ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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水星の魔女見てたら男が百合の間に挟まるというかむしろ主人公が逆ハーレム形成してるというかノンケの間に百合を差し込んでるような構図になってて草生えた。
とりあえず今回の話でグエルが好きになったから幸せになってほしい。


世界に1つ、私のための

「あぁそうだ。ハヤテ、早いうちに勝負服の案をまとめておくぞ」

「はい?」

 

若駒ステークスが終わって何日か経った後。

まだレース明けってことでトレーニングは軽めに流し終わった後、須川さんからいきなりそんなことを言われた。

 

「勝負服って、あの勝負服?」

「どれもなにもないと思うが、お前の勝負服だ」

 

勝負服っていうのは、主にG1レースでしか着ることを許されない特別な衣装のことだ。

デザインは出走するウマ娘1人1人によって違い、勝負服を着てレースに出ることはウマ娘にとって名誉なことだとも言われている。

ちなみに、グランは朝日杯に出走したということで、すでに勝負服を持っている。

そんな、限られたウマ娘しか着ることができない勝負服を?私が?

 

「・・・もうそんな話になってるの?」

「あぁ。実際に用意する分にはまだ余裕があるが、デザインだけでも早いうちにまとめておいてほしいと学園から、というかURAから通達があった。まぁ、お前の場合はよほどヘマをしない限り若葉ステークスは勝てるだろうし、お前の勝負服姿で皐月賞の宣伝をしたいって目論見もあるんだろう。だから、デザインだけでもどうするか相談しておきたい」

「う~ん・・・」

 

なんともまぁ、いきなりすぎて微妙に現実感が湧かないけど、そう言う話があってもおかしくはないか。

でもなぁ、私はそういうデザインの話とかさっぱりなんだけど。

 

「ちなみに、デザインって私の方から希望を言った方がいいの?」

「いや、別にお前にこだわりがないなら、一からデザイナーに任せることもできる。ただ、お前の想像と違うデザインが送られる可能性も0じゃないから、具体的な方向性だけでも言っておいた方がいい」

「そっかぁ・・・」

 

なるほどねぇ。

うーん、私に合いそうな勝負服、勝負服・・・。

 

「ドレス系とかスカート系じゃない方がいいかな。それで、速く走れそうなデザインがいい」

「速く走れそうってのは、機能的な意味か?」

「機能的にも、イメージ的にも」

「色はどうする?」

「う~ん・・・あくまでデザイナーの判断に任せるけど、緑系がいいかな」

「あいよ。あとはデザイナーに任せるってことでいいな?」

「それでお願い」

 

すでに担当のデザイナーとは話がついてたのか、須川さんはタブレットでさっきの私の要望をまとめてメールを送った。

 

「ちなみに、おおよそ1,2週間後にラフ画を送ってもらえるそうだ」

「思ったより早いね」

「今はまだ勝負服の依頼は少ないからな。というか、ジュニア級のG1に出走する場合を除けば、年明けで依頼を出すのは稀だ」

「なるほど」

 

それにしても、私の勝負服か・・・考えるだけでもソワソワしてきた。

 

「・・・ちょっと走ってきていい?なんか体がうずいてきちゃって」

「まだレースの疲れも抜けきってないだろうから、軽めに済ませておけ。そうだな・・・時速20㎞以下で1時間だ」

「はーい」

 

1時間で体の疼きが治まるとは思えないけど、須川さんの言うことも最もだからそれくらいで我慢しておこう。

 

 

* * *

 

 

デザイナーさんにメールを送ってからおよそ1週間後、ついに勝負服のラフ画が送られてきた。

そういうわけで、この日はトレーニングが終わってからはみんなで勝負服のデザイン選びをすることになった。

相当気合が入ってるのか、ラフ画ながら10個以上も送られてきた。

 

「うわぁ、いろいろあるね」

「たしかにな。だが、私服系が多いな」

 

須川さんの言う通り、送られてきたラフ画の半分近くはズボンとジャケットを主軸にした私服スタイルだった。

これはこれでもちろんすごいいいんだけど、どうせならもうちょっと特別感が欲しいかな。

 

「う~ん・・・ん?」

「どうした?」

「・・・これ、なんかいいかも」

 

私の目についたのは、若葉色をベースにしたくノ一装束の衣装だ。

まだラフ画ってこともあってデザインはシンプルだけど、肩を出したトップスと内ももを出したズボンに、お腹は網タイツで覆われていて、靴は足袋のようになっている。そして、二の腕を覆う手甲と額当てには風のような紋様が描かれている。

 

