横に振られた。

え、なに?そんなにタブーな話題なの?

とりあえず、イナリ先輩に大井≠江戸の話題は振らないようにしておこう。また会う機会があるのかは別として。




デジたんが見たら岩盤送りにされそう。
感覚的には、タイシンが顔を赤くしながら似たような服を着てる感じ(デレ多め)かな?

ウマ娘でも数少ない、身長が140を割っているイナリワン。というか他にはスイープとニシノしかいないという。ウララですら140あるのに・・・。
なのにバストはけっこうある(オグリよりでかい)とか、ロリ巨乳かな?
ちなみに、オグリが必死でハヤテのお口を塞いだのは、タマモクロスが「イナリに『大井は江戸ちゃうで』って言うたら噛みつかれたわ!」って笑いながら話してたのを天然解釈して守ろうとしただけ。スペシャルウィークはまったく関与してません。
まぁ、ハヤテ相手なら言っても新入生ってことで加減されるでしょ・・・たぶん。
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