「全員グラスはもったな?それじゃあ、メリークリスマス!」
「「「メリークリスマス!」」」
今日はクリスマスということで、寮恒例になっているクリスマスパーティーに参加することになった。
信じられる?今回のパーティーのために作った大量の料理、全部寮長のヒシアマゾン先輩が作ったっていうんだよ?
普段から料理をしてて弁当もよく作ってるって聞いてるけど、にしたってこんだけの量って作れるもんなの?ってかどこで作ったの?食堂の厨房とか?
まぁ、作らない私からすれば関係ないことだけど。
ちなみに、実は私はここに来る前に少し寄り道してから参加してる。
最初は思い切り腹を空かせてから行こうかと思ったんだけど、グランとイッカクから「他の先輩や学生もいるのにハヤテちゃんが食べ過ぎたらいけない!」って言われて、少し街に出て買い食いとかすることになった。
さすがに腹をパンパンに膨らませるほど食べてはいないけど、腹5分くらいは溜まってる。
「ふはぁ~、もうすぐ今年も終わりか~」
「それ、なんかおばあちゃんみたいだよ、ハヤテちゃん」
「そう?でもさぁ~、今年はいろんなことがあり過ぎて、思い返すといまいち実感が湧かないんだよね~」
「あはは、それは、そうかもね」
イッカクも苦笑しながら同意する程度には、濃い1年だったよ。
須川さんのスカウトから始まり、デビュー戦で圧勝して中央に移籍することになって、それからいろいろとトラブルを起こしたりして、中央での友達も増えて、思わず夢なんじゃないか疑っちゃいそうになるよ。
まぁ、それを言ったら転生してること自体が夢物語だけどね。
とはいえ、今年も前世のことは思い出せなかったし、油断したら転生してきたことを忘れかねないかも。
「やぁ、3人とも。メリークリスマス」
そんなことを話していると、会長がグラスを片手に近づいてきた。
「あっ、どうも会長。メリークリスマスです」
「こうして話すのは久しぶりだね、クラマハヤテ。遅くなったが、葉牡丹賞おめでとう」
「ありがとうございます。グランも、朝日杯惜しかったよね」
「あはは、そうだね」
実はつい先週、グランは私よりも先にG1の舞台に立っていた。
ジュニア級限定のG1レース朝日杯フューチュリティステークス。ティアラ路線を目指しているグランなら阪神ジュベナイルフィリーズに行くと思ってたんだけど、「今の自分がどこまでいけるか試してみたい」と言って朝日杯FSに出走した。
でも、結果は3着。2番手を追走していたけど、スタミナがもたなかったのか直線に入る前に内にモタれ気味になっちゃって抜かされたんだよね。いいところまではいってたと思うけど、やっぱりグランは後方から一気に抜かす方が向いてると思うね。
「会長ー!」
「む?どうやら呼ばれたようだね。では、私はこれで失礼するよ」
「はい。会長も楽しんできてください」
さすがは会長、どこからも引っ張りだこだねー。
まぁ、会長と気軽に話せる数少ない機会でもあるし、クリスマスパーティーってことでその辺の遠慮の箍が外れてるってのもあるんだろうけど。
まぁ、私たちは私たちでいつもの仲良し3人組で楽しくやってこう。
「そういえば、ハヤテちゃんってSNSやってたっけ?」
パーティー料理を楽しんでいると、グランからそんなことを尋ねられた。
「私はやってないけど、なんで?」
「自分で言うのもあれだけど、私たちって同期の中だとけっこう注目されてるでしょ?」
「そう・・・だね」
私はまだデビュー戦とPreOP1回しか勝ってないけど、レース内容と地方出身ってことでそれなりに知名度がある。中央に移籍するときに記者会見までされたしね。
グランに関しても、朝日杯で負けちゃったとはいえデビュー戦とサウジアラビアRCで強いレースをしたから、けっこうメディアとかから注目されてる。
何だったら、一部からはすでにクラシック路線の私とティアラ路線のグランの2強みたいなことを言われてるらしい。
私はエゴサとかあまりしないけど、その代わりにイッカクが調べて教えてくれる。
「それで、こうやって注目されるってことはファンもそれなりにいるってことになるでしょ?」
「それもそうだね」
「そうなると、やっぱりファンサってのも大事にしないといけなくなってくるんだよね」
「それも知ってる」
競争ウマ娘は競技選手としての色合いが強いけど、それと同じくらいアイドルとしての役割も強い。
一番わかりやすいのはレースの後のウィニングライブだけど、人気が出てくると雑誌からの取材だったりグッズ販売だったり、アイドルとしての仕事も求められてくる。
だからと言って、レースや仕事だけ対応してればいいのかと聞かれると、それはそれで違う。
ウマ娘の中には、SNSを通じてファンと触れ合う人もけっこういたりする。
代表的なのはカレンチャン先輩で、あの人って写真やショートムービーを投稿できるウマスタってアプリでめちゃくちゃ人気があるんだよね。それこそ、あまりSNSを触らない私でも話に聞いたことがあるくらいに。
「でも、なんでいきなりそんな話が?」
「いや、実は最近そういう話があって、始めることにしたんだよね。それで、そういえばハヤテちゃんはどうなんだろうって気になって」
そっかぁ・・・私も、そういうことを気にしないといけない身分になってきたのか・・・。
「ん~・・・いつかはやると思うけど、早くても若駒ステークスが終わってからかなぁ」
「その心は?」
「たしかに注目されてるけど、さすがにPreOp1回勝っただけだと箔がね・・・せめて若駒ステークスを勝ってからかなぁ・・・」
重賞を走ってたらまた話は変わってたかもしれないけど、もう少し自信が欲しいからもう1勝くらいはほしいんだよね。
でも、グランはそうは思ってなかったみたいで。
「いやいや、そんなことないって。これ見てよ」
そう言って、グランがスマホを操作して私に画面を見せてきた。
画面に映ってるのは、なんかのネット掲示板だけど・・・
「・・・って、もしかしてこれ、私についてのスレ?」
「うん。けっこう話題になってるよ」
グランの言う通り、掲示板は割と盛り上がっている。
『クラマハヤテとかいうウマ娘ヤバすぎ』『これで地方出身とか信じられねぇw』『マジでオグリキャップの再来じゃん』『もしかしたら三冠いける可能性もワンチャン・・・?』『今のところ、路線は違うけどクラマハヤテとグランアレグリアの二強っぽい』などなど、いろんなことが書かれている。
・・・って!?