「これよくない?」

「俺はその辺のセンスはよくわからんが・・・イッカクはどうだ?」

「私は・・・私も、いいんじゃないかと思います」

 

イッカクのお墨付きも出たことで、方向性としてはくノ一ってことで固まった。

 

「にしても、まさかくノ一とはな・・・」

「まぁでも、ハヤテちゃんって山の中で走ってましたし、忍者っていうのもしっくりくるんじゃないですか?」

「そういうもんか?」

「そういうもん・・・かな?」

 

ぶっちゃけ、どうしてこのデザインを選んだのか、自分でもよくわかっていない。

なんというか、私の直感が「これだ!」って囁いたんだよね。

もしかしたら、私の中のウマソウル的な何かが反応したのかもしれない。知らんけど。

 

「それで、ベースはこいつにするんだな?」

「うん。これがいい」

「わかった。じゃあ、メールで先方に伝えておこう」

「それで、完成するのはいつくらいになるのかな」

「だいたい1ヵ月はかかるはずだ。この後に細かいデザインが送られてきて、さらに修正点がないか確認してから採寸、それから製作を始めることになるからな」

「長いねぇ」

「なにせ、ウマ娘の晴れ舞台に着るものだ。担当したウマ娘が有名になればなるほど、勝負服のデザインも評判、ひいては今後の営業に繋がることになる。半端な仕事はできないだろうよ」

「微妙に世知辛い話だね」

 

お金が絡んできちゃう以上、仕方ないことなんだろうけど。

 

「その分、栄誉ある仕事でもあるらしいがな。その辺の細かい事情までは知らんが、G1レースを勝ったウマ娘やそのトレーナーの評価が上がるのと似たようなものかもな」

「なるほどねぇ」

 

そう言われると、なんとなくわかるような気がする、かな?

ファンからの期待が重い時もあるけど、レースで勝てればそれ以上の声援が送られてきて嬉しい、みたいな。

 

「またデザイン案が送られてきたら連絡する。勝負服のことばかり気にしてトレーニングをおろそかにしないようにな」

「はーい」

 

 

 

あれからまた1週間後、新たに勝負服のデザインが送られてきた。

前のはラフ画だったからってのもあるけど、今回送られてきたデザイン案はすごい丁寧に仕上げられていて、これを着ている自分を想像できるかのようだった。

 

「おー!なんかめっちゃすごい!」

「テンション上がり過ぎて語彙力がなくなってんな・・・現物が送られてきたらどうなるんだ?」

「ま、まぁ、今はそれより、何か修正してほしいところがないか探していきましょう」

 

そうだよ。イッカクの言う通り、送られてきたデザイン案を眺めまわしていかないと。

とはいえ、ぱっと見はそんな気になるところとかはないんだよね。

トップスやズボンは若葉色をベースに襟が深緑色で縁どられ、手甲は黒色をベースに縁と両サイドに金のラインが走っていて、手の甲の部分は五角形の枠の中に額当てと同じ渦巻く風が描かれている。靴は足袋をモチーフにタイツと一体化したようなデザインになっていて、脚のラインが強調されている。

うん、めっちゃいい。めっちゃいいんだけど・・・

 

「ん~・・・なんかさみしい感じがする」

「・・・言われてみれば、たしかにそうだな」

「なんというか・・・何かが足りない、って感じがしますね」

 

イッカクの言う通り、何か物足りない。

服のデザイン自体は問題ないから、何か小物の類かな?

でも何が足りないんだろうなぁ~・・・

 

「・・・あれかな、口当てかな?」

「・・・言われてみればそうかもしれんが、全力で走るのに口元を覆うとか、完全に自殺行為だぞ」

 

だよねぇ。ろくに息継ぎできなくて窒息しそう。

 

「じゃあ、あれだ。マフラーだ」

「マフラー?」

「うん、首に巻いてちょっと口元を隠すのにちょうどいいと思わない?それにマフラーが風になびいたら、もっと風っぽくならない?」

「あ~・・・たしかに?」

「だよね?」

「いいんじゃない、かな?」

 

だいぶ疑問符を浮かべてるけど、2人の確認はとったからそういうことにしよう。

ちなみに、その旨のメールを送ってもらったら思ったより好感触の返信が送られてきたから、私の判断は間違っていなかったらしい。

 

 

 

そして、デザイナーさんの事務所で採寸したり細かい打ち合わせをしたりして、皐月賞トライアルである若葉ステークスが2週間後に迫ってきた頃。

ついに私の勝負服が送られてきた。

 

「わわわっ、ねぇねぇねぇ、開けてみていい!?」

「おう、いいぞ」

「ハヤテちゃんの勝負服だもんね」

 