「え?三冠?そんな話になってるの?」
「みたいだね」
いや、そんなこと言われてもね・・・まるで実感が湧かないんだけど。
そもそも、私の脚質は逃げだけど、歴代の7人の三冠ウマ娘の中に逃げウマ娘はいない。それだけ、逃げでクラシックレースを勝つのは難しいということでもある。
もちろん、レース単体で見れば逃げで勝ってるウマ娘はいるけど、それでもごく稀だ。
そりゃあ、私だって負けるつもりは毛頭ないけど、だからってこれは気が早すぎない・・・?
「つまり、ハヤテちゃんはすでに今回のクラシック級の最有力候補として認識されてるから、今のうちにSNSでファンサを覚えてもいいんじゃない?」
「なるほどねぇ・・・」
ちょっと、自己認識を改めた方がいいかもしれないというか、自分がどういう風に評価されてるか、きちんと調べないといけないかもしれない。
私としては「たかがPreOPで1回勝っただけだし」って思ってても、ファンとか観客の中にはその1勝を重く見る人もいるらしい。レース内容があれならなおさら。
「・・・そういうことなら、やってみようかな」
「それじゃあ、パーティーが終わったら一緒にやってみよっか。イッカクもそれでいいよね?」
「うん。正直、私もウマッターはよくわからないし・・・」
まぁ、イッカクは見る専というか、調べる専だもんね。
ということで、急遽グランによるウマッター講座をすることになった。
まぁ、今はクリスマスパーティーを楽しむけどね。チキンうめぇ。
* * *
クリスマスパーティーが終わった後、グランに自室に来てもらってウマッターの登録方法を教えてもらった。
まぁ、登録自体は簡単で、グランに教わらなくてもなんとかなる範囲だったけどね。
後は、通知とかプロフィールとかそういう細々とした部分も設定して、ようやく準備完了となった。
「それじゃあ、始めましたーってツイートしてみたら?」
「ん・・・」
グランに促されるまま、私はツイート画面を開いて・・・
「・・・ん?どうしたの、ハヤテちゃん?」
「なんて書けばいいの?」
「うそでしょ?」
いや、自分でもちょっとびっくりするくらい何も思い浮かばなかった。
でも、SNS初心者なら似たようなものでは?それとも、私がコミュ難なだけ?
「いやいや、今日クリスマスなんだからさ、そういうのを交えて書けばいいんじゃないの?」
「あっ、言われればそうだね」
『メリークリスマース!突然だけど、私もウマッター始めることにしたのでよろしくお願いします』って入力して、ツイートっと。
「こんな感じ?」
「うん。あとは、一言だけでもいいから、できれば毎日、最低でも2,3日に1回はツイートするようにね」
「えっ、そんなに?」
「これくらいは割と普通だよ?」
そうなのか・・・普通なのか・・・。
ちょっと参考までに、知ってるウマ娘のアカウントを見てみよう。
会長は・・・あ、やってるね。まぁ、完璧が服を着て歩いてるような人だし、ファンサを欠かすはずもないか。
ツイート内容にちらほらダジャレが紛れ込んでるのは・・・あの人なりの茶目っ気なのかな?
あとは・・・うわ、フジキセキ先輩のアカウント、フォロワー数が凄いな。やっぱ夢女子量産してるのかな?
あ、オグリ先輩のアカウントもあった・・・って、あのオグリ先輩でさえ定期的にツイートしてるのか。ちょっと意外・・・いや、タマモ先輩が面倒みてるのかな?あと、食べ物関連のツイートがほとんどだから、あまり深いことは考えてなさそう。
にしても、やっぱり名前が売れてるウマ娘はだいたいやってるね。
ゆくゆくは、私もこういう感じになるのかな。
その後は、グランからウマッターをする上での注意事項をいくつか聞いて、お開きになった。
ちなみに、翌朝確認してみたら思った以上にフォロワーが増えててびっくりした。
ついでに『募集:ウマ娘向けでたくさん量を食べれるお店』ってツイートしたらいろんな都内外のお店を紹介されたから、今度オグリ先輩も誘って行ってみよう。
文章書く時に書き始めが一番悩むの、あるあるじゃないですか?
自分は執筆するとき、特に新作を書くとき、一番最初でピタッと手が止まります。一度書き始めるとすらすらいくんですけど、それまでが苦労するんですよね。
あと、YouTubeとかハーメルンのコメントとか感想で書いた後に投稿しようか悩んで、結局消しちゃうこともちらほら。
・・・それはさておき、実はそろそろ会長からダジャレが出ていないことに違和感を感じてきてる今日この頃。
キャラはシングレ寄りで書いてるんで別になくてもどうにでもなるんですけど、やっぱりなかったらなかったでなんか“これじゃない感”がするという。なんて面倒くさいキャラなんだカイチョ―(小声)。
まぁ、最近はガッツリ会長と話す機会も少ないんで、しゃあないと言えばしゃあない。