ついに私の勝負服が届けられテンションが上がりまくっている私に苦笑している須川さんとイッカクを横目に、私は丁寧かつ迅速に封を開けていく。

箱を開けると、そこにはたしかに、あのデザインと同じ勝負服が入っていた。

 

「わ~っははぁ~!!ねぇねぇ、着てみてもいい!?」

「それはいいが、ちょっと待ってろ。俺は外に出て待ってるからな。イッカクはどうする」

「私は念のため、ハヤテちゃんの着替えを手伝います」

 

一応、私の勝負服は特に難しい着付けが必要だとかそういうのは少ないけど、いてもらえるだけありがたい。

中には説明書も同伴されていて、それを見ながら着替えていく。

まずは足袋と一体になってるっていうタイツから・・・あーなるほど、タイツそのものが足袋っていうよりタイツの足裏にクッションがあって、その上に足袋モチーフの靴を履くって感じか。蹄鉄は靴底に打ち付けるんじゃなくて、タイツと靴を合わせた二重のクッションの間にかすがいみたいな専用の釘で固定する仕組みらしい。

足袋なのに蹄鉄とかどうするんだろうって思ってたけど、これなら問題なく走れそう。

とはいえ、この専用のかすがいは非売品みたいで、替えも一緒に多数送られているけど必要なときは連絡する必要があると。

他は・・・特に気を付けないといけないものはないかな?

イッカクの手を借りながら着替えること数分。ようやく着替え終わった。

 

「須川さーん、着替え終わったよー」

「あいよー・・・おぉ、似合ってるじゃねぇか」

「そう?あ、写真撮って」

「わかった。ちょっと待ってろ」

 

そう言って須川さんがタブレットを取り出してカメラを向けたから、私は左手を腰に当ててピースのポーズをとった。

撮ってもらった写真を見てみたけど、うん、我ながら可愛いね。

 

「・・・これが私の、私だけの勝負服なんだね」

「あぁ。とはいえ、G1に出走できないと着れないけどな」

「言われなくても分かってるって。私も、この勝負服に恥じない走りをするつもりだよ」

 

これまでは好きに走ってきたけど、こうして一流の証が手元にある以上、これからは目的をもって走るべきだ。

なら、私が目指すべきものは1つ。

 

「私は、私が最強であることを証明するために、走り続けるよ」

 

今こそが、私という物語を始める時だ。

 

 

* * *

 

 

『クラマハヤテ、まだ止まらない!グングンと伸びていく!後続と差が埋まらないどころか、さらに突き放して今、ゴール!!デビュー戦を思わせるような大差をつけてゴールしました!タイムはなんと1分58秒4!皐月賞を前にレースレコードを叩きだしたー!!』

 

今までにない歓声を浴びながら、私はターフの上に立つ。

トライアルレースと言うこともあって、デビュー戦とも今までのレースとも違う景色が見える気がする。

もしこれがG1レース、それもクラシックレースだったら、どんな景色が見えるのか。どんなレースができるのか。

あぁ、今から楽しみで仕方ない。

そこでならきっと、まだ見たことがないものが見えるだろうから。




一度レース回を出して、ようやく物語が進むようになってきた・・・。
ちなみに、グランアレグリア(と、ついでにアーモンドアイ)の勝負服は今のところ望monさんのイラストを参考にしていただければと。もう自分の中のグラン像とアーモンドアイ像がこの人のイラストで固まっちゃってるんで・・・。
万が一、億が一、公式が2人のウマ娘化を発表するようであればそっちに変更するでしょうが、容姿はともかく勝負服はこの物語が完結するまでに出てくるかどうかすら怪しいところ。

一応、ハヤテの勝負服のモデルとして、Party Cityのくノ一コスが近い感じです。
こういう、腹が網タイツのくノ一ってよくないですか?あと、肩出しくノ一もよくないですか?
今回のモデルとは違いますが、AMBITIOUS MISSIONの弥栄ちゃんの衣装とかマジ好み。

余談ですが、今回は足袋を履かせたくて靴底をゴムにしてみましたが、その辺の素材の規定ってあるんですかね。
シングレのアキツテイオーとか、ぱっと見た感じ藁の草鞋でめっちゃ走りずらそうですけど。
ユキノビジンの原案?あれはバグみたいなものってことで。


*追記
靴底に関する意見をいただいたので、その辺の仕組みを書き直しました。
基本的にインドアなんでゴム底靴で芝を走った経験なんてないんですけど、けっこう違和感があるらしいです。
このような参考意見はとてもありがたいので、ぜひいただけると幸いです。
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